日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2019年04月 -2022年03月
代表者 : 内木 綾; 野尻 俊輔; 高橋 智; 加藤 寛之
非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) は急増し、肝癌に進展することから予防法の開発が望まれている。肝細胞ギャップ結合タンパクであるconnexin 32 (Cx32)をドミナントネガティブに阻害し、細胞間コミュニケーション能が低下したトランスジェニック(Tg)は、野生型 (Wt)ラットと比較して、化学物質に対する感受性が高い。昨年度、メタボリックシンドロームを随伴するNASHモデルを新たに確立することを目的として、 7週齢雄TgラットおよびWtラットに、high fat diet (HFD)とdimethylnitrosamine (DMN)を投与しNASHを惹起した。その結果、肝におけるNASH、線維化や前癌病変とともに、従来のメチオニン・コリン欠乏飼料を用いたNASHモデルでは見られない、肥満やインスリン抵抗性が誘導されることが明らかとなった。本年度は、このTg-HFD-DMNモデルを用いて、NASHの化学予防効果の検証が可能であるかを検証した。Tg-HFD-DMNモデルに対して、被験物質としてアントシアニンを豊富に含有する紫米抽出物を投与した結果、脂肪肝炎、肝線維化は有意に抑制され、このモデルの肝において遺伝子発現が上昇する炎症性サイトカイン(Tnfα, Tgfβ, Il1β, IL18, Ifnγ, Timp1, Timp2, Col1a1)とNF-κBおよびJNKシグナルの活性化に対する抑制効果を認めた。紫米抽出物投与群では、活性型肝星細胞が減少しており、肝線維化の抑制に関与していると考えられた。現在、HFDとDMNを投与したTgとWtラットの血清からエクソソームを抽出し、マイクロRNAの発現変化を検討している。