研究者データベース

大矢 進 (オオヤ ススム)

  • 医学研究科薬理学分野 教授
Last Updated :2024/04/26

研究者情報

学位

  • 博士(薬学)(名古屋市立大学)

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ORCID ID

J-Global ID

研究キーワード

  • イオンチャネル   病態分子薬理学   薬理学   

研究分野

  • ライフサイエンス / 薬理学

経歴

  • 2017年09月 - 現在  名古屋市立大学大学院医学研究科教授
  • 2012年04月 - 2017年08月  京都薬科大学薬学部教授
  • 2005年04月 - 2012年03月  名古屋市立大学大学院薬学研究科准教授
  • 1995年04月 - 2005年03月  名古屋市立大学大学院薬学研究科助手

学歴

  • 1994年04月 - 1995年03月   名古屋市立大学   大学院薬学研究科   博士後期課程
  • 1992年04月 - 1994年03月   名古屋市立大学   大学院薬学研究科   博士前期課程
  • 1988年04月 - 1992年03月   名古屋市立大学   薬学部   製薬学科

所属学協会

  • 日本免疫学会   日本癌学会   American Physiological Society   日本生理学会   日本薬剤師会   Physiological Society   Biophysical Society   日本薬学会   日本薬理学会   

研究活動情報

論文

書籍

  • eReview薬理学
    (担当:共訳範囲:)Elsevier Japan KK 2020年
  • 医療薬学III
    大矢 進 (担当:分担執筆範囲:感覚器・皮膚の疾患に用いられる代表的な薬物の基本構造と薬効(薬理・薬物動態))東京化学同人 2017年04月
  • 詳解 薬理学
    大矢 進 (担当:分担執筆範囲:自律神経系に作用する薬物)廣川書店 2015年08月

MISC

受賞

  • 2006年 日本薬学会奨励賞(平成18年度)
     JPN
  • 2005年 最優秀ポスター発表賞(US-Jpan Conference on Drug Development & Rational Drug Design)

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2022年04月 -2026年03月 
    代表者 : 松井 未来; 大矢 進
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2020年04月 -2024年03月 
    代表者 : 大矢 進; 鬼頭 宏彰
     
    本研究の目的は、三次元(3D)スフェロイド培養システムを用いてin vitroで再現した腫瘍微小環境でのがん幹細胞能および抗がん剤耐性能の獲得におけるカルシウム活性化カリウムチャネル(KCaチャネル)の病態生理学的意義を解明し、KCaチャネル作用薬の悪性がん治療薬としての潜在性を示すことである。本年度の研究計実施計画では、ヒト前立腺がん細胞における①抗アンドロゲン剤耐性獲得のメカニズムを解明するとともに、②KCa1.1阻害薬による抗アンドロゲン剤耐性克服効果を検討した。本研究では、アンドロゲン依存性ヒト前立腺がん細胞LNCaPを用いて以下のことを明らかにした。(1) スフェロイド培養によりLNCaPのKCa1.1活性が亢進しており、ユビキチンE3リガーゼFBXW7の発現抑制によるKCa1.1のタンパク分解の抑制が関与することを明らかにした。(2) LNCaPスフェロイド培養モデルにおいて、KCa1.1阻害薬の前投与によりdoxorubicin耐性が克服された。また、doxorubicin耐性獲得とKCa1.1阻害によるその克服には、ABCトランスポーターMRP5が関与することが示唆された。(3) LNCaPスフェロイド培養モデルにおいて、抗アンドロゲン剤耐性獲得にユビキチンE3リガーゼMDM2を介したアンドロゲン受容体ARタンパク分解促進が関与しており、KCa1.1阻害薬の処置によりMDM2発現が抑制されることにより、抗アンドロゲン剤耐性が克服された。さらに、「乳がん患者の腫瘍サンプルを用いたイオンチャネル発現の網羅的解析」を実施した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2018年10月 -2023年03月 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 鈴木 良明; 鬼頭 宏彰
     
    1,IL-10/IL-17Aを産生する制御性T細胞は、炎症性腸疾患(IBD)のような自己免疫疾患の発症・増悪の抑制に関与することが知られている。我々はIBDモデルマウスやin vitroで誘導した制御性T細胞において、Ca2+活性化K+チャネル(KCa3.1)阻害薬がBlimp1、E4BP4、KLF4といったIL-10/IL-17Aの転写制御因子の発現が亢進することで、IL-10/IL-17A発現を亢進させることを明らかにした。(Ohya et al., 2021)。さらに、JNK阻害薬がKCa3.1阻害によるIL-10発現上昇を抑制することと、KCa3.1阻害薬がリン酸化JNKおよびc-Junの発現を上昇させることを見出した。これにより、JNK/c-Junシグナルが、制御性T細胞におけるKCa3.1阻害誘導性のIL-10発現亢進に関与することを明らかにした (Matsui et al, 2022)。 2,敗血症では、炎症反応による骨芽細胞障害を介したIL-7産生抑制が免疫細胞数の減少を引き起こす。我々は、マウス骨芽細胞株MC3T3-E1の骨芽細胞分化に内向き整流性K+チャネルKir2.1の機能亢進が重要な役割を果たすことを明らかにした。さらに、miR-106p-5pの発現減少がKir2.1の発現上昇に寄与することが明らかとなった。現在、慢性炎症時におけるKir2.1やmiRNAの発現活性変化と骨芽細胞機能との関連について検討中である。 3,血管に対する持続的なストレス負荷が興奮転写連関を介してケモカインなど白血球集積を引き起こす分子の遺伝子発現の転写を引き起こすことを明らかにした。これにより、マクロファージが血管壁に集積して慢性炎症が引き起こされることで、血管リモデリングが引き起こされることを見出した(Suzuki et al, 2022)。 4,門脈圧亢進症モデルマウスの門脈平滑筋細胞では、アンジオテンシンⅡのはたらきによりTMEM16Aの発現が減少して、自発運動に異常が生じることを明らかにした(Kondo et al, 2022)
  • カリウムチャネルを分子標的とした炎症性腸疾患に関する研究
    ブリストル・マイヤーズ スクイブ:腫瘍免疫・免疫・循環疾患領域 研究助成
    研究期間 : 2019年10月 -2021年03月 
    代表者 : 大矢進
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2016年04月 -2019年03月 
    代表者 : 藤井 正徳; 大矢 進
     
    アトピー性皮膚炎において、痒みは患者を最も苦しめる症状である。Mas関連Gタンパク質共役受容体 (Mrgpr) はヒスタミンとは異なるタイプの痒みを伝達する受容体として注目されているが、アトピー性皮膚炎の痒みとMrgprの関連性は未だ不明である。本研究は、アトピー性皮膚炎と類似した症状を示すマウスを用いて、痒みにおけるMrgprの役割を調べた。Mrgprのサブタイプの一つであるMrgprA3を発現した神経を実験的に消失させたところ、物理的刺激による痒み行動が抑制された。また、アトピー性皮膚炎治療薬のタクロリムスはMrgprA3が発現している神経に作用して痒みを抑えていることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2016年04月 -2019年03月 
    代表者 : 大矢 進; 鬼頭 宏彰; 村木 克彦
     
    2種類のK+チャネル(K2P5.1とKCa3.1)が炎症性腸疾患(IBD)の病態に関与している。本研究により、①pre-mRNAスプライシング阻害薬が、活性化T細胞におけるK2P5.1の発現過程に異常をきたし、K2P5.1活性を消失させること、②クラスI ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬により、CD4陽性T細胞におけるKCa3.1発現・活性が抑制されること、③KCa3.1活性化薬が、Smadシグナルを抑制することで制御性T細胞のIL-10発現・産生を抑制することを見出した。IBD病態におけるK+チャネルの役割に関する理解が深まった。
  • カリウムチャネル阻害による抗炎症性サイトカインIL-10産生増大機構の解明
    ソルト・サイエンス研究財団:平成29年度助成
    研究期間 : 2017年04月 -2018年03月 
    代表者 : 大矢 進
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2014年04月 -2016年03月 
    代表者 : 丹羽 里実; 内木 拓; 佐々木 昌一; 高橋 智; 大矢 進
     
    AR (Androgen receptor)が発現しているヒト前立腺癌組織サンプルとヒト前立腺癌細胞株LNCaPにおいて、KCa2.2が高発現していることを明らかにした。KCa2.2阻害薬UCL1684やKCa2.2のノックダウンにより、LNCaPの細胞増殖は抑制された。また、KCa2.2はARを介した細胞増殖に機能的に関与する可能性がある。さらに、KCa2.2はARの下流に位置し、ARによる転写調節を受けることを明らかにした。加えて、短期間の去勢環境では、KCa2.2の遺伝子発現、タンパク発現共に減少した。対して、比較的長期間の去勢環境では、KCa2.2 mRNAの発現が増加を明らかにした。
  • Tリンパ球におけるtwo-pore型K+チャネルK2P5.1の生理的役割とその新規阻害機構の解明
    ソルト・サイエンス研究財団:平成27年度助成
    研究期間 : 2015年04月 -2016年03月 
    代表者 : 大矢 進
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2013年04月 -2016年03月 
    代表者 : 大矢 進; 藤井 正徳
     
    本研究の目的は、アレルギー性疾患、炎症性疾患の発症や癌悪性化におけるpH感受性カリウムチャネルK2P5.1の病態生理学的役割を明らかにすることである。本研究では、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)モデルマウスを用いて、K2P5.1阻害により炎症、下痢、血便などの病態が改善することを見出し、炎症性サイトカイン産生の増加にCD4陽性T細胞におけるK2P5.1の発現・活性亢進が関与していることを示唆した。また、K2P5.1の機能不全型スプライスバリアントを単離し、Tリンパ球モデル細胞においてpre-mRNAスプライシング阻害剤がK2P5.1活性を抑制することを見出した。
  • カリウムチャネル新規阻害機構の解明
    上原記念生命科学財団:平成24年度研究推進特別奨励金
    研究期間 : 2014年04月 -2015年03月 
    代表者 : 大矢 進
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2011年11月 -2014年03月 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 樋口 恒彦; 浅井 清文; 広野 修一
     
    非興奮性細胞(血管内皮、リンパ球、軟骨、気道上皮等)において、Ca2+活性化K+(KCa)チャネルやストア作動性Ca2+(SOC)チャネルが正帰還Ca2+制御機構の中心分子として機能し、各種刺激応答や病態形成に関与することを明らかにした。脳血管内皮細胞や軟骨細胞において、CRACチャネルがSOCチャネルの分子実体であり、細胞増殖を制御することが判明した。炎症疾患モデル動物由来リンパ球においては、中コンダクタンスKCaチャネルの発現変化と病態の関連を明らかにした。また、気道繊毛細胞では、ATP感受性K+チャネルが正帰還機構に関与し、繊毛運動を増強させて気道クリアランスを亢進させることが判明した。
  • ストレス応答性調節におけるリンパ球Ca2+活性化K+チャネルKCa3.1の役割
    薬理研究会:平成24年度研究助成
    研究期間 : 2012年04月 -2013年03月 
    代表者 : 大矢 進
  • 免疫シナプスにおけるTwo-pore domain K+チャネル輸送機構の解明
    持田記念医学薬学振興財団:第30回(平成24年度)研究助成金
    研究期間 : 2012年04月 -2013年03月 
    代表者 : 大矢 進
  • カルシウム活性化カリウムチャネルの新規発現調節機構とその創薬への応用
    武田科学研究振興財団:2011年度 薬学系研究奨励継続助成
    研究期間 : 2011年04月 -2013年03月 
    代表者 : 大矢 進
  • 炎症性疾患におけるTリンパ球カリウムチャネル活性・発現調節
    鈴木謙三記念医科学応用研究財団:平成23年度調査研究助成金
    研究期間 : 2011年04月 -2012年03月 
    代表者 : 大矢 進
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2011年 -2012年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男
     
    単純でありながら効率の高いイオンチャネル標的創薬スクリーニング系を創成するため、遺伝子改変イオンチャネルを発現させた1発の活動電位発生により細胞死が引き起こされる細胞を作成した。電位依存性 Na^+チャネル Kv1.5 の極めて遅い不活性化を示す点変異型 Na^+チャネルと内向き整流性 K^+チャネル(Kir2.1)を定常発現させた HEK293 細胞(基準細胞)を作成した。この細胞に電気刺激を加えると非常に長い活動電位が発生し細胞死をもたらした。さらに創薬標的となるイオンチャネル、特に再分極電流を発生する K^+イオンチャネルもこの細胞に定常発現させると、活動電位幅が短縮され細胞死は抑制された。標的チャネルの阻害薬存在下で刺激すると、阻害薬用量依存的に活動電位持続時間が延長され細胞死の確率が上昇した。本スクリーニング系は簡便な系であるにも関わらす、定量的なスクリーニングが可能であり、実用化が期待される。
  • カルシウム活性化カリウムチャネルの新規発現調節機構とその創薬への応用
    武田科学研究振興財団:2009年度 薬学系研究奨励助成
    研究期間 : 2009年04月 -2011年03月 
    代表者 : 大矢 進
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2009年 -2011年 
    代表者 : 大矢 進
     
    研究代表者は、(1)カルシウム活性化カリウムチャネル(K_ 3.1)のN末端欠損体K_ 3.1-sp(K_ 3.1b)が正常K_ 3.1aの細胞膜移行を阻害するドミナントネガティブ体として機能すること、(2) K_ 3.1-spがTリンパ球の細胞増殖の抑制機能に重要な役割を果たしていること、(3)アレルギー性疾患、炎症性疾患におけるTリンパ球K_ 3.1発現調節に転写抑制因子RESTが関与することを明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2008年 -2010年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 浅井 清文; 樋口 恒彦
     
    軟骨細胞、血管内皮細胞、Tリンパ球などの非興奮性細胞においてCa^<2+>活性化K^<+>チャネル(BK, IK, SK)の機能発現が刺激応答における持続性細胞内Ca^<2+>濃度上昇に大きく貢献していることを明らかにした。その機序として細胞内Ca^<2+>濃度上昇により活性化された同チャネルが、過分極を誘発することにより、非選択性陽イオンチャネルの電気的駆動力を増加させ、容量依存性Ca^<2+>流入を増加させるという正帰還Ca^<2+>制御機構への寄与が重要であることを証明した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2008年 -2009年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男
     
    細胞膜上でイオンチャネルは他分子と特定の分子複合体(トランスポートソーム)を形成して、初めて正常な生体内機能を果たしている場合の多いことが明らかになりつつある。本研究は、平滑筋、およびペースメーカー細胞としての間質系カハール細胞、非興奮性細胞としての軟骨細胞におけるCa^<2+>活性化K^+チャネル(BKチャネルなど)とその他の細胞膜上のイオンチャネルやトランスポーターやカベオリン、更には小胞体膜上のリアノジン受容体との分子間連関の可能性とトランスポートソームの実体を一分子可視化法により明らかにすることを、目的としている。蛍光タンパクでラベルされたこれら分子の遺伝子を上記細胞に導入・発現させ、全反射顕微鏡で可視化するとともに、その機能を電気生理学的に解析した。 (1) リアノジン受容体とBKチャネルの機能連関を可視化するとともに、男性ホルモンによる発現調節機構を明らかにした(J Pharmacol Sci, 2009)。 (2) 軟骨細胞由来の培養細胞において、細胞内Ca2+濃度制御機構において、非選択的陽イオンチャネルとの機能連関により、BKチャネルなどのCa^<2+>活性化K^+チャネルが重要な役割を果たしていることを明らかにした(Am J Physiol, 2010)。またCl^-チャネルとの機能連関を明らかにした(J Pharmacol Sci, 2010) (3) Na^+-Ca^<2+>交換体を高発現したマウス膀胱平滑筋において、その生理機能を明らかにした。(J Pharmacol Sci, 2010)
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2007年 -2008年 
    代表者 : 木村 和哲; 大矢 進
     
    我々はラットの動脈性ED(erectile dysfunction)モデルを用いて、vardenafil慢性投与によるED改善メカニズムを血流動態学および組織学面から検討した。勃起機能の評価は海綿体神経刺激による海綿体内圧変化を調べた。その結果、vardenafil投与によって陰茎海綿体への側副血行路の発達と海綿体平滑筋の構造保持が確認され、動脈性EDラットの勃起機能が改善された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 大矢 進
     
    本研究の目的は,(1)Ca^<2+>活性化K^+チャネルを介した神経,心筋細胞保護作用の分子機構,(2)Ca^<2+>活性化K^+チャネル開口薬による神経,心筋細胞保護を明らかにすることであった。(1)については,18年度の研究成果を発展させ,Ca^<2+>活性化K^+チャネルの活性化により惹起される細胞内Ca^<2+>流入経路の分子基盤の同定に成功し,「Ca^<2+>活性化K^+チャネルのMAKキナーゼ経路,カスパーゼ経路への影響」についても研究成果が得られた(Yamazaki, et. al.,2007)。また,松果体細胞におけるCa^<2+>活性化K^+チャネルのCa^<2+>オシレーション発生への寄与について,Ca^<2+>イメージング解析により明らかにした(第111回日本薬理学会近畿部会にて発表)。最近では,扁桃体神経細胞においてアンドロゲン枯渇によりCa^<2+>活性化K^+チャネル発現,活性が顕著に減少することを明らかにした(第85回日本生理学会大会にて発表)。(2)については,Ca^<2+>活性化K^+チャネルβ1サブユニットの変異体を作成し,β1サブユニット選択的新規Ca^<2+>活性化K^+チャネル開口薬DiBAC4(3)の認識部位に第2膜貫通ドメインのいくつかのアミノ酸が関与することを明らかにした(日本薬学会第128年会にて発表)。また,Ca^<2+>活性化K^+チャネル開口薬ジクロロデヒドロアビエチン酸がミトコンドリア呼吸,容積,Ca^<2+>過負荷を改善することを明らかにした(投稿中)。ミトコンドリアCa^<2+>活性化K^+チャネルの分子実体については,候補分子の同定を含めて一定の研究成果が得られたものの,再構築系での更なる研究成果の蓄積が必要である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 村木 克彦
     
    <細胞内CAa^<2+>信号の電気信号への変換機構におけるトランスポートソーム機能と構造実体の解析>2型リアノジン受容体(RyR2)異型接合性欠損マウス膀胱平滑筋を用いてRyR2の寄与を明らかにした。膀胱平滑筋においてRyR2を介した自発Ca^<2+>遊離(Ca^<2+>spark)の発生とそのCa^<2+>信号をSTOCsという電気信号に変換するトランスポートソーム機能は,尿貯留・排泄調節という膀胱機能発現において根源的な果たす役割を果たすことが示され,当該トランスポートソームの実体はカベオラ構造内に存在することが強く示唆された。さらにこのような信号機構がカハール間質細胞において生じ,ペースメーカー電位発生の根源となっている可能性を再構築系を用いて明らかにした。 <大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+(BK)チャネルのβサブユニット特異的開口物質の発見>電位感受性蛍光色素のDiBAC_4(3)および関連オキソノール色素にBKチャネルβ1およびβ4サブユニット選択性(β2には無効)を有するBKチャネル開口作用があることを発見し,創薬の可能性を示した。 <一分子可視化によるCa^<2+>信号から電気信号への変換トランスポートソームの機能解析>トランスポートソームにおけるCa^<2+>信号から電気信号への変換に関する分子機構解明における新たな手法として一分子レベルでの可視化技術を導入した。全反射蛍光顕微鏡とホールセルクランプ法の併用により,電位固定化で細胞膜直下200nm以内でのナノスケールの蛍光分子動態が測定可能となった。また記録電極からCa^<2+>蛍光色素Fluo4を細胞内に導入し,脱分極刺激時の膜直下の局所Ca^<2+>濃度変化をナノスケールで計測することが可能となった。この方法を用いて電位固定化でのチャネルを中心としたトランスポートソーム機能の定量的ナノイメージング解析を行った。トランスポートソームの信号変換分子機構を解明する上で一分子可視化技術は画期的な技術となる可能性を示した.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2007年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 戸苅 彰史
     
    脳神経等の興奮性細胞では、強い刺激と興奮により細胞にCa^<2+>負荷が生じた場合、自己防衛的にスパイク発生頻度を減じてCa^<2+>過負荷による細胞障害を回避するシステムが存在する。特にCa^<2+>活性化K^+チャネルはその活性化により、過分極を介して電位依存性Ca^<2+>チャネル活性を低下させるため、多くの興奮性細胞において最も基本的な[Ca^<2+>]_i負帰還調節機構を担う重要な分子と認識されている。本研究はCa^<2+>活性化K^+チャネルの分子制御機構の解明を基盤とした創薬研究を目的としている。研究期間内に以下の事柄を明らかにした。(1)脳血管内皮細胞に発現している小コンダクタンスCa^<2+>依存性K^+(SK)チャネルがアストロサイトなどから遊離されたATP刺激による内皮細胞増殖促進機構において、極めて重要な機能を果たしていることを発見し、創薬ターゲットとしての可能性を示した(JBC,2006)(J Pharmacol Sci,104,2007)。(2)型リアノジン受容体(RyR2)異型接合性欠損マウス膀胱平滑筋を用いて、[Ca^<2+>]_i負帰還調節機構へのRyR2と大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+(BK)チャネルの寄与を明らかにし、尿貯留・排泄調節という膀胱機能発現において生理的に重要であることを示した(J Physiol,2007;J Pharmacol Sci,103,2007)。(3)電位感受性蛍光色素として創薬探索に汎用されているオキソノール化合物がβ1サブユニット選択的なBKチャネル開口作用を有することを発見し、BKチャネルβサブユニット選択性のある初めての化合物として創薬シーズの可能性を示した(Mol Pharmacol,2007)。(4)本態性高血圧症モデルラット(SHR)の大血管において細胞外液酸性の状態で収縮が著しく増強されることが知られていたが、高血圧の補償として発現促進されたBKチャネル機能更新と酸性時に活性が抑制される特有の機構が主な原因であることを見出した(Am J physiol,2007)。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男
     
    全反射蛍光顕微鏡を利用して、生きた細胞内で機能している細胞内小器官、特に小胞体の膜上に存在する特定の蛋白質(特にはリアノジンCa^<2+>遊離チャネル)のリアルタイムでの機能を一分子可視化法により、解明することを試みた。さらにその技術を一般化し、その他の小胞体上の蛋白質、あるいはその他のオルガネラ(ミトコンドリアなど)の膜表面蛋白を一分子可視化し、その機能解析に新分野を切り開くための端緒とするべく検討した。 (1)膜電位固定下で平滑筋細胞膜上の1分子のまたは凝集した分子群のCa^<2+>チャネルが脱分極で開口することにより、細胞膜直下の筋小胞体からのリアノジン受容体を介したCa^<2+>遊離を可視化することに成功した(07年日本薬理学会年会発表;論文投稿準備中)。 (2)YFPでラベルされた2および3型リアノジン受容体をHEK293細胞に発現させ、リアノジン受容体開口による自発的Ca^<2+>遊離現象を一分子可視化することを試行している。 (3)CFPラベルされた大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+チャネルをHEK293細胞に発現させ、機能的クラスター形成の過程を一分子可視化法により明らかにした。また(2)と同時に発現させることにより両分子の機能連関の可視化を検討している。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2004年 -2005年 
    代表者 : 大矢 進
     
    本年度の研究実施計画では、「K^+チャネル電位依存性制御の分子機構解明」と「電位依存性K^+チャネル開口薬の探索」に主眼をおき、次の検討事項を掲げた。 1.高効率薬物探索系における電位依存性K^+チャネル開口薬の探索 2.電位センサー変異体による開口薬作用部位の同定 1については、研究代表者が樹立した電位依存性Ca^<2+>活性化K^+チャネル定常発現細胞株を用いて開口薬の候補化合物を探索した。電気生理学的手技により解析した結果、脳内化学物質であるアナンダミドや樹脂酸誘導体がK^+チャネル開口作用を有することを明らかにすることができた(研究業績参照)。また、これまで分子実体が不明であったミトコンドリアCa^<2+>活性化K^+チャネルの分子実体の一部(mitoK_-β1)を明らかにし、ミトコンドリア内膜においてmitoK_-β1とシトクロムc酸化酵素が複合体を形成する可能性を示した(研究業績参照)。本研究では、ミトコンドリア膜電位、ミトコンドリア呼吸の可視化解析や実験的虚血心筋細胞モデルによりK^+チャネル開口薬による心筋細胞保護作用の機構の一部も明らかにした。 2については、遺伝子改変技術により電位依存性K^+チャネル、Kv1.1チャネルの点変異体を複数作成し、樹脂酸誘導体によるK^+チャネル開口作用や電位依存性制御の分子機構ついて検討した。その結果、樹脂酸誘導体による電位依存性制御に関与する部位をある程度同定することができた(学会発表済、投稿中)。 最近では消化管間質細胞腫におけるK^+チャネル遺伝子発現解析を行い、電位依存性K^+チャネルが腫瘍増殖に関与している可能性を示した(研究業績参照)。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進
     
    現在、汎用されている代表的なオキソノール系蛍光色素としてDiBAC_4(n)やDisBAC_4(n)などが挙げられる。陰イオンであるDiBACは細胞膜を良く透過するため、細胞外液中に存在させると膜電位差が減少した時には細胞内へより多く分布し、不特定の細胞質蛋白と結合して、細胞内からの蛍光強度を増す。細胞外のfreeのDiBACは微弱な蛍光しか発しない。アーチファクトが生じやすい理由は、本来は極めて短い色素の蛍光寿命が、不特定の細胞質蛋白との結合により延長されて測定が可能となっているという根本的な測定原理に由来する。蛋白と色素の結合に影響を与える化合物は、イオンチャネルに作用しなくても蛍光強度を変化させるからである。上記の欠点を解消するため、次のような系を考案した。DiBAC系膜電位感受性蛍光色素に標識化学構造を化学合成により付加した。一方、その標識部位を特異的に認識する蛋白を遺伝子導入により細胞に高発現させることを試みた。付加的化学構造を持つ色素は特異的結合蛋白に優先的に結合するため、不特定の細胞内蛋白との結合は防がれ、かつより高効率の蛍光を発することが可能性となると考えた。構造が比較的単純な精巣型アンジオテンシン転換酵素タンパクの一部とその阻害薬カプトプリル類縁化合物の利用を検討した。特異的結合蛋白を低分子化することにより色素との結合・解離速度を上昇させることができると想定した。以上から、当方法によりアーチファクトの減少と反応速度の上昇が得られると推測し検討を加えたものの、現在のところ従来と比較して明らかな反応速度の変化は観察されていない。DiBACが既に細胞質のタンパクのうちでも比較的低分子なものに良く結合していた可能性、まだ低分子化が不足している可能性、細胞内では何らかの理由で結合能が低下しているなどの理由が考えられるのでさらに検討が必要である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2004年 
    代表者 : 今泉 祐治; 村木 克彦; 大矢 進; 大和田 智彦
     
    神経・筋などの興奮性細胞において、Ca^<2+>過負荷による障害発生の抑制には、電位感受性Ca^<2+>チャネル活性に負の帰還をもたらすCa^<2+>依存性K^+チャネルの機能亢進が有効と考えられている。Ca^<2+>依存性K^+チャネルの一つであるBKチャネルの開口物質は、緊張性膀胱(頻尿)治療・脳虚血障害軽減などの作用が期待されている。ピマル酸関連化合物の構造活性相関から開口作用を示す新たな基本化学構造が明らかにすることができ、誘導体合成により現在知られている最強の活性を持つ化合物を得ることができた。BKチャネルはα(1種類)およびβサブユニット(4種類)の組み合わせにより異なった性質を示し、組織及び部位特異的な性質の差異の要因となっている。ピマル酸誘導体はαサブユニットに作用すること、電位感受性を増大させることが明らかになった。さらに心筋ミトコンドリアに存在するBKチャネル開口作用を示し、虚血時に心筋保護作用を示す可能性を示すことができた。 消化管などでは間質細胞において自発性の細胞内Ca^<2+>濃度変化がCa^<2+>依存性イオンチャネルを制御することにより、電気信号に変換され組織内を伝播されるため、組織に規律ある連動した運動をもたらすことが知られている。その機構の詳細は不明であるため、またペースメーカー機能に作用する薬物のスクリーニング系が存在しないため、ペースメーカー機能のモデルを再構築系で作成することを試みた。消化管間質細胞において細胞内Ca^<2+>遊離チャネルである3型リアノジン受容体mRNAが発現していることが明らかとなったので、3型リアノジン受容体遺伝子を非発現培養細胞に導入したところ、消化管から得た組織小片の系と極めて類似した自発性Ca^<2+>遊離が観察された。消化管ペースメーカーモデル構築の基盤となる可能性が示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2003年 
    代表者 : 大矢 進
     
    本研究では、電位依存性カリウムチャネル機能制御分子のうち、心筋、神経においてQT延長症候群、癲癇に関与する電位依存性カリウムチャネル、ERG1-3、KCNQ1-5の機能制御分子、KCNE1-5と早期不活性化カリウムチャネルKv4.3の機能制御分子KChIp-4の平滑筋機能における役割について検討した。 門脈は自動収縮を惹起する組織であり、その機能調節には心筋と向様にK^+チャネルが重要な役割を果たしている。本研究では、マウス門脈平滑筋に発現する新規KCNQ1スプライスバリアント、KCNQ1bをクローニングし、その電気生理学的特性について検討した(「研究発表」参照)。その結果、心筋ではKCNE1がKCNQ1aの機能調節しているのに対して、門脈平滑筋ではKCNE3がKCNQ1bの機能調節を行っていることを見出した(「研究発表」参照)。心筋KCNQ1、KCNE1においてloss of functionを伴なう遺伝的変異が報告されている。本研究において、KCNQチャネルの特異的阻害薬、linopirdineにより門脈平滑筋における活動電位幅が顕著に延長したことから、門脈血行異常症にもKCNQ1bやKCNE3の遺伝的変異が関与する可能性がある。 本研究課題において、消化管平滑筋においてKChIPサブタイプのうち、KChIP1,KChIP3が発現することを前年度報告した。本研究では、Kv4.3のC末端細胞内領域にアミノ酸点変異体を導入することにより、Kv4チャネルの電位依存性に寄与する正電荷アミノ酸を見出し、KChIPはN末端と相互作用するだけでなく(An F. et al.,Nature,2002)、C末端とも機能的に相互作用することを見出した(「研究発表」参照)。最近、国際共同研究によりL(米国カリフォルニア大学サンディエゴ校、Wayne Giles教授)、KChIP欠損マウスを用いて平滑筋機能異常に関する研究を開始した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2000年 -2001年 
    代表者 : 大矢 進
     
    電気生理学実験により子宮をはじめとする各種平滑筋の収縮調節機構に多くのイオンチャネルやトランスポーターが寄与することが明らかとなっている。また、K^+チャネル開口薬は抗高血圧薬、抗不整脈薬といった循環器疾患作用薬としての適用だけでなく、切迫早産治療薬、抗気管支喘息薬、尿失禁抑制薬としての開発が期待されている。本研究では各種平滑筋(子宮を含む)に発現する電位依存性K^+チャネルの分子同定、発現分布、機能的集積を検討した。また、新規K^+チャネル修飾蛋白を単離し、発現分布を検討した。 30種類以上単離されているK^+チャネルサブタイプのうちラット各種平滑筋において主に5種類[早期不活性化(Kv4.3)、遅延整流性(Kv1.2、1.5、2.1)、Ca^<2+>活性化(BKα)チャネル]が発現しており、膜興奮性により発現分布が異なっていた(研究発表参照)。また、輸精管のような興奮性の高い内臓平滑筋細胞ではBKチャネル蛋白が細胞膜に集積して機能的クラスターを形成していた(研究発表参照)。妊娠子宮平滑筋におけるK^+チャネル遺伝子のup/down-regulationやBKチャネル蛋白集積の変化に関しては現在進行中である。最近、早期不活性化K^+チャネルを機能修飾するK^+ Channel-Inteacting Protein(KChIP)が単離された。本研究では心筋に特異的に発現する新規KChIPを2種類単離するとともに、平滑筋に発現するKChIPサブタイプを同定した(投稿中)。KChIPは早期不活性化K^+電流密度を増大させるため妊娠後期や心筋梗塞時の早期不活性化K^+電流の減弱にはKChIPのdown-regulationが寄与する可能性がある。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -2000年 
    代表者 : 渡辺 稔; 大矢 進; 村木 克彦; 今泉 祐治
     
    単離平滑筋細胞に電位固定法を適用し、膜電流を記録するとともに、記録電極内からfluo-3を細胞に負荷しレーザー共焦点顕微鏡を用いて細胞内Ca^<2+>分布画像を同時に取得する手法を用いて、精管・膀胱・門脈等の興奮性の高い平滑筋細胞における興奮収縮連関の画像解析とCa^<2+>依存性K^+チャネル活性化の解析を行い、次の知見を得た。(1)細胞膜直下に局在する特定の筋小胞体(の一部分)は、活動電位などの脱分極時に、電位依存性Ca^<2+>チャネルを介したCa^<2+>流入によるCa^<2+>遊離機構の起点となり、数百ミリ秒持続するCa^<2+>ホットスポットを形成する。(2)膜直下筋小胞体からの局所遊離Ca^<2+>によるK^+チャネル活性化は、活動電位波形を制御し活動電位発生頻度を調節する。(3)この局所Ca^<2+>遊離は他の筋小胞体へCa^<2+>遊離を伝播した場合にのみ、収縮を誘発する可能性が高い。(4)このようなCa^<2+>ホットスポット形成という特定機能を持つ膜直下筋小胞体の数は、1細胞当り比較的少数(<20)と考えられる。 一方、保持電位-40mV付近での観察から、膜直下の特定の筋小胞体(数箇所)から、自発的な一過性局所Ca^<2+>遊離(Ca^<2+>スパーク)が繰り返し生じ、近傍の細胞膜上のCa^<2+>依存性K^+チャネル(10-100個)を活性化することにより自発性・一過性の外向き電流(STOC)が生じることが示唆されている。Ca^<2+>スパークとSTOCの持続時間は半値幅50ミリ秒程度で、その発生に外液Ca^<2+>の流入は直接必要ではなく、特定の筋小胞体からのリアノジン受容体を介する自発性Ca^<2+>遊離によると考えられる。今回、上記の活動電位発生初期に重要な働きをする特定の筋小胞体のさらに一部で、Ca^<2+>スパークがほぼ定期的に生じるていること、それがSTOCと完全に同期していることを画像解析と膜電流の同時記録により明らかにした。Ca^<2+>スパークは心筋や骨格筋において興奮収縮連関の最少ユニットとして解析されている。一方、横行小管と筋小胞体の発達が悪い平滑筋においては、細胞膜直下の筋小胞体で生じるCa^<2+>スパークが細胞膜上のCa^<2+>依存性イオンチャネルを活性化して静止膜電位や興奮性、さらに筋緊張度の調節に関与していることが明らかとなった。静止時にSTOCを活性化するCa^<2+>スパーク部位は、脱分極時にはより大きく増幅され持続するCa^<2+>ホットスポット部位となる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1999年 
    代表者 : 渡辺 稔; 大矢 進; 今泉 祐治
     
    自律神経、特に副交感神経を外科的に徐神経した場合に、支配組織の平滑筋に生じる非特異的な収縮反応増大現象の機構を、最近明らかになりつつある平滑筋収縮蛋白系のCa^<2+>感受性増大機構と関連付け、スキンドファイバーを用いた薬理学的手法及びRT-PCR法を主に用いた分子生物学的手法により解明を試みた。AF64Aをラット前眼房内微量注入することにより毛様体神経節切除による副交感神経徐神経と類似の状態を作成することに成功した。ムスカリン受容体サブタイプのうち、ラット虹彩においてm2,m3,m4のmRNA量が高発現していることを定量的PCRにより示し、それぞれをRT-PCR法でクローニングしたところ、それぞれ既知のものと相同かまたは相同性が高かった。AF64A処置した虹彩ではm2とm3が増大、m4が減少していた。またAF64A処置した虹彩縮瞳筋に生じる非特異的な収縮増大が、収縮蛋白系のCa^<2+>感受性の増大を伴っているかについて筋小胞体機能を破壊したスキンドファイバーを用いて検討したところ、収縮蛋白のCa^<2+>感受性は僅かに増大していることが明らかとなった。この増大はプロテインキナーゼC抑制薬H-7により消失した。一方、最大収縮はスキンドファイバーにおいても非スキンドファイバーと同様に、徐神経により役1.5倍増大した。この最大収縮増大は収縮蛋白のアクチン、ミオシンや、収縮制御蛋白カルモジュリン、カルデスモン、カルポニンの量的変化では説明できないことが明らかとなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1999年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進
     
    早期不活性化A型Kチャネルは興奮性細胞において活動電位の発生タイミング調節、発生頻度調節、早期再分極形成などの重要な役割を演じている。ラット各種平滑筋細胞に発現しているA型Kチャネルは主にKv4.3であり、特に既知の脳由来Kv4.3(Kv4.3M)のC末端領域に19アミノ酸が挿入された新規遺伝子多形(Kv4.3L)が主要であること、心筋ンのA型KチャネルはKv4.2と4.3の混合であるが、そのKv4.3もKv4.3Lが主要であることが示された。また、脳においてはKv4.3MmRNAが圧倒的に高発現であるが、海馬にはKv4.3Lが高発現していることが明らかとなった。さらに電気生理学的にクローンKチャネル電流とA型K電流を比較するため、HEK293細胞に形質導入し、その巨視的電流を測定した。ラット精管平滑筋細胞からA型K電流を記録し、クローンKv4.2,4.3M,4.3L電流と定量的に比較検討した。その結果、これらのクローンKチャネル電流は精管A型電流と類似したキネティクスを示したが、活性化・不活性化電位や不活性化からの回復の時間依存性などの細部では有意に異なっていた。特に不活性化からの回復は精管A型K電流において明らかに早かった。アラキドン酸に対する感受性には両者で差が見られなかった。キネティクスの違いは細胞骨格とKチャネルの関係が平滑筋細胞と強発現HEK細胞で異なるためでないことが示唆された。βサブユニットあるいは細胞内制御因子の存在を考えるべきであると思われる。Kv4.3MとKv4.3L電流の間には、少なくともホールセルクランプ法で観察する限り、電気生理学的に明かな差はなかったため、Kv4.3LのC末端細胞内領域の末端167アミノ酸を除去した変異体を作成したが、不活性化からの回復は若干遅延したもののそれ以外のキネティクスは変化しなかった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1999年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 村木 克彦; 渡辺 稔
     
    ラット大動脈・大腿動脈など数種の興奮性の低い動脈平滑筋細胞における各種イオンチャネルの種類と分布を興奮性の高い膀胱・輸精管等と比較検討した。大コンダクタンスCa依存性K(BK)チャネルとL型Caチャネルα(あるいはα1)及びβサブユニットのmRNA発現レベルを比較するとともに、単一細胞での電流密度を比較した。その結果Caチャネル電流密度とmRNA発現量は膜興奮性と直接的に関連しているものの、BKチャネルの密度とmRNA発現量はどの平滑筋でも同じ程度に高いことが明らかとなった。細胞内Ca濃度が上昇した時にBKチャネル活性が上昇し、過分極を生じることにより、L型Caチャネルを介した流入が減少するという負帰環機構を考えるならば、低興奮性滑筋では負帰環による安全域が大きいと考えられる。リアノジン受容体Ca遊離チャネルの血管平滑筋における機能を検討するため、その抑制薬であるルテニウムレッドを使用したところ、スキンドファイバーにおいて収縮反応の顕著な亢進が観察された。この作用は収縮蛋白系のCa感受性増大によること、その作用機序はミオシン脱リン酸化酵素の阻害によること、などを明らかにした。ウサギ心房筋細胞では横行小管の発達が心室筋などと比べ極めて悪い。従って興奮収縮連関が生じる時に筋小胞体からのCa遊離は細胞膜近傍だけで生じる。リアノジン受容体を介した筋小胞体からの自発的Ca遊離であるスパークはCaによるCa遊離の最小単位であるばかりでなく、近傍細胞膜上のCa依存性Clチャネルを活性化する単位でもあることを明らかにした。Ca依存性Clチャネルの活性化は正常状態において活動電位の早期再分極相を形成する。Ca過負荷状態の細胞ではCaスパークの伝播によるCaウエーブによりCa依存性Clチャネル電流は不整脈のトリガードアクティビティーとなる一過性内向き電流を発生させると推察される。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1997年 
    代表者 : 渡辺 稔; 大矢 進; 今泉 祐治
     
    平成9年度では、まずラット虹彩部位からRT-PCR法を用いてムスカリンm4受容体をクローニングしたが、脳由来のm4と完全に相同であった。さらにm1,m2,m3およびm4のmRNAの発現についてRT-PCR法を用いて定量することを平成8年度に引き続き試みた。しかし特にm2とm4については、プライマーの選択によりPCR増幅効率がかなり変ったので、サブタイプ間の比較については定量的に記述することが困難と思われる。しかし他の平滑筋組織に比べ、虹彩においてm4が多く発現していること、m1とm5サブタイプのmRNA発現は他の平滑筋同様に虹彩においても少ないことは確かであった。さらに虹彩平滑筋に対する副交感神経除去効果の機序を検討するため、毛様体神経節を除去したラット虹彩からRNAを得て、これまでと同様にRT反応によりcDNAを作製し、PCRにより各種ムスカリン受容体サブタイプのmRNA発現量の変化を検討した。その結果、これらのmRNA量には顕著な変化の無いことが示唆された。カルモジュリン、ミオシンやミオシン軽鎖キナーゼなどの収縮蛋白mRNA発現量の変化についてはまだ検討中である。また、画像解析により虹彩散瞳筋の細胞内Ca^<2+>濃度は、静止時緊張を持たない縮瞳筋や他の平滑筋に比べ高いことが明らかとなった。ムスカリン受容体刺激により細胞内Ca^<2+>濃度の低下が生じたので、弛緩はこの機序によるものと推測される。副交感神経除去した虹彩散瞳筋ではムスカリン受容体刺激により細胞内Ca^<2+>濃度減少も弛緩も生じないことも明らかとなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1997年 
    代表者 : 渡辺 稔; WALSH Michae; GILES Wayne; 大矢 進; 村木 克彦; 今泉 祐治; WALSH Michoe; WALSH Micha; GILES Wayhe
     
    心筋・平滑筋においてAタイプK電流を担うKチャネルは異なる遺伝子産物であるという可能性が、単離細胞を用いた電気生理・薬理学的実験結果から得られた。そこでRT-PCR法を用いてこの可能性を検討し、かつ平滑筋のAタイプKチャネルをクローニングした。AタイプKチャネルをコードする遺伝子として脳や心筋でKv1.4,4.2,4.3が挙げられている。これらのmRNA発現レベルをラット平滑筋組織で検討し、心筋・脳と比較したところ、平滑筋ではKv4.3が主要なものであった。さらに平滑筋のKv4.3はこれまで脳で報告されていたKv4.3(Kv4.3M)の遺伝子多形の一つで、C端末付近に新規の連続したアミノ酸配列19個を含むことが明らかとなった(Kv4.3L)(FEBS Letter,1997)。ラット心筋では従来報告されていたKv4.3Mよりも4.3LがmRNAのレベルで多かったが、脳ではKv4.3Lが少なかった。また、Kv.1.4,4.2,4.3M,4.3LをHEK293細胞に発現させ、その電気生理学的性質を比較検討した。Kv4.3Mと4.3Lは活性化・不活性化の電位依存性や不活性化からの回復時間およびアラキドン酸感受性に関して有意な差が無かった。19アミノ酸が付加されている生理的意義についてはまだ不明である。一方、大コンダクタンスCa^<2+>依存性K^+チャネルと電位依存性L型CaチャネルのmRNA発現を各種平滑筋で比較検討し、興奮性の差異の説明が一部可能であることを見出した。すなわち興奮性の低い大動脈と高い精管の平滑筋細胞において、細胞全体のBKチャネルおよびCaチャネル電流密度は明らかに精管において数倍高い。一方、mRNAの発現はCaチャネルでは精管で数倍高いものの、BKチャネルでは同等であった。摘出パッチ法を用いた単一チャネル記録を行うと、確かにBKチャネルの密度は大動脈と精管で同等であった。大動脈においてCaチャネル電流が増大しても流入するCa量の増大によりBKチャネル活性かそれ以上に増大されるので興奮性は増大しない。以上よりCaチャネルの発現が少ない平滑筋においてもBKチャネルは高発現しており、低興奮性(膜電位の安定性)に大きく寄与していると思われる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1994年 -1995年 
    代表者 : 渡辺 稔; 大矢 進; 今泉 祐治; 山原 なつき
     
    本研究の目的は、虹彩散瞳筋においてムスカリン受容体刺激で生じる弛緩の機構を分子薬理学的に解明することである。まず、弛緩に関連する受容体が、既に報告されている5種類のムスカリン受容体のどれに該当するかを薬理学的に検討した。その結果M3かその亜型のムスカリン受容体を介することが示唆された。また、その受容体活性化から弛緩反応までの情報伝達系に百日咳毒素感受性のGTP結合蛋白質が関与していることが明らかとなった。さらに、ムスカリン受容体のサブタイプの同定を遺伝子のレベルで検討した。m2、m3受容体の翻訳領域を完全に含むようにPCRプライマーを各々デザインし、RT-PCR法に従いラット眼球RNAから目的とするPCR産物を得た。m2受容体については約1,400塩基対、m3受容体については約1,800塩基対のPCR産物であった。これらの産物は、大腸菌ベクターに組み込み、遺伝子配列を決定した。ラット眼球m2受容体については、ラット心臓由来m2受容体と比較して9個のアミノ酸が異なり、それらの多くがGTP結合蛋白質との連関に重要な細胞内第3ループに存在した。また、ラット眼球m3受容体については、ラット脳m3受容体と比較して4個のアミノ酸が異なり、細胞内第2、第3ループに存在した。さらに、細胞内第3ループをターゲットとしたRT-PCRにおいて、ラット虹彩周辺の組織にm2、m3受容体遺伝子が豊富に発現していることが明らかになった。一方、特異的なコリン取り込み抑制薬であるAF64Aをラット前眼房に微量注入することにより、ムスカリン受容体刺激による弛緩が消失することを見いだし、その機構を薬理学的に検討した。その結果、散瞳筋がもつ静止張力や、ノルエピネフリンやセロトニンによる収縮には優位な影響を与えず、この弛緩だけを消失させることが明らかとなった。 現在、眼球m2、m3受容体を培養細胞に発現させ、薬理学的・免疫学的手法により薬物結合実験・セカンドメッセンジャーの定量・共役するGTP結合蛋白質の同定・組織分布等を考察しているところである。また、AF64A処理後に虹彩筋においてムスカリン受容体mRNAレベルに変化があるかどうかなどを検討中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1994年 -1995年 
    代表者 : 渡辺 稔; WALSH Michae; GILES Wayhe; 宇山 佳明; 大矢 進; 村木 克彦; 今泉 祐治; GILES Wayne
     
    細胞膜一回貫通型のmini K(あるいはlsK)チャネルは腎臓において最初に発見・クローニングされた。その後、心筋を含む多くの組織でmRNAの存在が同定されており、平滑筋組織としては子宮で見出されている。心筋の遅延整流性K電流は2つの成分からなっており、そのうちの活性化の遅い成分を担うKチャネルについては不明な点が多く、遺伝子レベルで完全に同定されてはいない。lsKをその候補のうちの1つに挙げている研究者もいる。平滑筋での知見は子宮に限られている。そこで血管を含めた多くの平滑筋組織から総RNAを抽出し、既に知られているlsKチャネルcDNAをもとに作製したプライマーを用いて、RT-PCR法により総RNAを鋳型にして解析した(RT-RCR法をCalgary大で習得した)。その結果、大動脈、十二指腸、回腸、気管、膀胱からPCR産物が得られ、その塩基配列はどの組織においてもlsK遺伝子と100%相同であった。また発現の程度も各平滑筋間で同様であった。この部分の結果は投稿準備中である。 交感神経や内皮細胞の機能を薬物により除去した腸間膜動脈の潅流標本において、細胞膜2回貫通型の内向き整流性Kチャネル(IRK1)をやや選択的に抑制する低濃度のBa^<2+>を、他種のKチャネルを抑制するグリベンクラミドや低濃度のテトラエチルアンモニウムの存在下に潅流液に加えると、潅流圧が上昇した。この結果は腸間膜平滑筋の静止膜電位の維持にIRK1が寄与しており、Ba^<2+>によるIRK1抑制は平滑筋細胞に脱分極を引起こし、電位依存性Caチャネルを介するCa流入を増大させていることを示唆している。そこでIRK1遺伝子をウサギ腸間膜動脈からクローニングするため、心筋IRK1遺伝子をもとにプライマーを作製し、腸間膜動脈から得た総RNAを鋳型にしてRT-PCR法を適用した。およそ1400塩基対の長さを持つPCR産物が得られたので、これを2つの制限酵素を用いて3つの部位に分けてサブクローニングした。その結果、塩基配列はウサギ心筋IRK1と100%相同であった。さらに、内皮細胞を注意深く除去した腸間膜動脈から得たRNAからも同じPCR産物が得られたので、おそらく平滑筋由来のIRK1遺伝子と考えられる。このcDNAからcRNAを作製し、アフリカツメガエル卵母細胞に注入したところ、当然のことながら低濃度Ba^<2+>により抑制される内向き整流性K電流の発現が観察された。一方、ウサギ腸間膜動脈から単離した平滑筋にwhole-cell clamp法を適用したところ、Ba^<2+>感受性の内向き整流性K電流は極めて小さいが存在していることがわかった。他種のK電流も静止膜電位付近では極めて小さいので、幾つかの種類のKチャネルが静止膜電位の維持に寄与しており、IRK1はその一つと考えられる。以下は名市大・薬学部で行われた。これらのことから、抵抗血管の腸間膜動脈の平滑筋細胞にも心筋と同じIRK1が存在し、重要な生理的機能を果していることがウサギにおいて強く示唆された。今後、さらにin situ hybridizationを行って、腸間膜動脈の平滑筋細胞にIRK1が発現していることを示す必要がある。この部分はCalgary大で行われる予定である。 ヒト、ウサギ、ラットなどの心房筋・心室筋細胞に存在するCa非依存性の一過性K電流(A電流)と類似の電流が平滑筋細胞にも存在するが、その生理的な意味は異なっていることを我々は既に明らかにしている。このKチャネルはラット心筋においてはKv4.2かKv1.4が主であると報告されている。そこでラットの血管を含む機種かの平滑筋においてA電流を担っているKチャネルを遺伝子的に同定するため、ラット脳由来のKv1.4とKv4.2の遺伝子をもとにそれぞれプライマーを作製し、ラット平滑筋RNAを鋳型にRT-PCR法を用いて解析した。PCR産物が得られたので、今後サブクローニングを行い塩基配列を決定する予定である。Calgary大ではラット脳由来Kv1.4のKチャネルをGH3細胞に発現させ、外液K濃度変化によるチャネル活性の変化やKチャネル抑制薬の作用を検討した(投稿準備中)。 RT-PCR法を用いてクローニングしたcDNAの哺乳動物培養細胞への形質移入について、名市大での成功率が非常に低いので、その検討をCalgry大に人員を派遣して検討した。またIRK1と他の2回貫通型Kチャネルのキメラ遺伝子の作製法の検討のためCalgary大に人員を派遣した。今後これらの技術力の上昇により各テーマの新たな進展が期待される。
  • イオンチャネル病
  • Molecular Pharmacology of ion channels

委員歴

  • 2021年12月 - 現在   Frontiers in Physiology, Cell Physiology section   Associate Editor
  • 2020年04月 - 現在   International Journal of Molecular Sciences   Editor
  • 2020年04月 - 現在   日本薬理学会   広報委員会
  • 2001年 - 現在   日本薬理学会   学術評議員
  • 2018年04月 - 2020年03月   日本薬理学会   企画教育委員
  • 2014年04月 - 2017年03月   日本薬学会   学術誌編集委員

担当経験のある科目

  • 薬品作用学名古屋市立大学薬学部
  • 薬理学京都薬科大学
  • 薬理学名古屋市立大学医学部

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