日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2006年 -2007年
代表者 : 芝本 利重; 倉田 康孝; 高野 博充
本研究の目的は循環ショック時にミクロピペットを用いて肝臓の微小血管圧を測定することである。
1)摘出灌流肝臓でミクロピペットと血管閉塞法で測定した微小血管圧の比較:基準状態と血流量変化、ノルエピネフリン投与、アナフィラキシーでは内径30〜50(42±5)μmの細肝静脈の血圧は血管閉塞法で同時に測定されたdouble occlusion pressureがhepatic venous occlusion pressureより近似していることが判明した。
2)アナフィラキシーショック:卵白アルブミンで感作した麻酔下SDラットに抗原の静脈内投与によりアナフィラキシーショックを惹起した。体血圧は118mHgから45mmHgに低下し、門脈圧は11.cmH_2Oから、36.3cmH_2Oに上昇し、肝血管収縮が見られた。内径30〜50(42±5)μmの細肝静脈の血圧は3.1cmH_2Oから1分後に8.8cmH_2Oに達した後、門脈圧上昇のピーク時に抗原投与前値に戻っていた。このとき肝臓表面に装着した超音波クリスタルで測定した肝臓の厚みは、96%にまで減少した。以上よりアナフィラキシーショック時の肝血管収縮は主として類洞あるいは前類洞血管収縮によるもので後類洞血管収縮の関与は小さいことが判明した。
3)エンドトキシンショック:E. coli,エンドトキシン10から30mg/kgを麻酔下ラットの静脈内に投与して低血圧を惹起した。体血圧は30mmHg低下し、門脈圧はおよそ6cmH_2O上昇し、肝血管収縮が見られた。内径35±8μmの細肝静脈の血圧は0.9cmH_2O程度上昇後、エンドトキシン投与前値に戻っていた。肝臓の厚みは97%にまで減少した。エンドトキシンショックでは門脈圧が上昇したが、それには後毛細血管の収縮は非常に弱いことが判明し、前類同血管優位の収縮により肝内血液量の減少が示唆される結果を得た。