日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2006年 -2007年
代表者 : 三浦 均
本年度は,原始惑星系円盤におけるダストの力学的・熱力学的進化として,コンドリュール三次元形状の起源,及び,ダストの加熱・蒸発に伴う過飽和ダスト蒸気からの凝縮現象について研究を行なった.
原始惑星系円盤における衝撃波加熱現象では,mmサイズのダストが高速ガス流によって加熱・溶融する.同時に,溶融ダストは強いガス動圧により変形し,球形状からずれる.その結果,真球ではないコンドリュールが形成される.研究代表者はコンドリュール変形の三次元数値流体シミュレーション,及び,流体方程式の線形解析を実施し,溶融ダストの変形を定量的に求めた.隕石の中には実際に変形したコンドリュールが含まれており,衝撃波加熱モデルによる変形は,その形状(ラグビーボール型),変形の程度(軸比)において,天然資料と良い一致を示す.これにより,このようなコンドリュール形状のとして衝撃波が有力であるとの結論を得た.
また,衝撃波加熱では,μmサイズの微小なダストは完全に蒸発し,ダスト蒸気を生成する.衝撃波面から離れるに従い、ダスト蒸気は冷却し,過飽和となる.研究代表者は衝撃波加熱によるダスト蒸気の熱的進化過程を数値シミュレーションによって定量的に解析し,衝撃波後面においてダスト蒸気が過飽和状態になることを示した.過飽和蒸気から固体物質の凝縮が生じ,これが隕石に含まれるマトリクス粒子の起源になった可能性がある.