日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2010年 -2011年
代表者 : 布井 雅人
本研究では,他者が選好判断にどのように影響を及ぼすのかに焦点を当てた。先行研究より,ポジティブ表情の他者が視線を向けた対象が,ネガティブ表情の他者が視線を向けた対象よりも好まれることが示されている(Bayliss et al., 2007)。さらに,高魅力人物と対呈示された対象が,低魅力人物と対呈示された対象よりも好まれることも示されている(Strick et al., 2008)。そこで選好判断への他者の影響を確認するために,他者の視線・表情・魅力度がどのように選好判断に影響しているのかについて検討を行った。昨年度の実験の続きとして,魅力度によって他者の視線方向の効果が異なるのかどうかについて検討を行った.その結果,視線方向に呈示されたターゲットの選好が上昇した.さらに,魅力度による影響も追認されたが,魅力度によって視線方向の影響に差は生じなかった.次に,対象と対呈示される顔画像の視線・表情・魅力度を同時に操作し,三要因間の関連を直接検討した。その結果,視線・表情・魅力度の影響がそれぞれ見られ,視線が向けられた対象,ポジティブ表情と対呈示された対象,高魅力人物と対呈示された対象が好まれた。また,三要因間の交互作用は見られず,それぞれの要因が独立に好みに影響するという結果となった。しかし,顔画像と対象に接触する際の課題を変更した実験や,動画を用いて視線方向・表情の変化を行う実験を行ったところ,これらの視線・表情・魅力度の影響を安定的に確認することは出来なかった。これらの実験より,周囲に存在する他者が対象の好みに影響を及ぼしていることは明らかになった。しかし,各要因が相互にどのような関連をもって影響をしているのかについて全てを明らかにすることは出来なかった。今後,他者が選好判断に及ぼす影響を検討していく上では,視線・表情・魅力度といった基本的な要因の影響をより明らかにすることが求められる。