日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2019年04月 -2024年03月
代表者 : 香月 富士日; 山田 敦朗; 澤田 華世; 渡辺 範雄; 近藤 真前
本研究は、コホート研究デザインを用い、摂食障害患者の母親が家族会などのサポートを得ることで、家族システムの悪循環が改善され、結果的に患者の摂食障害症状改善に結びつくことを検証することを目的として研究を行った。フォロー期間は18か月間とした。
摂食障害と診断された患者とその母親を対象とし、札幌市、千葉市、名古屋市、福井市で参加者のリクルートを行い、3時点(初回・9か月後・18か月後)でアンケート調査を行った。アンケートは3回とも自宅に郵送し、記入後返送してもらった。患者への質問内容は、①摂食障害症状、②孤独感、③自尊心、④アサーション、⑤家族機能、母親へは、①自己効力感、②孤独感、③ソーシャルサポート、④抑うつ感、⑤傾聴力 ⑥不安感であった。分析は、各尺度の記述統計を行った後、18か月間の各変数の変化量について、共分散構造分析を用いて解析を行った。有意水準はP<0.05とした。
患者・母ともに回答の得られた57組(114名)のデータの解析を行った。母親へのサポートの増加、母親の傾聴態度の向上、患者のアサーティブな会話の増加、および患者のやせ願望の低下の間には有意な関係性がみられた(χ2/df=1.611, P=0.657, CFI=1.0, RMSEA = 0.0)。パス係数は1つを除き有意な値であった。
今回の調査結果は、摂食障害患者の母親に対してのサポートを増やすことで、母親と患者のコミュニケーションが増加し、そのことを介して、患者のやせ願望を低下させる可能性があることを示唆している。ただし、得られた対象者数が少なかったため、解釈は十分に検討する必要あり、引き続き十分なサンプル数を得て結果を考察する必要がある。