日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2022年04月 -2026年03月
代表者 : 丹野 清人; 林 真人; 吉田 舞; 高田 圭; 林 浩一郎
今年度は、川崎市、浜松市、広島市を中心に、外国人労働者とその家族の受け入れについて基礎自治体が何をおこなっているのかの比較研究を行政プログラムの比較研究としておこなった。在日韓国・朝鮮人の問題をニューカマーの来日以前から抱えていた点では、広島市や川崎市は共通しているのであるが、基礎自治体の住民政策という点では、大きく異なるものであった。この差がどこから来るのかまではまだ説明要因を完全には詰めきれていない。しかし、ニューカマーの前に在日韓国・超新人の問題を抱えていた二つでは共通して「人権」問題を重視し、外国人住民へのアプローチもここがキーになるとこが分かってきた。
他方、地域の中での在日韓国・朝鮮人のプレゼンスが低く、取り立てて外国人住民政策を持っていなかった浜松では、1990年入管法改正後に、ラテンアメリカから来るニューカマーの日系人が、外国人住民政策の端緒となった。90年代に始まったこともあり、既に、国際人権規約、子どもの権利条約、女性差別撤廃条約等の国際人権法に日本が批准した後に外国人受入れが始まった浜松では、人権はことさら意識されることなく(意識していないというよりは、それは既に当然のものと受け止められている。)、ダイバーシティを強調する多文化共生に政策目標が置かれて今日まで進められてきている。
基礎自治体のコミュニティ政策の上記のような違いは、外国人の受入れ政策として行なっている各地の実際のプログラムの違い、そのプログラムを実施していく地域のボランティア団体、NPO組織、町内会との連携のあり方の違いとなっていると仮説を立てて研究を進めている。