研究者データベース

今泉 祐治 (イマイズミ ユウジ)

  • 理事長・副理事長等 理事・副学長
メールアドレス: yimaizumphar.nagoya-cu.ac.jp
Last Updated :2024/04/26

研究者情報

学位

  • 東京大学薬学系研究科生命薬学/博士(薬学)

J-Global ID

プロフィール

  • 1976年3月 東京大学 薬学部 卒業

    1978年3月 東京大学 薬学系大学院 修士課程 修了

    1978年4月 名古屋市立大学 薬学部 薬品作用学講座 助手

    1981年12月 薬学博士(東京大学)

    1982年12月 名古屋市立大学 薬学部 薬品作用学講座 助教授

    1985年6月 カルガリー大学 医学部 生理学講座 長期海外出張(~1987年6月)

    1992年3月 日本薬理学会学術奨励賞受賞「各種平滑筋細胞の興奮性の多様性とその機序について」

    1997年1月 名古屋市立大学 薬学部 薬物治療学講座 教授

    2000年4月 名古屋市立大学 薬学部 薬品作用学講座 教授(担当替え)

    2002年4月 名古屋市立大学 大学院薬学研究科 細子分子薬効解析学分野 教授(改組)

    2005年4月 名古屋市立大学 大学院薬学研究科長・薬学部長(~2007年3月)

    2014年4月 名古屋市立大学 理事(研究・国際担当)・副学長 現在に至る

    2018年3月 日本薬学会賞受賞「疾患治療標的および創薬標的としてのイオンチャネル分子機能解明」

    2018年4月 名古屋市立大学 大学院薬学研究科 特任教授 現在に至る

研究キーワード

  • カルシウムシグナリング   バイオイメージング   イオントランスポーター   平滑筋   イオンチャネル   

研究分野

  • ライフサイエンス / 薬理学

経歴

  • 1978-1981 名古屋市立大学(薬学部)1981-1996 名古屋市立大学

学歴

  •         - 1976年   東京大学   薬学部   生命薬学

所属学協会

  • 日本神経科学会   日本生理学会   日本平滑筋学会   日本薬理会   日本薬学会   

研究活動情報

論文

書籍

  • 血管平滑節カルシウムチャネルの機能制御とその役割。
    循環器科 1998年
  • 「平滑節」
    薬学必携シリーズ 薬理学、第11章 朝倉書店 1997年
  • 「オータコイド・抗アレルギー薬」
    薬学必携シリーズ 薬理学、第8章 朝倉書店 1997年
  • Kチャネルと薬。
    ファルマシア(セミナー) 1997年
  • Regulation of Ca-dependent K current and action potential shape by intracellular Ca storage sites in some types of smooth muscle cells.
    1996年
  • Noradrenaline-induced Ca-channel current modulation in smooth muscles.
    1996年
  • 心血管以外の臓器に対するKチャネル開口薬の作用。
    治療学 1996年
  • 「下剤と止瀉剤」
    病気とくすり 南山堂 1994年
  • Effects of 9-methyl-7-bromoeudistomin D(MBED), a powerful Ca
    1993年
  • Ca拮抗薬の平滑節Ca電流に対する選択的抑制作用について
    1993年
  • 各種平滑節細胞の興奮性の多様性とその機序について
    日本薬理学会誌(日本薬理学会奨励賞受賞総説) 1993年
  • Electrical properties of iris sphincter.
    1992年
  • 「平滑節組織及び単離細胞からの電気現象誘導法」
    生物薬科学実験講座 臓器機能測定法(]G0003[)広川書店 1992年
  • Measurement of noninactivating calcium current in smooth muscle cells.
    1991年
  • A comparative study about voltage-dependent Ca currents in smooth muscle cells isolated from several tissues.
    1989年

MISC

受賞

  • 2018年03月 日本薬学会 日本薬学会賞
     疾患治療標的および創薬標的としてのイオンチャネル分子機能解明 
    受賞者: 今泉 祐治
  • 1992年03月 日本薬理学会 日本薬理学会学術奨励賞
     各種平滑筋細胞の興奮性の多様性とその機序について

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
    研究期間 : 2018年10月 -2022年03月 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 鈴木 良明; 鬼頭 宏彰
     
    炎症慢性化過程の細胞機能変動において、免疫担当細胞に機能発現するイオンチャネルがどのような病態生理学的意義を果たしているかは明らかにされていない。本研究の目的は、貪食機能を有する免疫担当細胞の活性化と、炎症慢性化による組織リモデリングにおける細胞内Ca2+濃度制御に関わるイオンチャネル群とその分子機構を解明し、炎症慢性化・組織リモデリングにおける新規治療標的イオンチャネルを探索・同定することである。 これまでの研究において、炎症性腸疾患モデルマウスの病態発症・悪化にtwo-pore型K+チャネルK2P5.1の発現・機能亢進による炎症性サイトカイン産生増加が関与すること、および炎症誘発性の低酸素環境によるHypoxia-Inducible Factor-1αシグナルの活性化がTリンパ球K2P5.1の発現亢進に関与することを明らかにした (Endo et al., 2020)。 また、炎症性腸疾患の回復期においてCa2+活性化K+チャネルKCa3.1の阻害がCD4+CD25+制御性Tリンパ球におけるIL-10発現・分泌を亢進させ、症状の改善に寄与することを明らかにした(Ohya et al., 2021)。 変形性関節症(OA)に対するCa2+シグナルの関係を明らかにするため、マウス初代軟骨細胞を用い、OA病変とイオンチャネルの関連を調べた。IL-1βがCa2+遊離活性化Ca2+(CRAC)チャネルを介した細胞内Ca2+濃度上昇によりNFATの核移行を促して、OAマーカー発現を担うことが示唆された。また、IL-1βの持続的処置により、電位依存性K+チャネルKv1.6の発現が低下し、膜脱分極・細胞内Ca2+濃度上昇が引き起こされ、OAマーカー誘導が増強されることを見出した。ヒト軟骨細胞株でClC3が浸透圧刺激による容量制御に関わることを見出した(Yamada et a., 2020)。 これまでの軟骨細胞に関する研究の総説を国際誌に発表した(Suzuki et al., 2020)。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
    研究期間 : 2016年04月 -2018年03月 
    代表者 : 今泉 祐治; 山村 寿男; 鈴木 良明
     
    本研究では、イオンチャネル標的創薬のための大規模高効率探索法の開発・実用化を目的とした。申請者らが独自に確立した独自のセルベースアッセイ系「1発の活動電位発生により確実に死ぬ細胞(PCT/JP2011/064967)」に対して、低濃度Ba2+を投与することで活動電位をより簡便に誘発する手法を開発した(特願2016-214685)。創薬標的チャネルとして様々な疾患発症に関わる2ポアドメインK+(K2P)チャネルを選択した。K2Pチャネルを上述の細胞に発現させたところ、K2Pチャネルの活性変化を細胞の生死で測定することに成功した。化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを進行中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2014年04月 -2018年03月 
    代表者 : 今泉 祐治; 山村 寿男; 鈴木 良明; 樋口 恒彦; 浅井 清文; 広野 修一
     
    非興奮性細胞(軟骨細胞や血管内皮細胞など)において、Ca2+活性化K+(KCa)チャネルやストア作動性Ca2+(SOC)チャネルなどが正帰還Ca2+制御機構の中心的分子として機能し、各種刺激応答や病態形成に関与することを明らかにした。軟骨細胞では大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネルチャネルやCa2+遊離活性化Ca2+チャネル(Orai1、Orai2)、ClC-3、ClC-7の発現変動がOA病態の形成に関与しうることを明らかにした。脳血管内皮細胞では低酸素刺激により、Kir2.1発現上昇→正帰還機構の亢進→細胞増殖の促進、という反応が起こり血液脳関門の崩壊機構の一端を担うことが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2015年04月 -2017年03月 
    代表者 : 今泉 祐治
     
    ①低酸素ストレスによる脳血管内皮細胞の異常な細胞増殖は、血液脳関門を破綻させ、低酸素脳症の悪化に関与することが知られているが、その分子機構については不明な点が多い。これまでの研究で、脳血管内皮細胞株であるt-BBEC117細胞は、低酸素ストレスによりストア作動性Ca2+流入を増大させるが、その分子実体であるOrai1/Orai2のタンパク質発現量は変化させなかった。本研究では、脳血管内皮細胞の膜電位制御に関与する内向き整流性K+チャネルであるKir2.1チャネルとその発現を調節するダイナミン2に注目した。低酸素ストレスによって、ダイナミン2の発現は増加した。ダイナミン阻害薬は、低酸素ストレス誘発性Kir2.1チャネルの発現増加と活性上昇を抑制した。低酸素ストレスによるダイナミン2を介したKir2.1チャネルの活性増大が、脳血管内皮細胞の異常な細胞増殖を起こすことから、この機構が低酸素脳症における血液脳関門の破綻に関連することが示唆された。
    ②平滑筋Ca2+マイクロドメインはタンパク質複合体のプラットフォームであり、効率的なシグナル伝達に重要であると認識されている。本研究では、筋小胞体とミトコンドリアを近接させるミトフュージン2の細胞内Ca2+動態における役割の解明を目指した。ミトフュージン2のノックダウンによって、アゴニスト誘発性Ca2+増加に伴う細胞質Ca2+緩衝能は緩徐になり、ミトコンドリアCa2+取り込み能は低下した。ミトフュージン2のmRNA発現は酸化ストレスにより増加し、その発現亢進は活性酸素のスカベンジャーによって抑制された。活性酸素誘発性のミトフュージン2発現亢進はミトコンドリアの融合を促進した。平滑筋Ca2+マイクロドメインにおいて、筋小胞体とミトコンドリアの機能連関を促進するミトフュージン2は、細胞内Ca2+制御におけて重要な機能を果たしていると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
    研究期間 : 2014年04月 -2016年03月 
    代表者 : 今泉 祐治; 山村 寿男; 鈴木 良明
     
    本研究課題では、イオンチャネル標的創薬のための革新的探索方法の開発を目的とした。本課題の研究成果は以下の通りである。 (1)HEK293細胞にKir2.1と変異型Nav1.5を定常発現させ、刺激による1発の活動電位発生により細胞死が引き起こされる細胞(新規作成細胞)を樹立し、維持法を確立した。さらに創薬標的候補となるイオンチャネルを発現させ、複数の作用薬を用いて細胞死測定による高効率探索が可能か試験的に評価したところ、パッチクランプに匹敵する精度の容量作用曲線が得られた。 (2)新規作成細胞を新規高効率スクリーニングシステムへ応用展開するため、96穴プレートで同時に電気刺激する装置を開発した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    研究期間 : 2013年04月 -2016年03月 
    代表者 : 山村 寿男; 今泉 祐治
     
    カルシウム活性化クロライド(ClCa)チャネルとして同定されたTMEM16Aに注目し、血管平滑筋における生理的意義の解明を目指した。マウス門脈平滑筋細胞において、TMEM16Aが高発現し、二量体でClCaチャネルを形成していた。その活性はアクチン骨格との相互作用による影響を受けた。TMEM16AはTMEM16Bとヘテロ二量体でClCaチャネルを形成できることが示唆された。肝硬変由来の門脈圧亢進症モデルマウスにおいて、門脈平滑筋細胞でのTMEM16Aの発現および機能が低下していた。本研究成果は、血管におけるTMEM16Aチャネルの生理機能と病態での役割を解明する上で重要な知見であると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2013年04月 -2015年03月 
    代表者 : 今泉 祐治
     
    (1)Ca2+クロックとイオンチャネルの機能連関によるペースメーカーモデル構築 3型リアノジン受容体(RyR3)を介したCa2+遊離がペースメーカー電位発生・調律・伝播に果たす役割を明らかにするため、Ca2+活性化Cl-チャネル(TMEM16A)を定常発現させたHEK293細胞に、RyR3受容体を発現させて検討を行った。巨大タンパクであるRyR3を安定的に発現させるためにバキュロウイルス系による遺伝子導入法を用いた。その結果、細胞内Ca2+濃度上昇に同期した細胞膜電位の脱分極が観測され、ペースメーカー細胞のCa2+クロックによるペースメーキングをHEK293細胞で再現することができた。 (2)Ca2+クロックによるペースメーキング電位発生機構の普遍性検討比較 Ca2+活性化Cl-チャネル(TMEM16 類)の分子機能として、Ca2+振動の電位変化へのシグナル変換素子としての機能を想定し、概日リズムの形成に関与する松果体でのTMEM16の発現及び機能の解明を目指した。これまで、松果体細胞における短周期のCa2+クロック機構が存在すること、またTMEM16A,TMEM16Bが高発現し、ヘテロ二量体を形成することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
    研究期間 : 2012年04月 -2015年03月 
    代表者 : 今泉 祐治; AZIZIEH Regis
     
    性ホルモンによるカリウムチャネル発現調節機構の解明 本研究の目的は男性生殖器系組織での男性ホルモン受容体刺激による情報伝達系が、BKチャネル機能発現を制御している可能性と疾患との関連を明らかにすることである。男性ホルモンの影響を調べるため、雄性Wistar/STラットに対して去勢手術を行ったCAST群、擬似手術を施したSHAM群、CAST群にテストステロンを経口投与したTES群、溶媒のみを投与したVehicle群を用いた。ユビキチン系がBKαの分解に寄与し、アンドロゲン受容体刺激により、強く抑制される可能性を示唆する予備的結果を得ていため、ユビキチン連結酵素(E3)のサブタイプの同定を試みた。その結果、Nedd4 mRNAが精管平滑筋において、高発現していた。更に、CAST及びVehicle群で発現が上昇する傾向にあった。共免疫沈降の結果、CASTにおいて、BKチャネルと結合するNedd4のタンパク量がSHAMと比較して有意に多かった。前立腺のアンドロゲン受容体発現に対して、ユビキチンプロテアソーム系の活性化を介した負帰還機構として働く因子に、PMEPA1(Prostate Transmembrane Protein, Androgen Induced 1)が知られている。ラット輸精管においてこのPMEPA1が発現するか、またテストステロンによってその発現量が影響を受けるか否かについて検討した。その結果、CAST、Vehicle群において、PMEPA1 mRNAレベルが有意に上昇していた。この現象はテストステロンの投与によって消失した。これら結果は、去勢によるテストステロンの減少がPMEPA1の発現量の上昇と、ユビキチンプロテアソーム系の活性化を介して、BKチャネル発現量を減少させることを示唆している。ヒト由来の初代培養前立腺平滑筋細胞に対して遺伝子導入あるいはsiRNA等を用いてより詳細な検討を試みた。しかし、この培養細胞ではBKチャネルのタンパク質発現が低かったため、実験を進めることができなかった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2011年11月 -2014年03月 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 樋口 恒彦; 浅井 清文; 広野 修一
     
    非興奮性細胞(血管内皮、リンパ球、軟骨、気道上皮等)において、Ca2+活性化K+(KCa)チャネルやストア作動性Ca2+(SOC)チャネルが正帰還Ca2+制御機構の中心分子として機能し、各種刺激応答や病態形成に関与することを明らかにした。脳血管内皮細胞や軟骨細胞において、CRACチャネルがSOCチャネルの分子実体であり、細胞増殖を制御することが判明した。炎症疾患モデル動物由来リンパ球においては、中コンダクタンスKCaチャネルの発現変化と病態の関連を明らかにした。また、気道繊毛細胞では、ATP感受性K+チャネルが正帰還機構に関与し、繊毛運動を増強させて気道クリアランスを亢進させることが判明した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    研究期間 : 2011年04月 -2013年03月 
    代表者 : 今泉 祐治
     
    本研究の目的は幾種類かの平滑筋組織においてペースメーカー電位発生源として認識されているカハール間質系細胞でのペースメーカー電位発生機構を再構築し、シミュレーションすることにより、ペースメーカー発生機構を解明することである。ミトコンドリア呼吸リズムは近傍の小胞体へのATP供給、小胞体Ca2+ポンプによるCa2+取り込み、そしてCa2+遊離を制御し、さらに小胞体から遊離されたCa2+の一部はミトコンドリアへ取り込まれ、呼吸を促進す可能性がある。この連鎖で、ミトコンドリアと小胞体間の機能的一体性が生じ、Ca2+オシレーションを安定的に発生させると推測している。細胞内Ca2+オシレーション発生装置としてCa2+遊離チャネルのリアノジン3型受容体をHEK293細胞に強制発現させると、一部の細胞で自発Ca2+遊離により、Ca2+オシレーションが発生する。特定のミトコンドリア呼吸周期と近傍小胞体からCa2+遊離を画像解析するため、1つの細胞からミトコンドリア膜電位と細胞内Ca2+濃度変化を僅かな時間差で画像解析する方法を開発した。さらにこのようなCa2+オシレーション発生装置として機能する特定のオルガネラ連関が、どのような分子機構で生じるのかを明らかにするため、細胞膜直下の小胞体と近傍のミトコンドリアの表面が、エバネッセント光領域で観察できることを全反射顕微を用いた1分子可視化法により確立した。一方、Ca2+活性化K+(SK2)チャネルを定常発現した細胞に、3型リアノジン受容体を一過性に発現させると、シグナル変換されCa2+オシレーションに同期した過分極オシレーションが生じた。Ca2+活性化Cl-チャネルであるヒトTMEM16AのcDNAを独自に単離し、hTMEM16A定常発現HEK細胞を作製脱分極性のペースペーカー電位の再構築を行う準備が完了した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
    研究期間 : 2011年 -2012年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男
     
    単純でありながら効率の高いイオンチャネル標的創薬スクリーニング系を創成するため、遺伝子改変イオンチャネルを発現させた1発の活動電位発生により細胞死が引き起こされる細胞を作成した。電位依存性 Na^+チャネル Kv1.5 の極めて遅い不活性化を示す点変異型 Na^+チャネルと内向き整流性 K^+チャネル(Kir2.1)を定常発現させた HEK293 細胞(基準細胞)を作成した。この細胞に電気刺激を加えると非常に長い活動電位が発生し細胞死をもたらした。さらに創薬標的となるイオンチャネル、特に再分極電流を発生する K^+イオンチャネルもこの細胞に定常発現させると、活動電位幅が短縮され細胞死は抑制された。標的チャネルの阻害薬存在下で刺激すると、阻害薬用量依存的に活動電位持続時間が延長され細胞死の確率が上昇した。本スクリーニング系は簡便な系であるにも関わらす、定量的なスクリーニングが可能であり、実用化が期待される。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 若手研究(B)
    研究期間 : 2011年 -2012年 
    代表者 : 山村 寿男; 今泉 祐治
     
    本研究では、全反射蛍光顕微鏡を用いて、 カルシウムマイクロドメインに集積する分子群を可視化解析し、このような複合体を安定化させる足場構造の同定を目指した。その結果、大コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの分子動態は、細胞骨格やラフト構造によって抑制的に制御されていることが示された。本研究成果は、血管平滑筋の興奮性を規定するカルシウムマイクロドメインの生理的意義の解明につながると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(A)
    研究期間 : 2008年 -2011年 
    代表者 : 樋口 恒彦; 梅澤 直樹; 加藤 信樹; 今泉 祐治
     
    任意の標的分子に対して、複数の化学平衡反応により経時的に親和性の高い分子を構築することを目指す本研究について次のような成果を得た。ホルミル基を3つ有するscaffold 1を用いて、複数のアミンとヘミンを共存させてアミン/アルデヒド.イミン平衡反応を行い、ヘミンの存在下に増加した生成物が、他の生成物より高いヘム親和性を示し、比較的高い抗マラリア活性も示した。水溶性を高めたscaffold 2の開発を行い平衡反応に用いた。ポルフィリン骨格にホルミル基前駆体を4カ所導入したscaffold 3を開発した。さらにscaffold 1と、剛直な屈曲したジアミンとの平衡反応を行うことにより、大きなケージ型超分子を選択的に得ることに成功した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2008年 -2010年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 浅井 清文; 樋口 恒彦
     
    軟骨細胞、血管内皮細胞、Tリンパ球などの非興奮性細胞においてCa^<2+>活性化K^<+>チャネル(BK, IK, SK)の機能発現が刺激応答における持続性細胞内Ca^<2+>濃度上昇に大きく貢献していることを明らかにした。その機序として細胞内Ca^<2+>濃度上昇により活性化された同チャネルが、過分極を誘発することにより、非選択性陽イオンチャネルの電気的駆動力を増加させ、容量依存性Ca^<2+>流入を増加させるという正帰還Ca^<2+>制御機構への寄与が重要であることを証明した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2008年 -2009年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男
     
    細胞膜上でイオンチャネルは他分子と特定の分子複合体(トランスポートソーム)を形成して、初めて正常な生体内機能を果たしている場合の多いことが明らかになりつつある。本研究は、平滑筋、およびペースメーカー細胞としての間質系カハール細胞、非興奮性細胞としての軟骨細胞におけるCa^<2+>活性化K^+チャネル(BKチャネルなど)とその他の細胞膜上のイオンチャネルやトランスポーターやカベオリン、更には小胞体膜上のリアノジン受容体との分子間連関の可能性とトランスポートソームの実体を一分子可視化法により明らかにすることを、目的としている。蛍光タンパクでラベルされたこれら分子の遺伝子を上記細胞に導入・発現させ、全反射顕微鏡で可視化するとともに、その機能を電気生理学的に解析した。 (1) リアノジン受容体とBKチャネルの機能連関を可視化するとともに、男性ホルモンによる発現調節機構を明らかにした(J Pharmacol Sci, 2009)。 (2) 軟骨細胞由来の培養細胞において、細胞内Ca2+濃度制御機構において、非選択的陽イオンチャネルとの機能連関により、BKチャネルなどのCa^<2+>活性化K^+チャネルが重要な役割を果たしていることを明らかにした(Am J Physiol, 2010)。またCl^-チャネルとの機能連関を明らかにした(J Pharmacol Sci, 2010) (3) Na^+-Ca^<2+>交換体を高発現したマウス膀胱平滑筋において、その生理機能を明らかにした。(J Pharmacol Sci, 2010)
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特定領域研究
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 村木 克彦
     
    <細胞内CAa^<2+>信号の電気信号への変換機構におけるトランスポートソーム機能と構造実体の解析>2型リアノジン受容体(RyR2)異型接合性欠損マウス膀胱平滑筋を用いてRyR2の寄与を明らかにした。膀胱平滑筋においてRyR2を介した自発Ca^<2+>遊離(Ca^<2+>spark)の発生とそのCa^<2+>信号をSTOCsという電気信号に変換するトランスポートソーム機能は,尿貯留・排泄調節という膀胱機能発現において根源的な果たす役割を果たすことが示され,当該トランスポートソームの実体はカベオラ構造内に存在することが強く示唆された。さらにこのような信号機構がカハール間質細胞において生じ,ペースメーカー電位発生の根源となっている可能性を再構築系を用いて明らかにした。 <大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+(BK)チャネルのβサブユニット特異的開口物質の発見>電位感受性蛍光色素のDiBAC_4(3)および関連オキソノール色素にBKチャネルβ1およびβ4サブユニット選択性(β2には無効)を有するBKチャネル開口作用があることを発見し,創薬の可能性を示した。 <一分子可視化によるCa^<2+>信号から電気信号への変換トランスポートソームの機能解析>トランスポートソームにおけるCa^<2+>信号から電気信号への変換に関する分子機構解明における新たな手法として一分子レベルでの可視化技術を導入した。全反射蛍光顕微鏡とホールセルクランプ法の併用により,電位固定化で細胞膜直下200nm以内でのナノスケールの蛍光分子動態が測定可能となった。また記録電極からCa^<2+>蛍光色素Fluo4を細胞内に導入し,脱分極刺激時の膜直下の局所Ca^<2+>濃度変化をナノスケールで計測することが可能となった。この方法を用いて電位固定化でのチャネルを中心としたトランスポートソーム機能の定量的ナノイメージング解析を行った。トランスポートソームの信号変換分子機構を解明する上で一分子可視化技術は画期的な技術となる可能性を示した.
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2005年 -2007年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 戸苅 彰史
     
    脳神経等の興奮性細胞では、強い刺激と興奮により細胞にCa^<2+>負荷が生じた場合、自己防衛的にスパイク発生頻度を減じてCa^<2+>過負荷による細胞障害を回避するシステムが存在する。特にCa^<2+>活性化K^+チャネルはその活性化により、過分極を介して電位依存性Ca^<2+>チャネル活性を低下させるため、多くの興奮性細胞において最も基本的な[Ca^<2+>]_i負帰還調節機構を担う重要な分子と認識されている。本研究はCa^<2+>活性化K^+チャネルの分子制御機構の解明を基盤とした創薬研究を目的としている。研究期間内に以下の事柄を明らかにした。(1)脳血管内皮細胞に発現している小コンダクタンスCa^<2+>依存性K^+(SK)チャネルがアストロサイトなどから遊離されたATP刺激による内皮細胞増殖促進機構において、極めて重要な機能を果たしていることを発見し、創薬ターゲットとしての可能性を示した(JBC,2006)(J Pharmacol Sci,104,2007)。(2)型リアノジン受容体(RyR2)異型接合性欠損マウス膀胱平滑筋を用いて、[Ca^<2+>]_i負帰還調節機構へのRyR2と大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+(BK)チャネルの寄与を明らかにし、尿貯留・排泄調節という膀胱機能発現において生理的に重要であることを示した(J Physiol,2007;J Pharmacol Sci,103,2007)。(3)電位感受性蛍光色素として創薬探索に汎用されているオキソノール化合物がβ1サブユニット選択的なBKチャネル開口作用を有することを発見し、BKチャネルβサブユニット選択性のある初めての化合物として創薬シーズの可能性を示した(Mol Pharmacol,2007)。(4)本態性高血圧症モデルラット(SHR)の大血管において細胞外液酸性の状態で収縮が著しく増強されることが知られていたが、高血圧の補償として発現促進されたBKチャネル機能更新と酸性時に活性が抑制される特有の機構が主な原因であることを見出した(Am J physiol,2007)。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 萌芽研究
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男
     
    全反射蛍光顕微鏡を利用して、生きた細胞内で機能している細胞内小器官、特に小胞体の膜上に存在する特定の蛋白質(特にはリアノジンCa^<2+>遊離チャネル)のリアルタイムでの機能を一分子可視化法により、解明することを試みた。さらにその技術を一般化し、その他の小胞体上の蛋白質、あるいはその他のオルガネラ(ミトコンドリアなど)の膜表面蛋白を一分子可視化し、その機能解析に新分野を切り開くための端緒とするべく検討した。 (1)膜電位固定下で平滑筋細胞膜上の1分子のまたは凝集した分子群のCa^<2+>チャネルが脱分極で開口することにより、細胞膜直下の筋小胞体からのリアノジン受容体を介したCa^<2+>遊離を可視化することに成功した(07年日本薬理学会年会発表;論文投稿準備中)。 (2)YFPでラベルされた2および3型リアノジン受容体をHEK293細胞に発現させ、リアノジン受容体開口による自発的Ca^<2+>遊離現象を一分子可視化することを試行している。 (3)CFPラベルされた大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+チャネルをHEK293細胞に発現させ、機能的クラスター形成の過程を一分子可視化法により明らかにした。また(2)と同時に発現させることにより両分子の機能連関の可視化を検討している。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 萌芽研究
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進
     
    現在、汎用されている代表的なオキソノール系蛍光色素としてDiBAC_4(n)やDisBAC_4(n)などが挙げられる。陰イオンであるDiBACは細胞膜を良く透過するため、細胞外液中に存在させると膜電位差が減少した時には細胞内へより多く分布し、不特定の細胞質蛋白と結合して、細胞内からの蛍光強度を増す。細胞外のfreeのDiBACは微弱な蛍光しか発しない。アーチファクトが生じやすい理由は、本来は極めて短い色素の蛍光寿命が、不特定の細胞質蛋白との結合により延長されて測定が可能となっているという根本的な測定原理に由来する。蛋白と色素の結合に影響を与える化合物は、イオンチャネルに作用しなくても蛍光強度を変化させるからである。上記の欠点を解消するため、次のような系を考案した。DiBAC系膜電位感受性蛍光色素に標識化学構造を化学合成により付加した。一方、その標識部位を特異的に認識する蛋白を遺伝子導入により細胞に高発現させることを試みた。付加的化学構造を持つ色素は特異的結合蛋白に優先的に結合するため、不特定の細胞内蛋白との結合は防がれ、かつより高効率の蛍光を発することが可能性となると考えた。構造が比較的単純な精巣型アンジオテンシン転換酵素タンパクの一部とその阻害薬カプトプリル類縁化合物の利用を検討した。特異的結合蛋白を低分子化することにより色素との結合・解離速度を上昇させることができると想定した。以上から、当方法によりアーチファクトの減少と反応速度の上昇が得られると推測し検討を加えたものの、現在のところ従来と比較して明らかな反応速度の変化は観察されていない。DiBACが既に細胞質のタンパクのうちでも比較的低分子なものに良く結合していた可能性、まだ低分子化が不足している可能性、細胞内では何らかの理由で結合能が低下しているなどの理由が考えられるのでさらに検討が必要である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2002年 -2004年 
    代表者 : 今泉 祐治; 村木 克彦; 大矢 進; 大和田 智彦
     
    神経・筋などの興奮性細胞において、Ca^<2+>過負荷による障害発生の抑制には、電位感受性Ca^<2+>チャネル活性に負の帰還をもたらすCa^<2+>依存性K^+チャネルの機能亢進が有効と考えられている。Ca^<2+>依存性K^+チャネルの一つであるBKチャネルの開口物質は、緊張性膀胱(頻尿)治療・脳虚血障害軽減などの作用が期待されている。ピマル酸関連化合物の構造活性相関から開口作用を示す新たな基本化学構造が明らかにすることができ、誘導体合成により現在知られている最強の活性を持つ化合物を得ることができた。BKチャネルはα(1種類)およびβサブユニット(4種類)の組み合わせにより異なった性質を示し、組織及び部位特異的な性質の差異の要因となっている。ピマル酸誘導体はαサブユニットに作用すること、電位感受性を増大させることが明らかになった。さらに心筋ミトコンドリアに存在するBKチャネル開口作用を示し、虚血時に心筋保護作用を示す可能性を示すことができた。 消化管などでは間質細胞において自発性の細胞内Ca^<2+>濃度変化がCa^<2+>依存性イオンチャネルを制御することにより、電気信号に変換され組織内を伝播されるため、組織に規律ある連動した運動をもたらすことが知られている。その機構の詳細は不明であるため、またペースメーカー機能に作用する薬物のスクリーニング系が存在しないため、ペースメーカー機能のモデルを再構築系で作成することを試みた。消化管間質細胞において細胞内Ca^<2+>遊離チャネルである3型リアノジン受容体mRNAが発現していることが明らかとなったので、3型リアノジン受容体遺伝子を非発現培養細胞に導入したところ、消化管から得た組織小片の系と極めて類似した自発性Ca^<2+>遊離が観察された。消化管ペースメーカーモデル構築の基盤となる可能性が示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -2000年 
    代表者 : 渡辺 稔; 大矢 進; 村木 克彦; 今泉 祐治
     
    単離平滑筋細胞に電位固定法を適用し、膜電流を記録するとともに、記録電極内からfluo-3を細胞に負荷しレーザー共焦点顕微鏡を用いて細胞内Ca^<2+>分布画像を同時に取得する手法を用いて、精管・膀胱・門脈等の興奮性の高い平滑筋細胞における興奮収縮連関の画像解析とCa^<2+>依存性K^+チャネル活性化の解析を行い、次の知見を得た。(1)細胞膜直下に局在する特定の筋小胞体(の一部分)は、活動電位などの脱分極時に、電位依存性Ca^<2+>チャネルを介したCa^<2+>流入によるCa^<2+>遊離機構の起点となり、数百ミリ秒持続するCa^<2+>ホットスポットを形成する。(2)膜直下筋小胞体からの局所遊離Ca^<2+>によるK^+チャネル活性化は、活動電位波形を制御し活動電位発生頻度を調節する。(3)この局所Ca^<2+>遊離は他の筋小胞体へCa^<2+>遊離を伝播した場合にのみ、収縮を誘発する可能性が高い。(4)このようなCa^<2+>ホットスポット形成という特定機能を持つ膜直下筋小胞体の数は、1細胞当り比較的少数(<20)と考えられる。 一方、保持電位-40mV付近での観察から、膜直下の特定の筋小胞体(数箇所)から、自発的な一過性局所Ca^<2+>遊離(Ca^<2+>スパーク)が繰り返し生じ、近傍の細胞膜上のCa^<2+>依存性K^+チャネル(10-100個)を活性化することにより自発性・一過性の外向き電流(STOC)が生じることが示唆されている。Ca^<2+>スパークとSTOCの持続時間は半値幅50ミリ秒程度で、その発生に外液Ca^<2+>の流入は直接必要ではなく、特定の筋小胞体からのリアノジン受容体を介する自発性Ca^<2+>遊離によると考えられる。今回、上記の活動電位発生初期に重要な働きをする特定の筋小胞体のさらに一部で、Ca^<2+>スパークがほぼ定期的に生じるていること、それがSTOCと完全に同期していることを画像解析と膜電流の同時記録により明らかにした。Ca^<2+>スパークは心筋や骨格筋において興奮収縮連関の最少ユニットとして解析されている。一方、横行小管と筋小胞体の発達が悪い平滑筋においては、細胞膜直下の筋小胞体で生じるCa^<2+>スパークが細胞膜上のCa^<2+>依存性イオンチャネルを活性化して静止膜電位や興奮性、さらに筋緊張度の調節に関与していることが明らかとなった。静止時にSTOCを活性化するCa^<2+>スパーク部位は、脱分極時にはより大きく増幅され持続するCa^<2+>ホットスポット部位となる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1999年 
    代表者 : 渡辺 稔; 大矢 進; 今泉 祐治
     
    自律神経、特に副交感神経を外科的に徐神経した場合に、支配組織の平滑筋に生じる非特異的な収縮反応増大現象の機構を、最近明らかになりつつある平滑筋収縮蛋白系のCa^<2+>感受性増大機構と関連付け、スキンドファイバーを用いた薬理学的手法及びRT-PCR法を主に用いた分子生物学的手法により解明を試みた。AF64Aをラット前眼房内微量注入することにより毛様体神経節切除による副交感神経徐神経と類似の状態を作成することに成功した。ムスカリン受容体サブタイプのうち、ラット虹彩においてm2,m3,m4のmRNA量が高発現していることを定量的PCRにより示し、それぞれをRT-PCR法でクローニングしたところ、それぞれ既知のものと相同かまたは相同性が高かった。AF64A処置した虹彩ではm2とm3が増大、m4が減少していた。またAF64A処置した虹彩縮瞳筋に生じる非特異的な収縮増大が、収縮蛋白系のCa^<2+>感受性の増大を伴っているかについて筋小胞体機能を破壊したスキンドファイバーを用いて検討したところ、収縮蛋白のCa^<2+>感受性は僅かに増大していることが明らかとなった。この増大はプロテインキナーゼC抑制薬H-7により消失した。一方、最大収縮はスキンドファイバーにおいても非スキンドファイバーと同様に、徐神経により役1.5倍増大した。この最大収縮増大は収縮蛋白のアクチン、ミオシンや、収縮制御蛋白カルモジュリン、カルデスモン、カルポニンの量的変化では説明できないことが明らかとなった。
  • 心血管系病態でのイオンチャネル発現変化とその機構
    研究期間 : 1998年 -1999年
  • 電位依存性一過性Kチャネルのアラキドン酸感受性と遺伝子解析
    研究期間 : 1998年 -1999年
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1997年 
    代表者 : 渡辺 稔; 村木 克彦; 今泉 祐治
     
    心室筋や平滑筋の細胞内Ca^<2+>濃度は、特に外的刺激のない状態においても均一あるいは一定ではない。筋小胞体から、Ca遊離チャネルであるリアノジン受容体を介して自発的なCa遊離が局所的に生じる現象を、Ca蛍光色素と共焦点蛍光顕微鏡などを用いることにより数十ミリ秒間のCaスパークとして可視化することができる。我々は高速共焦点蛍光顕微鏡を用い平滑筋細胞においてCaスパークの2次元画像解析を行うとともに、自発性一過性外向き電流を室温で同時記録した。Caスパークが細胞内数箇所で見られる場合にも、スパークの中心が細胞膜から1μm以上離れている場合は明確に同期した外向き電流は観察されないことから、細胞膜と非常に緊密な位置関係にある筋小胞体だけが自発性一過性外向き電流を生じさせ得ると考えられる。興奮性の高い膀胱や精管の平滑筋細胞では、膜電位固定下での脱分極によりまずCa電流が活性化され、その後にCa依存性K電流(1_)が活性化される。1_の活性化は極めて速やかで、+10mVでは20ミリ秒以内にピークに達する。Ca画像解析によるとCa濃度の上昇は細胞膜に沿って均一に生じるのではなく、細胞膜直下に数個から20個程度の直径1μm以下のCaホットスポットが1_の発生と同時に生じ、その後、徐々に広がり百ミリ秒以上続いて細胞全体のCa濃度が上昇することがわかった。Caホットスポットは電位依存性Caチャネルを介して流入したCa細胞膜直下の筋小胞体からCaを遊離させることによって生じると考えられる。活動電位の発生によっても同様のCaホットスポットが観察された。平滑筋において細胞膜直下の筋小胞体の一部は、リアノジン受容体を介するCa遊離により局所Ca動態に重要な生理的役割を持ち、BKチャネル活性を制御することにより、活動電位の波形や発生頻度および静止膜電位の調整を行うとともに、興奮収縮連関でのCa遊離連鎖の起点となる可能性が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1997年 
    代表者 : 渡辺 稔; 大矢 進; 今泉 祐治
     
    平成9年度では、まずラット虹彩部位からRT-PCR法を用いてムスカリンm4受容体をクローニングしたが、脳由来のm4と完全に相同であった。さらにm1,m2,m3およびm4のmRNAの発現についてRT-PCR法を用いて定量することを平成8年度に引き続き試みた。しかし特にm2とm4については、プライマーの選択によりPCR増幅効率がかなり変ったので、サブタイプ間の比較については定量的に記述することが困難と思われる。しかし他の平滑筋組織に比べ、虹彩においてm4が多く発現していること、m1とm5サブタイプのmRNA発現は他の平滑筋同様に虹彩においても少ないことは確かであった。さらに虹彩平滑筋に対する副交感神経除去効果の機序を検討するため、毛様体神経節を除去したラット虹彩からRNAを得て、これまでと同様にRT反応によりcDNAを作製し、PCRにより各種ムスカリン受容体サブタイプのmRNA発現量の変化を検討した。その結果、これらのmRNA量には顕著な変化の無いことが示唆された。カルモジュリン、ミオシンやミオシン軽鎖キナーゼなどの収縮蛋白mRNA発現量の変化についてはまだ検討中である。また、画像解析により虹彩散瞳筋の細胞内Ca^<2+>濃度は、静止時緊張を持たない縮瞳筋や他の平滑筋に比べ高いことが明らかとなった。ムスカリン受容体刺激により細胞内Ca^<2+>濃度の低下が生じたので、弛緩はこの機序によるものと推測される。副交感神経除去した虹彩散瞳筋ではムスカリン受容体刺激により細胞内Ca^<2+>濃度減少も弛緩も生じないことも明らかとなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1997年 
    代表者 : 渡辺 稔; WALSH Michae; GILES Wayne; 大矢 進; 村木 克彦; 今泉 祐治; WALSH Michoe; WALSH Micha; GILES Wayhe
     
    心筋・平滑筋においてAタイプK電流を担うKチャネルは異なる遺伝子産物であるという可能性が、単離細胞を用いた電気生理・薬理学的実験結果から得られた。そこでRT-PCR法を用いてこの可能性を検討し、かつ平滑筋のAタイプKチャネルをクローニングした。AタイプKチャネルをコードする遺伝子として脳や心筋でKv1.4,4.2,4.3が挙げられている。これらのmRNA発現レベルをラット平滑筋組織で検討し、心筋・脳と比較したところ、平滑筋ではKv4.3が主要なものであった。さらに平滑筋のKv4.3はこれまで脳で報告されていたKv4.3(Kv4.3M)の遺伝子多形の一つで、C端末付近に新規の連続したアミノ酸配列19個を含むことが明らかとなった(Kv4.3L)(FEBS Letter,1997)。ラット心筋では従来報告されていたKv4.3Mよりも4.3LがmRNAのレベルで多かったが、脳ではKv4.3Lが少なかった。また、Kv.1.4,4.2,4.3M,4.3LをHEK293細胞に発現させ、その電気生理学的性質を比較検討した。Kv4.3Mと4.3Lは活性化・不活性化の電位依存性や不活性化からの回復時間およびアラキドン酸感受性に関して有意な差が無かった。19アミノ酸が付加されている生理的意義についてはまだ不明である。一方、大コンダクタンスCa^<2+>依存性K^+チャネルと電位依存性L型CaチャネルのmRNA発現を各種平滑筋で比較検討し、興奮性の差異の説明が一部可能であることを見出した。すなわち興奮性の低い大動脈と高い精管の平滑筋細胞において、細胞全体のBKチャネルおよびCaチャネル電流密度は明らかに精管において数倍高い。一方、mRNAの発現はCaチャネルでは精管で数倍高いものの、BKチャネルでは同等であった。摘出パッチ法を用いた単一チャネル記録を行うと、確かにBKチャネルの密度は大動脈と精管で同等であった。大動脈においてCaチャネル電流が増大しても流入するCa量の増大によりBKチャネル活性かそれ以上に増大されるので興奮性は増大しない。以上よりCaチャネルの発現が少ない平滑筋においてもBKチャネルは高発現しており、低興奮性(膜電位の安定性)に大きく寄与していると思われる。
  • 気道平滑筋細胞のカルシウム依存性クロライドチャネルと気道過敏症
    研究期間 : 1996年 -1997年
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1994年 -1995年 
    代表者 : 渡辺 稔; 大矢 進; 今泉 祐治; 山原 なつき
     
    本研究の目的は、虹彩散瞳筋においてムスカリン受容体刺激で生じる弛緩の機構を分子薬理学的に解明することである。まず、弛緩に関連する受容体が、既に報告されている5種類のムスカリン受容体のどれに該当するかを薬理学的に検討した。その結果M3かその亜型のムスカリン受容体を介することが示唆された。また、その受容体活性化から弛緩反応までの情報伝達系に百日咳毒素感受性のGTP結合蛋白質が関与していることが明らかとなった。さらに、ムスカリン受容体のサブタイプの同定を遺伝子のレベルで検討した。m2、m3受容体の翻訳領域を完全に含むようにPCRプライマーを各々デザインし、RT-PCR法に従いラット眼球RNAから目的とするPCR産物を得た。m2受容体については約1,400塩基対、m3受容体については約1,800塩基対のPCR産物であった。これらの産物は、大腸菌ベクターに組み込み、遺伝子配列を決定した。ラット眼球m2受容体については、ラット心臓由来m2受容体と比較して9個のアミノ酸が異なり、それらの多くがGTP結合蛋白質との連関に重要な細胞内第3ループに存在した。また、ラット眼球m3受容体については、ラット脳m3受容体と比較して4個のアミノ酸が異なり、細胞内第2、第3ループに存在した。さらに、細胞内第3ループをターゲットとしたRT-PCRにおいて、ラット虹彩周辺の組織にm2、m3受容体遺伝子が豊富に発現していることが明らかになった。一方、特異的なコリン取り込み抑制薬であるAF64Aをラット前眼房に微量注入することにより、ムスカリン受容体刺激による弛緩が消失することを見いだし、その機構を薬理学的に検討した。その結果、散瞳筋がもつ静止張力や、ノルエピネフリンやセロトニンによる収縮には優位な影響を与えず、この弛緩だけを消失させることが明らかとなった。 現在、眼球m2、m3受容体を培養細胞に発現させ、薬理学的・免疫学的手法により薬物結合実験・セカンドメッセンジャーの定量・共役するGTP結合蛋白質の同定・組織分布等を考察しているところである。また、AF64A処理後に虹彩筋においてムスカリン受容体mRNAレベルに変化があるかどうかなどを検討中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1994年 -1995年 
    代表者 : 渡辺 稔; WALSH Michae; GILES Wayhe; 宇山 佳明; 大矢 進; 村木 克彦; 今泉 祐治; GILES Wayne
     
    細胞膜一回貫通型のmini K(あるいはlsK)チャネルは腎臓において最初に発見・クローニングされた。その後、心筋を含む多くの組織でmRNAの存在が同定されており、平滑筋組織としては子宮で見出されている。心筋の遅延整流性K電流は2つの成分からなっており、そのうちの活性化の遅い成分を担うKチャネルについては不明な点が多く、遺伝子レベルで完全に同定されてはいない。lsKをその候補のうちの1つに挙げている研究者もいる。平滑筋での知見は子宮に限られている。そこで血管を含めた多くの平滑筋組織から総RNAを抽出し、既に知られているlsKチャネルcDNAをもとに作製したプライマーを用いて、RT-PCR法により総RNAを鋳型にして解析した(RT-RCR法をCalgary大で習得した)。その結果、大動脈、十二指腸、回腸、気管、膀胱からPCR産物が得られ、その塩基配列はどの組織においてもlsK遺伝子と100%相同であった。また発現の程度も各平滑筋間で同様であった。この部分の結果は投稿準備中である。 交感神経や内皮細胞の機能を薬物により除去した腸間膜動脈の潅流標本において、細胞膜2回貫通型の内向き整流性Kチャネル(IRK1)をやや選択的に抑制する低濃度のBa^<2+>を、他種のKチャネルを抑制するグリベンクラミドや低濃度のテトラエチルアンモニウムの存在下に潅流液に加えると、潅流圧が上昇した。この結果は腸間膜平滑筋の静止膜電位の維持にIRK1が寄与しており、Ba^<2+>によるIRK1抑制は平滑筋細胞に脱分極を引起こし、電位依存性Caチャネルを介するCa流入を増大させていることを示唆している。そこでIRK1遺伝子をウサギ腸間膜動脈からクローニングするため、心筋IRK1遺伝子をもとにプライマーを作製し、腸間膜動脈から得た総RNAを鋳型にしてRT-PCR法を適用した。およそ1400塩基対の長さを持つPCR産物が得られたので、これを2つの制限酵素を用いて3つの部位に分けてサブクローニングした。その結果、塩基配列はウサギ心筋IRK1と100%相同であった。さらに、内皮細胞を注意深く除去した腸間膜動脈から得たRNAからも同じPCR産物が得られたので、おそらく平滑筋由来のIRK1遺伝子と考えられる。このcDNAからcRNAを作製し、アフリカツメガエル卵母細胞に注入したところ、当然のことながら低濃度Ba^<2+>により抑制される内向き整流性K電流の発現が観察された。一方、ウサギ腸間膜動脈から単離した平滑筋にwhole-cell clamp法を適用したところ、Ba^<2+>感受性の内向き整流性K電流は極めて小さいが存在していることがわかった。他種のK電流も静止膜電位付近では極めて小さいので、幾つかの種類のKチャネルが静止膜電位の維持に寄与しており、IRK1はその一つと考えられる。以下は名市大・薬学部で行われた。これらのことから、抵抗血管の腸間膜動脈の平滑筋細胞にも心筋と同じIRK1が存在し、重要な生理的機能を果していることがウサギにおいて強く示唆された。今後、さらにin situ hybridizationを行って、腸間膜動脈の平滑筋細胞にIRK1が発現していることを示す必要がある。この部分はCalgary大で行われる予定である。 ヒト、ウサギ、ラットなどの心房筋・心室筋細胞に存在するCa非依存性の一過性K電流(A電流)と類似の電流が平滑筋細胞にも存在するが、その生理的な意味は異なっていることを我々は既に明らかにしている。このKチャネルはラット心筋においてはKv4.2かKv1.4が主であると報告されている。そこでラットの血管を含む機種かの平滑筋においてA電流を担っているKチャネルを遺伝子的に同定するため、ラット脳由来のKv1.4とKv4.2の遺伝子をもとにそれぞれプライマーを作製し、ラット平滑筋RNAを鋳型にRT-PCR法を用いて解析した。PCR産物が得られたので、今後サブクローニングを行い塩基配列を決定する予定である。Calgary大ではラット脳由来Kv1.4のKチャネルをGH3細胞に発現させ、外液K濃度変化によるチャネル活性の変化やKチャネル抑制薬の作用を検討した(投稿準備中)。 RT-PCR法を用いてクローニングしたcDNAの哺乳動物培養細胞への形質移入について、名市大での成功率が非常に低いので、その検討をCalgry大に人員を派遣して検討した。またIRK1と他の2回貫通型Kチャネルのキメラ遺伝子の作製法の検討のためCalgary大に人員を派遣した。今後これらの技術力の上昇により各テーマの新たな進展が期待される。
  • ラット胃セロトニン受容体に関連した低分子量タンパクの遺伝子クロ-ニングと発現
    研究期間 : 1994年 -1995年
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1992年 -1993年 
    代表者 : 渡辺 稔; 今泉 祐治
     
    本研究は、自律神経組織と平滑筋の同時培養により神経筋接合部を再形成させ、シナプス伝達の機序を電気生理学的手法及び細胞内カルシウム(Ca)濃度変化測定の手法を用いて明らかにすることを目的とした。標本としては、交感神経系の上頸神経節と効果器の精管・虹彩縮瞳平滑筋を組み合わせて用いた。また、効果器には心筋も用いた。幼若ラット上頸神経節・心臓、成熟モルモット精管・虹彩縮瞳筋を酵素で処理し、単一細胞を得た後、短期初期培養(1〜7日間)を行った。 培養前後の神経・平滑筋単一細胞にホールセルクランプ法を適用し、膜電流の種類・性質(主にCa依存性K電流[Ik-ca])をそれぞれの電流を特異的に抑制する薬物を用いて比較したが変化は見られなかった。神経・平滑筋細胞の同時培養は、単独培養に比べ著しく成功率が低く、シナプス形成の確認は電子顕微鏡を用いた形態学的な観察に留まった。更に、比較的容易に培養が行える心筋細胞を用いて、神経細胞との同時培養も試みたが結果は同じだった。同時培養を行う過程で、細胞内Ca貯蔵部位が膜興奮性に及ぼす影響を検討するため、小胞体(SR)Caポンプの特異的抑制薬であるサイクロピアゾン酸(CPA)の作用を検討した。CPAによるSR貯蔵Caの減少は、特に活動電位の再分極に寄与しているIk-caの減少をもたらし、神経・平滑筋細胞の興奮性を増大させることが明らかとなった。また、培養細胞に先立ち、モルモット単一心筋細胞にCa蛍光指示薬(Fluo-3AM)を取り込ませ、共焦点レーザー顕微鏡を用いて心筋細胞全体の細胞内Ca濃度変化を観察したところ、通電刺激・興奮性薬物投与により細胞内Ca濃度の上昇が見られた。 以上により、初期培養による細胞を用いて同時培養を行っても、充分、生体内の神経筋接合部のモデルとして利用できる可能性が示唆された。よって、同時培養さえ定常的に成功すれば、上記手段を用いることによってシナプス伝達の機序の解明が期待できる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1992年 -1993年 
    代表者 : 渡辺 稔; MICHAEL Wals; WAYNE Giles; 村木 克彦; 今泉 祐治; ANTHONY Kana
     
    1.心筋・平滑筋の早期不活性化電流のアラキドン酸による制御の違い ヒトやウサギ心房筋細胞の活動電位の形状は刺激頻度に強く依存する。これは活動電位の早期再分極相を形成する早期不活性化K電流の大きさが刺激頻度依存性を持つからである。一方、モルモット門脈、精嚢、精管、結腸、尿管、胃底部などの平滑筋においても早期不活性化K電流の存在することがわかってきた。心筋・平滑筋の早期不活性化K電流は電流としての性質は、活性化・不活性化の電位及び時間依存性や4-aminopyridineに感受性が高いなどの点で非常に似通っている。しかし細胞での機能は心筋と異なり再分極電流としてよりも脱分極の初期にCa電流と拮抗する電流として働き、活動電位の発生を抑制する、あるいは発射のタイミングを調節する。アラキドン酸が各種平滑筋細胞において1μM低濃度で同じ様に早期不活性化K電流を50%抑制する事を見出した。心房筋細胞と比較したところ、ウサギ心房筋では抑制に30μM以上の高濃度を必要とするため、生理的役割は平滑筋において遥かに重要であると考えられる。ウサギ心房筋だけでなく、早期不活性化K電流を持つ数種の動物の幾種かの心筋において検討したが、同様の結果であった。化学伝達物質を含む多くの生理活性物質がフォスフォリパーゼA2を活性化しアラキドン酸を遊離するからである。尚、アラキドン酸の代謝物であるプロスタグランディンE1とF2αには早期不活性化K電流抑制効果はなかった。またアラキドン酸による抑制はシクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、あるいはスーパーオキサイドデスムターゼの阻害薬で影響を受けなかったが、リン脂質依存性蛋白燐酸化酵素(Cキナーゼ)阻害薬により一部抑制された。心房筋ではCキナーゼの活性化により早期不活性化電流が減少することが知られているので、アラキドン酸による修飾が平滑筋で強いのは興味深い(投稿準備中)。 2.心筋・平滑筋遅延整流型K電流のClass III抗不整脈による修飾の違い Class III抗不整脈薬は心筋を抑制することにより活動電位の持続時間と不応期を延長させる。心筋細胞の膜電流の内では遅延整流型K電流を選択的に抑制するとされているが、血管などの平滑筋細胞の遅延整流型K電流に対する作用は検討されていない。特に冠状動脈平滑筋と心筋の遅延整流型K電流のClass III感受性の違いを集中して検討した。ウサギ心房筋やモルモット心室筋細胞の遅延整流型K電流は、Class IIIのE-4031(1μM)やMS-551(10μM)によってそれぞれ80%以上・約60%が抑制された。一方、ブタ冠状動脈平滑筋細胞の遅延整流型K電流は30μMのE-4031や100μMのMS-551で若干の抑制が観察されたにとどまった。しかしClass Iの抗不整脈薬であるが遅延整流型K電流も抑制する事が知られているキニジンによって心筋・平滑筋の遅延整流型K電流はNa電流抑制に有効な濃度(1μM)において同程度(約50%)抑制されることがわかった。冠状動脈平滑筋の遅延整流型K電流を4-aminopyridineで抑制すると刺激物質による収縮が著しく増大されたり、自動運動が発生したりするので、心筋細胞の遅延整流型K電流に対する抗不整脈薬の選択性は充分注意されなければならない(投稿準備中)。 3.4級アンモニウム塩による平滑筋感受性増大 心筋と平滑筋細胞の収縮機構の違いの一つとしてそのCa動員機構の違いが挙げられる。心筋ではイノシトール三燐酸(IP_3)を2次伝達物質とする筋小胞体からのCa遊離はあまり生理的意義があまり認められていないが、平滑筋ではその収縮の中心的役割を果しているとされている。小胞体からのIP_3によるCa遊離はKの小胞体内への流入と連関しているとされており脳の小胞体ベジクルからのIP_3によるCa遊離がKチャネル拮抗作用を持つ4級アンモニウム塩によって阻害されることが報告されている。従って、心筋と平滑筋でのIP_3によるCa遊離機構に4級アンモニウム塩がどのように作用するか比較検討する事を試みた。ところが脳では最もIP_3によるCa遊離を抑制すると報告されているtetrahexylammoniumにより平滑筋においては収縮系のCa感受性が著しく上昇し、その作用はCa遊離抑制作用よりもはるかに大きいことが明らかとなった。そのCa感受性増大の機序にはCa-カルモジュリン、ミオシン軽鎖キナーゼの活性・機能上昇さらにミオシン脱燐酸化の抑制は含まれていないことが明らかとなった(Pflugers Archiv)。
  • 各種平滑筋細胞におけるCaチャネル活性調節機構の多様性とそのメカニズム
    研究期間 : 1992年 -1993年
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1990年 -1991年 
    代表者 : 渡辺 稔; 河合 智之; 今泉 祐治
     
    本研究は、自律神経節組織と平滑筋の同時培養により神経筋接合部を再形成させ、シナプス伝達の機序を電気生理学的手法、及びCa濃度変化測定の手法を用いて明らかにすることを目的とした。標本としては交感神経系の上頚神経節と効果器の精管平滑筋細胞を組合せて用いた。幼若ラット上頚神経節をスライスし組織培養した。また神経節細胞をコラゲナ-ゼで単離し培養した。成熟ラット及びモルモット精管から平滑筋細胞を単離し培養した。 同時培養に先立ち、まず交感神経終末から放出される化学伝達物質であるノルエピネフリン(NE)およびATPの精管平滑筋細胞の膜電流に対する作用を単離直後及び短期培養後に検討した。NEはCa電流とCa依存性K電流の両方を抑制したが、K電流の抑制の方が著しいので、精管平滑筋細胞の興奮性を増大させることが明らかとなった。Ca電流の抑制には細胞内Ca上昇によるCaチャネル抑制以外にGTP結合蛋白を介する直接的な抑制のあることが示唆された。一方NEによるCa依存性Kチャネルの抑制は細胞内Ca動態の変化によるものであることを示す結果が得られた。 同時培養は上頚神経節の組織培養後、単離平滑筋細胞をさらに植えるという方式をとったが、後者の段階で汚染を起こしやすく成功率はかなり低かった。形態的にはシナプスを形成したと思われる走査型電子顕微鏡所見が数回得られた。しかし神経を電気的に刺激した際に平滑筋の収縮が見られる、あるいはシナプス後電位が観測されるといった機能的なシナプスが形成されたという証拠は得られなかった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1988年 -1989年 
    代表者 : 渡辺 稔; 武井 智美; 河合 智之; 今泉 祐治
     
    ラット、ブタ等の哺乳動物の虹彩散瞳筋において各種薬物により張力変動が生じる時、平滑筋細胞でのどのようなCa動態の変化がそれをもたらしているかが研究課題であった。特に副交感神経興奮時或いはムスカリン様作用薬投与時の弛緩機構解明を主に検討した。まずムスカリン作用薬がM_2タイプのリセプタ-を介する可能性が高いものの従来のM_1、M_2という分類では充分説明できないことがわかった(あたらしい眼科、1989)。また毛様体神経節除去によりラット散瞳筋を副交感神経除神経すると、神経刺激による弛緩だけでなく、ムスカリン様作用薬による弛緩も消失した(E.J.P.,1988)。このことは、化学伝達物質のアセチルコリンが何等かの弛緩物質の遊離を介して散瞳筋を弛緩させている可能性を示唆するものである。そこで、弛緩を引き起こす生理活性物質を広く検索した結果Ca、ベ-タ、アルファ、ムスカリニック拮抗薬すべての存在下で高K液により顕著な弛緩が生じることを発見した(B.J.P.,1990)。遊離弛緩物質としては、血管上皮細胞由来の弛緩物質(NO)或いはペプチドではないこと、またその弛緩の際の細胞内情報伝達系としては、_cーGMPおよび_cーAMPが関与している可能性は低いことが示唆された。一方、上頸神経節切除による交感神経除神経では、散瞳筋の交感神経終末の変成によるノルアドレナリン再取り込み能消失のためと考えられるノルアドレナリンに対する特異的感受性の増大が見られたが、ムスカリン性弛緩は影響を受けなかった(J.J.P.,1989)。Ca動態を探るのに最も有用と思われたFura2による細胞内Ca濃度の測定は散瞳筋では組織が非常に小さいため張力との同時測定の成功率が非常に低くまだ結果の発表段階に到っていない。以上の結果からラットおよびブタ虹彩散瞳筋において、ムスカリン作用薬および高K液は副交感神経由来の弛緩物質を遊離させ、筋を弛緩させる可能性の高いことがわかった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1988年 -1989年 
    代表者 : 渡辺 稔; 武井 智美; 河合 智之; 今泉 祐治
     
    ラット虹彩散瞳筋において副交感神経刺激あるいはムスカリン様作用薬により生じる弛緩の機序の解明が研究課題である。 まず副交感神経切除により、ムスカリン様作用薬による弛緩反応も消失することを報告した(Eur.J.Pharmacol.,1988)。 またムスカリン様作用がM_2タイプのリセプターを介する可能性が高いものの従来のM_1,M_2,という分類では充分説明できない可能性を示唆した(眼薬理,1988)。 さらに弛緩を引き起こす物質として多くの生理活性物質を検索した。その結果、highK^+により生じる弛緩に副交感神経終末からのアセチルコリンの遊離を介さない成分がかなり存在することをつきとめ、報告した(あたらしい眼科,1989)。 これについては、highK^+のNa^+ーK^+pumpに対する作用、あるいは外液中のNa^+の減少による直接作用ではなく、未知の弛緩物質の遊離が関与している可能性の高いこと、副交感神経除去により、highK^+の弛緩も消失することなどを加え、外国雑誌に投稿中である。 アセチルコリンによる弛緩のセカンドメッセンジャーに関する検索では直接にcyclic AMP,GMPを定量した結果、これらがメッセンジャーである可能性は殆んど無いことがわかった。 蛍光色素による細胞内Ca^<2+>濃度変化の測定は大動脈等の大きな平滑筋標本では測定可能なものの、ラット虹彩散瞳筋ではいまのところ充分な蛍光変化が得られておらず、何等かの新たな工夫の必要を要すると思われる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1983年 -1983年 
    代表者 : 今泉 祐治
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1980年 -1980年 
    代表者 : 今泉 祐治
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1979年 -1979年 
    代表者 : 今泉 祐治

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