研究者データベース

服部 光治 (ハットリ ミツハル)

  • 薬学研究科病態生化学分野 教授
Last Updated :2025/04/29

研究者情報

学位

  • 博士(薬学)(東京大学)

ホームページURL

科研費研究者番号

  • 60272481

J-Global ID

プロフィール

  • 1991年3月 東京大学薬学部卒業
    1995年3月 東京大学大学院薬学系研究科博士課程生命薬学専攻中退
    1993年4月〜1995年3月 日本学術振興会特別研究員(DC1)
    1995年4月〜1997年3月 東京大学薬学部・助手
    1997年4月〜1999年8月 ハーバード大学医学校・博士研究員及び日本学術振興会・海外特別研究員
    1999年9月〜2004年3月 東京大学医科学研究所・助手
    2002年11月〜2006年3月 科学技術振興機構さきがけ研究員兼務
    2004年4月〜2009年3月 名古屋市立大学大学院薬学研究科・独立助教授
    2009年4月〜現在 現職

研究キーワード

  • P4-ATPase   リン脂質   プロテオリシス   トラフィッキング   蛋白質分解   リーリン   変異マウス   受容体   遺伝子   axon guidance   神経   神経発生   Eph   PAF   細胞移動   脳   

研究分野

  • ライフサイエンス / 神経形態学
  • ライフサイエンス / 神経科学一般
  • ライフサイエンス / 機能生物化学
  • ライフサイエンス / 薬理学
  • ライフサイエンス / 薬系衛生、生物化学

経歴

  • 2009年 - 現在  名古屋市立大学大学院薬学研究科Graduate School of Pharmaceutical Sciences教授
  • 2007年 - 2009年  名古屋市立大学大学院薬学研究科Graduate School of Pharmaceutical Sciences独立准教授
  • 2004年 - 2007年  名古屋市立大学大学院薬学研究科Graduate School of Pharmaceutical Sciences独立助教授
  • 2002年 - 2006年  科学技術振興機構さきがけ研究員
  • 1999年 - 2004年  東京大学 医科学研究所The Institute of Medical Science助手
  • 1997年 - 1999年  ハーバード大学医学部細胞生物学講座博士研究員
  • 1995年 - 1997年  東京大学 薬学部Faculty of Pharmaceutical Sciences助手

所属学協会

  • 日本神経化学会   日本脂質生化学会   北米神経科学会   日本分子生物学会   日本薬学会   日本生化学会   日本神経科学学会   

研究活動情報

論文

MISC

産業財産権

受賞

  • 1997年 Amersham and Science Magazine Prize for Young Scientists
     
    受賞者: 服部光治

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2024年04月 -2026年03月 
    代表者 : 服部 光治
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2021年07月 -2023年03月 
    代表者 : 服部 光治
     
    神経細胞膜の脂質組成が他の細胞膜のそれと大きく異なることは良く知られているが、その差異が生じるメカニズム、および、生物学的意義の全貌はほぼ未解明である。疫学研究から、脳における多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids、PUFA)の減少が、うつ・統合失調症・記憶障害などの精神神経疾患の悪化要因であることが強く示唆されている。また、in vitroの実験からは、PUFAが神経細胞(特にシナプス)で重要な機能をもつことが示唆されている。しかし、個々のPUFA分子(またはそれを前駆体とするメディエイター)が個別に重要な意義をもつのか、または、生体膜における炭素数と二重結合数のバランス(≒膜流動性)が重要なのかは、今なお全く不明である。本研究では、神経細胞の機能を「膜流動性」という観点から見直すことでシナプスにおけるPUFAの機能を解明するとともに、新規の疾患治療法開発へとつなげることを目指す。 マウス脳初代培養神経細胞を様々な条件で培養し、膜の流動性を反映する蛍光プローブNR12A(フランスの研究者および国内他大学より供与)を用いて流動性イメージングを行った結果。神経細胞の膜流動性は局所によって異なることを見いだした。特に、興奮性シナプス後部においては興味深い変化が見られたので、これがどのような脂質によってもたらせられているかについて、脂肪酸あるいは脂質の代謝酵素の阻害剤等の効果を検討した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2020年04月 -2023年03月 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは脳の発達と機能を制御する分泌タンパク質であり、その機能低下が様々な精神神経疾患の増悪化の原因であると考えられている。我々は以前、リーリンがリピート3の中で特異的な分解を受けること、および、この分解がリーリンを不活化することを証明した。この不活化反応を担うADAMTS-3の欠損マウス、および、リーリンの分解部位を変異を導入したノックインマウス(ともにリーリン分解が著減し、リーリンシグナルの総量は増加する)を詳細に解析した結果、リーリンは大脳の樹状突起発達を制御することと、OPCの移動と最終位置を制御することが判った。 リーリンが神経細胞に及ぼす影響がどのような分子メカニズムを介しているかを調べた結果、いくつかの脂質分子の代謝に関わる可能性が示唆された。神経細胞膜におけるこの脂質の変化は、多様な膜タンパク質の局在や機能を制御していることが知られており、リーリンの多様な(ときに細胞種に依存した)機能を説明できる可能性がある。 リーリン受容体VLDLRの欠損は、平衡障害症候群 (CAMRQ)を引き起こす。ほぼ同じ病態が、リン脂質フリッパーゼの一種ATP8A2の変異でも生じる。この両者が神経回路網形成で同じ経路で機能する可能性を検討するため、ゲノム編集技術を用いてリーリン(ヘテロ欠損)とATP8A2(ホモ欠損)の二重変異マウスを作成した。その結果、ATP8A2単独欠損に比較して、二重変異マウスのほうが悪化することはなかった。現在、さらぶATP8A1の欠損マウス作成し、解析を進めている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
    研究期間 : 2019年06月 -2021年03月 
    代表者 : 服部 光治
     
    海馬初代培養神経細胞においてミード酸が神経突起の分岐増加と伸張を引き起こすことを見いだした。この効果は、リーリン欠損マウス(脳内のミード酸量が多い)の神経細胞で観察された。薬理学的検討の結果、ミード酸が特定の受容体系にリガンドとして働く可能性は低いことが示唆された。膜の流動性を反映して蛍光が変化する化合物をフランスの研究者から入手し、培養神経細胞膜の流動性イメージングを行った。その結果、膜分岐部位や微小突起では流動性が異なることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2017年04月 -2020年03月 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは巨大な分泌タンパク質であり、発生期には神経細胞の層構造の形成に必須である。成体脳では、シナプス形成やシナプス可塑性を制御する。リーリンの機能低下は統合失調症やアルツハイマー病などの精神神経疾患の発症や増悪化に関与するとい考えられている。 我々は、リーリンを特異的に分解・不活化するプロテアーゼ「ADAMTS-3」を世界で初めて同定し、その欠損マウスではリーリン機能が亢進していることを見いだした。さらに、ADAMTS-3の類縁分子「ADAMTS-2」も脳に発現し、リーリン不活化に寄与することを見いだした。これらプロテアーゼの欠損マウスを用いた解析を進めた結果、リーリンの効果増強が様々な効果を脳に及ぼすことを見いだした。特に、成体におけるADAMTS-3の減弱が、アルツハイマー病を改善することを見いだした。これらの効果がリーリン分解阻害による(他の基質に対する影響ではない)ことを検証するため、リーリンの分解部位に変異を導入したノックインマウスを作製した。このマウスではリーリンの分解が顕著に減少し、また、神経突起の伸長亢進やアルツハイマー病改善効果など、ADAMTS-3欠損と同様の表現型をもつことを確認した。 ADAMTS-3欠損マウス、リーリン分解抵抗型ノックインマウス、リーリン欠損マウスの脳に発現する遺伝子を半網羅的に解析した結果、リーリンが一部のグリア細胞に影響する可能性を見いだした。これは、かなり以前に示唆されたことがあるアイデアであったが、現代の知識・技術を用いては解析されておらず、リーリン研究に新たな展開をもたらす可能性のあるものである。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2016年04月 -2018年03月 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは脳の形成と機能調節に重要な分泌タンパク質であり、特定の神経細胞から分泌される。リーリンの受容体は多くの神経細胞に発現し、興味深いことに血清リポタンパク質の受容体と同一(ApoER2とVLDLR)である。我々はリーリンが脂質代謝に関わる可能性を考え、リーリン欠損マウス胎児脳の脂質組成を網羅的に解析した。その結果、リーリン欠損マウス脳では膜リン脂質中の必須高度不飽和脂肪酸(EPUFA、とくにアラキドン酸とDHA)含有量が低下し、これを補償するため合成されるミード酸(C20:3, n-9)量が増加していた。すなわち、リーリンは神経細胞のEPUFA量を上昇させることが強く示唆された。また、リーリンが(ApoEと同様に)脂質を結合してこれを標的細胞に運ぶという仮説をたて、リーリンの脂質結合性を解析した。その結果、脳内在性のリーリンの一部は脂質を結合してHDL様の粒子を形成していることを見いだした。この結果は電子顕微鏡解析でも裏付けられた。すなわち、リーリンは脳内アポリポタンパク質として機能し得ることが示唆された。 EPUFAはシナプスの形成や機能に重要なことが知られてお入り、その減少は精神神経疾患の一因とされている。本結果は、リーリンの機能上昇が精神神経疾患を改善につながる可能性を示唆している。近年、リーリンの機能低下(発現低下および分解増加)が精神神経疾患の発症に関与することも多く報告されており、本研究から得られた結果は、精神神経疾患の発症機構の一端をうまく説明できる。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(挑戦的研究(萌芽))
    研究期間 : 2017年 -2018年 
    代表者 : 服部光治
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2014年04月 -2017年03月 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは脳の形成と機能に必須の巨大分泌蛋白質であり、その機能低下が精神神経疾患の発症や増悪化に寄与する。我々はリーリンのC末端領域(CTR)が効率的なDab1リン酸化に必須であることを見出した、リーリンCTRだけを欠損するノックインマウスを作製した。このマウス脳で生後大脳の樹状突起構造に異常が生じるとともに統合失調症様の症状を示した。さらに我々はリーリンがプロテアーゼADAMTS-3によって不活化されることを見出した。ADAMTS-3欠損マウス脳ではリーリン分解が著減し、下流シグナルは亢進していた。すなわちADAMTS-3の阻害はリーリンの量と機能を上昇させることが証明された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
    研究期間 : 2012年04月 -2014年03月 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは脳機能に必須の分泌タンパク質であり、その機能低下は様々な精神疾患に関与する。リーリンは特異的な分解酵素により切断・不活化されることが知られていたが、これを触媒する酵素タンパク質の実体は不明であった。申請者らは、この酵の実体が「ADAMTS」というメタロプロテアーゼファミリーの一種であることを見出した。また、リーリンの分解部位を正確に決定し、分解抵抗型リーリン変異体」の作成に成功した。これらのツールを用いた解析の結果、リーリンが神経細胞内に取り込まれたあとに分解されることが、下流シグナル遮断に必要であることを見いだした。以上の知見はリーリン機能増強による精神神経疾患治療の基礎となる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2011年04月 -2013年03月 
    代表者 : 服部 光治
     
    大脳皮質には機能・構造が類似した神経細胞からなる層構造があり、リーリンはその形成に必須の巨大分泌タンパク質(分子量430kDa)である。しかし、①発生時期に依存した機能の有無、②細胞外における挙動や寿命制御機構の有無、に関しては、研究手法やツールが限定されていたためほぼ手つかずのまま未解明であった。 リーリンのC末端領域(CTR)を欠損したノックインマウスでは胎生期における脳形成は正常だが、生後において神経細胞の樹状突起が異常になり、層構造も破綻することを発見した。このことは、CTRに依存したリーリンの機能は、生後脳の回路網維持に必要であるという新規概念を示唆している。またこの研究の過程で、リーリンはCTR内で分解を受けることを見出した。そしてこの分解を担うプロテアーゼと分解部位を同定し、非分解型のみを認識するモノクローナル抗体も樹立した。その結果、CTR内分解を受けていないリーリンはリーリン産生細胞のごく近傍にのみ存在することがわかった。さらには、CTR内分解を受けていないリーリンだけに結合する膜タンパク質の同定にも成功した。この膜タンパク質はリーリン受容体と複合体を形成しており、リーリンとリーリン受容体の結合に関与していた。以上を総合すると、CTR内分解を受けていないリーリンはリーリン産生細胞近傍(再表層)にのみ存在し、特定の膜タンパク質とリーリン受容体複合体に結合することにより未知のシグナル経路を調整し、これが神経細胞の移動終了と突起形成を調節する可能性が強く示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2010年 -2012年 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは脳の層構造形成と維持に必須の分泌タンパク質であり、近年その機能低下が精神神経疾患発症に関与することが明らかとなってきた。申請者は、リーリンの C 末端領域が何らかの分子に結合して下流因子活性化に寄与することを見いだし、 これをほぼ同定した。また、リーリン機能低下が精神神経疾患の発症や増悪化に関与するのなら、これを増強または賦活化すればその治療につながる。そこでリーリン分解酵素の同定を目指し精製を行い、有力な候補分子を得た。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2005年 -2009年 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは脳のレイヤー構造形成に必須の分泌蛋白質であるが、その詳細な機能及び情報伝達機構は不明である。我々は、リーリンのC末端領域が、リーリン受容体とリーリンの間の相互作用を安定化させること、これによりレイヤー構造形成制御に関わることを見出した。また、リーリンを特異的に分解する酵素の同定に成功した。最後に、リーリンがいつ・どの細胞に受容されるのかについて解析し大脳・小脳ともに、移動神経細胞の初期からその機能を発揮していることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(A)
    研究期間 : 2005年 -2007年 
    代表者 : 服部 光治
     
    細胞質におけるカルシウム濃度は百種類以上の蛋白質分子の活性制御機構に関与しており、その時間的・空間的制御は細胞機能に必須である。中でも,イノシトール1,4,5三リン酸受容体(IP_3受容体)は小胞体からのカルシウム放出を担う主要なチャネル蛋白質であり,様々な情報伝達系に関与している。哺乳類の神経ネットワーク形成において,このチャネル蛋白質の機能に依存した細胞の運動や形態制御が重要であると示唆する知見は数多いが,その寄与の程度はほとんどの場合不明である。そこで本研究では,神経細胞における主要なサブタイプであるタイプ1 IP_3受容体の活性制御機構を明らかにするとともに,三種類存在するIP_3受容体サブタイプ全てを,特定の神経細胞で欠損するマウスの作製を行った。前者の研究からは,小胞体内腔におけるタイプ1 IP_3受容体を複数同定し,それらがこの受容体の成熟や機能を調節することを見出した。後者の研究ではまず,タイプ1 IP_3受容体の開始コドンを含むエクソン両端に1oxP配列を挿入したマウスの作出に成功した。このマウスと,大脳興奮性神経細胞にのみCreリコンビナーゼを発現するEmx-Creマウスの交配を行い,この神経細胞特異的にタイプ1 IP_3受容体を欠損するマウスを作製した。現在,このマウスの解析,及び,他のサブタイプ欠損マウスとの交配を行っている。さらには,タイプ3 IP^3受容体ノックアウトマウスを用い,神経成長因子(NGF)依存的なDRGの軸索伸長に対してIP_3受容体からのカルシウム放出が負の制御を行うことを明らかにした。これは,従来の薬理学的手法を用いた結果と相反するものであり,その分子機構解明により軸索伸長における新たなモデルの提唱につながり得るものであると考えている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 萌芽研究
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは脳の層構造形成に必須の巨大分泌蛋白質であり、ヒトでもリーリンが欠損することに起因する脳構造形成不全が報告されている。一方リーリンは成体の脳でも発現しており、その発現量や機能と、統合失調症や自閉症の発症との関連が指摘されている。しかし、成体脳でのリーリンの分子レベルでの機能はほとんど判っていない。本研究では、比較的成熟した神経細胞に対し、リーリンがどのように作用するかを解析するために、リーリンを添加後4時間培養したマウス初代培養神経細胞で発現が変動する遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、約10種類の遺伝子の発現が変動することが明らかとなった。この中には、蛋白質の発現や局在を制御する可能性が高い分子の遺伝子が含まれており、このような経路を介してリーリンが神経細胞の高次機能を制御している可能性が示唆された。また、成体脳は胎児脳に比べて顕著に大きいので、リーリンが細胞外でどの程度拡散できるのかを知ることが、その機能の理解に必須である。そこでリーリンの膜親和性を生化学的に解析したところ、リーリンは従来考えられていた以上に高い膜親和性を持つことが明らかとなった。この膜親和性は、特定の膜蛋白質を介するものではなく、リーリン自身の脂質結合性によるものであることも示唆された。特に、リーリンは分子中の二カ所で分解を受けることが知られているが、その分解産物の膜親和性が全長のものに比べてかなり弱いことから、この分解は、細胞外での拡散・寿命を制御する機構に一つである可能性が考えられた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2004年 -2005年 
    代表者 : 服部 光治
     
    細胞質おけるカルシウム濃度は百種類以上の蛋白質分子の活性制御機構に関与しており、その時間的・空間的制御は細胞機能に必須である。カルシウム動態を制御するチャネル蛋白質は数多く存在するが、中でもイノシトール1,4,5三リン酸受容体(IP_3受容体)は小胞体からのカルシウム放出を担う主要なチャネル蛋白質であり、その活性は様々なキナーゼや結合蛋白質によって制御されている。神経グリア回路網における細胞内カルシウム濃度変動や、IP_3受容体の機能や存在意義を明確にするためには、細胞種得的な遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス)の作製が急務である。三種のIP_3受容体サブタイプ遺伝子のうち、タイプ1の遺伝子を欠損するマウスは様々な臓器の機能不全により致死であるため、多くの解析が不可能である。そこでまず神経細胞特異的にタイプ1 IP_3受容体を欠損するマウスの作製を行った。今年度までに、タイプ1 IP_3受容体の開始コドンを含むエクソン両端にloxP配列を挿入したマウスの作出に成功した。現在、大脳興奮性神経細胞にのみCreリコンビナーゼを発現するEmx-Creマウス(理化学研究所より入手済み)と交配を行っている。一方、タイプ3 IP_3受容体ノックアウトマウスを用い、神経成長因子(NGF)依存的なDRGの軸索伸長に対してIP_3受容体からのカルシウム放出が負の制御を行うことを明らかにした。これは、従来の薬理学的手法を用いた結果と相反するものであり、その分子機構解明により軸索伸長における新たなモデルの提唱につながり得るものであると考えている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2004年 -2005年 
    代表者 : 服部 光治
     
    リーリンは、脳の層構造形成に必須の巨大分泌蛋白質であり、ヒトでもリーリンが欠損すると脳の層構造形成不全が引き起こされる。リーリンは全長約3,461アミノ酸残基からなり、分泌シグナルを含むN末端領域、8回の繰り返し構造(リーリンリピート)、及び塩基性アミノ酸残基に富むC末端領域(CTR)からなる。CTRは32アミノ酸残基であり、その一次構造は爬虫類以上の全ての動物種で完全に保存されている。他グループの先行研究から、CTRはリーリンの分泌に必須であると考えられてきたが、その分子機構は不明であった。本研究では、CTRがなぜ分泌に関わるのかについて解析した結果、意外なことにCTRの一次構造や、CTRが高度に塩基性であることはリーリンの分泌に必ずしも必須ではないことが明らかとなった。また、免疫染色の結果から、CTRを欠損するリーリンは細胞内に蓄積して小胞体を異常拡張させることが判った。このことから、CTR(もしくは、リーリンリピートのC末端側に何らかのアミノ酸配列が存在すること)は小胞体からゴルジ体へのリーリンの輸送に関与する可能性が示唆された。次に、CTRがリーリンの下流シグナル活性化能力に関与しているか否かについて検討した。CTRは、リーリンの受容体を介した下流情報伝達系の効率的な活性化に必要であることが強く示唆された。特にCTRが塩基性アミノ酸残基に富むことが重要であると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2004年 -2004年 
    代表者 : 服部 光治
     
    細胞質におけるカルシウム濃度は百種類以上の蛋白質分子の活性制御機構に関与しており、その時間的・空間的制御は細胞機能に必須である。イノシトール1,4,5三リン酸(IP3)受容体は小胞体からのカルシウム放出を担う主要なチャネル蛋白質である。IP3受容体が細胞質側から様々な制御を受けていることは良く知られているが、小胞体内腔側からも制御されているか否かは、その機構が不明なことから長い間論争となってきた。我々は生化学的手法によってIP3受容体の小胞体内腔側ループに結合する蛋白質ERp44を同定した。我々はまず、免疫沈降実験やリコンビナント蛋白質を用いた結合実験を詳細に行い、以下のことを見いだした。(1)ERp44はIP3受容体タイプ1のL3V領域に結合するが、タイプ2やタイプ3には結合しない。(2)ERp44とIP3受容体間の結合は、酸化条件下では非常に弱く、還元条件下で強い。(3)両者の結合はpHが低いほうが強くなる。(4)両者の結合はカルシウム濃度が100μMを超えると徐々に弱くなる。(4)ERp44のチオレドキシン様領域は結合にほとんど関与しない。以上の結果から、ERp44とIP3受容体タイプ1の結合は安定的なものというよりは、細胞の状態・環境に応じて変化するものであることが強く示唆された。また、カルシウムイメージング実験及び人工脂質二重膜に埋め込んだIP3受容体タイプ1を用いた電気生理学的実験から、ERp44は小胞体内腔のレドックス状態・カルシウム濃度・pH変化に依存してIP3受容体の活性を制御していることが示唆された。これは小胞体内腔からのIP3受容体の機能調節機構を明確に示した最初の例であると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 服部 光治
     
    細胞質おけるカルシウム濃度は百種類以上の蛋白質分子の活性制御機構に関与しており、その時間的・空間的制御は細胞機能に必須である。イノシトール1,4,5三リン酸受容体(IP3R)は小胞体からのカルシウム放出を担う主要なチャネル蛋白質である。神経グリア回路網におけるこのチャネル蛋白質の機能や存在意義を明確にするためには、遺伝子改変マウスの作製が急務である。三種のIP3Rサブタイプのうち、タイプ1の欠損マウスは致死であるため、解析が不可能である。そこで細胞種特異的にタイプ1IP3Rを欠損するマウスの作製を行っている。現在までに、条件的にタイプ1IP3R遺伝子をノックアウトできるようにゲノム遺伝子を改変したマウス胚性幹細胞(ES細胞)の樹立を完了し、キメラマウスを作製した。しかし、キメラマウスと野生型マウスの交配によってヘテロマウスを得ることができていない。これは、キメラマウスの生殖細胞に遺伝子組み替えES細胞由来のものがない可能性を示唆している。現在、他のES細胞クローンを用いたキメラマウスの作製を行っている。 一方、IP3受容体が細胞質側から様々な制御を受けていることは良く知られているが、小胞体内腔側からも制御されているか否かは、その機構が不明なことから長い間論争となってきた。我々は生化学的手法によってIP3受容体の小胞体内腔側ループに結合する蛋白質ERp44を同定した。カルシウムイメージング実験及び人工脂質二重膜に埋め込んだIP3受容体タイプ1を用いた電気生理学的実験から、ERp44は小胞体内腔のレドックス状態・カルシウム濃度・pH変化に依存してIP3受容体の活性を制御していることが示唆された。これは小胞体内腔からのIP3受容体の機能調節機構を明確に示した最初の例であると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 服部 光治
     
    脳の層構造形成に必須の分泌蛋白質リーリンと、その機能発現に必須とされる細胞内蛋白質Dab1について生化学的・細胞生物学的解析を行い、以下のことを明らかにした。 (1)リーリンを受容した細胞内でリン酸化を受け、さらに下流へシグナルを伝える分子と考えられてきたアダプター蛋白質Dab1が、リーリン受容体(VLDLR及びApoER2)の成熟(小胞体もしくはゴルジ体における)及び膜表面への輸送を制御している事を見いだした。また、Dab1はリーリンのエンドサイトーシスをも調節することを見いだした(Morimura et al. J. Biol. Chem.)。これらの結果から、Dab1の真の機能は、リーリン分子の細胞内外でのトラフィッキングを制御することであることが示唆された。 (2)リーリンの特異的抗体を用いたカラムを作製し、リーリンを精製することに成功した。精製したリーリンは極めて不安定であり、水溶液中で数日以内にはほとんど検出できなくなることが解った。しかし非常に驚くべき事に、血清脂質や脳脂質抽出物を加えるとリーリンの安定性が飛躍的に増大することを発見した。このことは、リーリンには何らかの脂質性物質を結合する性質があり、それによってその機能が制御されていることを強く示唆する。 (3)リーリンのC末端領域には塩基性アミノ酸残基に富む領域が存在する。この部分によってリーリンは細胞外基質(おそらく硫酸基を持つもの)と弱く相互作用することを発見した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2001年 -2002年 
    代表者 : 服部 光治
     
    神経系の正確な発生のためには、細胞間コミュニケーションが様々なレベルで厳密に制御される必要がある。申請者は、神経細胞の軸索誘導において重要な役割を果たすephrin-A2が、その受容体(EphA受容体型チロシンキナーゼ)に結合すると、特異的な分解を受けること、及びこの分解が軸索の退縮に重要であることを見い出した(Science 289:1360(2000))。この知見を踏まえ、やはり神経発生、特に神経細抱の移動に必須とされる分子Reelinの分解経路についても解析した。その結果Reelinlには3カ所の特異的分解部位が存在すること、分解産物のうちいくつかは、分解後も複合体を形成していること、この分解は血清中の何らかの分子によって阻害されることを見いだした。また、Reelinの神経細胞内への取り込みについても解析し、それが細胞内アダプター蛋白質Dab1によって調節されていることを見いだした。さらに、Reelin添加によって発現の変化する遺伝子をスクリーニングし。候補分子をいくつか同定した。以上のことから、神経発生において、膜蛋白質及び細胞外蛋白質の分解が高度に制御されており、これを解析することで、蛋白質分解が関与される神経系の病態や高次機能調節の理解にも重要な貢献をできると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 奨励研究(A)
    研究期間 : 2000年 -2001年 
    代表者 : 服部 光治
     
    神経系の正確な発生のためには、細胞間コミュニケーションが様々なレベルで厳密に制御される必要がある。一般に、蛋白質分子の発現及び機能は(1)転写・翻駅、(2)翻訳後修飾やクラスタリング、(3)蛋白質分解の三つの段階で制御されている。申請者は、神経細胞の軸素誘導において重要な役割を果たすephrin-A2が、その受容体(EphA受容体型チロシンキナーゼ)に結合すると、特異的な分解を受けること、及びこの分解が軸索の退縮に重要であることを見い出した(Science 289 : 1360(2000))。GPIアンカー型蛋白質であるephrin-A2が細胞内に情報を伝えるためには膜貫通型co-receptorの存在が予想されるが、今回、その候補となる分子を数種見いだした。また、ephrin-A2の分解活性化に必要な細胞内チロシンキナーゼとしてFynまたはAblであるとの知見を得た。興味深いことにFynの活性は、分解以前にephrin-A2の発現レベル調節に関与しているとの知見を得た。また、やはり神経発生、特に神経細胞の移動に必須とされる分子Reelinの分解経路についても解析し、3カ所の特異的分解部位が存在すること、分解産物のうちいくつかは、分解後も複合体を形成していること、この分解は血清中の何らかの分子によって阻害されることを見いだした。以上のことから、神経発生において、膜蛋白質及び細胞外蛋白質の分解が高度に制御されており、これを解析することで、蛋白質分解が関与されるとされる神経系の病態(アミロイド前駆蛋白質のプロセシングなど)や高次機能調節(接着分子を介した形態変化など)の理解にも重要な貢献をできると考えられる
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(A))
    研究期間 : 1996年 -1999年 
    代表者 : 井上圭三; 服部光治; 青木淳賢; 新井洋由
     
    今年度は、I型、II型PAFアセチルヒドラーゼ(PAF-AH(I),PAF-AH(II))、セリンリン脂質特異的ホスホリパーゼA1に関して研究を行い、次のような結果を得た。 (1)PAF-AH(I) I型PAFアセチルヒドロラーゼの活性サブユニット(α1、α2)のマウスゲノムを単離し、ターゲットベクターを作製した。ES細胞に遺伝子導入し、組み換えたいES細胞を得た。ジャームライントランスミッションに成功し、α1に関しては、ホモ(-/-)マウスを得た。α2に関しては現在、ホモ(-/-)マウスの誕生を待っている段階である。 (2)PAF-AH(II) 当初、II型PAFアセチルヒドロラーゼに関してもノックアウトマウスを作製する予定であったが、この遺伝子が、遺伝子ターゲットが比較的容易なモデル動物線虫(C.elegans)に存在することがわかった。そこで、C.elegansを用いて、II型アセチルヒドロラーゼ遺伝子の破壊を行い、この遺伝子が、上皮細胞の発生段階において極めて重要な役割を演じていることがわかった。 (3)PS-PLA1 ラットの各種臓器・血球系細胞のノーザンブロットを行うと、PS-PLA_1は血小板に極めて多く、臓器では主として肺、心臓に発現が見られた。しかし、ラットにリポ多糖(LPS)を静注し、24時間後に摘出した臓器のノーザンブロットを行うと、ほとんどの臓器におい...
  • 文部科学省:科学研究費補助金(重点領域研究)
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 井上圭三; 服部光治; 青木淳賢; 新井洋由
     
    細胞内Ib型PAF acetylhydrorase(PAF-AH)は調節サブユニットと想定されるαと2つの活性サブユニットβ、γ計3つのサブユニットからなるヘテロトリマ-型酵素である。また、生体内にはαサブユニットが結合していないヘテロダイマ-(β、γ)のIa型PAF-AHも存在する。ヒトにおけるαサブユニットの欠損がMiller-Dieker症候群(脳回が形成されない病態)を引き起こすことから、PAF-AHが脳神経系の形態形成に関与していることが示唆されている。生体内で3つのサブユニットタンパクの発現量を特異的抗体により調べたところ、その比は成体各臓器間で大きく異なっていた。in vitroにおいてβ、γサブユニットを単独で発現させた場合にホモダイマ-構造をとることから、実際このようなホモダイマ-が生体内に存在する可能性が示唆された。これらのサブユニットの様々な組み合わせにより生じるアイソフォ-ムについて、機能的な差異、各サブユニット間のアセンブル機構を明らかにすることを目的として、各サブユニットのcDNA組み換えバキュロウイルスを作製し、1つの細胞に複数の組み換えバキュロウイルスを感染させることにより、様々な複合体をin vitroでつくらせる系を確立した。この系によりαとγを発現させて場合には、γを発現させた場合と比較して顕著にPAF-AH活性が低いことが観察された。ま...
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 奨励研究(A)
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 服部 光治
     
    血小板活性化因子(PAF)を不活化する酵素、PAFアセチルハイドロラーゼは、生体内のPAF濃度調節に重要な役割を演じていると考えられている。我々は、ウシ脳において主要な活性を担う細胞内I型PAFアセチルハイドロラーゼの精製、遺伝子クローニングを行い、本酵素が、分子量45kDa、30kDa、29kDa(それぞれα、β、γサブユニットと呼ぶ)の三つのサブユニットからなることは明らかにしてきた。このうちβサブユニットとγサブユニットは互いに相同性を持ち、それぞれ酵素活性を有する。我々は今回、αサブユニットをβ/γサブユニットから分離、再会合する系を確立した。また大腸菌に発現させたβ、γサブユニット蛋白質はそれぞれホモダイマーを形成する性質があること、及び動物細胞中にも同様なホモダイマーが存在することを見出した。現在、このようなホモダイマーとαサブユニットの相互作用及びそれによる機能の変化について解析している。

委員歴

  • 2024年05月 - 現在   日本生化学会中部支部会   幹事
  • 2024年01月 - 現在   日本生化学会「生化学」企画委員長
  • 2023年11月 - 現在   日本生化学会   代議員
  • 2021年04月 - 現在   日本生化学会 評議員
  • 2023年04月 - 2025年03月   日本薬学会 代議員
  • 2022年03月 - 2025年02月   日本薬学会生物系薬学部会   部会長
  • 2023年04月 - 2024年03月   薬学教育評議会 生化学分野教科教員会議委員長
  • 2023年 - 2024年   日本生化学会邦文誌「生化学」   編集総務
  • 2019年04月 - 2021年03月   日本薬学会 代議員

学術貢献活動

  • 第21回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム
    期間 : 2022年09月03日 - 2022年09月04日
    役割 : 企画立案・運営等
    種別 : 学会・研究会等

その他のリンク

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