日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 橋谷 光; 西川 信之; 中森 裕之; 三井 烈
蓄尿期における、膀胱収縮に起因する求心性神経活動を記録する実験系を開始した。麻酔下ラットで、片側の骨盤神経を近位端で切断して求心性神経活動を記録し、遠心性神経の関与を調べるため、対側骨盤神経を維持ないし切断した。対側切断例においては、膀胱平滑筋の自発活動に由来する一過性膀胱内圧上昇(TPRs)に対応して求心性神経活動の上昇を認め、いずれもL型カルシウムチャネル阻害薬(ニフェジピン)静注により抑制された。対側維持例では、特に蓄尿相後半で大きなTPRsと対応する求心性神経活動を認め、アトロピン静注により大きなTPRsのみ抑制されて、対側切断例と同様の内圧および神経活動が残存した。膀胱平滑筋の進展により放出される内因性弛緩物質である副甲状腺ホルモン関連蛋白 (PTHrP)の静注により、対側神経の維持/切断に関わらず、TPRsと対応する求心性活動が抑制された。蛍光免疫染色では、PTHrP受容体は膀胱平滑筋と血管平滑筋には発現しているが、神経線維には発現していなかった。PTHrPは、蓄尿期に低レベルの遠心性副交感神経作用がある状態でも膀胱平滑筋の収縮を抑制し、収縮に起因する求心性神経活動を抑制することが示された。
尿道の平滑筋・粘膜層および横紋筋層の血流を担う細動脈における神経性収縮制御を、ラットおよびマウスを用いて検討した。尿道細動脈の神経性収縮は交感神経により生じたが、ノルアドレナリン(アルファ受容体)ではなくATP(P2X受容体)が主要な役割を担っていた。神経性収縮は神経性一酸化窒素(NO)合成阻害により増強した。アルファ受容体刺激により収縮を生じた状態では神経性の弛緩を認め、神経性NO合成阻では抑制されなかったが非選択的NO産生阻害により強く抑制され、CGRP受容体阻害では弛緩の後半相が抑制された。神経性弛緩には血管内皮細胞におけるNO産生が重要な役割を担っていることが示唆された。