研究者データベース

内田 周作 (ウチダ シュウサク)

  • 医学研究科統合解剖学分野 准教授
Last Updated :2024/06/11

研究者情報

J-Global ID

研究キーワード

  • 層別化   個体差   包括脳ネットワーク   記憶・学習   気分障害   ストレス   遺伝子発現   うつ病   遺伝子発現制御   エピジェネティクス   神経可塑性   ストレス脆弱性   神経新生   

研究分野

  • 人文・社会 / 実験心理学
  • ライフサイエンス / スポーツ科学
  • ライフサイエンス / 栄養学、健康科学
  • ライフサイエンス / 神経科学一般
  • ライフサイエンス / 精神神経科学

経歴

  • 2023年11月 - 現在  名古屋市立大学大学院医学研究科准教授
  • 2018年04月 - 2023年10月  京都大学大学院医学研究科メディカルイノベーションセンター特定准教授(PI)
  • 2013年12月 - 2018年03月  山口大学医学部附属病院講師
  • 2011年02月 - 2013年11月  日本学術振興会海外特別研究員(ラトガース・ニュージャージー州立大学)ポスドク
  • 2008年 - 2011年  山口大学 医学(系)研究科(研究院)助教

所属学協会

  • 北米神経科学会   日本生物学的精神医学会   日本神経化学会   日本分子生物学会   日本神経科学会   日本神経精神薬理学会   

研究活動情報

論文

講演・口頭発表等

  • Molecular and Neural mechanisms of psychosocial stress-induced behavioral heterogeneity
    Universität Hamburg-Kyoto University Join Symposium 2023年03月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名)
  • ストレス適応の個体差構築の分子神経基盤
    内田周作
    2022年11月 その他
  • Constructive understanding of the mechanisms underlying psychosocial stress-induced behavioral heterogeneity
    2nd International Symposium of “Multi-scale Brain” 2022年06月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名)
  • Epigenetic mechanisms driving synaptic plasticity and affective states under stressful situation
    内田周作
    第44回日本神経科学会 2021年07月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • ストレス感受性制御の脳内分子基盤
    内田周作
    第51回日本神経精神薬理学会・第43回日本生物学的精神医学会年会 2021年07月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • Epigenetic mechanisms of stress resilience and susceptibility and implications for drug development
    内田周作
    第94回⽇本薬理学会年会 2021年03月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • 遺伝・環境相互作用によるレジリエンス形成の分子基盤
    内田周作
    第50回日本神経精神薬理学会・第42回日本生物学的精神医学会年会 2020年08月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • Epigenetic mechanisms of stress-induced depression
    内田周作
    第6回アジア神経精神薬理学会 2019年10月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • Molecular and neural mechanisms of stress susceptibility and resilience
    内田周作
    第42回日本神経科学会 2019年07月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • Calcium signaling in stress-related psychiatric disorders
    内田周作
    第40回日本生物学的精神医学会・第61回日本神経化学会大会 2018年09月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • うつ病・不安障害におけるサーチュインの役割と創薬への可能性
    内田周作
    第39回日本生物学的精神医学会 第47回日本神経精神薬理合同年会 2017年09月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • 非コードRNAによる脳機能制御とその破綻による精神疾患
    内田周作
    第113回日本精神神経学会 2017年06月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
  • ストレス適応破綻からみたうつ病態における神経可塑性異常とその分子基盤
    内田周作; 山形弘隆; 芳原輝之; 樋口文宏; 樋口尚子; 渡辺義文
    第38回日本生物学的精神医学会 第59回日本神経化学会大会 2016年09月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名)

MISC

産業財産権

  • 特願2017-91149:50歳未満発症うつ病の罹患の有無を予測する方法  
  • 特願2018-108464:ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤  

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2022年04月 -2025年03月 
    代表者 : 内田 周作
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
    研究期間 : 2021年07月 -2023年03月 
    代表者 : 内田 周作
     
    近年のストレス社会を背景に、うつ病に代表される精神疾患患者が増加し、社会問題となっている。また、コロナ禍による生活・労働環境の激変による運動不足がもたらす心身の消耗が指摘されている。心理・社会ストレスは、ストレス抵抗性・回復力(レジリエンス)や記憶・認知などの高次脳機能を低下させることで精神疾患の発症リスク増大につながると想定されている。一方、適度な運動は記憶形成に重要な脳海馬領域を活性化すること、低中等度のうつ病患者に対しては、運動療法が有効である可能性が示唆されている。しかし、これまでの運動と脳機能との関連研究の最大の問題点は、”現象論の記述”に留まっていることであり、運動トレーニングがストレスレジリエンスを獲得する脳内メカニズムはいまだに不明である。本研究課題では、この問題点を克服するために、うつ病モデルマウスを用いて、独自に見出したエピジェネティクス制御分子に着目することで、運動トレーニングによるストレスレジリエンス獲得の分子・神経メカニズムの解明に挑む。この目的達成のため、本年度は以下の実験を行った。 実験1. ストレス脆弱性マウスのmPFC神経細胞を薬理遺伝学的手法(hM3Dq Dreadd)により人為的に活性化させ、レジリエンスを獲得するかを検討した。 実験2. 運動トレーニング(wheel running)施行マウスのmPFC神経細胞を薬理遺伝学的(hM4Di Dreadd)に抑制させた際にストレスレジリエンスが消失するかを検討した。 以上の実験により、運動トレーニングによるストレスレジリエンス獲得には、mPFC神経ネットワークが必須であることを示唆する結果を得た。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2021年04月 -2023年03月 
    代表者 : 内田 周作
     
    ストレス適応の脳内メカニズムの統合的理解には、分子・細胞・回路・行動を個別に把握するだけでなく、階層横断的な解析が必要である。「動物らしさ」を特徴づける個体差・性格・個性や精神病態の異種性の発現メカニズムを理解するためには、化学物質を生き物に変換する役割を担う分子複合体階層が重要である。しかしながら、現状の分子から行動に至る多階層解析においては、細胞内分子複合体の動態と脳機能との因果を十分に理解するに至っていない。本研究では、分子とその上位階層(細胞・回路・行動)との間をつなぐ”分子複合体”の微小空間での動態を観測・計測・操作し、精神疾患発病脆弱性との関連が指摘されている「ストレス適応機能」との因果を解析することにより、ストレス感受性制御の構成的理解を目指す。本年度は以下の成果を得た。 1:ストレス感受性制御に関わるKDM5C複合体の同定。野生型C57BL/6J (B6) マウスは軽度ストレス負荷に対して適応反応(レジリエンス)を示すが、KDM5C過剰発現マウス(B6系統)はストレス脆弱性を示した。一方、ストレス脆弱性系統(DBA)の内側前頭前野KDM5Cをノックアウトするとストレスレジリエンスを獲得した。ストレス負荷後のKDM5C複合体の網羅的定量を行った結果、KDM5Cと相互作用するタンパク質を同定した。 2:KDM5C複合体の細胞レベルにおける役割の検討。実験1で見出したKDM5Cの相互作用因子について、当該因子の機能を抑制したところ、ストレス誘発性のスパイン密度低下が消失したことからストレスレジリエンスを示すことが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2019年04月 -2021年03月 
    代表者 : 内田 周作
     
    本研究の目的は、遺伝・環境相互作用に起因する精神疾患発症脆弱性の個体差を個性の現れ方の1つと捉え、精神疾患の発症リスクと想定されているストレス感受性の個体差の創発基盤を脳内エピジェネティクス制御の視点から明らかにすることである。具体的には、これまでに申請者がストレス感受性の個体差・性差構築に関わる候補分子として既に見出しているヒストンリジン脱メチル化酵素(KDM5C)に着目し、KDM5Cによるストレス感受性の個性形成が、いつ・どこで・どのようなメカニズムで構築されているのかについて、その分子・神経メカニズムの解明に挑む。これまでに、ストレス脆弱性を有するDBA/2 (DBA)マウスは軽度ストレス負荷に対して不適応反応(うつ様行動)を示すが、内側前頭前野特異的KDM5Cノックアウトはストレス耐性を獲得することを見出した。このkdm5cノックアウトマウスと野生型マウスにおける軽度ストレス負荷前後の遺伝子発現変動をRNA-seq解析により検討し、ストレス対処行動に関わるkdm5c標的遺伝子を同定した。候補遺伝子の過剰発現マウスを作製し、ストレス反応を検討したところ、ストレスレジリエンスを獲得していた。さらに、ストレス脆弱性マウスにおけるkdm5c発現亢進の臨界期を特定した。以上の結果から、ストレス感受性に関わる新たな分子経路の同定に成功し、うつ病発症に関わるストレス脆弱性形成の時期を特定する成果が得られた。今後、kdm5cを制御可能な薬剤やkdm5c発現を調節できる技術の開発により、ストレス性精神疾患の新たな制御法の確立につながることが期待できる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2019年04月 -2021年03月 
    代表者 : 内田 周作
     
    本研究の目的は、精神疾患発病脆弱性に関わるストレス感受性の制御機構を分子-細胞-回路-行動の多階層アプローチにより検討することで、ストレス性精神疾患の構成的理解につなげることである。具体的には、独自に確立した遺伝・環境相互作用に起因するうつモデルマウスで見出している分子階層におけるエピジェネティクス変容が上位階層(細胞、回路、行動)に及ぼす直接的な影響について検討する。エピゲノム編集技術、遺伝子操作、神経活動操作等により各階層を操作し、その上下位の階層における変容を抽出する。また、ストレス脆弱性やうつ様行動を示すマウスに対して、各階層に介入することでストレスレジリエンスの獲得や抗うつ作用を発揮することのできる制御法を開発する。ストレス感受性マウスのCamk2bゲノム領域におけるエピジェネティクス修飾異常を見出した。一方、ストレスレジリエンスモデルにおいて、CaMKIIbの活性亢進を認めた。Camk2b遺伝子過剰発現マウスはストレスレジリエンスを、逆にCamk2b遺伝子ノックアウトマウスはストレス感受性が増大することを確認し、CaMKIIbのストレス感受性制御に対する役割が明らかとなった。さらにCamk2b遺伝子上のDNAメチル化レベルが慢性ストレス負荷によって変化することを見出した。細胞レベルの解析では、ストレス感受性群とCamk2bノックダウンマウスにおいて、AMPA受容体のシナプス膜上への移行が低下していることを見出した。さらに、Camk2b遺伝子のエピゲノム修飾による遺伝子発現増大を可能とするシステムを用いて、遺伝・環境相互作用に起因するうつモデルマウスの腹側海馬におけるカルシウム・カルモデュリン依存性キナーゼIIβ遺伝子(Camk2b)の役割を検討した。その結果、エピゲノム編集操作によってCamk2bの発現を増大させたマウスはストレスレジリエンスを獲得した。本研究により、エピゲノム修飾と行動変容との直接的な因果関係をはじめて証明できた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2018年04月 -2021年03月 
    代表者 : 内田 周作
     
    ストレスが個体の脳機能低下を引き起こす性差・個体差構築の分子神経メカニズム解明は、うつ病の予防・治療法の確立につながることが期待される。本研究は、仮説「うつ病発症に深く関わるストレス脆弱性の性差・個体差構築にはエピジェネティックな遺伝子発現制御異常に起因する神経ネットワーク変容が関わる」を検証し、その分子神経基盤の解明を目的としている。この目的達成のため、2018年度は以下の実験を行った。 実験1. ストレス脆弱性の個体差構築に関わる神経ネットワークの同定 我々はこれまでに、慢性ストレス負荷マウスでは、ストレス耐性群とレジリエンス群における腹側海馬、内側前頭前野、側坐核の神経活動変容を示唆する結果を得た。そこで、薬理遺伝学的手法を用いて神経細胞の活動を操作したマウスのストレス対処行動を検討した。その結果、内側前頭前野の特定の細胞を活性化させるとストレスレジリエンスを獲得することを見出した。 実験2. ストレス脆弱性の個体差構築に関わるエピジェネティクス制御機構の解明 予備的検討から、内側前頭前野領域におけるヒストンリジン脱メチル化酵素KDM5Cを介したエピジェネティック制御がストレス適応の性差・個体差構築に関与している可能性が考えられる。そこで、内側前頭前野特異的にKDM5Cをノックアウト(ゲノム編集技術)あるいは過剰発現したマウスを作製し、KDM5Cのストレス対処行動に対する役割を検討した。その結果、内側前野領域特異的KDM5C欠損マウスはストレス耐性を、逆にKDM5C過剰発現マウスはストレスレジリエンスを獲得していた。さらに、ストレス感受性が高いほど、KDM5C発現量が亢進していることを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2016年04月 -2019年03月 
    代表者 : 山形 弘隆; 松尾 幸治; 内田 周作
     
    うつ病の診断は、症状の組み合わせから判断する診断法が主流であり、診断できる検査方法は未だ存在しない。本研究では、血漿タンパク質の糖鎖に着目した。糖鎖はタンパク質の機能を調節していることが知られており、癌などの他の疾患では既に診断マーカーとして利用されている。うつ病の新たな診断マーカーを見つけるために、うつ病モデルマウスとうつ病患者の血漿タンパク質の糖鎖を解析し、うつ病モデルマウスの血漿とうつ病患者の血漿で共通する糖鎖変化を見つけた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2015年04月 -2018年03月 
    代表者 : 渡辺 義文; 内田 周作; 山形 弘隆; 樋口 文宏
     
    我が国におけるうつ病の発症機序に関する基礎研究は欧米諸国に比べて圧倒的に不足している。本研究では、「側坐核・海馬・内側前頭前野皮質における神経回路の変容に伴う遺伝子発現異常がうつ病の発症機序となる」との仮説をたて、この妥当性を分子・神経回路レベルで検討した。その結果、これら各脳領域においてストレス対処行動に関わる分子を同定し、その分子を標的とした化合物の抗うつ作用を見出した。また、特定の脳領域の神経活動操作により影響をうける脳部位を同定し、この神経ネットワークがうつ様行動の発現に重要であることを見出した。本研究により、特定の脳部位におけるうつ病態の分子神経基盤の一端が明らかとなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2015年04月 -2018年03月 
    代表者 : 内田 周作
     
    本研究の目的は、精神疾患の発症に深く関わるストレス脆弱性の形成機序における細胞・分子基盤を明らかにすることである。まず、マウス発達段階における神経新生が成体期のストレス脆弱性を調節しているかを検討した。ストレス脆弱性マウスはストレス耐性マウスに比べて海馬歯状回神経新生が減少していることを見出した。また、幼若期のストレス脆弱性マウスに対し、薬理学的手法により神経新生を増加させたところ、成獣期にストレス耐性を獲得した。この分子メカニズムとして、海馬歯状回に特に高発現しているスタスミンを介した海馬神経新生の制御がストレス脆弱性の形成に関与していることを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2012年04月 -2015年03月 
    代表者 : 松尾 幸治; 山形 弘隆; 綿貫 俊夫; 松原 敏郎; 内田 周作; 大朏 孝治
     
    双極性障害患者は陽性情動刺激で前頭部の活動性が減少した。即時的意思決定課題では、ハイリスクな行動をとり前部帯状回との関連性はみられなかった。患者は、左島灰白質が小さく、患者および患者家族は左前部帯状回灰白質体積が小さかった。 双極性障害うつ状態、うつ病のうつ状態、寛解でhypoxia-inducible factor-1のmRNA発現レベル亢進がみられた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2009年 -2011年 
    代表者 : 松尾 幸治; 松原 敏郎; 大朏 孝治; 内田 周作; 江頭 一輝; 渡辺 義文
     
    大うつ病性障害患者と健常者では血漿アシル化グレリン濃度は有意差がなかった。大うつ病性障害群では、グレリン濃度は食欲低下の重症度と有意な正の相関を示した。グレリン濃度は腹側被蓋野灰白質体積と有意な負の相関を示し、大うつ病性障害患者は健常者と比しこの部位体積は有意に小さかった。これらの結果は、血漿アシル化グレリンは快楽/報酬系システムに関与し、大うつ病性障害の病態生理に関与しているかもしれないことを示唆している。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2010年 -2010年 
    代表者 : 内田 周作
     
    気分障害の病態には神経可塑性異常が想定され、そこには遺伝的要因と環境要因が関与している。本研究は環境要因(エピジェネティクス)の主役の1つであるヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)に注目し、我々が独自に確立した遺伝的素因としてストレス脆弱性を有するモデルマウスを用い、HDACsを介した遺伝子発現制御機構の異常とうつ病態との関連を、分子生物学的・生化学的・行動学的手法によって解析した。以下、本年度の研究成果を記す。 1.ストレスに適応できたマウスの脳内でGDNFの発現量は増加していた。一方、ストレスに適応できなかったマウス(うつ状態のマウス)では、GDNFの量は低下していた。 2.ストレスに弱いマウスの脳内でHDAC2の発現量は増加していた。また、HDAC2はGDNFプロモーター領域に結合していたことから、HDAC2を介したエピジェネティックなGDNF遺伝子転写抑制が認められた。 3.ウイルスベクターを用いてHDAC2の機能を阻害したマウスは、ストレスに適応でき、GDNF発現量も変化しなかった。 4.HDAC阻害剤(SAHA)に抗うつ効果があることを確認した。 5.活性化型HDAC2を過剰発現させたマウスは慢性ストレスに適応できずにうつ様行動が増加していた。 6.ストレスに強いマウスでは、CREBがGDNFの発現量を促進していることが示唆された。 以上の結果から、HDAC2を介したGDNF遺伝子の発現制御機構の異常とうつ様行動との関連が示唆された。さらに、HDAC阻害剤(SAHA)に抗うつ効果を認めたことから、新規抗うつ薬の創薬につながる可能性が期待される。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2008年 -2010年 
    代表者 : 渡辺 義文; 内田 周作; 末次 正知
     
    本研究では、「ストレス適応破綻状態からうつ状態を呈し、脳内において神経可塑性が障害される」「母親の養育行動が神経可塑性に影響を与え、ストレス脆弱性に関与する」という「うつ病のストレス脆弱性・神経可塑性障害仮説」を、モデル動物を用いて検証することを目的としている。モデル動物として我々がこれまでに見出した生来的にストレス脆弱性を有する純系のFischer344(F344)ラットを用いて、軽度のストレス負荷で引き起こされるストレス破綻状態(うつ病態モデル)における神経可塑性障害ならびにその障害に対する養育行動の影響を統合的に検討した。その結果、SDラットにF344ラットを養育させた場合に、本来みられるストレス脆弱性が消失したことから、F344ラットにおけるストレス脆弱性の形成は、母親の養育行動に起因していることが示唆された。また、母仔分離ストレス負荷によって前頭前野領域における神経可塑性関連遺伝子群の発現に変化が認められた。さらに、これらの遺伝子発現制御に関与している因子としてREST4を同定し、REST4を脳内に過剰発現させたマウスでは成獣になってからの慢性ストレスに適応できない、つまりストレス脆弱性の亢進が認められた。以上の結果から、REST4の機能異常による神経可塑性異常がうつのリスクファクターとなり得る可能性が示唆された。 本研究により、脳発達段階における遺伝子発現制御ネットワークの異常がその後のストレス脆弱性を決定している重要な因子の1であることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2008年 -2009年 
    代表者 : 内田 周作
     
    気分障害患者末梢白血球における主要な選択的スプライシング制御因子であるSRタンパクファミリー遺伝子群、PTB遺伝子群(PTB, nPTB)、遺伝子発現制御因子HDAC遺伝子群(HDAC1-11)についての発現量を健常群と比較検討した。その結果、気分障害患者におけるSRp20、nPTB、HDAC遺伝子群のmRNA発現量は健常群に比し有意に変化していた。これらの結果から、気分障害患者におけるnPTBやHDACを介した選択的スプライシング異常・遺伝子発現制御異常の存在が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2007年 -2008年 
    代表者 : 江頭 一輝; 内田 周作; 渡辺 義文
     
    本研究では、気分障害の病態解明を第一の目標とし、気分障害患者における選択的スプライシング異常を検討することを目的とした。気分障害患者におけるSRp20発現量とその標的遺伝子であるNogo-B、カルシトニン遺伝子mRNA発現量は気分障害患者において変動が認められた。以上の結果から、気分障害患者におけるSRp20を介した選択的スプライシング異常の存在が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 内田 周作
     
    平成19年度は,抑うつ状態にある気分障害(双極性障害および大うつ病性障害)患者の末梢白血球におけるSR蛋白質遺伝子群mRNAの発現量を検討した.さらに,寛解状態における気分障害患者や気分障害患者第一度血縁者においても同様の検討を行った. 山口大学医学部附属病院精神科神経科に入院もしくは通院中の気分障害患者78名(双極性障害37名,男性7名,女性30名,平均年齢53.2±2.3歳,大うつ病性障害41名,男性15名,女性26名,平均年齢57.3±2.2歳)および健常者28名(男性15名,女性13名,平均年齢50.0±1.8歳)を対象とした.診断には精神疾患の分類と診断(DSM-IV)の診断基準を用い,うつ状態の重症度評価にはハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale : HDRS)を用いた.また,本研究は山口大学倫理委員会の承認を得て行い,対象者には研究の趣旨について文書を用いて説明し,同意を得た.また採血はうつ状態と寛解状態の二時点で施行した. 気分障害患者の末梢白血球におけるSR蛋白質遺伝子群(SRp20, SRp30c, SC35, SRp40, SRp46, SRp54,SRp55, SRp75, ASF/SF2, 9G8)のmRNA発現量について検討したところ, SRp20 mRNA発現量が双極性障害患者群において健常者群より有意に高い値を示した.さらに,この発現低下は寛解状態でも認められたことから,SRp20 mRNA発現量の低下は双極性障害におけるtrait-dependentなものであることが示唆された.さらに,健常者でみられたGRβ/α発現量とSRp20mRNA量の相関が気分障害患者では認められなかった.この結果から,気分障害患者におけるSRp20を介したGRの選択的スプライシング異常が示唆された.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 渡辺 義文; 西田 朗; 末次 正知; 内田 周作
     
    我々は独自に開発したストレス脳内適応指標を用いてストレス脆弱性の存在を確認したFischer344ラットが、神経可塑性障害をストレス負荷によって呈しうるうつ病モデルとしての妥当性を有しているかを検討することを目的として研究を進めてきた。 ストレス適応能力の高いSprague-Dawlley(SD)ラットも、過剰なストレス負荷により不適応状態に陥り、海馬CA3神経樹状突起の萎縮を生じることを報告してきた。神経可塑性の指標として神経樹状突起のストレス負荷による変化を取り上げ、Fisher344ラットにおいて検討を行った。6時間拘束ストレスの3週間負荷でSDラットにおいて神経樹状突起の萎縮が生じるが、同様の過剰なストレス負荷によりFisher344ラットにどのような神経樹状突起の変化が生じるかをGolgi染色法を用いて検討した。 平成17年度の検討では、6時間拘束ストレスの2週間負荷により、Fisher344ラットのCA3神経樹状突起に萎縮がみられ、SDラットに比ベストレス脆弱性を認めたが、平成18年度はラット数を増やし、平成17年度の結果についてより詳細な確認を行うとともに、扁桃体基底外側核の神経細胞樹状突起についても検討を加えた。その結果、6時間拘束ストレスの1週間、2週間負荷によっても海馬CA1、CA3神経樹状突起(apical, basalともに)の長さ、branching point数、spine密度いずれもストレスを負荷しなかったコントロール群との間に有意な差は認められなかった。一方、扁桃体基底外側核のstellate neuronにおいては2週間ストレス負荷によりFisher344ラットは有意なspine密度の減少を示した。以上の結果は、Fisher344ラットは扁桃体におけるストレス脆弱性を有することを示唆している。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2004年 -2005年 
    代表者 : 末次 正知; 渡辺 義文; 西田 朗; 内田 周作; 橋本 学; 土屋 健; 有田 一信
     
    「ストレス適応破綻状態からうつ状態が発来し、脳内において神経可塑性が傷害され、神経細胞が死に至る」という「うつ病のストレス脆弱性・神経可塑性障害仮説」を、うつ病モデルラットであるWistar Kyoto(WKY)ラットを用いて検証することを目的とした。Wistarラットをコントロールとし、急性ストレスがセロトニン神経系に及ぼす影響を免疫組織化学法により検討した。Wistarラットノンストレス群、Wistarラット2時間拘束ストレス群、WKYラットノンストレス群、WKYラット2時間拘束ストレス群の計4群を設定し、各群それぞれ8匹とした。Wistarラットノンストレス群に比べ、WKYラットノンストレス群では、セロトニン神経線維の密度が疎であった。急性ストレス(2時間拘束ストレス)に対するセロトニン神経繊維の密度変化はWistarラットに比べ、WKYラットにおいて大きい傾向が認められた。この変化がセロトニン神経系に特異的であるかどうかを検討するため、ノルアドレナリン・ドパミン・アセチルコリンといった他の神経系に関しても、免疫組織化学法を施行し、前頭前野に絞って各群の差異を検討した。その結果、ドパミン神経系・ノルアドレナリン神経系・アセチルコリン神経系は,上記4群間に明確な差異は見出せなかった。WKYラットでは、Wistarラットに比べてセロトニン神経線維の密度が疎であったことは、SSRIの作用機序やCRHに対するセロトニンの抑制効果を考える時、興味深い結果であったが、今後、慢性拘束ストレスあるいは異なったタイプのストレスによる、セロトニン神経線維に及ぼす影響を検討する必要がある。また、ドパミン・ノルアドレナリン・アセチルコリン神経系関しては、前頭前野以外の部位においても検討することが必要である。

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