日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2023年04月 -2027年03月
代表者 : 吉川 学; 韓 龍雲; 岩川 弘宙; 向原 隆文
これまでの植物のRNAサイレンシングに関する研究によって、詳細な分子機構やウイルスに対する抵抗性における機能などが明らかにされてきた。近年、ウイルス以外にも、細菌やカビ、卵菌など広範な植物病原微生物に対する防御機構の一つとしてRNAサイレンシングが機能することが示唆されている。一方、それらの植物病原微生物やウイルスは、宿主のRNAサイレンシングを阻害するサプレッサーと呼ばれるタンパク質を有している。我々は、試験管内で植物のRNAサイレンシングを解析できる実験系を構築し、その分子機構を解析してきた。本研究ではこの実験系を用いて、植物病原微生物に由来するサプレッサーによるRNAサイレンシング抑制機構を明らかにすることを目的とする。
まず本研究では、様々な植物病原体に由来する既存サプレッサーによるRNAサイレンシング阻害の作用機作を試験管内実験系で解析し、分子レベルでの解明する。また植物病害細菌のエフェクターから宿主RNAサイレンシングを抑制するタンパク質を探索する。そのためにエフェクター遺伝子ライブラリーを準備して試験管内転写反応によりmRNAを作製した。次に試験管内翻訳反応でそれらのエフェクタータンパク質を調製した後、試験管内RNAサイレンシング実験系で阻害効果を調べる。阻害効果が確認できたエフェクターについては、阻害するステップの解析や質量分析などにより相互作用する宿主タンパク質を同定するなどの解析を行う。以上の研究を行い、様々な作物に植物病原微生物抵抗性の付与に繋がる知見を得ることを目指す。