日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2023年04月 -2026年03月
代表者 : 石田 奈津子; 中村 博幸; 荒川 大; 嶋田 努
我々はこれまでの研究において,院内製剤スコポラミン軟膏の唾液腺近傍皮膚への塗布が効果的に唾液分泌を抑制すること,さらに全身性副作用を軽減しうる可能性を有することを示した。この知見からその他の薬剤でも唾液腺近傍皮膚に塗布することにより同様の効果を得られるのではないかと考えた。そこで,口腔乾燥症治療薬であり,経口薬で発汗や下痢等の全身性副作用が問題となることが多いコリン作動薬のピロカルピンを候補薬とし,ラットを用いてピロカルピンの唾液腺上部皮膚への経皮投与の有効性と安全性の検討を行った。有効性評価では,ピロカルピン軟膏を唾液腺上部皮膚に塗布したラットおよびピロカルピンを経口投与したラットにおいて投与前後に唾液量を測定した。経口投与ラットでは投与後0.5時間で,軟膏塗布ラットでは0.5, 3, 12時間の時点で投与前と比較して唾液量が有意に増加した。したがって,ピロカルピン軟膏は唾液腺上部皮膚に塗布することで唾液分泌を促進させ,その効果は経口投与より持続することが示唆された。これは唾液腺近傍皮膚にピロカルピン軟膏を塗布することにより,唾液腺組織へのピロカルピン移行性が高まり,効率的に唾液分泌を促進したためであると考えられた。一方,安全性検討のため,排便と発汗の評価を実施したところ,経口投与ラットでは投与後1時間において排便量と汗滴数の有意な増加がみられたが,軟膏塗布ラットでは変化はみられなかった。このことからピロカルピンの唾液腺上部皮膚への経皮投与は,経口投与と比較して全身性副作用が少ない可能性が考えられた。
これらのことから,新たな作用発現経路を持つ製剤である「経皮的唾液腺局所作用型外用剤」「経皮的唾液腺局所作用型外用剤」は全身性副作用が少なく,安全性の高い口腔乾燥症や流涎症に対する治療薬となることが示唆された。