日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2020年04月 -2024年03月
代表者 : 林 浩一郎
本研究は、名古屋駅周辺における「リニア開発主義」の構造と主体を考察する社会学的研究である。「リニア開発主義」とは、2027年のリニア中央新幹線開通を契機として、経済成長を目指す政治経済システムとそのイデオロギーのことだ(林 2020a)。高度経済成長期のケインズ主義的な「均等発展」という国土開発の建前から、「選択と集中」を志向する新自由主義的な「都市再生」政策へという潮流のなかで、「リニア・インパクト」(江口 2014)に関する考察は喫緊の課題である。
具体的には、(1)林(名古屋市立大学)が、名古屋駅西地区の都市コミュニティを、(2)木田(椙山女学園大学)が名古屋駅周辺の都市政治を、(3)植田(愛知大学)が都市空間を調査研究している。これらにより、名古屋の都市空間をダイナミックに変動させる新たな開発の論理を明らかにしている。
2年目の2021年度は、主に2点の成果があった。(1)地域社会学会年報第34号に「リノベーションという空間の生産――名古屋駅裏におけるドヤの継承と革新」という論文が掲載される。(2) 日本都市社会学会年報第40号に「リニア開発主義の構造と主体Ⅱ――名古屋駅東地区における成長マシンの形成と空間の再編」という論文が掲載される予定である。また、収集したドキュメント資料を基に、リニア開発および名古屋駅周辺の再開発にかかわる政策検討組織の構成メンバー・団体を整理したほか、本研究プロジェクト全体にかかる理論枠組みの検討に着手した。