Japan Society for the Promotion of Science:Grants-in-Aid for Scientific Research
Date (from‐to) : 2020/04 -2024/03
Author : 齋藤 伸治; 加藤 洋一; 大石 久史; 嶋田 逸誠; 宮 冬樹
巨脳症患者を対象としたパネル解析を引き続き実施し、2021年度は9例に実施した。その結果、PTEN遺伝子変異を2例、PIK3CA変異モザイク例を1例同定した。患者情報として臨床情報とMRIを収集し、遺伝子変異情報と共にデータベースを更新した。
脳オルガノイドを用いた実験では、正常iPS細胞から遺伝子編集を行い、PNPLA8、SZT2、MYCNの機能喪失型変異を導入し、脳オルガノイドの作成を行った。脳オルガノイドにおいては皮質発生を再現することができた。特に、PNPLA8のKO脳オルガノイドについて詳しく検討ができ、脳皮質形成障害の原因として外側ラジアルグリア(oRG)の分裂能が低下していることを明らかにした。さらにその原因としてミトコンドリア機能の障害を明らかにした。これらの実験によりiPS細胞から脳オルガノイドを作成し、脳皮質発生に関する一連の実験を行う実験系を確立した。
さらに、ヒト患者からのiPS細胞の作成をPNPLA8およびMYCNに変異を有する患者から行った。PNPNL8患者由来iPS細胞の樹立に成功し、さらに脳オルガノイドを作成し、患者にみられた病態の再現に成功した。さらに、遺伝子改変iPS細胞由来の脳オルガノイドと表現型が共通することを確認した。MYCNについては現在実験が進行中である。
モデルマウスとしては引き続き、MYCNの機能亢進型変異および機能喪失型変異マウスについての解析を行った。機能亢進型モデルマウスではヒト患者で見られた巨脳症が再現され、その原因として胎生期の神経幹細胞の分化と増殖のバランスが乱れることと神経細胞の遊走が関連することを明らかにした。上述した患者由来iPS細胞を用いた脳オルガノイド実験と組み合わせることで、病態の改名の基盤を構築することができた。