日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 湯浅 博昭; 保嶋 智也; 山城 貴弘
細胞膜で働く新規ポリアミントランスポーターとして見出されたpolyamine transporter 1 (PAMT1)の分子機能解析において、一過性発現系COS-7細胞でのヒトPAMT1によるspermidine輸送に対する生体内因性ポリアミン類(spermine、putrescine、agmatine、cadaverine)の特異的阻害効果がみられ、それらがPAMT1の基質となっている可能性が示唆された。一方、カチオン性生理活性物質群(histamine、thiamine等)、カチオン性薬物群(cimetidine、diphenhydramine等)は阻害効果を示さず、PAMT1に対する親和性はないとみられた。以上の結果は、PAMT1がポリアミン類に対する特異性の高いトランスポーターであり、その細胞内取込の制御において生理的に重要な役割を有している可能性を示唆するものである。
また、LNCaP細胞(前立腺モデル細胞)において、ポリアミン取込誘導効果が知られているアンドロゲン類(testosterone、dihydrotestosterone)の影響を検討した結果、何れについても、PAMT1のmRNA発現及びspermidine取込を上昇させる傾向が認められた。引き続いての検証を要するが、PAMT1のポリアミントランスポーターとしての生理的役割を示唆する知見である。
他のポリアミントランスポーター等の探索にも平行して取組んだ。ポリアミントランスポーターを見出すことはできなかったが、腎尿細管上皮細胞で働くアニオントランスポーターとして知られるorganic anion transporter 10(OAT10)が核酸代謝等に関わる生理活性物質であるorotateに対する輸送活性を持つことが新たに見出され、その再吸収に関与している可能性が示唆された。