日本学術振興会:科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
研究期間 : 2018年10月 -2021年03月
代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 鈴木 良明; 鬼頭 宏彰
炎症慢性化過程の細胞機能変動において、免疫担当細胞に機能発現するイオンチャネルがどのような病態生理学的意義を果たしているかは明らかにされていない。本研究の目的は、貪食機能を有する免疫担当細胞の活性化と、炎症慢性化による組織リモデリングにおける細胞内Ca2+濃度制御に関わるイオンチャネル群とその分子機構を解明し、炎症慢性化・組織リモデリングにおける新規治療標的イオンチャネルを探索・同定することである。本年度の研究実施計画は、マウス腹腔マクロファージのサブセット依存的なイオンチャネル発現・活性の解析であった。マウス腹腔マクロファージは、Large peritoneal macrophage (LPM)とSmall peritoneal macrophage(SPM)の二つのサブセットが存在することが報告されていることから、両細胞を分取しイオンチャネル発現解析を行ったところ、SPMにおいて有意にKCa3.1 K+ チャネルが高発現し、細胞機能制御に関与する可能性を明らかにした。
変形性関節症(OA)に対するCa2+シグナルの関係を明らかにするため、in vitroのOAモデルとしてIL-1β処置した軟骨細胞を用い、OA病変とイオンチャネルの関連を調べた。IL-1β刺激により、マウス初代培養軟骨細胞において、一過性あるいは反復性のCa2+シグナルが観測された。また、その下流シグナルとしてNFATやCaMKの活性化を示唆するデータも得た。種々のイオンチャネル阻害薬により、IL-1βによって誘発されるOAマーカー(ADAMTS5やIL-6)発現も有意に抑制された。
カルガリー大学Wayne R. Giles教授を日本に招聘し、特別講演および共同研究に関するディスカッションを行った。特に、日本人若手研究者のカルガリー大学への2019年度の派遣に向けて、具体的にどこの研究室へ派遣し共同研究を実施するか綿密な打ち合わせを行った。