日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 堀田 祐志; 木村 和哲; 家田 直弥; 片岡 智哉; 中川 秀彦
糖尿病や前立腺全摘手術後の患者では、NO 産生能が低下しているためPDE-5 阻害薬の効果が低いことが報告されている。これらの患者には、NO補充療法が有効と予想されるが全身への副作用から実用には至っていない。これまでに我々は光応答性NOドナーに着目し、光照射で勃起現象を制御できないか検討を進めてきた。光応答性NOドナーの開発と修正を繰り返し、最近では組織透過性が高い赤色光(630-690 nm)に応答するNOドナーである「NORD-1」の開発に成功した。さらに、NORD-1と光照射により生体(in vivo)レベルでの勃起反応を増強することにも成功した。本研究では、難治性EDに対する光応答性NOドナーと赤色光の有効性の検討をすすめることとした。
本年度は、難治性EDモデルとして初めに海綿体神経損傷EDモデルを用いた。損傷後4週目にEDモデルでは、海綿体神経刺激による海綿体内圧の上昇が低下した。このモデルに対してNORD-1を陰茎脚から投与し赤色光を照射したところ、明らかな内圧上昇の改善が見られた。このことからNORD-1と赤色光は神経障害性の難治性EDモデルの勃起機能を改善することが示唆された。次に当初予定していたもう一つのモデルであるストレプトゾトシン(STZ)投与により膵臓機能を低下させた糖尿病性EDモデルを使用してNORD-1と赤色光の効果を検討した。STZ投与後1週目で血糖値を測定し250 mg/dl以上を示す個体を使用した。STZ投与後4週目に勃起機能を陰茎海綿体内圧の測定により同様に評価した。STZ投与したラットでは海綿体内圧の上昇は明らかに減少したが、NORD-1を陰茎脚から投与し赤色光を照射したところ、明らかな内圧上昇の改善が認められた。このことから、重度糖尿病性EDモデルに対してもNORD-1と赤色光がED改善に有効であることを見出した。