日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2021年04月 -2025年03月
代表者 : 祖父江 和哉; 志田 恭子; 加藤 大輔; 小山内 実; 大澤 匡弘; 中西 俊之; 仙頭 佳起; 打田 佑人
高齢マウス(17-18カ月齢)を使用する予定だったが、コロナ禍で入手困難であること、予備実験で14-15週齢でも術後神経認知機能障害(NCD)の確認ができたことから、 14-15週齢のマウスを使用した。探索的開腹術を実施(手術時間15分)し、麻酔時間は計2時間(FiO2=0.3、イソフルラン=1.8%)とした。認知機能の評価は新規物体認識試験(NOR)で麻酔前後に行い、識別率を比較した。麻酔後の識別率の有意な低下を認め、術後NCDモデルを確立した。血液脳関門(BBB)の破綻のマーカーとして、エヴァンスブルー(EB)を用いるため、円形開頭術後、EB投与後の認知機能に与える影響を調べたが、いずれも問題なかった。
円形開頭術後の術後NCDモデルを使用し、BBBの破綻の部位と時間の検討を行った。2光子顕微鏡でEBおよびフルオレセイン投与後の血管を、術前、術後1、3、5、7、10日目に確認したが、破綻は確認できなかった。また、時系列の確認中にEBでリング状に染まる細胞が出現したことや、EB連続投与による有意な体重減少を認めたことから、EBが長期間の観察には適さない可能性が考えられた。さらに、血中のEBはアルブミンと結合し、68kDaの大型な分子となるため、小さな破綻の確認には向かないと考え、10kDaのデキストランでの検討に変更した。現在、海馬を中心としたBBBの破綻の解析方法を検討中である。10kDaデキストランとトマトレクチンを同時に眼窩注することで血液と血管壁の染色をし、血管外への漏出がないか解析中である。また同時に全脳の透明化の検討も行っている。
また、今年度予定していたqAIM-MRI法や脳波の測定については、BBBの破綻部位と時間が判明次第、速やかに実施できるように準備を行った。