日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2018年04月 -2023年03月
代表者 : 藤岡 哲平
脳梗塞後には、脳室下帯に存在する神経幹細胞から多数の新生ニューロンが産生され、梗塞巣へと向かって移動し、その一部が成熟ニューロンとなる。この内在する神経再生の機序を、新生ニューロンに発現する接着因子に着目し、明らかにすることで、脳梗塞再生治療の基礎的知見となることを目指している。
マウス脳梗塞(中大脳動脈閉塞)モデルを用いて、特殊なバイオマテリアルを脳内に注入し、脳梗塞後に脳室下帯から脳梗塞巣周囲へと移動する新生ニューロンの挙動に与える影響を解析している。バイオマテリアルの投与においては、生体により低侵襲となるよう設計された自己集合型ペプチドを用い、このペプチドに細胞接着因子を付加し標識したものを、脳梗塞後の脳内に投与することで、細胞接着因子が新生ニューロンの挙動に与える影響を、脳内で評価しうる実験手法を確立し、解析を行っている。解析においては、脳梗塞後における新生ニューロンの移動について、移動の足場となる細胞接着因子の役割に着目し、遺伝子改変マウスを用いた細胞標識、免疫組織化学染色、透過型電子顕微鏡などの手法を用いて、多角的な検討を行っている。また細胞接着因子を付加したバイオマテリアルの投与が、梗塞巣周囲へと移動した新生ニューロンの分化、成熟に影響を与えうるかを明らかにすべく、脳梗塞後長期経過したマウスの免疫組織化学染色による検討、および行動実験により脳梗塞による神経障害が変化しうるかを解析している。