不育症の胎児側の原因として、染色体異常だけではなく遺伝子変異の存在が想定されるものの、未だ解明されていない点が多い。不育症女性とその夫、胎児の3人を対象に次世代シーケンサーを用いた解析をすることにより、胎児の遺伝子変異に起因する不育症の原因遺伝子を同定する。
2021年度では16家系について検体収拾ができており、当院ウイルス学教授と協力し全エクソームシークエンスによる解析を進めている。症例数を増やすためにエクソーム解析とした。絨毛組織由来のDNAと母由来のDNAを識別するためショートタンデムリピート解析を利用している。
解析パイプラインについて概説する。生殖細胞変異の検出は、確立したパイプライン(Genomon-exome, http://genomon.hgc.jp/exome/) を用いて行った。配列リードはBurrows-Wheeler Alignerを用いてhg19参照ゲノムにアライメントされ、バリアントはPicard toolsを用いてPCR duplicateを除去したのち、VarScan2を用いて検出された。Variant allele frequency (VAF) >0.2 (20%) をカットオフ値として使用した。American College of Medical Genetics and Genomicsが発表したガイドラインに従い、マイナーアレル頻度が1%を超えるSNPsを削除した。これらのバリアントは、過去に病原性が報告された原因バリアント(カテゴリー1)、あるいは関連する障害を引き起こすと強く予想されるバリアント(ナンセンス、フレームシフト、スプライスサイトバリアントなど)(カテゴリー2)とした。病原性のさらなる証拠のないミスセンス変種など、意義不明のその他の変種は、本研究では非診断として扱った。