研究者データベース

雨夜 徹 (アマヤ トオル)

  • 理学研究科 教授
Last Updated :2024/09/26

研究者情報

通称等の別名

    雨夜 徹

学位

  • 博士(工学)(2003年03月 東京工業大学)

ホームページURL

科研費研究者番号

  • 20397615

ORCID ID

J-Global ID

研究キーワード

  • 機能物質化学   有機金属化学   超分子化学   有機合成化学   functional materials   redox   Organometal   

研究分野

  • ナノテク・材料 / 機能物性化学
  • ナノテク・材料 / 有機合成化学
  • ライフサイエンス / 生物有機化学
  • ナノテク・材料 / 構造有機化学、物理有機化学

経歴

  • 2024年09月 - 現在  名古屋市立大学大学院理学研究科 自然情報系教授
  • 2021年04月 - 2024年09月  名古屋市立大学大学院理学研究科教授
  • 2019年06月 - 2021年03月  大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻准教授
  • 2018年04月 - 2019年05月  大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻講師
  • 2007年04月 - 2018年03月  大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻助教
  • 2004年09月 - 2007年03月  大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻助手
  • 2003年04月 - 2004年08月  米国スクリプス研究所博士研究員

学歴

  • 2000年04月 - 2003年03月   東京工業大学   大学院理工学研究科   応用化学専攻
  • 1998年04月 - 2000年03月   東京工業大学   大学院理工学研究科   化学工学専攻
  • 1994年04月 - 1998年03月   東京工業大学   工学部化学工学科   Department of Chemical Engineering

所属学協会

  • The Kinki Chemical Society Japan   The society of polymer science, Japan   JAPAN   The society of Synthetic Organic Chemistry   The chemical society of Japan   近畿化学協会   高分子学会   有機合成化学協会   日本化学会   公益社団法人電気化学会   

研究活動情報

論文

書籍

  • Sustainable and Functional Redox Chemistry
    Toru Amaya (担当:分担執筆範囲:Chapter 5 Vanadium(v)-induced Oxidative Cross-coupling of Enolate Species)Royal Society of Chemistry 2022年04月 ISBN: 9781839164835
  • 有機電解合成の新潮流
    雨夜徹 (担当:分担執筆範囲:【第Ⅱ編 合成手法・応用】第4章)シーエムシー出版 2021年11月
  • Fragments of Fullerenes and Carbon Nanotubes: Designed Synthesis, Unusual Reactions, and Coordination Chemistry, First Edition.Chapter 7, SUMANENES: SYNTHESIS AND COMPLEXATION
    Toshikazu Hirao; Toru Amaya (担当:共著範囲:)John Wiley & Sons, Inc. 2011年11月
  • ナノカーボンハンドブック
    平尾俊一; 雨夜徹 (担当:共著範囲:)エヌ・ティー・エス 2007年07月
  • ナノマテリアル工学体系 第2巻 ナノ金属
    平尾俊一; 雨夜 徹 (担当:共著範囲:)フジテクノシステム 2005年08月

作品等

  • 電子回路描画のための光照射によるπ共役系絶縁膜の導電化
    2011年
  • 電子回路描画のための光照射によるπ共役系絶縁膜の導電化
    2010年
  • 高湾曲ボウル型π共役系炭素分子の合成
    2010年
  • ワンポット連続的クロスアルドール反応を活用する6置換ベンゼンの迅速自在合成
    2009年
  • πボウルスマネンの自己集合に基づく革新的n型有機半導体の創製
    2009年
  • πボウルにより活性化された錯体触媒の創出
    2008年
  • Photo-induced Electron Transfer System Based on Porphyrin Bearing pi-Conjugated Chain
    2007年
  • カーボンナノチューブ骨格の精密有機合成
    2007年
  • Photo-induced Electron Transfer System Based on Porphyrin Bearing pi-Conjugated Chain
    2007年
  • 協奏機能型π共役系マルチメタリック触媒システムの創製と応用
    2007年
  • バックミンスターフラーレンC60およびヘテロフラーレンの収束的全合成
    2007年
  • 非平面π共役分子スマネンを基盤とする新規炭素材料の開発
    2007年
  • 非平面π共役分子スマネンを基盤とする新規炭素材料の開発
    2006年
  • π共役系高分子と金属ナノ粒子から構成される複合システムの開発と応用
    2005年
  • ハイブリッド金属ナノクラスターの創製
    2004年

MISC

産業財産権

受賞

  • 2023年03月 公益財団法人永井科学技術財団 永井科学技術財団賞(学術賞)
     ホスホン酸を有する自己ドープ型導電性高分子材料の開発
  • 2022年04月 公益財団法人熊谷科学技術振興財団 令和3年度熊谷研究助成表彰
  • 2021年04月 公益財団法人長瀬科学技術振興財団 長瀬研究振興賞
  • 2016年02月 公益社団法人有機合成化学協会 有機合成化学奨励賞
     スマネンを基盤とするボウル型π共役系分子の合成と機能
  • 2015年07月 大阪大学 大阪大学総長奨励賞(研究部門)
  • 2015年06月 公益社団法人電気化学会 有機電子移動化学研究会 有機電子移動化学奨励賞
     ポリアニリンに基づくレドックス機能システム
  • 2013年08月 大阪大学 大阪大学総長奨励賞(研究部門)
  • 2011年 若い世代の特別講演会
  • 2009年 2008年度(第21回)有機合成化学協会研究企画賞
     JPN

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2020年04月 -2024年03月 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    本研究では、ユニーク且つ未踏のジオメトリーを有するπ共役系化合物群をスピロビフルオレンの連結を基軸とし創成するとともに、得られた3次元構造体のキロプティカル特性や空間的な軌道相互作用に基づく3次元的な共役を明らかにすることを目指し検討を重ねている。今年度は、パラオリゴフェニル二重らせんや編み目構造モチーフを有するキラルパラオリゴフェニル化合物を標的とした検討を行った。特に編み目構造モチーフを有する化合物の合成を目指した研究を主として展開した。これまで合成を報告したキラルスピロビフルオレン環化3量体の末端にカルボキシフェニル基を導入し、カルボン酸の水素結合2量化を駆動力とする超分子的な網目状ネットワーク構造構築に取り組んだ。この化合物では、剛直なスピロビフルオレンマクロサイクル骨格から6つのカルボン酸が方向性を持って配置されている。水素結合性のネットワーク構造を明らかにするため、単結晶作製を試みた。その結果、単結晶X線結晶構造解析よりユニークな構造の水素結合ネットワークが形成されていることが明らかになった。具体的には、2組のカルボン酸の水素結合により水素結合性の大環状構造が形成され、さらにその際、環の相互貫入が起こり3重カテナン状構造を有する水素結合性有機フレームワーク(HOF)が形成されることを明らかにした。この3重カテナン状構造は周期的に繰り返されて2次元シートを形成し、さらにそのシート同士はカルボン酸の水素結合により積み重なって、3次元構造体を形成していた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2017年04月 -2020年03月 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    エノラート種の選択的な酸化的クロスカップリング反応は、天然物や医薬品、機能材料およびそれらの前駆体に見られる非対称1,4-ジカルボニル化合物を合成するための最も直接的な方法であり、重要な反応である。また、同種の活性種同士を判別して2種の異なるエノラート種同士を反応させる必要があるため、その制御法の開発は基礎化学的な観点からも興味深い。本研究では、このエノラート種の酸化的クロスカップリング反応に着目し、クロス選択性や立体選択性の発現、さらにこの反応の触媒化を目指す。 我々は既に、エノラート種の酸化的クロスカップリング反応において、ボロンエノラートとシリルエノラートの組み合わせで、酸化剤として高原子価バナジウム(V)を用いることで高いクロス選択性で反応が進行することを見出している。これまで高原子価バナジウム(V)を触媒とし分子状酸素を末端酸化剤とする酸化的クロスカップリング反応について、いくつか知見を得ているが、触媒回転数に課題があった。今年度は、この酸化的カップリングの末端酸化剤として電気化学的手法すなわちアノード酸化の利用を検討した。バナジウム(V)触媒の存在下、アノード酸化条件を種々試したが、あまり効果は得られなかった。一方、条件を検討している過程で、バナジウム(V)触媒を加えなくてもアノード酸化によりエステルに由来するシリルエノラートのホモカップリングが進行することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2014年04月 -2018年03月 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    エノラート種の酸化的クロスカップリングは、2種の異なるエノラート種から直接的に非対称1,4-ジカルボニル化合物を合成できる有用な反応であるが、ホモカップリング体の生成が課題であった。本研究では、エノラート種の対カチオン金属種により反応性を制御することで、選択的に2つの異なるエノラート種を酸化的クロスカップリングさせる手法の開発を目的とした。結果、ボロンエノラートおよびシリルエノラートを組み合わせ、酸化剤として高原子価バナジウム(V)を用いることで、選択的に酸化的クロスカップリングが進行することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2014年04月 -2016年03月 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    本研究では、π共役系分子のレドックス機能を活用する有機触媒システムの構築を目的としている。昨年度に引き続き、酸化反応としては、有機マグネシウム化合物の分子状酸素を末端酸化剤とするキノンジイミン化合物を触媒とする酸化的カップリング反応の開発を、還元反応としては、アレーンジアゾニウム化合物の還元的脱窒素化を減るアレーン化合物とのクロスカップリング反応の開発に取り組む。 有機マグネシウム化合物の分子状酸素を末端酸化剤とするキノンジイミン化合物を触媒とする酸化的カップリング反応の開発においては、反応の基質依存性を調査した。その結果、多くのアリールマグネシウム化合物およびアルケニルマグネシウム化合物に本反応が適用可能であることを見出した。 アレーンジアゾニウム化合物の、触媒量のポリアニリン存在下、還元的脱窒素化を減るアレーン化合物とのクロスカップリング反応の開発においては、反応機構を調査した。本反応をラジカル捕捉剤の存在下、行うと収率の顕著な低下が見られた。また、シクロヘキサジエン存在下行うと、アリールジアゾニウム化合物が水素化された。これらの結果は、本反応において、アリールラジカル種が関わっていることを示唆している。速度論的同位体効果に関する実験からは、水素引き抜き過程が律速段階ではないことも明らかになった。また、副生成物に関する考察から、本反応がラジカル連鎖型に進行していることも示唆された。さらに、アミンのジアゾ化とその脱窒素を伴うクロスカップリングを精製を経ずに連続的に行う方法も開発した。
  • 科学技術振興機構:産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 マッチングプランナープログラム
    研究期間 : 2015年 -2016年 
    代表者 : 雨夜 徹
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
    研究期間 : 2012年04月 -2015年03月 
    代表者 : 平尾 俊一; 雨夜 徹
     
    ピナコールカップリング反応は、ビシナルに官能基を導入しながら炭素-炭素結合を形成させることができる有用な反応である。一方、そのクロスカップリング反応は求電子種どうしのカップリング反応であるため選択性に難があり、未解決で挑戦的な反応の一つとなっている。我々は、反応場設計に基づく高度に制御された触媒的クロスピナコールカップリング反応の開発を目的とし、研究を行った。その結果、ヘキサアリールベンゼンを土台とするバナジウムとチタンの異種2核ヘミサレン型錯体触媒を開発した。これを用いることで、脂肪族および芳香族アルデヒド間の選択的なクロスピナコールカップリング反応が進行することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(A)
    研究期間 : 2010年04月 -2015年03月 
    代表者 : 平尾 俊一; 雨夜 徹; 森内 敏之; 関 修平; 奥村 光隆
     
    フラーレンの部分構造で示されるボウル型分子(πボウル)は、非平面π共役系におけるフラーレンやカーボンナノチューブに次ぐ第3の鍵物質群として考えられている。本研究ではπボウル「スマネン」を基軸とし、その有機合成・材料的ポテンシャルをさらに顕在化させ日本発のカーボンナノサイエンス・テクノロジーとして世界に発信することを目指し、研究に取り組んだ。具体的には、①スマネンの分子変換法の開発、②スマネンを遷移金属に対する配位子として捉えた有機金属錯体の合成、③スマネンの歪みエネルギーを活用する炭素材料合成法の開発、④金属基板表面における動的挙動および分子認識、に焦点を当てて行った。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2012年04月 -2014年03月 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    本研究では、π共役系高分子ポリアニリンのレドックス機能を活用した有機レドックス触媒の開発を目指している。今年度は、昨年度に引き続きポリアニリンのレドックスを担う単位構造であるキノンジイミンによる有機マグネシウムの酸化的カップリングの検討を行うとともに、その分子状酸素を末端酸化剤とした触媒化に取り組んだ。また、水溶性ポリアニリン/金ナノ粒子触媒に基づく酸素酸化反応の開発にも、引き続き取り組んだ。さらに、ポリアニリンの還元体を1電子還元剤として活用するクロスカップリング反応の開発も行った。 ベンゾキノン-1,4-ジイミン化合物を用いて、オルト位に嵩高い置換基を有するアリールマグネシウム化合物の酸化的ホモカップリング反応を検討した。その結果、オルト位の両側にイソプロピル基を有する基質でも良好な収率でカップリング体が得られた。また、ビニルマグネシウム化合物の酸化的ホモカップリング反応を検討したところ、ヨウ化ビニル化合物に対して、塩化イソプロピルマグネシウムの塩化リチウム錯体を用いてヨウ素ーマグネシウム交換してビニルマグネシウム化合物を調製すると幾何配置を保持しながらホモカップリングできることを明らかにした。また、触媒量(10mol%)のキノンジイミンの存在下、アリールマグネシウム化合物の酸化的カップリングを酸素雰囲気下行ったところ、中程度の収率で目的物が得られた。 水溶性ポリアニリン/金ナノ粒子触媒を用い、水中にて鎖状2級アミンの脱水素イミン合成を行った。加水分解を受けやすいイミン化合物を合成する場合、水を排除しながら合成を行うが、今回、水を溶媒として用いているにも関わらず、脱水素イミン化が進行した。 アレーンジアゾニウム化合物の脱窒素を経るヘテロアレーン化合物とのクロスカップリング反応において、触媒量のポリアニリン還元体を作用させることで円滑に反応が進行することを明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(A)
    研究期間 : 2010年04月 -2014年03月 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    ベルト状縮環π共役系化合物(πベルト)の合成に取り組んだ。湾曲した縮環ベンゼン構造を持つボウル型分子スマネンをビルディングブロックとするπベルトの合成経路を考えた。スマネン同士を連結し、縮環構造を構築するための手法を検討した。クロスカップリング、酸化的カップリング、還元的カップリング、の3通りの経路でスマネンを連結した。また、分子内脱水素酸化による湾曲した縮環構造の構築法を確立した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
    研究期間 : 2011年 -2013年 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    スマネンを用いるη9配位錯体合成およびそれを用いる窒素固定を目指した。4族のη5メタロセン錯体を還元すれば、スマネンが湾曲したインデン構造を持つためη9配位錯体が得られると考えた。スマネニルアニオンを用いてη5配位の単核および3核スマネニルメタロセン錯体を合成した。得られた単核ジルコノセン錯体の還元と窒素固定を検討した。生成物は同定できなかったが、η9配位錯体形成と窒素固定のための知見が得られた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2008年 -2009年 
    代表者 : 平尾 俊一; 雨夜 徹
     
    遷移金属とπ共役系高分子が協奏的に機能すれば、新しい触媒システムの創製が期待できる。このような概念に基づき、レドックス活性なπ共役系高分子であるポリアニリンと金属ナノ粒子のハイブリッドの合成とその機能について研究に取り組んだ。 レドックス活性高分子であるポリ(2-メトキシアニリン-5-スルホン酸)(PMAS)と金ナノ粒子をハイブリッドした触媒を合成した。得られたナノ粒子触媒は、水溶液中で種々のアルコールの酸素酸化反応に有効であった。ここでアルゴン雰囲気下反応を行うと、基質の酸化にともないPMASが還元されることが、紫外可視吸収スペクトルを用いた検討より明らかになった。また、PMASの還元体は酸素雰囲気下で容易に再酸化されることから、本反応系でPMASが金ナノ粒子と分子状酸素の皮応を媒介するメディエーターとして機能していることが明らかになった。ベンズヒドロールの酸化では、少なくとも3回の触媒の再利用が可能であった。反応性の低い1級アルコールの酸化では、塩基の添加が効果的であった。 PMASの高分子主鎖の動的構造制御に取り組んだ。水溶液中における種々の金属塩とPMASの相互作用を紫外可視吸収スペクトルにて検討した。pH8.8のホウ酸緩衝水溶液中、酢酸銅(II)をPMASに加えた時に、伸張コイル構造に由来する吸収が減少し、収縮コイル構造に由来する吸収の増大するという顕著な変化が観測された。酢酸銅(II)をアニリンユニットに対して0.01当量にまで減らしても同様の構造変化が誘起された。また、酢酸銅(II)の添加によって収縮コイル構造をとっているPMASに対して、キレート剤EDTAと還元剤ヒドラジンを添加することで、伸張コイル構造への変化が確認された。さらに、酢酸銅(II)、EDTAおよびヒドラジンの添加を繰り返すことで、複数回の構造スイッチングが示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2008年 -2009年 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    有機合成化学において未踏のカーボンナノチューブ骨格の合成ルートの開発を目指し、ボウル型π共役系分子スマネンを用いる合成戦略を立案・検討した。スマネンの芳香族部位にベンズアルデヒドを導入し、その後ベンジルアニオンを発生させて分子内1,2付加・脱水芳香族化することにより縮環を伸長できることを明らかにした。これにより、カーボンナノチューブ骨格の部分構造に相当するπ共役系分子が合成された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2007年 -2008年 
    代表者 : 平尾 俊一; 雨夜 徹
     
    酸化的変換反応は、有機合成において基盤となる重要な反応である。高酸化状態の前周期遷移金属は、その金属中心の電子状態を制御することにより一電子あるいは多電子酸化を効率的に誘起することが可能と考えられる。本研究では、前周期遷移金属のレドックス機能を活用し、酸化的電子移動反応に基づくアルキニルトリアリールボラートの酸化的ヘテロリガンドカップリング反応の開発を目的とした。 アルキニル基に種々の置換基を有するアルキニルトリアリールボラートについて検討した。[(p-メトキシフェニルエチニル)トリフェニル]ボラートを用いVO(OEt)Cl_2存在下、酸化的リガンドカップリング反応を行ったところ、ヘテロカップリング体であるp-メトキシビフェニルが選択的に得られた。フェネチルエチニル基やヘキシルエチニル基を有するボラートを用いた際、ヘテロカップリング体が主生成物としてそれぞれ良好な収率で得られた。この際、ホモカップリング体はいずれの場合も10%程度に留まっている。また、反応の作用機構を調べるために^<51>V NMR実験を行ったところ、本反応におけるバナジウム化合物の酸化剤としての寄与が示唆された。ボラートの調製とカップリング反応を一度に行うワンポット合成法も検討した。まず、p-エチニルアニソールをn-ブチルリチウムで処理することによりアルキニルリチウム種を発生させ、トリフェニルボランを加えることでボラートを合成した。続いて、VO(OEt)Cl_2を作用させたところ、良好な収率・選択性でヘテロカップリング体が得られた。この反応は、求電子種と求核種のカップリング反応と相補的な反応として位置づけられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2007年 -2007年 
    代表者 : 平尾 俊一; 雨夜 徹
     
    触媒化学において遷移金属の担う役割は極めて重要である。一方、π共役系分子は、その高い電子(ホール)移動性から材料化学において基盤となる分子群である。この遷移金属とπ共役系分子が協奏的に融合すれば、新しい触媒システムの創製が期待できる。本研究では、金属ナノ粒子-π共役系高分子からなる集積化レドックスシステムおよび金属ナノ粒子-光活性π共役系分子からなる集積化環境調和型レドックスシステムの創製と応用を目指し研究に取り組んだ。 ポリアニリンーパラジウムナノ粒子の合成と触媒的応用を検討した。ポリアニリンのキノンジイミン部位がパラジウム(II)に配位した架橋錯体を還元することで対応するナノ粒子を合成した。この手法で得られたナノ粒子は個々の粒子が独立しており、粒子径が数ナノメートル程度に制御されることが明らかになった。このナノ粒子を用いて、酸素雰囲気下、2,6-ジ-t-ブチルフェノールの触媒的な酸化的カップリング反応を行ったところ、対応するカップリング体が高収率で生成した。また、ポリアニリン-酸化鉄ナノ粒子の簡便な合成法の開発およびその触媒的応用についても検討した。ポリアニリンとアセチルアセトン鉄(III)をDMF中で熱反応させることで粒径3〜9ナノメートルで分散したナノ粒子を合成できた。このナノ粒子も、上述の酸化的カップリング反応の触媒として有効であることを見出した。これらの知見は複合型触媒の新たな方向性を示唆するものと位置づけられると考えられる。 アニリンオリゴマー鎖を有するポルフィリンに、配位性のピリジル基が導入された光活性分子を新たに合成した。この分子に可視光を照射すると分子内光誘起電子移動が起こることが明らかになった。さらに、この分子を金ナノ粒子上への集積化し、新たな光レドックス活性システムを創製した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 萌芽研究
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 平尾 俊一; 雨夜 徹
     
    近年、カーボンナノチューブの材料的有用性が明らかになりつつあり、多大な注目を集めている。しかしながら、分子レベルにおける性質は未解明な点が多く、詳細な研究のためには「構造が明らかなカーボンナノチューブ」の供給が必須である。ところが、カーボンナノチューブの有機合成手法は未だ達成されていない。本研究では、このような湾曲したπ共役骨格構築法の開発を目的とした。フラーレンの部分構造分子スマネンが湾曲したπ共役構造を有することに着眼し、これをビルディングブロックとすることで、湾曲したπ共役骨格構築が可能になると考え研究に取り組んだ。 標的としてまずシクロフェナセンを選択し、その部分構造である7個のベンゼン環が縮環した湾曲分子の合成に取り組んだ。スマネンの芳香族部位のジブロモ化を行った。その位置選択性について検討し、シクロフェナセン合成に望まれる異性体を優先して合成することができた。続いてパラジウム(0)触媒存在下、2-ホルミルフェニルボロン酸とクロスカップリングし、ベンズアルデヒド部位を導入した。最後に、得られたアルデヒドをカリウムビス(トリメチルシリル)アミドと処理することで、スマネンのベンジル位と分子内縮合反応させ、シクロフェナセンの部分骨格構造を有する湾曲分子の合成に成功した。今回確立した合成法は、斬新で効率的な分子骨格構築法を提案しており、カーボンナノチューブ合成を指向する研究において重要なステップとして位置づけられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 雨夜 徹
     
    フラーレンC_<60>および窒素原子を有するヘテロフラーレン合成を指向し研究に取り組んだ。合成の最終段階において、対応する炭素数(および窒素数)の前駆体を真空熱分解することを計画した。C_<60>の部分構造であるC_<3v>,対称なボウル型分子スマネンに着目した。対応する前駆体を合成するためには、スマネンのベンジル位に種々の置換基を導入する方法論の開発が必要である。そこで、スマネンの芳香族部位への置換基導入やベンジル位の酸化反応を種々検討した。また、ヘテロフラーレン合成を指向し、窒素原子が導入された誘導体合成にも取り組んだ。 スマネンの芳香族部位にブロモ基、ニトロ基、アシル基をそれぞれ導入することができた。ブロモ化スマネンをパラジウム(O)触媒存在下、2-ホルミルフェニルボロン酸とクロスカップリングすることでベンズアルデヒド部位を導入した。得られたアルデヒドを強塩基で処理することで、スマネンのベンジルアニオンとアルデヒドが分子内反応し、高歪み分子が合成できることを見出した。この方法のコンセプトはさらに大きな湾曲を持つフラーレン類合成にも応用できると考えられる。ペンシル位の酸化についても種々検討した結果、スマネンを酸化クロム(VI)で処理した時に中程度ながら目的とするスマネントリオンを得られた。このトリケトンはグリニアール試薬やヒドリドと容易に反応した。また、アニリン類と縮合することで、対応するスマネントリイミンが合成できた。このように含窒素バッキーボウルが容易に得られるため、本手法は当該分野において汎用的な合成法として位置づけられると考えられる。

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