日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 井上 大; 田島 秀浩; 堀 寧
膵癌の切除後の予後を規定する因子として術前の局所の進展度、腫瘍サイズ、腫瘍マーカー(CA19-9など)が知られているがこれらの既知の因子に加え、腫瘍自体の悪性度(分化度、転移能など)が関与している。病理レベルでは既にこれらの悪性度に腫瘍内の微小環境、具体的には癌細胞以外の間質環境(線維化、血小板、炎症細胞)が大きく関わっていることが明らかとなってきた。中でも腫瘍内の線維化、特に腫瘍関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast;CAF)が膵癌の予後に関与することが分かっている。ただこのCAFの多寡を術前に推定する方法がなく、我々は術前の画像検査を用いてこれを推定し、予後予測の画像バイオマーカーとして確立するべく、令和2年度に引き続き研究を行った。
1.令和3年度は令和2年度に引き続き術前化学療法や放射線療法なく切除を行った症例集積を進めた。対象施設は変更なく金沢大学附属病院、名古屋市立大学病院およびその関連施設とした。症例集積は116例となっている。これらの症例データベースに術前腫瘍マーカー等の採血データ、術後補助療法の有無、予後等のデータを追加し、金沢大学附属病院および関連施設データに関しては必要な採血、予後データはほぼ追加が終了した。
2.さらにデータベースでの症例、データ追加に平行して集積した匿名化画像データ(CT,MRIなど)の解析を進めた。特にCT,MRIではまず視覚解析を放射線科医2名で行い、腫瘍径、進展度(血管浸潤、神経叢浸潤、リンパ節腫大など)、造影パターン解析および造影各相における腫瘍性状(均一、不均一、リング状濃染の有無など)について記録し、データベースに追加した。さらに病理標本の集積および染色を進め、デジタルデータとして保存、追加を行った。
本年度研究の過程において下記論文発表および学会講演を行った。