日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2018年04月 -2021年03月
代表者 : 小椋 祐一郎; 野崎 実穂; 安川 力; 植村 明嘉; 平野 佳男; 吉田 宗徳
増殖糖尿病網膜症では線維血管増殖膜に含まれる筋線維芽細胞の起源について、諸説あるものの未だ明らかにされていない。一方、我々が確立したペリサイト消失網膜症モデルマウス(Ogura et al. JCI Insight 2017)では、血管透過性亢進に伴う漿液性網膜剥離に引き続いて、網膜下の線維化が進行されることが明らかとなった。平成30年度はEdnraCreERT2:R26R-EYFPレポーターマウス、およびTyrCre:R26R-H2B-mCherryレポーターマウスを用いたcell fate mapping解析により、網膜下の線維化組織に含まれる筋線維芽細胞が、血管壁から解離したペリサイトと、網膜色素上皮細胞の双方に由来することを明らかにした。さらに筋線維芽細胞の周囲には、多数のマクロファージが浸潤することが明らかとなったが、CX3CR1-CreERT2:R26R-EYFPレポーターマウスの解析により、マクロファージが筋線維芽細胞に分化転換する可能性は否定された。線維化が進行する過程では、TGFβ, CTGF, IL-4, IL-10, IL-11, IL-13などの発現が上昇することから、これらのサイトカインが、マクロファージと筋線維芽細胞の相互作用や、筋線維芽細胞の分化・増殖・遊走・マトリックス産生を制御すると考えられた。