研究者データベース

星野 真一 (ホシノ シンイチ)

  • 薬学研究科遺伝情報学分野 教授
メールアドレス: hoshinophar.nagoya-cu.ac.jp
Last Updated :2025/04/25

研究者情報

学位

  • 博士(薬学)(東京大学)

ホームページURL

科研費研究者番号

  • 40219168

J-Global ID

研究キーワード

  • mRNA医薬   転写後調節   mRNA 分解   

研究分野

  • ライフサイエンス / 細胞生物学
  • ライフサイエンス / 薬系衛生、生物化学
  • ライフサイエンス / 分子生物学

所属学協会

  • 日本薬学会   日本生化学会   日本RNA学会   日本分子生物学会   

研究活動情報

論文

MISC

  • 夢の新薬mRNA医薬
    星野 真一 名市大ブックス 14 24 -31 2023年06月 [招待有り]
  • mRNAの分解機構に基づいたmRNA医薬の安定化
    星野真一 現代化学特集号『台頭するmRNA医薬』 620 38 -40 2022年 [招待有り]
  • がん抑制遺伝子産物TobによるmRNA分解を介したがん抑制と学習記憶の調節
    尾上耕一; 星野真一 ファルマシア特集号『RNA研究が切り開く薬学フロンティア』 51 (1) 27 -31 2015年 [招待有り]
  • mRNA分解研究と創薬
    尾上耕一; 星野真一 日本薬理学雑誌 136 150 -154 2010年 [招待有り]
  • 星野 真一 蛋白質・核酸・酵素 54 (16 Suppl) 2066 -2072 2009年12月 [招待有り]
  • 培養細胞からのRNA抽出
    星野真一; 細田直 RNA実験ノート 39 -41 2008年 [招待有り]
  • RT-PCRを用いたRNAの検出と定量
    星野真一; 船越祐二 RNA実験ノート 66 -69 2008年 [招待有り]
  • 真核生物におけるmRNA分解制御の分子機構
    船越佑司; 星野 真一 実験医学 23 1902 -1907 2005年
  • 打田 直行; 星野 真一; 堅田 利明; Ann-Bin Shyu 蛋白質核酸酵素 48 (11) 1488 -1495 2003年08月
  • 真核生物mRNAの分解制御
    星野 真一 蛋白質 核酸 酵素 48 1229 -1240 2003年
  • 打田直行; 星野真一; 堅田利明 生化学 74 (8) 1009 2002年08月
  • 星野真一; 細田直; 小林哲夫; 打田直行; 堅田利明 生化学 74 (8) 699 2002年08月
  • GSPTファミリーによる遺伝子発現調節
    星野 真一 生化学 74 1343 -1348 2002年
  • 真核細胞のmRNA動態を制御する新規Gタンパク質ファミリー
    荒木保弘; 星野真一; 堅田利明 実験医学 20 150 -157 2002年
  • T Katada; Y Araki; N Hosoda; T Kobayashi; N Uchida; S Hoshino JAPANESE JOURNAL OF PHARMACOLOGY 88 48P -48P 2002年
  • 打田直行; 星野真一; 堅田利明 生化学 73 (8) 859 2001年08月
  • 鈴木 崇弘; 岡田 太郎; 星野 真一; 櫨木 修; 宇井 理生; 堅田 利明 日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集 19 151 -151 1996年08月
  • 堅田 利明; 紺谷 圏二; 柊元 巌; 岡田 太郎; 黒須 洋; 井上 晋一; 辻本 典子; 星野 真一; 植木 修 日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集 19 31 -31 1996年08月
  • 岸本 宏之; 星野 真一; 堅田 利明 日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集 19 437 -437 1996年08月
  • 星野 真一; 堅田 利明 日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集 19 326 -326 1996年08月
  • 前濱 朝彦; 星野 真一; 堅田 利明 日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集 19 474 -474 1996年08月
  • 辻本 典子; 紺谷 圏二; 岡田 太郎; 星野 真一; 櫨木 修; 堅田 利明 日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集 19 615 -615 1996年08月
  • 3量体G蛋白質の立体構造と機能領域
    星野真一; 堅田利明 細胞内情報伝達のしくみ (宇井理生 編)(羊土社) 40 -59 1996年
  • 3量体G蛋白質
    井上晋一; 柊元 巌; 星野真一; 堅田利明 シグナル伝達実験法 (宇井理生 編)羊土社 98 -107 1996年
  • ヒトリンパ球表面抗原CD38の酵素活性とCD38を介する細胞内蛋白質のチロシンリン酸化
    紺谷圏二; 星野真一; 柊元 巌; 井上晋一; 櫨木 修; 高橋勝宣; 堅田利明 実験医学 14 420 -423 1996年
  • 三量体G蛋白質の構造、機能ドメイン
    星野真一 広川ニューロサイエンス5 情報変換物質ーG蛋白質(広川書店) 1 -18 1995年
  • 三量体G蛋白質のターゲットと認識部位
    星野真一; 堅田利明 実験医学 13 657 -666 1995年
  • シグナル伝達系におけるNAD+代謝酵素とサイクリックADPリボース
    堅田利明; 紺谷圏二; 柊元 巌; 井上晋一; 星野真一; 櫨木 修; 高橋勝宣; 仁科博史 日薬理誌 45P -49P 1995年
  • シグナル伝達系に登場した新しいNAD+代謝酵素
    堅田利明; 仁科博史; 高橋勝宣; 星野真一; 紺谷圏二; 前濱朝彦; 柊元 巌 蛋白質 核酸 酵素 40 1900 -1911 1995年
  • 細胞の外側のシグナルを内側に運ぶG蛋白質−最近の進歩−
    堅田利明; 星野真一 呼吸 14 1045 -1051 1995年
  • 三量体Gタンパク質の構造と基本的特性
    星野真一; 堅田利明 日薬理誌 1032 249 -262 1994年
  • S. Hoshino; T. Katada Folia Pharmacologica Japonica 103 (6) 249 -262 1994年
  • 細胞増殖を制御する情報伝達系ーG蛋白質を介する情報伝達系を中心としてー
    星野真一; 宇井理生 病態生理 11 733 -739 1992年
  • 細胞膜受容体、G蛋白質による情報伝達
    星野真一 MARUZEN ADVANCED TECHNOLOGY SERIES 生体膜工学(丸善) 223 -252 1991年
  • 受容体とGTP結合蛋白質
    星野真一; 宇井理生 神経研究の進歩(医学書院) 34 903 -909 1990年
  • GTP結合蛋白質と情報伝達
    星野真一 臨床検査(医学書院) 33 1668 -1669 1989年
  • GTP結合蛋白質と情報伝達
    星野真一; 宇井理生 神経研究の進歩(医学書院) 33 919 -929 1989年
  • GTP結合蛋白質(G蛋白質)
    星野真一; 宇井理生 医学のあゆみ(医歯薬出版) 147 729 -731 1988年
  • Katada Toshiaki; Kurose Hitoshi; Oinuma Masayuki; Hoshino Shin-ichi; Shinoda Masahiko; Amanuma Shuichi; Ui Michio Gunma symposia on endocrinology 23 45 -67 1986年

産業財産権

  • 特許7032775:人工合成mRNAの発現を効率化する技術  
    星野 真一, 細田直, 野木森拓人
  • 特許PCT/JP2020/ 39160:人工合成mRNA及びその利用  
    星野真一, 細田直  公立大学法人名古屋市立大学
  • 特願2014-107562:人工合成mRNAの翻訳効率化方法  2014年05月23日
    星野 真一, 細田直, 野木森拓人
  • 特願2014-263857:人工合成mRNAの安定化方法  2014年05月09日
    星野 真一, 細田直, 野木森拓人

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2021年04月 -2025年03月 
    代表者 : 星野 真一; 稲垣 佑都; 細田 直
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2017年04月 -2021年03月 
    代表者 : 星野 真一; 細田 直
     
    遺伝情報であるmRNAの3’末端にはポリA鎖が付加されており、ポリA鎖の調節が、遺伝子発現の転写後調節において中心的な役割をはたしている。これまで、独自に解明したmRNAポリA鎖分解(mRNA分解開始)の分子機構に基づいて、ポリA鎖を標的とする遺伝子発現の負の調節機構を解明してきたが、本研究においては逆にポリA鎖を伸長することによる正の遺伝子発現制御が体細胞において広く存在することを明らかにし、その普遍的な分子機構を解明することに成功した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2017年06月 -2019年03月 
    代表者 : 星野 真一; 細田 直
     
    ゲノムへの挿入による発がん等の危険性があるDNA医薬に代わって、そのような危険性のないmRNA医薬を遺伝子治療やiPS細胞の作製、がん免疫療法などに臨床応用する試みに期待が高まっている。しかしながら、RNAのもつ不安定性がmRNA医薬実現に向けて大きな障壁となっていた。我々は、人工mRNAの細胞内における分解機構を解明し、その分解機構を抑えmRNAを安定化する技術を開発した。iPS細胞の作製と遺伝子治療(ゲノム編集)において、その有効性を検証し、とくにゲノム編集においてその有効性が確認できた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2013年04月 -2017年03月 
    代表者 : 星野 真一; 細田 直
     
    mRNA 3’末端ポリA鎖の調節が、遺伝子発現の転写後調節において重要な役割をはたしている。本研究では、独自に解明したmRNAポリA鎖分解の分子機構に基づいて、ポリA鎖を標的とする新しい遺伝子発現制御機構を解明することを目的として研究を行い、①癌遺伝子c-myc やグルタミン酸受容体GluR2のmRNAポリA鎖分解による負の遺伝子発現制御、②CDKインヒビターp27kip1 mRNAのポリA鎖伸長による正の遺伝子発現制御などの転写産物特異的調節機構に加え、③ストレスを代表例としてポリA鎖のグローバルな調節機構を解明した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2008年11月 -2014年03月 
    代表者 : 稲田 利文; 井上 邦夫; 中村 輝; 大野 睦人; 廣瀬 哲郎; 星野 真一; 米山 光俊; 杉浦 麗子
     
    生物の持つ複雑で巧妙な形態・機能の獲得には、RNA段階での遺伝子発現制御プログラムが極めて重要な役割を果たします。発生・分化の基本原理としての「非対称性」と遺伝子産物の「多様性」の獲得原理を理解するためには、RNAレベルでの制御(RNAプログラム)を包括的に理解する必要があります。本新学術領域研究「多様性と非対称性を獲得するRNAプログラム(RNA制御学)」は、このRNAプログラムの分子機構とその生理的意義の解明を目指しました。RNAレベルでの制御を研究する若手ならびに中堅の研究者を中心とした組織を構成し、手法、材料や情報を共有しながら交流を行い、研究を進めました。分子・細胞レベルから遺伝学を用いた高次生命現象解析まで、幅広いアプローチでRNA研究を展開し必要に応じて共同研究を積極的に進めました。平成20-24年度までの研究期間において、計画研究のみならず公募研究においても優れた研究成果を上げる事ができ、当初の目的を概ね達成できました。また、多数の若手ならびに中堅研究者がプロモーションされました。領域内の連携を促進する支援班活動等を行った結果、共著論文も発表することが出来ました。平成25年度は、理化学研究所や関連する新学術領域研究「非コードRNA」とRNA Sciences in Cell and Developmental Biology III共催した、内外のRNA研究者から高い評価をうけ、本領域における優れた研究を国内外に宣伝する非常に良い機会となりました。また、研究成果報告書を作成し、班員と評価者の先生方、関連分野の研究者に配布しました。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2011年 -2012年 
    代表者 : 星野 真一
     
    ヒトプリオン病の酵母モデルを作製するために、酵母eRF3のプリオンドメインをヒトPrPのプリオンドメインに置き換えたキメラタンパク質を発現する酵母株を作製した。その酵母株の大部分はプリオン型[PSI^+]へと変化し、グアニジン処理を施すと、[PSI^+]形質は[psi^-]へと復帰した。また、eRF3-PrPプリオンは生育毒性を示さず、本研究において作製したeRF3-PrPを発現する改良型[PSI^+]株がヒトプリオン病の病態モデルとしてプリオン病治療薬のスクリーニング系開発に応用できることを実証した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2010年 -2012年 
    代表者 : 稲田 利文; 星野 真一
     
    新生ポリペプチド鎖依存の翻訳アレストに必須な因子として、RACK1を同定し、RACK1の40Sリボソームへの結合が翻訳アレストに重要性であることを示した。RACK1は、60Sリボソーマルサブユニットと結合するE3ユビキチンライゲースLtn1依存の新生ポリペプチド鎖の分解にもRACK1が必須である事を明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2009年 -2012年 
    代表者 : 星野 真一; 細田 直
     
    研究代表者はこれまで、正常なmRNAの分解が終止コドン上での翻訳終結と共役して開始されること、またG蛋白質eRF3がその制御において中心的な役割をはたしていることを証明した。本研究においては、終止コドンをもたない異常なmRNAを分解する品質管理機構(ノンストップ型mRNA分解:NSD)がヒトにおいても存在し、eRF3と相同なG蛋白質Hbs1とエキソソームがそのメカニズムにおいて不可欠な役割をはたしていることを証明した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2008年 -2012年 
    代表者 : 星野 真一; 廣瀬 哲郎
     
    研究代表者らが独自に解明したmRNA(ポリA鎖)分解開始機構に基づき、以下に示す3'末端ポリA鎖を標的とした新しい遺伝子発現制御・品質管理機構を明らかにした。(1)mRNA3'非翻訳領域のシス因子(URE, CPE)によるポリA鎖分解調節を介した遺伝子発現制御、(2)ストレスによるグローバルなmRNAポリA鎖安定化とストレス顆粒形成、およびアポトーシス時の翻訳抑制のメカニズム、(3)非標準的ポリA鎖付加酵素によるmRNAポリA鎖伸長を介した遺伝子発現制御、(4)ノンストップ型異常mRNAを分解するRNA品質管理。また、分担者は(5)ヒストン mRNA3'末端を標的とした核内RNA品質管理機構を解明した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2008年 -2009年 
    代表者 : 細田 直; 星野 真一
     
    翻訳終結反応過程では、tRNA類似構造をとることにより終止コドンを認識するeRF1およびG蛋白質eRF3の2種類の因子が関わる。eRF3はeRF1をリボソームAサイト上の終止コドンまで運搬する機能を担う。先に当研究室では、翻訳終結反応にともない、eRF3を介してmRNA分解の律速段階である3'末端poly(A)鎖短縮化が促進されることを明らかにした。G蛋白質eRF3は、翻訳終結反応のみならず、mRNA分解を制御する役割を担う。一方、近年mRNA品質管理において機能する分解経路が明らかにされた。ナンセンスコドン介在型mRNA分解(N onsense-mediated mRNA decay ; NMD)、終止コドンリードスルー型mRNA分解(Non-stop decay ; NSD)、リボソーム停止型mRNA分解(No-go decay ; NGD)であり、いずれもリボソームのmRNA上における一時停止が分解の引き金となる。eRF3を介したmRNA分解と類似の機構がはたらくと想定されるものの、これら経路については不明な点が多く残されている。本研究では、eRF3およびその類似G蛋白質eRFSに着目して、NSDの分子機構について解析を進めた。 終止コドンをmRNA上より全て除いたレポータを作製し、哺乳動物細胞におけるNSDについて解析を行ったところ、終止コドンを持たないmRNAの速やかな分解が確認された。また、poly(A)鎖短縮化については、終止コドンを持たないmRNAと正常なmRNAとの間において顕著な差は認められなかった。eRF3およびeRFSのNSDへの関与を、siRNAを用いたノックダウンにより検討した。eRFSのノックダウンによりNSDの抑制が認められた。eRF3ではこの抑制は認められなかった。mRNAの3'から5'方向への分解にはエキソソーム複合体がその役割を担う。eRFSとエキソソーム複合体の間において相互作用が観察された。一方、eRF3においてはこの相互作用は認められなかった。哺乳動物のNSDにおいては、3'末端においてストールしたリボソームにeRFSが導入されることが引き金となっており、またeRFSはエキソソーム複合体をmRNA3'末端に導入することで終止コドンを持たないmRNAを速やかに分解すると推察された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2008年 -2008年 
    代表者 : 星野 真一; 細田 直
     
    翻訳終結因子eRF3/GSPT1のN末端にはGGCトリプレットリピートによってコードされるポリグリシンが存在し、健常人においてはこの繰り返しが10前後であるのに対し、12以上になると胃癌発症の危険率が20以上に増大する。また一方で、eRF3/GSPT1は各種ストレスによってN末端が特異的に切断され、その際露出したN末端配列がカスパーゼ阻害因子IAPと特異的に結合してカスパーゼを活性化し、アポトーシスを誘導する。従って、eRF3/GSPT1のN末端領域におけるトリプレットリピートの増大は、ストレスによるN末端の切断を阻害し、アポトーシスの誘導を阻害することにより胃癌の発症率増大を引き起こしている可能性が高い。本研究においては、このような仮説を含め、eRF3/GSPTのトリプレットリピート増幅が胃癌の発症率増大を引き起こす分子メカにズムを解明することを目的として解析を行なった。 (1)eRF3/GSPT1のトリプレットリピートアイソフォームの作製 グリシンをコードするGGCトリプレットリピートが、それぞれ0、5、10、12であるアイソフォームをPCR法を用いて作製し、細胞にトランスフェクトして細胞染色による細胞内局在性について検討した。各種アイソフォームはどれも細胞質において発現し、細胞内局在性における変化はとくにみられないことを確認した。 (2)トリプレットリピート多型性がeRF3/GSPT1による遺伝子発現制御におよぼす影響の検討 eRF3/GSPT1のトリプレットリピートアイソフォームをβグロビンのレポーター遺伝子とともにHeLa細胞に遺伝子導入をおこない、細胞内での過剰発現がβグロビンの遺伝子発現に与える影響について検討した。その結果、どのアイソフォームにおいてもβグロビンの発現量に変動は観察されなかった。 (3)トリプレットリピート多型性がストレスによるeRF3/GSPT1N末端領域の切断に及ぼす影響 eRF3/GSPT1のトリプレットリピートアイソフォームをHeLa細胞に遺伝子導入し、アミノ酸飢餓ストレスを加えた際に観察されるN末端の切断活性について検討を行なった。その結果、正常なリピートをもつGly11に対して胃癌発症率が増大するGly12の場合においてN末端の切断効率が低下することが観察された。 なお、本研究は新学術領域研究の採択に伴い廃止したため約8ヶ月間の研究期間で行なったものである。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2006年 -2007年 
    代表者 : 星野 真一
     
    真核生物の翻訳終結においては、終止コドンを直接認識する翻訳終結因子eRF1がリボソームA部位に入り込み、ペプチジルトランスフェラーゼを活性化することでペプチジルtRNAからペプチド鎖の解離を引き起こし翻訳が終結する。その際第二の翻訳終結因子eRF3はeRF1をリボソームに運搬する役割を担っている。一方、原核生物においては真核生物のeRF1/eRF3に相当する翻訳終結因子RF1,2/RF3が同様に翻訳終結反応を担っているが、翻訳終結後RF1,2と同様なtRNA用構造を有するリボソームリサイクリング因子がリボソームA部位に入り込み、翻訳終結後のリボソームをmRNAから解離させる役割を果たしている。環状構造を有する真核生物mRNAにおいてもそのようなリサイクリング因子が働く可能性が充分考えられ、真核生物リサイクリング因子の実態解明にむけて解析を行なった。本研究において申請者らは、(1)リサイクリング因子の候補として、翻訳終結因子eRF1と構造上高い相同性を有するeRFLをヒトにおいて同定し、(2)すでに報告されているeRF3相同因子eRFSと結合することを証明した。また、(3)両因子のポリソームプロファイル解析より、両者は共にポリソーム画分に局在することを証明した。(4)eRFLはeRF1と同様に単独でもリボソームに結合し、その結合はtRNAやeRF1の共存によりリボソームから解離することを見出した。従ってこれらの因子はeRF1/eRF3同様リボソームA部位において機能する因子である。一方で、(5)これらの因子のみでは、ポリソーム画分からリボソームを解離させる活性は検出できなかったことから、これらの因子と相互作用する第三の因子について探索を行ない、GAPDHを同定した。これらが3者複合体を形成しリサイクリングを制御する可能性についてHeLaのin vitro翻訳系を用いて検討中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 星野 真一
     
    通常の(正常な)mRNA分解について解析を行ない、mRNA分解の開始すなわち翻訳終結からmRNAポリA鎖分解の開始に至る分子メカニズムを明らかにした。すなわち、翻訳終結因子複合体eRF1-eRF3、ポリA鎖分解酵素複合体PAN2-PAN3、CAF1-CCR4はどれもPAM2モチーフを共通に有しており、3'末端ポリA鎖結合蛋白質PABPのPABCドメインに競合的に結合すること、翻訳終結に伴って翻訳終結因子複合体がPABPより解離し、代わりにポリA鎖分解酵素複合体がPABPに会合することでこれらの分解酵素が活性化され、ポリA鎖の分解が進行することを明らかにした。これまで不明であったmRNA分解開始の分子機構の詳細を解明できたことは学問的にこの研究領域の進歩・発展に大きく貢献するものである。また、ナンセンス変異型mRNAの分解機構の解明を目的として、ナンセンス変異を有する異常mRNAについても解析を行ない、正常なmRNAと同様3'末端ポリA鎖の短縮化にはじまることに加えてeRF3の関与が観察され、正常mRNAと同様な分子機構でポリA鎖分解がおこることを明らかにした。一方で、ポリA鎖分解の途中段階において他の分解経路が発動することも観察され、ナンセンス変異型mRNA特異的な分解機構の存在が示された。5'末端キャップ構造の切断にはじまる分解経路め可能性が考えられる。これらヒト培養細胞を用いた解析に加え、モデル生物である酵母を用いた解析から、ナンセンス変異型mRNAに特異的に結合する因子Ssa1を同定した。この因子はNMDにおいて中心的な役割を果たしているUpf因子群と特異的に結合し、その酵母破壊株はナンセンス変異を持つmRNA特異的な分解抑制を示したことからナンセンス変異型mRNAの分解に特異的に関わる因子であると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2004年 -2005年 
    代表者 : 仁科 博史; 和田 悌司; 堅田 利明; 星野 真一; 荒木 保弘
     
    ストレス応答性のMAPキナーゼシグナル伝達系であるSAPK/JNK系を正に制御する2種類の活性化因子SEK1/MKK4やMKK7を欠損するキメラマウスやノックアウトマウスを作出し、本シグナル系が免疫応答や発生の制御に必須の役割を果たしていることを見出した。これらノックアウトマウスは肝形成不全を伴う致死となることから、肝形成にはSEK1とMKK7の両者が必須の役割を果たすことが示された。この解析過程で作製された抗Liv2と命名されたモノクローナル抗体は発生期の肝幹細胞である肝芽細胞を特異的に認識し、肝発生や再生の研究に有用なツールとなることが示された。抗Liv2抗体を用いたノックアウトマウスの定量的な解析から、1)SAPK/JNK系が肝芽細胞の自己複製シグナルとして必須の役割を果たしていること、2)SAPK/JNKは転写因子c-Junを介して細胞周期G2/M期促進因子CDC2の遺伝子発現を調節していること、3)この活性化の誘導には肝細胞増殖因子HGFや腫瘍壊死因子TNFα以外の因子が存在することを明らかにした。これら研究成果から、TNFαがその受容体を刺激すると、細胞死誘導シグナルであるカスパーゼ系の活性化に加えて、生存シグナルであるNFκB系と増殖シグナルであるSAPK/JNK系が活性化されるという経路が明らかにされ、"肝芽細胞が自己複製するか細胞死に至るかの運命決定はこれら3種のシグナル経路のバランスによって制御される"という概念が提示できた。また、肝臓を含む内胚葉系器官形成に関わる分子を網羅的に同定する目的で、遺伝学的な利点を有するメダカを用いた変異体の単離を行った。その結果、内胚葉形成や肝芽形成に影響のある遺伝子変異メダカを複数単離することに成功した。興味深いことに、肝臓の位置異常変異体の1つは脂肪肝を呈することを見出した。これら遺伝学や逆遺伝学が応用可能な2種類のモデル生物を用いて得られた研究成果は、肝形成分子機構の解明に多大な貢献をすると期待される。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2004年 -2005年 
    代表者 : 仁科 博史; 和田 悌司; 梶保 博昭; 堅田 利明; 星野 真一
     
    細胞膜から初期エンドソームに向けての輸送小胞によるエンドサイトーシス(ES)は、恒常的な細胞外物質の取り込みのほか、受容体の脱感作過程においても重要である。本研究では、新規のRab5-GEFであるRIN2、RIN3を中心に、Rab5の活性化機構の視点からESの制御機構を解明することを目的とした。Rab5結合蛋白質として同定したRIN2とRIN3は、H-Rasの相互作用因子として先に報告されたRIN1と一次構造上の相同性を有するが、このファミリーには酵母のRab5-GEFに相同なVps9ドメインが存在し、Rab5に対してGEF活性を有した。RIN2、RIN3はアンフィファイシンIIとも結合し、形質膜での小胞形成から初期エンドソームの融合までの経路に関与することが期待される。 RINファミリーには、SH2ドメイン、SH3ドメインが結合するProに富む配列、Rabのグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として機能するVps9ドメイン、Rasメンバーとの結合が推定されるRAドメイン等の機能領域があり、小胞の出芽と輸送の初期過程において、これらの領域を介して種々のシグナルを集積する足場的役割を果たすことを見出した。現在これらファミリーを特異的に認識する抗体の作成が進行中である。また、新規G蛋白質ファミリーの網羅的な解析から、ESへの関与が期待される分子群Di-Ras、Rhebを同定した。特に、後期エンドソームからリソソーム小胞に局在化するRhebは、グリア細胞におけるグルタミン酸トランスポーターの形質膜と細胞内小胞間の移行を制御して、神経細胞の保護に寄与することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2001年 -2005年 
    代表者 : 堅田 利明; 紺谷 圏二; 梶保 博昭; 仁科 博史; 星野 真一; 荒木 保弘
     
    翻訳終結に介在するG蛋白質として先に同定したeRF3は、翻訳伸長因子EF1αと相同なC末端領域に加えて、EF1αにないユニークなN末端側付加ドメインを有する。本研究では、このようなN末端側にユニークな機能ドメインを有する新規のG蛋白質eRF3ファミリーについて、翻訳と共役したmRNAの動態制御という全く新しい視点からそれらの機能の解明を目的とし、以下の知見を得た。 1.eRF3のCドメインは終止コドンを認識するeRF1と結合し、一方のNドメインはpoly(A)付加領域を覆ってmRNAの分解を保護するポリ(A)結合蛋白質(PABP)と結合した。2.eRF3のNドメインを欠失させると、poly(A)鎖の短縮が阻害されてmRNAの分解速度は顕著に低下した。3.eRF1-eRF3とPABP間の相互作用は、さらに翻訳開始因子を介するmRNAの環状化を補強し、翻訳を終えたリボソームを開始反応に向けて効率良くリサイクリングさせた。4.PABPによって活性化されるpoly(A)鎖短縮酵素(Poly(A)nuclease, PAN)複合体を同定し、PABPに対してPan複合体とeRF3が互いに競合して結合することを見出した。以上の結果から、"eRF1-eRF3-PABP-PAN"の蛋白質間相互作用が、翻訳終結反応からmRNA分解の律速過程であるPANヌクレアーゼによるポリ(A)鎖長の短縮反応への共役を制御し、同一mRNA上での翻訳頻度の増加がmRNAを分解へと導く(すなわち、使い古されたmRNAが消去される)現象の分子基盤を解明することができた。5.さらにこのファミリーに属する他のG蛋白質メンバー(Ski7,eRFSなど)についても解析を進め、それらが固有のN末端ドメインを介して共通にmRNAの動態制御に介在するという、G蛋白質の新しい役割に関わる概念を提供することもできた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2004年 -2004年 
    代表者 : 仁科 博史; 堅田 利明; 星野 真一; 荒木 保弘
     
    先に申請者らは、ストレス応答性のMAPキナーゼシグナル伝達系であるJM(/SAPK系の生理的役割を明らかにする目的で、本シグナル系を正に制御する活性化因子SEK1/MKK4や、MKK7ノックアウトマウスを作出し、JNK系が肝芽細胞の増殖・生存など肝形成に必須の役割を果たしていることを明らかにした。また、これまでに神経変性疾患DRPLAの原因遺伝子の産物がJNKの基質となり活性制御を受けていること、また、好中球の活性酸素産生時にアダプター分子であるGab2がERKによってリン酸化され、リン脂質キナーゼであるPI3キナーゼの活性調節に関与することを見い出している。本年度は、SEK1やMKK7を欠損する胚性線維芽細胞の解析から、JNKがc-Junのリン酸化を介して細胞周期G2/M期促進や細胞老化抑制に関与することに加えて、細胞の状態に応じてJNK系のアポトーシス誘導能に変化が生じることを見い出した(Nat.Cell Biol.6,215-226,2004,J.Biol.Chem.279,1621-1626,2004,J.Biochem.[review]136,123-126,2004)。これらの成果は、JNKがc-Jun以外の標的の存在を強く示唆し、本研究目的の一つを達成したと考えられる。一方、放射標識された非天然型のATPアナログの合成とこれをリン酸化反応の基質として利用可能な点変異MAPキナーゼを作製することによって、変異MAPキナーゼだけが標的分子に放射標識されたγ位のリン酸基を転移できるような実験系では実用化に向けて、高非活性のATPアナログの合成や細胞膜を透過しにくい非天然型ATPアナログを細胞内に導入する条件が検討されている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2004年 -2004年 
    代表者 : 仁科 博史; 堅田 利明; 星野 真一
     
    低分子量G蛋白質はRas, Rab, Rho/Rac, Arf, Ranといったサブファミリーに分類され、それらは細胞の分化や増殖に加えて、小胞輸送、接着・形態形成・核内輸送などの多彩な細胞機能を制御する。しかしながら、既存のサブファミリーには属さない機能未知の低分子量G蛋白質も数多く残されている。ゲノムプロジェクトの成果を活用してユニークな新規G蛋白質を単離・同定し、その機能を解析することは、新しいシグナル伝達系の解明、さらには低分子量G蛋白質の普遍性と多様性の理解に貢献すると考えられる。本研究では申請者が独自に同定した二つのアティピカルな新規低分子量G蛋白質GieとDi-Rasが介在するシグナル伝達系の解明を目的とした。 Gie (novel GTPase indispensable for equal segregation)は、一次構造上既知のG蛋白質とは異なるサブファミリーを形成する点でアティピカルである。不活性型を模倣する変異体を動物細胞に強制発現した結果、多数の微小核をもつ異常な分裂細胞像が観察され、さらにショウジョウバエ由来細胞でのRNAiによる発現抑制によって、染色体分離異常に典型的な表現型を認めた。一方のDi-Ras (Distinct subgroup of Ras-family GTPase)はRasと一次構造上の相同性を有するものの、細胞内で主にGTP型(活性化型)で存在して発現組織が神経・心臓に特異的な点でアティピカルであることを明らかにした(J Cell Sci.117:4705-4715,2004)。これら研究成果は、アティピカル低分子量G蛋白質が関与する新しいシグナル伝達の解明に多大な貢献をすると期待される。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 星野 真一; 堅田 利明; 仁科 博史; 荒木 保弘
     
    我々は翻訳終結因子であるeRF3/GSPTが、eRF1と相互作用し翻訳終結過程を制御する一方で、ポリA鎖結合蛋白質(PABP)とも相互作用し翻訳終結と共役してmRNA分解過程を制御していることを示してきた。本研究の目的は、この翻訳終結と共役したmRNA分解の分子機構の詳細を明らかにすることにある。平成16年度においては、特にeRF3/GSPTのGTP結合蛋白質(G蛋白質)としての性質に着目し、共役過程においてこのG蛋白質としての特性がどのように使われているかを検討し、以下の知見を得た。(1)eRF3/GSPTはGTP結合型においてeRF1と結合し、このようなGTPの効果は、他のヌクレオチド(ATP, UTP, CTP, ITP)では観察されない。また、GDP結合型においてeRF3/GSPTは、eRF1から解離する。eRF3/GSPTのGTP結合部位に変異を導入するとeRF1との結合が阻害されることからもこのGTP依存性の重要性が裏付けられた。また、このような変異をもつ細胞株を作製し翻訳終結過程を調べると異常が観察されることから、eRF3/GSPTへのGTPの結合が翻訳終結において必須の役割を果たしていることを証明することができた。(2)一方、eRF3/GSPTとPABPとの結合に関しては、GTP結合型、GDP結合型に関わらず観察され、eRF3/GSPTのGTP結合部位の変異による影響も観察されなかった。しかしながら、このような変異をもつ細胞株において、mRNA分解過程には異常が観察され、mRNA分解過程がGTP依存的な翻訳終結過程と共役しているということを強く示唆した。(3)さらに、eRF3/GSPTの機能欠損株においてeRF1を過剰発現すると翻訳終結は正常なレベルに回復するが、このような株においてmRNA分解の異常は回復しないことから、mRNA分解を引き起こすには翻訳終結にみでは不十分でありeRF3/GSPTが必須の役割を果たしているいることを証明した。以上のように、eRF3/GSPTはG蛋白質としての特性を使い、翻訳終結とmRNA分解とを共役させる分子スイッチとして機能していることを明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2000年 -2004年 
    代表者 : 堅田 利明; 仁科 博史; 星野 真一; 荒木 保弘; 紺谷 圏二
     
    三量体G蛋白質共役型受容体やチロシンキナーゼ関連受容体の刺激によって、細胞内にそのシグナルが伝達されると共に、受容体自身のエンドサイトーシスや細胞内小胞の形成によるイオンや糖などの方向性をもった移動(ベクトル輸送)が進行する。しかしながら、両受容体刺激を介するベクトル輸送の制御機構や小胞輸送系に介在する低分子量G蛋白質ファミリーの作用機構については未解明な部分が多い。本特定領域研究においては、イオンチャネル/ポンプやトランスポーターが細胞膜と細胞内小胞間を時空的に移動する分子基盤の解明を目標に研究を進め、以下の知見を得た。 1)脂質リン酸化酵素のPI3-キナーゼは、種々の受容体刺激によって活性化され、グルコーストランスポーター等の細胞膜移行を促進するが、異種の受容体刺激を介して相乗的に活性化されるPI3-キナーゼの分子種を同定し、そのユニークな分子基盤を解明した。 2)ベクトル輸送に介在する低分子量G蛋白質のRabと結合する新規のRINファミリー分子を同定した。RINファミリーには、SH2ドメイン、SH3ドメインが結合するProに富む配列、Rabのグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として機能するVps9ドメイン、Rasメンバーとの結合が推定されるRAドメイン等の機能領域があり、小胞の出芽と輸送の初期過程において、これらの領域を介して種々のシグナルを集積する足場的役割を果たすことを見出した。 3)新規G蛋白質ファミリーの網羅的な解析から、ベクトル輸送系への関与が期待される分子群Di-Ras、Rhebを同定した。特に、後期エンドソームからリソソーム小胞に局在化するRhebは、グリア細胞におけるグルタミン酸トランスポーターの形質膜と細胞内小胞間の移行を制御して、神経細胞の保護に寄与することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2003年 
    代表者 : 仁科 博史; 荒木 保弘; 星野 真一; 堅田 利明
     
    ERK、SAPK/JNK、p38の3種に大別されるMAPキナーゼシグナル伝達系は、様々な細胞応答に関与する主要なリン酸化酵素である。申請者らは、これらシグナル系の発生や免疫における生理的な役割を明らかにする目的でノックアウトマウスの作出や特異的な阻害剤を用いた解析を行っている。本年度の成果として、発生時の肝形成にはSAPK/JNKの活性化が必須あること,その活性化にはSEK1とMKK7の2種類の活性化因子が協調的に働いている可能性を示した(J.Biol.Chem.278;16595-16601,2003)。また、SEK1とMKK7を欠損しSAPK/JNKの活性化が完全に失われた細胞を作出し、ストレス応答性のアポトーシス誘導に関して検討を加えた。先の報告とは異なりストレス応答性のアポトーシス誘導にはSAPK/JNKの活性化は必須でないことを明らかにした(J.Biol.Chem.279;1621-1626,2004)。さらにFcγ受容体やfMLP受容体による好中球の活性酸素産生において、ERKがアダプター分子のGab2を直接リン酸化すること,その結果PI3キナーゼの活性化が促進されるという興味深い知見を見い出した。ERKの標的分子を見い出すという本研究目的の一つを達成した(J.Immunol.171;4227-4234,2003)。一方、放射標識された非天然型のATPアナログの合成とこれをリン酸化反応の基質として利用可能な点変異MAPキナーゼを作製することによって、変異MAPキナーゼだけが標的分子に放射標識されたγ位のリン酸基を転移できるような実験系では実用化に向けて、高非活性のATPアナログの合成や細胞膜を透過しにくい非天然型ATPアナログを細胞内に導入する条件が検討されている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2003年 
    代表者 : 荒木 保弘; 星野 真一; 仁科 博史; 堅田 利明
     
    真核細胞には、転写・複製中のエラーや不適切なスプライシングにより生じる未成熟な翻訳終結コドン(ナンセンス変異)を含むmRNAを選択的に分解するNMD(Nonsense-mediated mRM decay)と呼ばれる監視機構が存在している。この作用により、ナンセンス変異をもつ転写産物からC末端側が欠失したタンパク質は生成されない。これまでNMD経路では、通常のmRNA分解と異なり、3'→5'方向の分解は介在しないと考えられていた。先に我々は、新規G蛋白質Ski7が真核細胞の3'からのmRNA分解に寄与することを示した。平成15年度は、このG蛋白質を中心に、3'からのmRNA分解とNMD経路の関連について、酵母を用いた解析から検討を進め、以下の知見を得た。 1、3'→5'方向の分解関連因子の破壊株において、ナンセンス変異を含むmRNAが蓄積することを見出し、NMD経路においても3'→5'方向の分解が寄与することを明らかにした。さらにNMDの3'→5'方向のmRNA分解には、通常のmRNA分解における3'→5'分解機構、すなわち{mRNA分解酵素の本体であるエキソソーム、その補助因子のSki複合体、そして両複合体の共役因子であるSki7が必要であった。2、ナンセンス変異を含むmRNAの3'→5'方向の分解が促進しており、この活性化には、NMD経路で機能するUp咽子群が寄与していることを見出した。3、Upf因子群と3'からの分解関連因子との相互作用の有無を検討したところ、Ski7との相互作用を見出した。さらにSki7上のUpf因子相互作用部位を同定し、野生株に過剰発現することにより、ナンセンス変異を含んだmRNAの3'→5'方向の分解が特異的に阻害された。以上の結果から、Ski7G蛋白質とUpf因子群間の相互作用が、NMD経路の分解促進に必要であることが示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2003年 
    代表者 : 星野 真一; 荒木 保弘; 仁科 博史; 堅田 利明
     
    翻訳終結は遺伝子発現の最終段であり、合成したポリペプチド鎖をtRNAから切り離す反応過程である。これまで翻訳終結過程はこのような単に翻訳を終わらせるためだけの反応過程と考えられてきたが、我々は翻訳終結因子eRF3/GSPTの機能を解析する過程で、翻訳終結過程が翻訳終結後におこる2つの事象と共役していることを明らかにしてきた。1つはmRNA分解であり、もう1つは翻訳開始である。すなわち、翻訳終結と共役して、翻訳を終えたリボソームは効率良く次の翻訳開始にリサイクルされると同時に、翻訳を終えたmRNAの分解が進行することを明らかにした。従って、翻訳終結は当初考えられていた以上に遺伝子発現において重要な制御部位になりうることを意味している。 本研究においては、特に翻訳終結と共役したmRNA分解機構の詳細についてさらに検討を加えた。その結果、翻訳終結はmRNA分解の律速段階であるポリA鎖の短縮化過程と共役しており、このポリA鎖の短縮化を制御する酵素としてPANデアデニレースを同定した。また、これまでモデル系として用いてきた出芽酵母に加えてヒトにおける解析を行い、ヒトにおいてもPANデアデニレースが存在することを明らかにし、実際に細胞内においてmRNAのポリA鎖分解に関わる酵素であることを証明した。PANは翻訳終結因子と同様、mRNAの3'末端ポリA鎖に結合するポリA鎖結合蛋白質PABPと相互作用するが、両者の結合は競合的であり、翻訳の進行に伴って翻訳終結因子からPANへの置換が起る。PANはPABPによって活性化されるため、その結果ポリA鎖の分解が翻訳終結と共役しておこるという分子機構を明らかにした。一方、翻訳終結因子eRF3/GSPTはPABPとの結合部位において切断をうけ、アポトーシス阻害因子であるIAPと結合することでカスパーゼを活性化してアポトーシスを引き起こすことを発見した。このようにeRF3/GSPTはアポトーシスの制御因子として機能すると同時に、翻訳終結過程がアポトーシス時の翻訳阻害のターゲットになる可能性を乱した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2000年 -2003年 
    代表者 : 仁科 博史; 荒木 保弘; 星野 真一; 堅田 利明; 紺谷 圏二
     
    マスト細胞上に存在するIgE受容体(FcεRI)の刺激は、主にサイトカイン遺伝子の発現とヒスタミンやセロトニンを含む細胞内顆粒の放出を介して、アレルギーや炎症反応に深く寄与している。これら2種の生理応答に関わる細胞内のシグナル伝達系として、それぞれPI3-キナーゼの活性化と細胞内Ca^<2+>の上昇が重要視されているが、MAPキナーゼ系の役割については未だに不明な点が多い。申請者らは、これらシグナル系の生理的な役割を明らかにする目的でノックアウトマウスの作出や特異的な阻害剤を用いた解析を行っている。本年度の成果として、我々は先ずストレス応答性のMAPキナーゼであるSAPK/JNKの活性化機構を検討した。その結果、SAPK/JNKの活性化にはSEK1とMKK7の2種類の活性化因子が協調的に働いていることを明らかにした(J.Biol.Chem. 278;16595-16601,2003)。また、同じく免疫担当細胞の一つである好中球のFcγ受容体やfMLP受容体による活性酸素産生において、ERKがアダプター分子のGab2を直接リン酸化すること,その結果PI3キナーゼの活性化が促進されるという興味深い知見を見い出した(J.Immunol.171;4227-4234,2003)。次に我々は、MAPキナーゼ系の阻害剤を用いてマスト細胞の生理機能に及ぼす影響を検討した。その結果、SAPK/JNK阻害薬のSP600125によってFcεRI刺激によるサイトカイン遺伝子発現も顆粒放出も顕著に抑制されることを見い出した。しかしながら、この薬剤による抑制効果はSAPK/JNK阻害によるものでないことを、SAPK/JNK活性化の時間経過やMKK7欠損マスト細胞を用いて明らかにしている。現在までに、SP600125の作用点はPI3-キナーゼより上流に位置する分子であることを見い出しており、この作用点の解明から、サイトカイン遺伝子発現や顆粒放出に必須の役割を果たす分子の解明を目指している。
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    研究期間 : 2002年 -2002年 
    代表者 : 仁科 博史; 荒木 保弘; 星野 真一; 堅田 利明
     
    ERK、SAPK/JNK、p38の3種に大別されるMAPキナーゼファミリーは、様々な細胞応答に関与する主要なリン酸化酵素である。申請者らは最近、紫外線照射時のERKやJNK、p38の活性化機構やその生理的役割を検討し、ERKの活性化にはSrcからのEGF受容体の活性化という細胞膜近傍での反応が必要であること、また細胞のアポトーシス誘導の関与が示唆されているJNKやp38とは対照的に、ERKが抗アポトーシスに関与することを明らかにした(J.Biol.Chem.277;366-371,2002)。しかしながら、これらのMAPキナーゼが標的とするリン酸化分子やそれらの生理的役割については不明のままである。一般に、細胞内あるいは細胞抽出液内に存在するプロテインキナーゼの標的分子を同定することは困難な場合が多い。この原因の一つは、共存する多数多種類のキナーゼが一斉にリン酸化反応を行い、目的のリン酸化反応を覆い隠してしまうことにある。そこで本研究では、放射標識された非天然型のATPアナログの合成とこれをリン酸化反応の基質として利用可能な点変異MAPキナーゼを作製することによって、変異MAPキナーゼだけが標的分子に放射標識されたγ位のリン酸基を転移できるような実験系の開発を行った。これまでに野生型リン酸化酵素が利用できない非天然型ATPアナログを利用可能な点変異JNKは作製済みであり、同様な方法で、p38やERKの点変異体も作製した。現在これら変異体の特性を検討中である。また、細胞膜を透過しにくい非天然型ATPアナログを細胞内に導入する目的で、刺激依存的にJNKが活性化される環境を保持しつつ、非天然型ATPアナログが細胞内に取り込まれる条件を、各種可溶化剤やサポニンを用いて検討中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2002年 
    代表者 : 堅田 利明; 荒木 保弘; 星野 真一; 仁科 博史
     
    真核生物には、転写・複製中のエラーや不適切なスプライシングによって生じたナンセンス変異をもつmRNAを選択的に分解する機構として、UPF因子群が介在するnonsense-mediated decay (NMD)経路が存在する。このNMDの作用によりナンセンス変異をもつ転写産物からC末端側が欠失した蛋白質が翻訳されることは通常ない。先に申請者らは、翻訳終結に関わるG蛋白質eRF3を単離し、このeRF3ファミリーに属する新規G蛋白質であるSki7が細胞質におけるmRNA分解の基本的因子であることを初めて明らかにした。本研究においては、以下に示すように、NMDには新規な分解経路が介在すること、さらにこの分解経路にはUPF因子群とSki7間の相互作用が必要であることを見出した。これは、UPF因子群とmRNA分解マシーナリーの機能的関連を示した初めての知見であり、ナンセンス変異がNMDを活性化する機構を理解する上で大きな手掛かりであると考える。 1、既知のNMD分解経路を抑制してもナンセンス変異をもつmRNAの分解は促進する。2、新規な分解経路は、UPF因子群のみならずSki7も必要である。3、Ski7はUPF因子群と相互作用する。4、Ski7のUPF因子群相互作用部位の強制発現により、新規経路を介した分解のみが抑制される。 多くの遺伝病はナンセンス変異が原因としており、そのmRNAはNMDによりが潜在化している。ナンセンス変異を含む転写産物をNMDから回避させることによって遺伝病原因遺伝子を同定し、より良い治療法を見出せる可能性もあり、上記の知見はNMD経路を標的とした新しい遺伝病の診断・治療法への応用にも有用である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2002年 -2002年 
    代表者 : 星野 真一; 荒木 保弘; 仁科 博史; 堅田 利明
     
    G蛋白質GSHTファミリーは、翻訳伸長因子EF1αと相同なC末端側領域に加えて、ファミリー間で相同性の低いN末端領域を有する。先に我々は、GSPTがC領域を介して終止コドンを認識する翻訳終結因子eRF1と結合しeRF3として機能することを、さらにN領域を介してポリA尾部結合蛋白質であるPABPの機能を制御することを報告した。平成14年度においては、主に酵母を用いた解析から、GSPTファミリーによるmRNAの分解制御についてさらに検討を加え以下の知見を得た。 1、mRNA分解の律速段階はポリA尾部の短縮化にあるが、GSPTのN領域欠失変異体ではmRNAのポリA鎖の短縮化が阻害され、引き続くmRNA分解が遅延した。すなわち、GSPTは翻訳終結において、そのC領域を介してeRF1を終止コドンに運搬して翻訳を終結させた後、さらにN領域を介してPABPと相互作用し、翻訳を終えたmRNAの分解を促進するという、GTP蛋白質が介在する新規のシグナル伝達経路が証明された。2、GSPTとeRF1との結合はGSPTへのGTPの結合を必要とし、一方のGSPTとPABPとの結合はGSPTへのヌクレオチド結合に非依存的であった。3、mRNA分解は翻訳終結反応と共役しており、この共役はGSPTによって伸介された。4、さらにGSPTとPABPとの相互作用は、5'-キャップ構造と3'-ポリA尾部によるmRNAの環状化に依存した翻訳の効率化にも影響を与え、リボソームの再雇用に積極的な役割を果たすことを見出した。5、eRF3と最も相同性の高いG蛋白質eRFSは、そのC末端側領域でeRF1に類似の分子eRFLとGTP依存的に結合し、一方のN末端領域は、解糖系酵素のGAPDHとの結合を介して特定(AU-rich)のエレメントを有するmRNAの動態を制御する可能性を見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2001年 -2002年 
    代表者 : 仁科 博史; 荒木 保弘; 星野 真一; 堅田 利明; 紺谷 圏二
     
    我々は、ストレス応答性のMAPキナーゼSAPK/JNKの活性化機構やその生理的役割をその2種類の活性化因子であるSEK1およびMKK7の観点から解析してきた。これまでに本シグナル伝達系がマウスの胎児肝形成に必須の役割を果たしていることを明らかにしてきた。しかしながら、肝形成の分子レベルの研究は近年始まったばかりであり、胎児肝特異的な分子マーカーの不足や細胞の培養技術の遅れから、肝幹細胞である肝芽細胞の発生やその増殖・分化の解析環境は不十分のままである。そこで本研究では、解析ツールとして利用可能な初期胎児肝特異的モノクローナル抗体の作製から開始し、その後、各種ノックアウトマウスの解析を行った。その結果、胎児肝特異的なモノクローナル抗体を複数作製することに成功した。このうち抗Liv2抗体は胎児パラフィン切片内の肝芽細胞を、抗Liv5抗体は胎児肝に存在する血球系の細胞を特異的に認識した。次ぎにこれら抗体をツールに用いて、正常およびノックアウトマウスの胎児肝における肝芽細胞の出現や増殖の様子を詳細に解析した。造血幹細胞形成不全マウスであるAML1ノックアウトの胎児肝の解析から、肝芽細胞の出現・増殖が造血系の形成とは独立に進行していることを明らかにした。正常マウスでは胎生9日(E9)に出現する肝芽細胞はE10.5からE12.5の2日間で約6倍に増殖すること、SEK1ノックアウトマウスではE10.5からの増殖が停止するのに対して、c-JunノックアウトマウスではE12.5日以降で増殖に傷害が起こることが判明し、SEK1→SAPK/JNK→c-Junシグナル伝達系が肝芽細胞の増殖・生存シグナルとして機能していることが示された。さらに腫瘍壊死因子の受容体であるTNFR1ノックアウトマウスの解析から、このシグナル系は他の生存シグナルであるNFkB系とは異なる役割で機能していることが明らかになった。以上、本基盤研究により有用なツールと重要な知見が得られた。
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    研究期間 : 2001年 -2001年 
    代表者 : 堅田 利明; 紺谷 圏次; 星野 真一; 仁科 博史
     
    Rab5は細胞膜からの小胞出芽、小胞間の融合や初期エンドソームへの融合など、細胞外からの物質輸送や受容体のエンドサイトーシスにおいて重要な役割を果す低分子量のG蛋白質である。先に我々は、GTP結合型のRab5と相互作用する分子を酵母のtwo hybrid系等を用いて探索し、Rab5に結合する複数の新規分子(RINファミリー)を単離・同定したが、本研究では、RINファミリー分子の性状を解析し、Rab5との相互作用について以下の知見を得た。 1.Rab5結合蛋白質RINファミリーには、N末端から、SH2ドメイン、SH3ドメインが結合するProに富む配列、Rabのグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として機能し得るVps9ドメイン、Rasとの結合が推定されるRAドメインなど、多くの機能領域が共通に存在した。2.RINファミリーの個々のメンバーは、ヒトの各組織間で異なる発現パターンを示した。3.RIN2はGDP-Rab5よりもGTP-Rab5に対してより結合親和性が高く、さらにGEFの活性も有した。4.RIN2は、C末端側及びN末端側同士で会合し、ホモ4量体を形成するというユニークな性状を示した。5.HeLa細胞でのRIN2の細胞内局在について検討した結果、G1, S, G2前期ではRab5と同じ小胞に共局在しているが,細胞周期に依存してM期特異的に核内に移行するという興味深い局在変化を見出した。6.このRIN2の核内移行は、活性化型であるRab5変異体の導入で促進され、不活性化型Rab5変異体導入によって完全に抑制された。 これらの知見は、細胞膜受容体刺激のシグナルがRINファミリー分子を介してRab5に伝達され、さらにRINがRab5の下流で機能する可能性を示唆している。また、Rab5は機能分子の核内移行をも制御する可能性が生まれた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2001年 -2001年 
    代表者 : 仁科 博史; 紺谷 圏二; 星野 真一; 堅田 利明
     
    MAPキナーゼファミリー(ERK, SAPK/JNK, p38)は、様々な細胞応答に関与する主要なリン酸化酵素である。申請者らは最近、紫外線照射時のERKやSAPK/JNK, P38の活性化機構やその生理的役割を検討し、ERKの活性化にはSrcからのEGF受容体の活性化という細胞膜近傍での反応が必要であること、細胞のアポトーシス誘導の関与が示唆されているSAPK/JNKやp38とは対照的にERKは抗アポトーシスに関与することを明らかにした(J. Biol. Chem. 277 ; 366-371, 2002)。しかしながら、これらMAPキナーゼが如何なる標的分子をリン酸化してこのような生理的役割を果たすかについては不明のままである。 一般に、細胞内あるいは細胞抽出液内に存在するプロテインキナーゼの標的分子を同定することは困難な場合が多い。この原因の一つは、共存する多数多種類のキナーゼが一斉にリン酸化反応を行い、目的のリン酸化反応を覆い隠してしまうことにある。そこで本研究では、アイソトープラベルされた非天然型のATPアナログの合成とこれをリン酸化反応の基質として利用可能な点変異MAPキナーゼを作製することによって、変異MAPキナーゼだけが標的分子にアイソトープラベルされたγ位のリン酸基を転移できるような実験系の開発を行った。これまでに野生型リン酸化酵素が利用できない非天然型ATPアナログを利用可能な点変異JNKは作製済みであり、同様な方法で、p38やERKの点変異体も作製した。現在これら変異体の特性を検討中である。また、利用可能な変異JNKを用いて肝臓のミトコンドリア画分中の標的分子を探索したところ、分子量約30kDaのタンパク質が特異的にリン酸化されることを見出した。現在このタンパク質の同定が進行中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2001年 -2001年 
    代表者 : 紺谷 圏二; 星野 真一; 仁科 博史; 堅田 利明
     
    ヒトの前立腺癌の転移の抑制に関わる染色体17番目に存在する新たな癌抑制遺伝子の候補として、sek1遺伝子が、ポジショナルクローニングによって同定された。sek1遺伝子は、ストレス応答性のMAPキナーゼSAPK/JNKを活性化するMAPキナーゼキナーゼSEK1/MKK4をコードする。興味深いことに、ヒトの膵癌、胆癌、肺癌でも、sek1遣伝子の変異を示す症例が続々と報告された。本研究では、既に作出済みのSEK1欠損ES細胞や、SEK1と同様にSAPK/JNKを活性化するSEK2/MKK7を欠損するES細胞を用いて、その増殖能・腫瘍形成能および免疫担当細胞の増殖に及ぼす影響を個体レベルで明らかにすることを目的として、以下の知見を得た。 1)野生型、sek1(-/-)、mkk7(-/-)の遺伝子型に関わらずES細胞の増殖はほぼ同様であった。 2)妊娠17日目のマウスにブサルファンを投与し、免疫能の低下した新生児マウスを作出後、これらの肝臓に各種遺伝子型のES細胞を移植し、腫瘍形成能を検討した。4週間後、ブサルファン投与群では約30%で腫瘍の形成が確認されたが、遺伝子型による差異は観察されなかった。 3)一方興味深いことに、mkk7(-/-)ES細胞を用いて作出されたキメラマウスから調製された胸腺T細胞やB細胞、マスト細胞などの免疫担当細胞では、増殖刺激に対して過増殖することが観察された(J. Ekp. Med. 17;757-768,2001)。 以上の結果は、細胞の種類によつてはSAPK/JNK活性化因子であるMAPキナーゼキナーゼが増殖抑制因子として関与することを示唆するが、ヒトの各種癌から推測されている癌抑制遺伝子機能との関わりについては不明のままであり、更なる解析が必要である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2001年 -2001年 
    代表者 : 星野 真一; 紺谷 圏二; 仁科 博史; 堅田 利明
     
    G蛋白質GSPTファミリーは、翻訳伸長因子EF1αと相同なC末端側領域に加えて、ファミリー間で相同性の低いN末端領域を有する。先に我々は、GSPTがC領域を介して終止コドンを認識する翻訳終結因子eRF1と結合し、eRF3として機能することを、さらにN領域を介してポリA尾部結合蛋白質であるPABPの機能を制御することを見出した。本研究においては、主に酵母を用いた解析から、GSPTファミリーによるmRNAの分解制御について検討を加えた。 mRNA分解の律速段階はポリA尾部の短縮化にあるが、GSPTのN領域欠失変異体では、mRNAのポリA鎖の短縮化が阻害され、それに引き続くmRNA分解が遅延した。すなわち、GSPTは翻訳終結において、そのC領域を介してeRF1を終止コドンに運搬して翻訳を終結させた後、さらにN領域を介してPABPと相互作用し、翻訳を終えたmRNAの分解を促進するという、GTP蛋白質が介する新規のシグナル伝達経路が証明された。また、GSPTと近縁のG蛋白質であるSki7は、そのN領域を介してmRNAの3'側方向からの分解に介在するSki複合体とエキソヌクレアーゼ活性を有するエキソソーム複合体に結合することを見出した。さらに別のG蛋白質HBS1においては、その破壊株でAU rich配列を有するmRNAの半減期が遅延し、HBS1のN末端にはAU rich配列結合蛋白質であるグリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)が結合する知見を得た。AU rich配列へのGAPDHの結合は、HBSによって阻害されるので、HBSはmRNA AU rich配列に結合しているGAPDHと競合して、mRNAの分解を促進する可能性が高い。 このように、GSPT(eRF3)ファミリーに属するG蛋白質は、そのN領域を介してmRNAの動態を調節するという、共通した制御機構の存在が明らかにされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2000年 -2001年 
    代表者 : 星野 真一; 紺谷 圏二; 仁科 博史; 堅田 利明
     
    GSPTは、翻訳伸長因子EF1αと相同なC末端側領域に加えて、ユニークなN末端領域を有する。先に我々は、GSPTがC領域を介して終止コドンを直接認識する翻訳終結因子eRF1と結合しリボソームA部位に運搬するeRF3として機能することを証明した。この翻訳終結因子としての機能にはC末端領域のみで十分であり、N末端領域の役割については全く不明であった。我々はN領域においてポリA尾部結合蛋白質であるPABPと相互作用し、その機能を制御することを見出した。本研究においては、主に酵母を用いた遺伝学および生化学的解析から、GSPTによるPABPを介した遺伝子発現制御機構について検討を加えた。 その結果、GSPTはPABPとの結合を通して(1)mRNA分解の律速段階であるポリA尾部の短縮化においてmRNAの分解を制御すること、(2)翻訳を終えたリボソームを次のサイクルの翻訳開始にリクルートするShuntingを制御すること見い出した。従って、GSPTはCドメインを介して翻訳終結反応を遂行した後、NドメインでのPABPとの相互作用を介して次のサイクルの翻訳開始と、翻訳を終えたmRNAの分解過程への移行を厳密に制御していることが明らかになった。 また、GSPTと最も近縁のeRFSがCドメインを介して、eRF1と類似の構造を有する新規の因子eRFLと会合し翻訳の制御において機能すること、またNドメインを介してmRNAの分解に関わるAU rich配列結合因子であるグリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)と機能的に相互作用するという知見を得た。さらに別のG蛋白質Ski7は、そのN領域を介してmRNAの3'側方向からの分解に介在するSki複合体とエキソヌクレアーゼ活性を有するエキソソーム複合体に結合することを見出した。 このように、GSPTファミリーに属するG蛋白質は、翻訳の制御に共役した形でそのN領域を介してmRNAの動態を調節するという、共通した遺伝子発現制御機構の存在が明らかにされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2000年 -2001年 
    代表者 : 仁科 博史; 紺谷 圏二; 星野 真一; 堅田 利明
     
    我々は、ストレス応答性のMAPキナーゼSAPK/JNKの活性化機構やその生理的役割をその2種類の活性化因子であるSEK1およびMKK7の観点から解析してきた。これまでに本シグナル伝達系がマウスの胎児肝形成に必須の役割を果たしていることを明らかにしてきた。しかしながら、肝形成の分子レベルの研究は近年始まったばかりであり、胎児肝特異的な分子マーカーの不足や細胞の培養技術の遅れから、肝幹細胞である肝芽細胞の発生やその増殖・分化の解析環境は不十分のままである。そこで本研究では、解析ツールとして利用可能な初期胎児肝特異的モノクローナル抗体の作製から開始し、その後、各種ノックアウトマウスの解析を行った。その結果、胎児肝特異的なモノクローナル抗体を複数作製することに成功した。このうち抗Liv2抗体は胎児パラフィン切片内の肝芽細胞を、抗Liv5抗体は胎児肝に存在する血球系の細胞を特異的に認識した。次ぎにこれら抗体をツールに用いて、正常およびノックアウトマウスの胎児肝における肝芽細胞の出現や増殖の様子を詳細に解析した。造血幹細胞形成不全マウスであるAML1ノックアウトの胎児肝の解析から、肝芽細胞の出現・増殖が造血系の形成とは独立に進行していることを明らかにした。正常マウスでは胎生9日(E9)に出現する肝芽細胞はE10.5からE12.5の2日間で約6倍に増殖すること、SEK1ノックアウトマウスではE10.5からの増殖が停止するのに対して、c-JunノックアウトマウスではE12.5日以降で増殖に傷害が起こることが判明し、SEK1→SAPK/JNK→c-Junシグナル伝達系が肝芽細胞の増殖・生存シグナルとして機能していることが示された。さらに腫瘍壊死因子の受容体であるTNFR1ノックアウトマウスの解析から、このシグナル系は他の生存シグナルであるNFκB系とは異なる役割で機能していることが明らかになった。以上、本基盤研究により有用なツールと重要な知見が得られた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2000年 -2000年 
    代表者 : 仁科 博史; 紺谷 圏二; 星野 真一; 堅田 利明
     
    ストレス応答性のMAPキナーゼシグナル伝達系であるSAPK/JNK系は、生体防御に関わるT細胞の活性化やTh1/Th2細胞分化の制御に関与することが明らかにされている。SAPK/JNKを活性化する因子としてSEK1とMKK7が存在し、それぞれがSAPK/JNK分子内のThr-Pro-Tyr配列中のThrとTyrの両残基をリン酸化する(dual-specificity)キナーゼとして機能すると考えられている。我々はSEK1やMKK7のレベルからSAPK/JNK系の生理的役割を研究してきたが、その過程でSAPK/JNK活性化に関して興味深い現象を見出している。T細胞活性化刺激剤であるホルボールエステルとカルシウムイオノフォアで末梢T細胞や胸腺T細胞を刺激すると、ともに強いSAPK/JNKの活性化が観察される。しかしながら、SEK1欠損の末梢T細胞では野生型と同等のSAPK/JNKの活性化が認められるのに対して、胸腺T細胞ではSAPK/JNKの活性化はほぼ完全に消失したのである。これらの結果は、SAPK/JNK活性化の分子機構がT細胞の種類によって異なる制御を受けている可能性を示唆している。そこで、細胞内で起きているSEK1とMKK7によるSAPK/JNKの活性化やリン酸化の程度を定量的に検討し、1)これまではThrとTyrの両残基をリン酸化するキナーゼ(dual-specificity kinase)と考えられてきたSEK1とMKK7だが、SEK1はThr-Pro-Tyr配列のTyr残基を、MKK7は主にThr残基をリン酸化すること、2)両残基のリン酸化によってSAPK/JNKは相乗的に活性化されることを明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -2000年 
    代表者 : 堅田 利明; 紺谷 圏二; 星野 真一; 仁科 博史
     
    先に申請者の研究グループは、レチノイン酸によるヒトHL-60細胞の好中球への分化過程でエクト型NAD分解酵素(NADase)が細胞表層に誘導され,その酵素がリンパ球表面抗原のCD38であることを示した。本研究では,細胞表層上の機能分子と期待されるCD38,及びその関連分子でホスホジエステラーゼ活性をもつPC-1につき,細胞内シグナル伝達機構,酵素化学的特性,転写制御機構などを検討し,以下の知見を得た。1.CD38はNAD以外に,多彩な化合物のN-グリコシド結合を切断した。2.共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察から,ラットアストロサイトの細胞表層のCD38は,酵素反応の進行にともない化学修飾を受けて不活性化された。3.構造上CD38に類似したPC-1は,mRNAの翻訳産物から異なるプロセッシングによって,膜貫通型および分泌型酵素が産生する可能性が示された。4.PC-1のホスホジエステラーゼ活性を指標に,相互作用する因子を検索した結果,PC-1の酵素活性は細胞外マトリックスにより抑制された。5.PC-1を抑制する細胞外マトリックス成分の一部は,ヘパリン,ヘパラン硫酸と同定され,ヘパリンは直接PC-1分子と結合することが示された。さらに,ヘパリンによる酵素活性の抑制はPC-1の基質と競合することから,PC-1はヌクレオチド以外に細胞外マトリックスの構成成分を基質とする可能性が示された。6.ヒトPC-1のホモログを線虫(C.elegans)に見出し,その酵素活性が細胞表層に局在することを見出した。これらの結果から,エクト型酵素は細胞外マトリックスへの接着分子として機能する可能性が生まれた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -1999年 
    代表者 : 堅田 利明; 紺谷 圏二; 星野 真一; 仁科 博史
     
    先に我々は,GTP結合蛋白質GSPTがC末端側領域に存在する翻訳伸長因子EF1αと相同な領域を介して翻訳終結因子eRF1と相互作用し,翻訳終結因子eRF3として機能するとこと,さらに,N末端側領域を介してmRNAの3'末端poly(A)尾部結合蛋白質(PABP)と結合してmRNAの分解過程にも関与している可能性を見い出してきた。 本研究においては,酵母においてもGSPTとPABPが相互作用しうることを示し,酵母温度感受性変異株gst1において,poly(A)^+-mRNAの分解過程に異常が生じていることを明らかにした。また,GSPTをmulticopy vectorで細胞に導入すると,mRNAの半減期が短縮され,分解の促進が実際に観察された。さらに,GSPTと最も近縁の遺伝子産物である酵母HBSlは,GSPT同様のドメイン構造を有しているが,このHBS1のNドメインと相互作用する因子の検索を行い,グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を同定した。GAPDHは糖代謝系の酵素である一方で,ポリゾーム画分にも存在し、mRNAの3'非翻訳領域に存在するAU-richなRNAに高親和性に結合する蛋白質としても同定されている。したがって,これらの実験事実は,GSPT,HBS1が,共にNドメインにおいて3'非翻訳領域に結合するRNA結合蛋白質との相互作用を介しmRNAの安定性を制御しているという共通の機構の存在を強く示唆している。さらに,GSPTに対しグアニンヌクレオチド依存性に結合する因子を単離し,これがヌクレオチド二リン酸キナーゼ(NDPK)であることを見出した。GSPTにGTPを供給する機構,あるいはGSPTに対するGEF,GAPとしての機能等が期待され,現在解析中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -1999年 
    代表者 : 仁科 博史; 紺谷 圏二; 星野 真一; 堅田 利明
     
    SEK1/MKK4やSEK2/MKK7は、炎症性サイトカインなどの様々なストレス刺激に応答し、SAPK/JNKを活性化するキナーゼである。我々の成果を含め多くの報告が、T細胞の活性化やTNFαによる細胞応答にSEK2を介すSAPK/JNKの活性化の重要性を指摘している。本年度は、以下の諸点を明らかにした。 1)Cre-loxPを用いた条件付き遺伝子破壊法によって、sek2遺伝子破壊を誘導した。興味深いことに、SEK2欠損よって既にES細胞レベルで致死になることが判明した。 2)SEK1ノックアウトマウスの解析から、SEK1欠損マウスは肝臓形成に必須の役割を果たすことを明らかにしてきたが、造血の場である胎児肝の形成過程と造血との関わりを詳細に解析するために、胎児肝を特異的に認識するモノクローナル抗体を複数作製した。このうちの一つ抗Liv1抗体は胎児肝を特異的に染色した。興味深いことに、SEK1欠損胎児肝にはLiv1陽性細胞は観察されなかった。また、成体肝では、Liv1陽性細胞は肝実質細胞に比べて小さな細胞として少数しか存在しないことが明らかになった。肝幹細胞である可能性を検討中である。 3)SAPK/JNK系は、T細胞の活性化やThl/Th2分化の制御、あるいは、アポトーシス誘導や生存シグナルとしても機能することが示唆されている。c-Junを代表とする既存の標的分子だけでは、上記の生理機能を理解することは不充分であると考え、新規標的分子を探索した。その結果、成体マウス肝の核画分よりc-Junとは異なる分子量40kのタンパク質が、SAPK/JNKの良い基質となることが明らかとなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -1999年 
    代表者 : 堅田 利明; 紺谷 圏二; 星野 真一
     
    先に我々は,チロシンキナーゼ型とG蛋白質共役型という2種の異なる受容体刺激によって相乗的に活性化されるイノシトールリン脂質3-キナーゼ(PI3K)として,110-kDaβ触媒(p110β)/85-kDa調節(p85)サブユニットからなる2量体型PI3Kを同定した。本研究では,この分子種のPI3Kを中心にさらに解析を進め,以下の知見を得た。1.構成的に活性化型のp110β-PI3Kと相互作用する分子を酵母のtwo-hybrid系を用いて検索し,低分子量GTPaseファミリーのRab5を同定した。2.Ser/ThrキナーゼのAkt(PKB)は,PI3Kの産物であるPIP3により活性化されるが,インスリン刺激に応答するAktの活性化は,活性化型Rab5の遺伝子導入で増強され,不活性化型Rab5により抑制された。すなわち,チロシンキナーゼ受容体からPI3Kを介するAktの活性化に,Rab5の介在が初めて示された。3.活性化型Rab5の相互作用分子をtwo-hybrid系を用いて検索し,SH2ドメインをもつ新規分子群を同定した。4.エフェクターとしての役割が期待される新規Rab5結合蛋白質群は,初期エンドソームに局在化することが示され,小胞輸送におけるRab5の機能解析の基礎が築かれた。5.リンパ球細胞において,Fcγ受容体刺激でチロシンリン酸化されるPI3Kのアダプター分子として,癌遺伝子産物p120^と100-kDa蛋白質を同定した。100-kDa蛋白質は、G蛋白質共役型受容体刺激によりそのセリン/スレオニン残基がリン酸化されるというユニークな挙動を示し,Gab2であることを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -1999年 
    代表者 : 仁科 博史; 紺谷 圏二; 星野 真一
     
    c-jun遺伝子産物の活性を制御するMAPキナーゼファミリーのSAPK/JNK系は、発がんやストレス応答、アポトーシスに関与する主要な細胞内情報伝達経路を構成すると考えられている。SAPK/JNK活性化因子SEK1/MKK4やSEK2/MKK7を中心に、c-JunやSEK1欠損マウス、またSEK2欠損細胞を用いて、以下の諸点を明らかにした。 1.c-Jun欠損マウスもSEK1欠損マウスもともに、肝実質細胞数の低下とその後のアポトーシスの亢進により胎生致死となるが、その程度はSEK1欠損の方がc-Jun欠損より重度であった。 2.SEK2欠損ES細胞は致死となった。SEK2は細胞の生存に必須の役割りを果たしていることが示唆された。 3.胎児肝特異的なモノクローナル抗体抗を複数作製した。このうちの一つ抗Liv1抗体は胎児肝を特異的に染色した。興味深いことに、SEK1欠損胎児肝にはLiv1陽性細胞は観察されなかった。また、成体肝では、Liv1陽性細胞は肝実質細胞に比べて小さな細胞として少数しか存在しないことが明らかになった。肝幹細胞である可能性を検討中である。 4.成体肝の核画分よりc-Junとは異なる分子量40kのタンパク質が、SAPK/JNKの良い基質となることが明らかになった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1999年 
    代表者 : 仁科 博史; 紺谷 圏二; 星野 真一; 堅田 利明
     
    我々はこれまでに、ストレス応答、特にアポトーシス誘導との関連で注目を集めているSAPK/JNKシグナル系の生理的役割の解明を中心に研究を行い、(1)SEK1/MKK4以外のSAPK/JNK活性化因子、SEK2/MKK7のクローニング、(2)免疫系におけるSEK1,SEK2の重要性、(3)マウスの発生時の肝形成におけるSEK1の重要性などを報告してきた。本研究では、これら先の研究成果を踏まえ、以下の諸点を明らかにした。 1)SEK1欠損の胎児肝では、肝実質細胞数の低下とその後のアポトーシスの亢進によって胎生致死となること、SEK1が生存シグナルとして機能していることが示唆された。 2)造血の場である胎児肝の形成過程と造血との関わりを詳細に解析するために、胎児肝を特異的に認識するモノクローナル抗体を複数作製した。このうちの一つ抗Liv1抗体は胎児肝を特異的に染色した。興味深いことに、SEK1欠損胎児肝にはLiv1陽性細胞は観察されなかった。SEK1がLiv1の発現を制御している可能性が示唆された。また、成体肝では、Liv1陽性細胞は肝実質細胞に比べて小さな細胞として少数存在することなどから、Liv1陽性細胞が肝幹細胞として機能している可能性が示唆された。 3)Cre-loxPを用いた条件付き遺伝子破壊法によって、sek2遺伝子破壊を誘導した。興味深いことに、SEK2欠損よってES細胞は致死となった。発生初期のES細胞において、SEK2が生存維持という基本的な生理機能を果たしている可能性が示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1999年 
    代表者 : 堅田 利明; 紺谷 圏二; 星野 真一; 仁科 博史
     
    G蛋白質共役型受容体(GPCR)刺激によってG蛋白質は活性化され,αとβγサブユニット(Gβγ)とに解離するが、αサブユニットに加えて、Gβγもいくつかのエフェクター分子の活性を直接制御することが見出されている。本研究では、Gβγが種々の効果器の活性を調節する分子機構について解析するとともに,110-kDaβ触媒(p110β)/85-kDa調節(p85)サブユニットからなる2量体型イノシトールリン脂質3-キナーゼ(PI3K)について解析し,以下の知見を得た。1.Gβγによる2型アデニル酸シクラーゼの活性化において、Gβはその第1WDモチーフを中心として相互作用することが,一方,酵母のtwo-hybrid系による解析から、Raf-1キナーゼはGβの第3及び第6WDモチーフと相互作用する可能性を見出された。2.p110β/p85-PI3Kは,Gβγとリン酸化チロシンを含むペプチドによって相乗的に活性化された。3.構成的に活性化型のp110β-PI3Kと相互作用する分子を酵母のtwo-hybrid系を用いて検索し,低分子量GTPaseファミリーのRab5を同定した。4.Ser/ThrキナーゼのAkt(PKB)は,PI3Kの産物であるPIP3により活性化されるが,インスリン刺激に応答するAktの活性化は,活性化型Rab5の遺伝子導入で増強され,不活性化型Rab5により抑制された。5.活性化型Rab5の相互作用分子をtwo-hybrid系を用いて検索し,SH2ドメインをもつ新規分子群を同定した。エフェクターとしての役割が期待されるこの新規Rab5結合蛋白質群は,初期エンドソームに局在化することが示された。6.リンパ球細胞において,Fcγ受容体でチロシンリン酸化されるPI3Kのアダプター分子として,Gab2を同定した。このアダプターはGPCRである化学遊走因子受容体の刺激によりそのセリン/スレオニン残基がリン酸化されるというユニークな挙動を示した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1998年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 仁科 博史
     
    申請者の研究グループは、レチノイン酸によるヒトHL-60細胞の好中球への分化過程でエクト型NAD分解酵素 (NADase) が細胞表層に誘導され、この酵素活性がリンパ球表面抗原のCD38によることを先に明らかにした。本研究では、細胞表層上の新しい機能分子と期待されるCD38及びその関連分子PC-1に関わる細胞内シグナル伝達機構、酵素化学的特性、及び転写制御機構などを検討し、以下の知見を得た。1、CD38の基質特異性について検討し、CD38はNAD以外に多様な化合物のN-グリコシド結合を切断し、ニコチンアミドを遊離する特性を示した。2、ラットCD38を認識するポリクローナル抗体を用いた解析から、CD38はアストロ細胞に強く発現することを見出した。また、アストロ細胞表層のCD38は酵素反応の進行にともない何らかの化学修飾を受けて不活性化された。3、CD38の反応産物のADP-riboseは、老化への関与が指摘されている翻訳御修飾であるadvanced glycation end products(AGE)化のよい供与体となることが示された。4、糖鎖修飾を受けたCD38と結合する50-kDaタンパク質をリンパ組織に見出した。5、ヒトCD38遺伝子の遺伝子発現について解析し、核内レチノイン酸受容体のRAR(α)/RXRが結合する応答配列が第1イントロン上に存在することを見出した。6、構造上CD38に類似したPC-1にはホスホジエステラーゼ活性が存在するが、Jurkat Tリンパ球細胞をdibutyryl cAMPで処理すると、膜結合型の発現に加えて可溶性型のPC-1が分泌された。7、膜貫通型および分泌型PC-1の酵素学的な性状に差異はなく、両酵素はPC-1 mRNAの翻訳産物から異なるプロセッシングによって生じる可能性が示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1998年 
    代表者 : 仁科 博史; 星野 真一; 堅田 利明
     
    MAPキナーゼファミリーの一つであるSAPK/JNK系は、DNA損傷、紫外線照射、熱ショック、虚血、炎症性サイトカインなどの様々なストレス刺激によって活性化されることから、発がんやストレス応答、アポトーシスに関与する主要な細胞内情報伝達経路を構成すると考えられている。私どもはこれまでに、SAPK/JNKの活性化を直接制御するキナーゼ,SEK1(JNKK1/MKK4)の遺伝子破壊実験を行い、新規SAPK/JNK活性化因子SEK2/MKK7の単離・同定や、SAPK/JNK系がT細胞の活性化や生存維持、またマウスの個体発生における器官形成にも深く関与することを明らかにしてきた。本研究では、SAPK/JNK系の免疫応答及びマウス発生についてさらなる解析を行い、以下の知見を得た。1.in vitroで抗CD3抗体とIL-2で末梢T細胞を活性化し、再度抗CD3抗体で刺激すると、このT細胞はアポトーシスを引き起こす。SEK1を欠損するT細胞は野生型と比べてアポトーシスの亢進が観察された。興味深いことに、抗CD3抗体で誘導される抗アポトーシス分子であるBcl-X_Lの発現がSEK1欠損T細胞では低下しており、SEK1が生存シグナルを伝達している可能性が示唆された。2.SEK1欠損T,B細胞を有するキメラマウスの解析から、ウイルスに対する個体全体の免疫系は、SEK1欠損によってほとんど影響を受けないこと、この原因としてSEK2/MKK7による相補機能が示唆された。3.ノックアウトマウスの解析から、SEK1欠損マウスは肝臓形成不全により、胎生期12.5日で致死になることが明らかになった。肝実質細胞の増殖・分化の低下とその後のアポトーシスの抗進が観察され、これが肝臓の形成不全の原因であることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1998年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 仁科 博史
     
    本研究では、チロシンキナーゼ型とG蛋白質共役型という2種の受容体刺激によって相乗的に活性化されるイノシトールリン脂質3-キナーゼ(PI3K)について解析し、以下の知見を得た。1、チロシンリン酸化を引き起こすインスリンとG_i-共役型受容体のアゴニストである化学走化性因子fMLPの両者で好中球細胞を刺激すると、相乗的なPI3Kの活性化が観察された。2、こうした2種の異なる受容体刺激によるPI3Kの相乗的な活性化は、脂肪細胞におけるインスリンとアデノシン受容体刺激、リンパ球細胞におけるFcγとfMLP受容体刺激などでも観察され、それぞれ糖取り込みの促進、活性酸素産生という細胞応答と密接に関連した。3、インスリンとfMLP受容体を安定に発現した培養細胞株の解析から、PI3Kの相乗的活性化はAkt/PKBプロテインキナーゼとS6キナーゼの活性化及びアクチン線維の再形成による膜ラッフリングの増大とよい相関を示した。4、チロシンリン酸化ペプチドとG-βγによって相乗的に活性化されるPI3Kとして、110-kDaβ-触媒/85-kDa調節サブユニット2量体を同定した。5、リンパ球細胞において、Fcγ受容体刺激でチロシンリン酸化されるPI3Kのアダプター蛋白質として、癌遺伝子産物p120^と100-kDa蛋白質を見出した。100-kDa蛋白質は、G蛋白質共役型受容体刺激によりそのセリン/スレオニン残基がリン酸化されるというユニークな挙動を示した。6、構成的に活性化型の110-kDaβ-型 PI3Kと相互作用する分子を酵母のtwo-hybrid系を用いて検索した結果、低分子量GTPaseファミリーのRab5が見出された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1998年 
    代表者 : 仁科 博史; 星野 真一; 堅田 利明
     
    c-jun遺伝子産物の活性を制御するMAPキナーゼファミリーのSAPK/JNK系は、DNA損傷、紫外線照射、熱ショック、虚血、炎症性サイトカインなどの様々なストレス刺激によって活性化されることから、発がんやストレス応答、アポトーシスに関与する主要な細胞内情報伝達経路を構成すると考えられている。私どもはこれまでに、SAPK/JNKの活性化を直接制御するキナーゼ,SEK1(JNKK1/MKK4)の遺伝子破壊実験を行い、新規SAPK/JNK活性化因子SEK2/MKK7の単離・同定や、SAPK/JNK系がT細胞の活性化や生存維持、またマウスの個体発生における器官形成にも深く関与することを明らかにしてきた。本研究では、SAPK/JNK系の免疫応答及びマウス発生についてさらなる解析を行い、以下の知見を得た。 1.in vitroで抗CD3抗体とIL-2で末梢T細胞を活性化し、再度抗CD3抗体で刺激すると、このT細胞はアポトーシスを引き起こす。SEK1を欠損するT細胞は野生型と比べてアポトーシスの亢進が観察された。興味深いことに、抗CD3抗体で誘導される抗アポトーシス分子であるBcl-X_Lの発現がSEK1欠損T細胞では低下しており、SEK1が生存シグナルを伝達している可能性が示唆された。2.SEK1欠損T,B細胞を有するキメラマウスの解析から、ウイルスに対する個体全体の免疫系は、SEK1欠損によってほとんど影響を受けないこと、この原因としてSEK2/MKK7による相補機能が示唆された。3.ノックアウトマウスの解析から、SEK1欠損マウスは肝臓形成不全により、胎生期12.5日で致死になることが明らかになった。肝実質細胞の増殖・分化の低下とその後のアポトーシスの抗進が観察され、これが肝臓の形成不全の原因であることが示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 星野 真一
     
    先に申請者の研究グループは、レチノイン酸によるヒトHL-60細胞の好中球への分化過程でエクト型NAD分解酵素(NADase)が細胞表層に誘導され、この酵素活性がリンパ球表面抗原のCD38によることを明らかにした。本研究では、細胞表層上の新しい機能分子と期待されるCD38及びその関連分子に関わる細胞内シグナル伝達機構、酵素化学的特性、及び転写制御機構などを検討し、以下の知見を得た。1、CD38の基質特異性について検討し、CD38はNAD以外に、ニコチンアミドを有するNMNなどの多様な化合物のN-グリコシド結合を切断することが示された。2、ラットCD38を認識するポリクローナル抗体を作製して中枢組織での局在を解析した結果、CD38はアストロ細胞に強く発現していた。さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察から、細胞表層のCD38は酵素反応の進行にともない何らかの化学修飾を受けて不活性化されることが明らかにされた。3、CD38の反応産物のADP-riboseは、老化への関与が指摘されている翻訳御修飾であるadvanced glycation end products(AGE)化のよい供与体となることが示された。4、糖鎖修飾を受けたCD38と結合する50-kDaタンパク質をリンパ組織に同定し、CD38のNADase活性がレクチンとの結合により阻害されることを見出した。5、ヒトCD38遺伝子の遺伝子発現について解析し、核内レチノイン酸受容体のRAR(α)/RXRが結合する応答配列が第1イントロン上に存在することを見出した。6、構造上CD38に類似したPC-1にはホスホジエステラーゼ活性が存在するが、PC-1 mRNAの翻訳産物から異なるプロセッシングによって、膜貫通型および分泌型酵素が産生する可能性が示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 櫨木 修; 岡村 直樹; 黒川 知則; 仁科 博史; 星野 真一; 柴崎 正勝; 堅田 利明
     
    イノシトールリン脂質3キナーゼの強力な阻害薬であるワートマニンおよびその誘導体を利用することにより以下の研究成果をえた。 1. ワートマニンの放射標識体を合成、利用することにより、既知のものとは異なる分子量をもつ触媒サブユニットが存在することを観察した。解析の結果、この分子はすでにクローニングされていたβサブタイプと非常によく似た構造をもつことが判明した。詳細な性状解析の結果、この新規分子およびβサブタイプは、チロシンリン酸化ペプチドとGTP結合蛋白質の解離したβγサブユニットによって相乗的に活性化される点で、α、γサブタイプとは異なるユニークな性質をもつことが判明した。 2. 上述のβサブタイプに見られる相乗的調節はモデル細胞の他、脂肪細胞などの生理的細胞においても機能していることが観察された。この相乗的調節はプロテインキナーゼBの活性にまで及ぶものであった。これらの結果は今後イノシトールリン脂質3キナーゼの生理的な制御機構やサブタイプ間の機能分担を考える上で重要な知見と考えられる。 3. ワートマニンの新規の生理作用として、高転移性へパトーマ細胞の試験管内接着能・浸潤能を抑制する作用を発見した。このワートマニンの作用は、不活性型変異酵素を利用することでも再現できたことから、イノシトールリン脂質3キナーゼが癌細胞の転移能調節に機能していることが推測された。 4. ワートマニンの構造内のフラン環を失った誘導体のいくつかが阻害薬としての作用を発揮しうることを発見した。これらの誘導体はワートマニン自身と異なり酵素との共有結合性をもたないので、アフィニティクロマトグラフィーなどのリガンドとしての応用が期待される。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 仁科 博史; 櫨木 修
     
    本研究では、細胞表層上の新しい機能分子と期待されるCD38及びその関連分子PC-1に関わる細胞内シグナル伝達機構、酵素化学的特性、及び転写制御機構などを検討し、以下の知見を得た。1、抗CD38モノクローン抗体(IgG1)でHL-60細胞を刺激すると、癌遺伝子産物p120^を含む細胞内蛋白質がチロシンリン酸化され、さらにG蛋白質と共役する化学遊走因子受容体刺激を介する活性酸素産生が増強された。この活性酸素産生の増強は、CD38抗体のFc部分がFcγII受容体を刺激して、G蛋白質を介するイノシトールリン脂質3キナーゼの活性化を増強した結果であった。2、ラットCD38を認識するポリクローナル抗体を作製して中枢組織での局在を解析した結果、CD38はアストロ細胞に強く発現していた。さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察から、細胞表層のCD38は酵素反応の進行にともない何らかの化学修飾を受けて不活性化されることが明らかにされた。3、CD38の反応産物のADP-riboseは、老化への関与が指摘されている翻訳御修飾であるadvanced glycation end products(AGE)化のよい供与体となることが示された。4、糖鎖修飾を受けたCD38と結合する50-kDaタンパク質をリンパ組織に同定し、CD38のNADase活性がレクチンとの結合により阻害されることを見出した。5、ヒトCD38遺伝子の遺伝子発現について解析し、核内レチノイン酸受容体のRAR(α)/RXRが結合する応答配列が第1イントロン上に存在することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 堅田 利明; KAPIL Mehta; FABIO Malava; 星野 真一; 仁科 博史; 櫨木 修
     
    本研究では、レチノイン酸によるヒトHL-60細胞の分化で誘導され、NAD分解(NADase)活性をもつエクト型酵素のCD38について、伊国トリノ大学Malavasi博士及び米国テキサス大学Mehta博士らとの共同研究により、CD38を介する細胞内シグナル伝達機構、CD38の酵素化学的特性、及びCD38の転写制御機構などを検討し、以下の知見を得た。 1、抗CD38モノクローン抗体(IgG1)でHL-60細胞を刺激すると、癌遺伝子産物p120^を含む細胞内蛋白質がチロシンリン酸化され、さらにG蛋白質と共役する化学遊走因子受容体刺激を介する活性酸素産生が増強された。この活性酸素産生の増強は、CD38抗体のFc部分がFc_γII受容体を刺激して、G蛋白質を介するイノシトールリン脂質3キナーゼの活性化を増強した結果であった。2、ラットCD38を認識するポリクローナル抗体を作製して中枢組織での局在を解析した結果、CD38はアストロ細胞に強く発現していた。さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察から、細胞表層のCD38は酵素反応の進行にともない何らかの化学修飾を受けて不活性化されることが明らかにされた。3、CD38の反応産物のADP-riboseは、老化への関与が指摘されている翻訳御修飾であるadvanced glycation end products(AGE)化のよい供与体となることが示された。4、糖鎖修飾を受けたCD38と結合する50-kDaタンパク質をリンパ組織に同定し、CD38のNADase活性がレクチンとの結合により阻害されることを見出した。5、ヒトCD38遺伝子の遺伝子発現について解析し、核内レチノイン酸受容体のRAR(α)/RXRが結合する応答配列が第1イントロン上に存在することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1997年 
    代表者 : 櫨木 修; 仁科 博史; 星野 真一; 堅田 利明
     
    本研究においては、インスリンの作用を増強するというGタンパク質活性化刺激の効果の分子機構を明らかにし、さらに、その生理的意義を確立するための基礎検討を行った。ラット脂肪細胞をインスリンで刺激したときのグルコースの取り込み速度増大は、同時に百日咳毒素感受性Gタンパク質を活性化することで顕著に増強された。また、CHO細胞をインスリン刺激したときの膜ラッフルの形成もこのGタンパク質を活性化することで顕著に増強された。これらの細胞応答は、イノシトールリン脂質3キナーゼの阻害薬であるワ-トマニンにより完全に抑制されるものであり、Gタンパク質による細胞応答の増強は細胞内におけるイノシトールリン脂質3キナーゼ産物(PIP3)の蓄積増大を伴うものであった。このとき,イノシトールリン脂質3キナーゼの下流に位置していると推定されているプロテインキナーゼBの相乗的活性化も観察された。これらの細胞内には、インスリン受容体刺激によって産生されるチロシンリン酸化蛋白質と活性化型G蛋白質によって相乗的に活性化れるという興味深い性質をもつイノシトールリン脂質3キナーゼ活性が存在し、その本体として、βサブタイプのイノシトールリン脂質3キナーゼを同定した。以上の結果は、インスリンの生理作用の発現においてG蛋白質共役型受容体の活性化状態が許容的に制御するという機構の存在を示すものであり、今後、糖尿病治療薬の開発などの応用面においてもユニークな視座を与えるものと考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1997年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 仁科 博史; 櫨木 修
     
    先に申請者の研究グループは、レチノイン酸によるヒトHL-60細胞の好中球への分化過程でエクト型NAD分解酵素(NADase)が細胞表層に誘導され、この酵素活性がリンパ球表面抗原のCD38によって担われることを明らかにした。本研究では、細胞表層上の新しい機能分子と期待されるCD38及びこれと関連するプリンヌクレオチド代謝酵素につき、それらの生理機能と酵素化学的特性、転写調節の機構などを検討し、以下の知見を得た。1.IgG_1サブクラスに属する抗CD38モノクローン抗体でリンパ球系の細胞を刺激すると、複数の細胞内機能蛋白質がチロシンリン酸化されたが、この作用はCD38抗体のFc部分がFcγII受容体を刺激した結果であった。2、ラット脳の初代培養法により、各種のグリア、神経細胞を分取してラットCD38の局在を解析した結果、CD38はアストロ細胞に強く発現しており、またその細胞表層には顕著なNADase活性が認められた。さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察から、アストロ細胞のCD38は斑点(cluster)状の構造をとり、基質NADの添加によって細胞内陥入(internalization)することが明らかにされた。3、これらリンパ球系と神経系の細胞表層には、CD38とは別にヌクレオチドを基質とするPC-1様の酵素(phyrophosphatase/phosphodiesterase)活性が存在し、その一部は分泌型の性状を示した。4、推定された分泌型PC-1のN末端配列を決定し、プロセッシング部位を同定した。5、ヒトCD38遺伝子の遺伝子発現について解析し、核内レチノイン酸受容体のRAR(α)/RXRが結合する応答配列が第1イントロン上に存在することを見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1997年 
    代表者 : 櫨木 修; 仁科 博史; 星野 真一; 堅田 利明
     
    イノシトールリン脂質3キナーゼを活性化する様々な受容体刺激がMAPキナーゼの活性化を導き、また、イノシトールリン脂質3キナーゼの強力な阻害薬であるワ-トマニンがMAPキナーゼの活性化を抑制するとの現象が知られている。しかし、このワ-トマニンの作用はイノシトールリン脂質3キナーゼ阻害に基づかないと報告されている。本研究では、放射標識をおこなったワ-トマニン誘導体を有効に用いることによって、この場合のワ-トマニン標的分子を明らかにすることを企図していた。上記の報告は、ある種のドミナントネガティブ型のイノシトールリン脂質3キナーゼの発現が、ワ-トマニン様の作用を示さないとの観察結果に基づくものである。しかし、今回、イノシトールリン脂質3キナーゼを活性化できない変異PDGF受容体や活性型変異イノシトールリン脂質3キナーゼを用いた解析結果から、少なくともCHO細胞においては、MAPキナーゼの活性化機構におけるイノシトールリン脂質3キナーゼの役割を否定できなかった。今後、ワ-トマニンのMAPキナーゼ活性化抑制作用の発現におけるイノシトールリン脂質3キナーゼ阻害効果の寄与の程度を明らかにしたいと考えている。また、この場合、ワ-トマニンの作用はMAPキナーゼ上流に位置することが報告されているRasの活性化阻害を伴うものであり、その分子機構の解明が今後の重要な課題である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1997年 
    代表者 : 櫨木 修; 仁科 博史; 星野 真一; 堅田 利明
     
    ラット肝臓、脳の細胞質画分のPI3K活性は、チロシンリン酸化蛋白質とヘテロ三量体型G蛋白質の解離したβγサブユニット(Gβγ)により、相乗的に上昇した。このような性質をもつ活性を2種類、ラット肝臓より部分精製し、特異的抗体などを用いた性状解析をおこなったところ、1種についてはPI3Kのβサブタイプ(p110β)であることが明らかになった。リコンビナント酵素を用いた解析では、既知の3種類のサブタイプのうち、p110βのみが相乗的活性化を受けることを観察した。THP-1細胞、脂肪細胞などにおいては、チロシンキナーゼ型受容体(インスリン受容体)とG蛋白質共役型受容体の同時刺激により、PI3K産物の蓄積が相乗的に増大する。このとき、PI3Kの下流に位置することが指摘されているPKBの活性も相乗的活性化を受けた。同様の現象は、2種類の受容体(インスリン受容体と走化性因子受容体)を強制発現させたCHO細胞においても観察された。従って、PI3Kの協調的調節機構は細胞レベルにおいても機能しているものと考えられた。現在、Gβγの作用部位を決定するとともに、ドミナントネガティブに機能するp110βの作成を目指している。また、NGF刺激によるPC12細胞の神経突起の伸長が、PI3K阻害薬ワ-トマニン、LY294002によって抑制されるとの報告を確認した。PI3Kの役割をさらに明確にするために、活性型PI3Kの発現、ドミナントネガティブPI3K、PKBの発現実験を行う。また、上記、協調的調節機構が機能している可能性を探る予定である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1997年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 仁科 博史; 櫨木 修
     
    イノシトールリン脂質(PI)の3位水酸基をリン酸化する2量体型PI3-キナーゼ(PI3-K)は、その調節サブユニットに存在するSrc homology 2(SH2)領域を介して増殖因子受容体あるいは非受容体型キナーゼによってチロシンリン酸化された基質蛋白質と結合し、活性化される。先に申請者らは、真菌代謝産物のワ-トマニンがPI3-Kを特異的に阻害すること、また好中球での走化性因子に応答した活性酸素産生など、G蛋白質連関型受容体刺激を介する速い細胞応答にもPI3-Kが関与することを見い出した。本研究では、2種の細胞膜受容体ファミリー、すなわちチロシンキナーゼ型とG蛋白質連関(7回膜貫通)型という異なるタイプの受容体刺激によって相乗的に活性化されるPI3-Kについて検討し、以下の知見を得た。1、インスリンと走化性因子の受容体を発現させたCHO細胞では、両受容体刺激による相乗的なPI3-Kの活性化が観察され、この増強作用は膜ラッフリングの増大を伴った。2、ラット肝臓より種々のタイプのPI3-Kを精製して検討を加えた結果、チロシンリン酸化ペプチドとGβγによって相乗的に活性化されるPI3-Kは、その触媒サブユニットがβタイプである2量体ファミリーと推定された。4、この酵素化学的特性は、COS細胞に種々のタイプのPI3-K遺伝子を導入した解析結果からも確認された。5、PI3-K調節サブユニットのSH2領域に結合するアダプター蛋白質として、受容体刺激でチロシンリン酸化される癌遺伝子産物p120^と新規の100-kDa蛋白質を同定した。さらに後者の100-kDa蛋白質は、G蛋白質連関型受容体刺激によりそのセリン/スレオニン残基がリン酸化された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1997年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 仁科 博史; 櫨木 修
     
    先に我々は、レチノイン酸によるヒトHL-60細胞の好中球への分化過程でエクト型NAD分解酵素(NADase)が細胞表層に誘導され、この酸素がリンパ球表面抗原のCD38に起因することを明らかにした。CD38はアメフラシ卵精巣のADPリボース環化酵素と構造上類似し、その生成物である環状ADPリボースは、細胞内プールからのCa^<2+>放出あるいはその放出を調節する作用をもつことが指摘されている。本研究では、CD38と環状ADPリボースの動態、及びそれらの生理的役割について検討し、以下の知見を得た。 1、抗CD38モノクローン抗体(IgG1)でHL-60細胞を刺激すると、癌遺伝子産物p120^を含む細胞内蛋白質がチロシンリン酸化され、さらにG蛋白質と共役する化学遊走因子受容体刺激を介する活性酸素産生が増強された。この活性酸素産生の増強は、CD38抗体のFc部分がFcγII受容体を刺激して、G蛋白質を介するイノシトールリン脂質3キナーゼの活性化を増強した結果であった。 2、ラット脳の初代培養系を用いてCD38の局在を解析し、アストロ細胞でのCD38の発現とその細胞表層での顕著なNADase活性を認めた。共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察から、アストロ細胞のCD38は斑点状の構造をとり、基質NADの添加によって細胞内陥入すること、またこの時細胞内での環状ADPリボースの蓄積が観察された。 3、ヒトCD38遺伝子の遺伝子発現機構を解析し、核内レチノイン酸受容体のRAR(α)/RXRが結合する応答配列が第1イントロン上に存在することを見出した。 4、本研究によって開発されたラジオイムノアッセイを用いて、いくつかの細胞の環状のADPリボース動態を解析した。ウニ卵の受精において環状ADPリボース産生の増大を認めたが、ラット膵島のグリコース刺激による環状ADPリボースの顕著な変動は認められなかった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1997年 
    代表者 : 櫨木 修; 仁科 博史; 星野 真一; 堅田 利明
     
    イノシトールリン脂質3キナーゼには、チロシンリン酸化蛋白質によって活性化される型のものとG蛋白質のβ γサブユニット(G β γ)によって活性化される型のものの存在が知られていた。本研究においては、G β γとチロシンリン酸化ペプチドによって相乗的に促進される活性を見出し、ラット肝臓よりこのような活性を2種類、部分精製し、そのひとつについてはβサブタイプであることを同定した。この酵素はすでにクローニングされていたものの、チロシンキナーゼに対する感受性のみが予測されていたものである。リコンビナント酵素を用いた解析では、既知の3種類のサブタイプのうち、このサブタイプのみが相乗的活性化を受けることも明らかになった。また、脂肪細胞などにおいては、インスリン受容体とG蛋白質共役型受容体の同時刺激により、イノシトールリン脂質3キナーゼ産物の蓄積が相乗的に増大することを観察した。同様の現象は、2種類の受容体(インスリン受容体と走化性因子受容体)を強制発現させたモデル細胞においても観察することができた。また、脂肪細胞や上記モデル細胞においては、インスリン作用(糖取り込みの増大、膜ラッフルの形成)がG蛋白質共役型受容体の同時刺激により顕著に増大していた。このとき、イノシトールリン脂質3キナーゼの下流に位置していると推定されるプロテインキナーゼBの活性も相乗的に上昇していた。以上の結果は、G蛋白質共役型受容体の機能に関して、チロシンキナーゼ型受容体からの情報をセカンドメッセンジャーのレベルで許容的に調節するという新しい概念を与えるものである。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 櫨木 修
     
    我々は、先に細菌毒素の触媒するADPリボシル化反応を利用して、三量体G蛋白質の同定と機能解明に多大に貢献してきた経験をもつが、これらの研究成果を背景として、最近ラットのTリンパ球アロ抗原RT6がADPリボシルトランスフェラーゼの酵素活性をもつことを見出し、単離されたリンパ球表層上でRT6の自己ADPリボシル化が進行するとを明らかにした。RT6はTりんぱ球の成熟過程において何らかの関与が示唆されている表面抗原であり、またその分子の欠損したラットにおいては、インスリン依存性糖尿病が頻発するなど病態との関連も示唆されている。本研究では、細胞外に触媒部位をもつ他のプリンヌクレオチド代謝酵素との対比を含めて、RT6のもつ酵素活性を解析し、以下の知見を得た。 1.RT6.1分子のアミノ酸点変異体(Gln^<207>→Glu^<207>)が、本分子のもつADPリボシルトランスフェラーゼ活性を著しく上昇させることを見いだし、他のADPリボシル化酵素に共通なEEEVLIP[207-213]配列が本酵素の活性にも重要なアミノ酸であることを明らかにした。2.RT6分子の2つのアロタイプ(RT6.1とRT6.2)について、それぞれ大腸菌で発現させたリコンビナント体を用いて検討したところ、NADグリコヒドロラーゼ活性には、2つのアロタイプ間において大きな相違は認められないが、RT6.2のADPリボシルトランスフェラーゼ活性はRT6.1に比べて約10倍高いことが明らかにされた。3.また、ラット胸腺細胞をレチノイン酸で処理すると、RT6のADPリボシル化活性が誘導されるが、この活性はRT6.2分子の発現誘導によることを明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 徳光 幸子; 星野 真一
     
    3T3-L1繊維芽細胞はインスリン、デキサメサゾンおよびイソブチルメチルキサンチン(IBMX)の3種の混合液(分化誘導薬)を添加して培養することにより、脂肪細胞へ分化する。これら3者の薬物は各々脂肪細胞への分化に対して重要な役割を担っているがその中でも、インスリンが重要な役割を担っていることが分かった。すなわち、脂肪細胞特有の性質である脂肪合成酵素系の活性化による中性脂肪の蓄積およびグルコーストランスポーター4型の発現によるグルコース取り込みの亢進はインスリンの作用によるものである。したがって、3T3-L1繊維芽細胞の脂肪細胞への分化に対するインスリンの情報伝達系を中心に検討した結果、以下のことが明らかとなった。(1)インスリンによる脂肪酸合成の亢進は抑制性のGTP結合蛋白質Giの機能を消失させた百日咳毒素処理によって著しく抑制された。(2)インスリンはイノシトールグリカン特異的ホスホリパーゼC(P1-PLC)の活性化を引き起こしたが、百日咳毒素処理はこのPI-PLCの活性化を抑制した。(3)PI-PLCの活性化はdiacylglycerolの生成を伴い、C kinaseの活性化を引き起こす。そこで、直接C kinaseを活性化させるPMAを添加すると、脂肪細胞への分化は抑制され、C kinaseを消失させるPMAの長時間処理は逆に分化を増強させた。(4)各種の細胞において、増殖や分化の過程にプロトオンコジーンの発現が起こることが報告されている。3T3-L1繊維芽細胞に分化誘導薬を添加すると、c fos発現が認められ、百日咳毒素処理はこの発現を完全に阻害した。分化誘導薬中のIBMXが3T3-L1繊維芽細胞の増殖を抑えていたことから、百日咳毒素処理は分化の過程に必須なc fos発現を阻害したと推定した。 以上の結果から、インスリンによる3T3-L1繊維芽細胞の脂肪細胞への分化の過程に百日咳毒素感受性のGi蛋白質が介在し、PI-PLCの活性化→ →c fos発現→ →脂肪細胞への分化が起こるものと推定した。一方、C kinaseの活性化は脂肪細胞への分化を負に調節していると結論した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 櫨木 修
     
    我々は先に、NAD^+を基質とした細菌毒素の触媒するG蛋白質のADPリボシル化の研究を背景に、レチノイン酸によるHL-60細胞の好中球への分化過程にNADアーゼが誘導され、この酵素活性がリンパ球表面抗原のCD38分子によることを明らかにした。CD38はアメフラシの卵精巣より単離されたADPリボース環化酵素と構造上類似し、さらにその生成物である環状ADPリボースは、IP_3と同様にある細胞内プールからCa^<2+>を放出させる作用、あるいはその調節因子として機能することが期待されている。本研究では、細胞内外でNAD^+を基質とする代謝酵素がシグナル伝達系において果たす生理的役割を解析し、以下の知見を得た。 1.CD38-発現リンパ球系細胞をある種の抗CD38単クローン抗体で刺激すると、c-cbl癌遺伝子産物を含むいくつかの細胞内蛋白質がチロシンリン酸化された。2.この抗CD38抗体刺激は、化学遊走因子の受容体を介する活性酸素産生を著しく増強した。3.刺激性抗CD38抗体のエピトープはすべてCD38のC-末端近傍部位に位置し、この領域はNADアーゼの活性発現にも重要であった。4.抗CD38抗体刺激による細胞内チロシンリン酸化へのシグナル伝達経路には、CD38の細胞内領域及び細胞外の糖鎖修飾は関与せず、FcγII-受容体を介する機構が推定された。5.CD38遺伝子の第1イントロン内には核内レチノイン酸受容体との結合が予想される共通配列が存在し、レチノイン酸によるCD38の転写調節はこの領域を介することが明らかにされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 櫨木 修; 星野 真一; 堅田 利明
     
    イノシトールリン脂質(PI)のD-3位水酸基をリン酸化するPI3-キナーゼ(PI3-K)は、その調節サブユニットに存在するSrc homology2領域を介して、増殖・分化因子受容体あるいは非受容体型キナーゼによってチロシンリン酸化された基質蛋白質と結合する。先に我々は、真菌代謝産物のワ-トマニンがPI3-Kを特異的に阻害すること、また走化性因子などのG蛋白質連関型受容体の刺激を介した速い細胞応答にもPI3-Kが関与することを見い出した。本研究では、NGFによるPC12細胞の分化におけるPI3-Kの関与に加えて、チロシンキナーゼ型とG蛋白質連関(7回膜貫通)型という異なるタイプの受容体刺激によって活性化されるPI3-Kについて検討し、以下の知見を得た。 1.PC12細胞において、NGFやスフィンゴミエリナーゼはPI3-Kを活性化し、突起進展を促進したが、両者の作用はともにワ-トマイニンと別のPI3-K阻害薬であるLY294002によって抑制された。2.インスリンと走化性因子の両者で無傷好中球を刺激した際には、相乗的なPI3-Kの活性化が観察され、2種の異なる受容体刺激の制御を受けるPI3-Kが生理的にも機能していることが示された。3.CHO細胞においても観察され得る上記の増強作用は、アクチン線維の再形成による膜ラッフリングの増大を伴った。4.ラット肝臓より種々のタイプのPI3-Kを精製して検討を加えた結果、チロシンリン酸化ペプチドとGβγによって相乗的に活性化される特性をもつPI3-Kは、βタイプを触媒サブユニットにもつファミリーであることが明らかにされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 櫨木 修
     
    イノシトールリン脂質(PI)のD-3位水酸基をリン酸化するPI3-キナーゼ(PI3-K)は、その調節サブユニットに存在するSrc homology2領域を介して、増殖因子受容体あるいは非受容体型キナーゼによってチロシンリン酸化された基質蛋白質と結合する。我々は、真菌代謝産物のワ-トマニンがPI3-Kを特異的に阻害すること、また好中球での走化性因子刺激に応答した活性酸素産生など、G蛋白質連関型受容体刺激を介する速い細胞応答にもPI3-Kが関与することを見い出した。本研究では、2種の細胞膜受容体ファミリー、すなわちチロシンキナーゼ型とG蛋白質連関(7回膜貫通)型という異なるタイプの受容体刺激によって活性化されるPI3-Kについて検討し、以下の知見を得た。 1.PI3-Kにはいくつかのファミリーが存在するが、好中球細胞ではG蛋白質βγサブユニット(Gβγ)に感受性があるタイプとして、チロシンリン酸化ペプチドには全く感受性を示さないものと、リン酸化ペプチド存在下にGβγによる活性化がさらに増強されるものが存在した。2.インスリンと走化性因子の両者で無傷好中球を刺激した際には、相乗的なPI3-Kの活性化が観察され、2種の受容体刺激の制御を受けるPI3-Kが生理的にも機能していることが示された。3.CHO細胞においても認められる上記の増強作用は、アクチン線維の再形成による膜ラッフリングの増大を伴った。4.ラット肝臓より種々のタイプのPI3-Kを精製して検討を加えた結果、チロシンリン酸化ペプチドとGβγによって相乗的に活性化される特性をもつPI3-Kは、βタイプを触媒サブユニットにもつファミリーであることが明らかにされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1996年 
    代表者 : 堅田 利明; 石川 義弘; 星野 真一; 櫨木 修
     
    動物細胞の原形質膜表面上には、ホルモンなどの細胞外アゴニストと結合する種々の受容体が存在し、アゴニストのもたらす情報を認識受容している。受容体にアゴニストが結合するとその情報の多くは、細胞膜の内側に向いて存在する膜結合性酵素やイオンチャネルなどの効果器系へと伝達されるが、この種の情報伝達経路にはGTP(GDP)と結合する制御蛋白質(G蛋白質)が介在している。本研究では、G蛋白質によって制御される効果器系のうち、最近、その分子多様性が明らかにされつつあるアデニル酸シクラーゼとフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3-K)について、アデニル酸シクラーゼの研究ではその第一人者である米国ハーバード大学医学部の石川博士らとの共同研究により、生理化学的、生化学的、および分子生物学的手法を総合的に用いて検討し、以下の点を明かにした。 1)モルモット好中球におけるアデニル酸シクラーゼの活性制御 1.好中球のアデニル酸シクラーゼの特性としては、G_sを介する活性化が、走化性因子の受容体刺激(G_iの活性化)によって増強され、フォルスコリンはこれを抑制することが、細胞レベルで明かにされた。2.これらの効果は、種々の方法によって細胞内カルシウムイオンを変動させた細胞においても観察され、上記のユニークな特性が、好中球細胞に発現するあるサブタイプのアデニル酸シクラーゼとG蛋白質との直接の相互作用による効果であることが示された。3.さらに、これらの特性は、好中球より部分精製されたアデニル酸シクラーゼ標品においても観察され、好中球のアデニル酸シクラーゼは、G_s-α存在下に、G_iから供給されたβγサブユニットによって相乗的に活性化されることが明らかにされた。 2)フォスファチジルイノシトール3キナーゼの活性調節 イノシトールリン脂質(PI)のD-3位水酸基をリン酸化するPI3-キナーゼ(PI3-K)は、その調節サブユニットに存在するSrc homology2領域を介して、増殖因子受容体あるいは非受容体型キナーゼによってチロシンリン酸化された基質蛋白質と結合する。我々は、真菌代謝産物のワ-トマニンがPI3-Kを特異的に阻害すること、また好中球での走化性因子刺激に応答した活性酸素産生など、G蛋白質連関型受容体刺激を介する速い細胞応答にもPI3-Kが関与することを見い出した。2種の細胞膜受容体ファミリー、すなわちチロシンキナーゼ型とG蛋白質連関(7回膜貫通)型という異なるタイプの受容体刺激によって活性化されるPI3-Kについて検討し、以下の知見を得た。 1.PI3-Kにはいくつかのファミリーが存在するが、好中球細胞ではG蛋白質βγサブユニット(Gβγ)に感受性があるタイプとして、チロシンリン酸化ペプチドには全く感受性を示さないものと、リン酸化ペプチド存在下にGβγによる活性化がさらに増強されるものが存在した。2.インスリンと走化性因子の両者で無傷好中球を刺激した際には、相乗的なPI3-Kの活性化が観察され、2種の受容体刺激の制御を受けるPI3-Kが生理的にも機能していることが示された。3.CHO細胞においても認められる上記の増強作用は、アクチン線維の再形成による膜ラッフリングの増大を伴った。4.ラット肝臓より種々のタイプのPI3-Kを精製して検討を加えた結果、チロシンリン酸化ペプチドとGβγによって相乗的に活性化される特性をもつPI3-Kは、βタイプを触媒サブユニットにもつファミリーであることが明らかにされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1995年 
    代表者 : 星野 真一
     
    我々は先に、NAD^+を基質とした細菌毒素の触媒するG蛋白質のADPリボシル化の研究を背景に、レチノイン酸(RA)によるHL-60細胞の好中球への分化過程にNAD^+分解酵素が誘導され、その酵素がヒトリンパ球表面抗原のCD38分子によることを明らかにした。CD38はアメフラシの卵精巣より単離されたADPリボース環化酵素と構造上類似し、さらに生成物である環状ADPリボースは、IP_3と同様にある細胞内プールからCa^<2+>を放出させる作用をもつことから、この新規環上ヌクレオチドは細胞内で新たなシグナル分子として機能することが期待された。本研究では、細胞内外でNAD^+を基質とする代謝酵素が情報伝達系において果たす生理的役割、また哺乳動物における環状ADPリボースの産生機構、並びにNAD^+分解酵素とADPリボース環化酵素との触媒活性の差異を生じさせる機構の解明を目的とし、以下の知見を得た。1. RA-分化HL-60細胞を抗CD38単クローン体抗体で刺激すると、いくつかの細胞内蛋白質がチロシンリン酸化されたが、その一つを120kDaのc-cbl遺伝子産物と同定した。2.この抗CD38単クローン性抗体刺激によって、化学遊走因子の受容体を介するHL-60細胞の活性酸素産生が増強された。3. Zn^<2+>がCD38に作用すると、そのNAD^+分解活性が抑制され、ASPリボース環化活性は逆に促進された。すなわち、Zn^<2+>によるCD38の酵素特性の転換が認められた。4. CD38遺伝子の第1イントロン内には、RAによってその抑制が解除されるnegative regulatory element (NRE)が存在し、RA(受容体)を介する新しい転写調節機構の存在が推定された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1995年 
    代表者 : 櫨木 修; 星野 真一; 堅田 利明
     
    神経細胞の分化調節に果たすリン脂質代謝変動の意義に関して以下の様な新しい知見をえた。 (1)PC12細胞の分化を促すNGFの作用は、細胞内のPI3キナーゼの活性化を伴う (2)PC12細胞をスフィンゴミエリナーゼで処理することによっても分化が促進され、このとき、細胞内のPI3キナーゼの活性化が観察される (3)細胞をあらかじめPI3キナーゼの阻害薬であるワ-トマニンやLY294002で処理しておくと、NGF,スフィンゴミエリナーゼの分化促進作用が減弱する (4)スフィンゴミエリナーゼは細胞内のさまざまな蛋白質のチロシンリン酸化をひきおこすが、NGF受容体をチロシンリン酸化することはない (5)スフィンゴミエリナーゼはSwiss 3T3細胞においても、MAP kinase,focal adhesion kinase,paxillinを含む多種の蛋白質をチロシンリン酸化するが、この場合にはPI3キナーゼの活性化は認められない。 以上の結果は、PC12細胞の分化調節にはPI3キナーゼが何らかの重要な役割を果たしている可能性を示すものである。また、種々の細胞で報告されているスフィンゴミエリナーゼの多様な作用の発現には、細胞内チロシンリン酸化レベルの変化が関っていることが推察された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1994年 -1995年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 櫨木 修; 多田 周右; 榎本 武美
     
    我々は先に、レチノイン酸(RA)によるHL-60細胞の分化の過程でNAD^+分解酵素が誘導され、その酵素がヒトリンパ球表面抗原のCD38によることを明らかにした。CD38はアメフラシの卵精巣より単離された環状ADP-リボース合成酵素と構造上類似し、さらに代謝産物である環状ADPリボースは、IP_3と同様にある細胞内プールからCa^<2+>を放出させる作用をもつことから、細胞内で新たなシグナル分子として機能することが期待された。そこで本研究においては、環状ADPリボースの合成と分解に関わる基礎的な研究の展開と、シグナル分子としての生理的役割を立証する一つの手段として環状ADPリボース量を高感度に測定する方法の開発を目的とした。1.アメフラシの酵素は、環状ADPリボースとニコチンアミドから効率よくNAD^+を生成(逆反応が進行)し得る“lyase"の特性を有し、構造上類似性が指摘されていたCD38の触媒するNAD^+分解酵素とは酵素学的に別種のファミリーに属することが示された。2.CD38にZn^<2+>が作用すると、そのNAD^+分解活性が抑制され、環状ADP-リボース合成活性は逆に促進した。すなわち、Zn^<2+>によるCD38の酵素特性の転換が認められた。3.環状ADPリボースのスクシニル化誘導体を結合したウシ血清アルブミンをウサギに免役して多クローン性抗体を作製し、pmolオーダーの環状ADPリボースが定量可能なラジオイムノアッセイ系を開発した。4.このラジオイムノアッセイ系を用いて、いくつかの細胞の環状ADPリボース動態を解析した結果、CD38の発現誘導と相関して細胞内にその蓄積が観察された。また、その蓄積は多くの場合、細胞内の顆粒画分に認められた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1994年 -1995年 
    代表者 : 堅田 利明; 星野 真一; 櫨木 修; 仁科 博史
     
    我々は先に、レチノイン酸(RA)によるHL-60細胞の好中球への分化過程にNAD^+分解酵素が誘導され、その酵素がヒトリンパ球表面抗原のCD38分子によることを明らかにした。CD38はアメフラシの卵精巣より単離されたADPリボース環化酵素と構造上類似し、さらに代謝産物である環状ADPリボースは、IP_3と同様にある細胞内プールからCa^<2+>を放出させる作用をもつことから、この新規環状ヌクレオチドは細胞内で新たなシグナル分子として機能することが期待された。本研究では、細胞内外でNAD^+を基質とする代謝酵素が情報伝達系において果たす生理的役割、また哺乳動物における環状ADPリボースの産生機構、並びにNAD^+分解酵素とADPリボース環化酵素との触媒活性の差異を生じさせる機構の解明を目的とし、以下の知見を得た。1.CD38には、ヒアルロン酸結合活性が存在した。2.RA-分化HL-60細胞を抗CD38単クローン性抗体で刺激すると、いくつかの細胞内蛋白質がチロシンリン酸化され、その一つを120kDaのc-cb1遺伝子産物と同定した。3.この抗CD38単クローン性抗体刺激によって、化学遊走因子の受容体を介するHL-60細胞の活性酸素産生が増強された。4.CD38とアメフラシの酵素は種々の点で異なる特性を示したが、Zn^<2+>がCD38に作用すると、そのNAD^+分解活性が抑制され、ADPリボース環化活性は逆に促進された。すなわち、Zn^<2+>によるCD38の酵素特性の転換が認められた。5.CD38遺伝子の第1イントロン内には、RAによってその抑制が解除されるnegative regulatory element(NRE)が存在し、RA(受容体)を介する新しい転写調節機構の存在が推定された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1993年 -1994年 
    代表者 : 堅田 利明; 石川 義弘; 倉智 嘉久; 星野 真一; 櫨木 修
     
    動物細胞の細胞膜表面上にはホルモン、神経伝達物質などの細胞外刺激物質(アゴニスト)と結合する種々の受容体が存在し、アゴニストのもたらす情報を認識受容して細胞内にそれらの情報を伝達している。受容体にアゴニストが結合すると、その情報の多くはαβγの3つのサブユニットからなり、そのαサブユニットにGTP(またはGDP)が結合する制御タンパク質(Gタンパク質)を介して、細胞膜の内側に向いて存在する膜結合性酵素やイオンチャネルなどの効果器系へと伝達されている。 この情報転換因子として機能するGタンパク質のαサブユニットは、コレラ毒素や百日咳毒素によりNAD^+を基質としてADPリボシル化されるとその機能が様々に修飾されるので、情報伝達機構を研究する上で有用なツールとして利用されている。本研究では、各種の精製Gタンパク質の再構成、及び百日咳毒素が触媒するGタンパク質のADPリボシル化によるG_iの機能阻害を利用して、Gタンパク質によるイオンチャネルとアデニル酸シクラーゼの制御機構を検討し以下の知見を得た。 1)Gタンパク質によるカリウムイオンチャネルの開口制御 モルモット摘出心房筋細胞において、ムスカリン性アセチルコリン受容体やアデノシン受容体へのアゴニストの結合によって開口するK^+チャネルは、細胞を予め百日咳毒素で処理しておくと消失することから、百日咳毒素感受性のGタンパク質(G_i)を介して発現するものと考えられた。Inside-outのパッチ法を用いてβγサブユニットを添加するとK^+チャネルの開口が観察されるが、この開口はGDPの結合したGタンパク質(G_t;トランスジューシン)のαサブユニットによって阻害された。さらにβγサブユニットによる開口特性は、GTP添加によってもたらされる特性と完全に一致した。これらの結果から、生理的なアゴニストによるK^+チャネルの開口は、受容体刺激によってGタンパク質(G_i)から解離したβγサブユニットの作用に起因することが明かにされた。 2)プロテインキナーゼCによるアデニル酸シクラーゼのリン酸化とGタンパク質による制御 ATPからcyclic AMPを産生する動物細胞のアデニル酸シクラーゼには種々のサブタイプが存在し、それらのほとんど全ては促進性Gタンパク質(G_S)のαサブユニットやフォルスコリンによって活性化される。しかし、他の抑制性Gタンパク質(G_)のαサブユニットやβγサブユニットによっては、サブタイプ毎に異なる制御を受けることが知られている。また、cyclic AMPを介する情報伝達の経路はプロテインキナーゼCの作用で修飾される場合が多い。そこで先ずプロテインキナーゼCによるアデニル酸シクラーゼのリン酸化の効果を検討し、以下の知見を得た。タイプVのアデニル酸シクラーゼはプロテインキナーゼCζによって20倍以上に活性化されたが、この活性化の程度はフォルスコリンによるもの(5倍)以上であった。プロテインキナーゼCζによってリン酸化されたタイプVのアデニル酸シクラーゼはフォルスコリンによってさらに活性化され、基礎活性の100倍以上の値を示した。リン酸化によるアデニル酸シクラーゼの活性化の度合いは、プロテインキナーゼCのサブタイプによっても異なり、プロテインキナーゼCαとζとによって相加的に活性化された。 一方、好中球細胞のアデニル酸シクラーゼは、G_i-関連型の受容体刺激共存下に、G_S-関連型の受容体刺激による活性化が増強されるというユニークな特性を示した。この効果はG_iから解離したβγサブユニットがアデニル酸シクラーゼに直接作用した結果であると考えられた。また、好中球細胞のアデニル酸シクラーゼ活性はフォルスコリンによって逆に阻害されることが明らかにされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1992年 -1994年 
    代表者 : 宇井 理生; 櫨木 薫; 多田 周右; 星野 真一; 櫨木 修; 榎本 武美
     
    最終年度の主要な研究は、成熟ラット肝細胞の初代培養系と食細胞系を用いて行われた。前者において、肝細胞を高細胞密度で培養すると細胞は分化状態にとどまり、アドレナリン作動性受容体はα_1タイプである。受容体刺激に対する細胞の最終応答であるホスホリラーゼ活性化はホスファチジルイノシトール(PI)-3-キナーゼ阻害薬によって、アゴニストが低濃度の時に限って、抑えられ、高濃度では全く抑えられなかった。一方、増殖期に機能しているβ_2タイプ受容体刺激に対する応答はどのような条件でもワ-トマニンによって全く抑えられない。すなわち、α_1応答においてはPI-3-キナーゼを介する情報伝達路と介さない伝達路が作動し得ることが明らかになった。増殖期に入るとα_1応答は急速に減弱するが、この理由はGqを介して活性化されるホスホリパーゼCの産物イノシトール-P_3(IP_3)の細胞内Ca^<2+>動員作用の減弱によるものであった。PI-3-キナーゼ介在、非介在どちらの伝達路が減弱するかが今後の課題である。一方、食細胞としてはモルモット好中球、ヒト単球系培養細胞株U937、THP-1を用いた。多くの増殖因子やサイトカインの受容体、さらにIgE受容体などの刺激がPI-3-キナーゼを活性化することは知られていたが、今回、IgG(Fcγ)受容体刺激がPI-3-キナーゼを活性化することを発見し、ワ-トマニンがこの活性化とこの受容体刺激に対する細胞の最終応答である異物貧食を、ともに完全に抑制することから、本情報物質の関与に確固たる証明を与えた。補体の受容体(CR3)を介する貧食もPI-3-キナーゼによって仲介される。細胞骨格蛋白質の重合・脱重合に至る情報伝達路において蛋白質チロシン残基リン酸化の上流または下流に位置するPI-3-キナーゼの役割をさらに検討中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1992年 -1993年 
    代表者 : 堅田 利明; 仁科 博史; 高橋 勝宣; 星野 真一; 櫨木 修; 石井 孝司
     
    細胞膜受容体刺激の情報はGTP結合蛋白質(G蛋白質)αサブユニット上のGDP-GTP交換反応の促進を介して伝達される場合が多い。ハチ毒素から単離されたマストパラン(Mp)はG蛋白質を直接活性化するので、G蛋白質の新しい活性化機構が想定された。本研究では、Mpをはじめとする生理活性ペプチドおよび関連の低分子化合物が、G蛋白質のもつ諸種の活性にどのような影響を与えるかを検討した。 1.Mp及び同様にヒスタミン遊離作用をもつ合成化合物48/80は、G蛋白質のもつGTPアーゼを活性化したが、その程度はG蛋白質の種類によって異なり、G蛋白質に対する特異性が観察された。2.MCDペプチドにもG_よりG_0により親和性が高いGTPアーゼ活性化作用が認められた。さらに、D-アミノ酸から合成された光学異性体のMCDペプチドにも、同様のGTPアーゼ活性化作用が観察された。3.本研究では新しい薬剤のスクリーニング系としてG蛋白質の活性測定法が有用である可能性についても検討を加えたが、三環系抗鬱薬に顕著な、そし不定型抗鬱薬にも有意な、G蛋白質のGTPアーゼ上昇作用が認められた。4.Mpは、ウサギ好中球細胞膜における化学遊走因子の細胞膜受容体への結合を増大させたが、この作用は、アゴニストに対する受容体の結合親和性がMpによって修飾されることに起因した。すなわち、通常観察されるG蛋白質と共役した受容体が示す高親和性結合とG蛋白質から脱共役した受容体が示す低親和性結合は、Mpによって共に中間型の親和性を示す受容体に移行した。これらの知見は、MpなどのペプチドがG蛋白質を単に活性化するのみでなく、受容体-G蛋白質連関にも影響を与え得ることを示している。医薬品の新しいスクリーニング系を開発していく上で、今後これらG蛋白質の活性測定法が有用であることが本研究によって明かにされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1992年 -1993年 
    代表者 : 堅田 利明; 仁科 博史; 高橋 勝宣; 星野 真一; 櫨木 修
     
    細胞膜受容体刺激の情報はαβγサブユニットからなるGTP結合蛋白質(G蛋白質)を介して細胞内へと伝達されるが、G蛋白質はコレラ毒素や百日咳毒素によりADP-リボシル化されその機能が修飾されるので、情報伝達機構を研究する上で有用なツールとして利用できる。本研究では、細菌毒素が触媒するADP-リボシル化反応を利用して以下の知見を得た。 1.ウシ大脳細胞膜画分には、百日咳毒素によってADPリボシル化されるαサブユニット(41〜39kDa)を含む3量体G蛋白量が少なくても5種類存在し、それら5種のαサブユニットは、特異抗体との反応性やアミノ酸の部分配列の解析から、α_,α_,α_,α_及びα_のcDNAによってコードされる産物であると同定された。また、G蛋白質を構成するβ(36/35kDa)およびγ(7〜9kDa)サブユニットにも分子多様性があり、種々のG蛋白質間で同一ではないことが明らかにされた。2.βγサブユニットを固定化したアフィニティーカラムを用いて、種々の細胞の細胞質画分よりβγサブユニットと結合し得る蛋白質を検索した結果、分子量93,000の蛋白質の存在がいくつかの組織、細胞に共通して観察された。2.この93kDa蛋白質は、ヒートショック蛋白質の一つである90-kDa Heat shock protein(hsp90)と同定された。3.Hsp90は百日咳毒素によるG蛋白質のADPリボシル化を阻害することから、βγサブユニットと結合しその機能を阻害するG蛋白質の新しい制御因子であると考えられた。4.一方、百日咳毒素のADPリボシル化反応を利用して、G蛋白質が細胞膜だけではなく核内にも存在することが明らかにされた。単離細胞核を用いた蛋白質の輸送系を開発し、この核内百日咳毒素基質のG蛋白質が核内へ輸送系に関与する可能性が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1992年 -1992年 
    代表者 : 宇井 理生; 星野 真一; 榎本 武美
     
    (I)副腎皮質や卵巣の腫瘍においてGi2αの変異が報告されている179番ArgをCysに置換した変異体を作製し、Arg残基の変異がGi2蛋白質の機能に及ぼす影響について検討した。組み換え体蛋白質は大腸菌を用いて大量に調製した。その結果、IAPによるADP-リボシル化の基質活性は、正常Gi2α(WT)と変異型Gi2α(R179C)で全く違いはみられなかったが、GTP水解速度(turnover number)が著しく低下していることが明らかになった。このような見かけの水解速度低下の原因としては、(I)Gi2αが本来有しているGTP水解活性(Kcat)の低下と(2)Gi2αが本来有しているGTPの解離速度の低下の二つが考えられるが、R179Cでは両者が共に低下し、特にkcat自体が著しく(2ケタ以上)低下していることが証明された。βγサブユニットとの会合に関しては、R179Cとの間に顕著な差は見られなかった。また、R179Cにおいて受容体との共役能が消失するようなことはなかった。このように、Gi2αの179番Argの変異は、主としてGTP水解活性の著しい低下を引き起こし、Gi2αが常に活性型(GTP結合型)に保たれていることが、腫瘍化に至るメカニズムのひとつとして重要な位置を占めるものと考えられた。 (II)Gi2蛋白質の発現量と癌転移との相関が示されているメラノーマ細胞において、G蛋白質遺伝子の発現を制御する転写因子とその結合DNA領域を検索する目的から、Balb/cマウス遺伝子ライブラリーよりGi2α遺伝子のクローニングを行った。その結果、単離した遺伝子の5^1非翻訳領域約600bpの塩基配列を決定し、4つのGCboxと2つのCAATboxの存在を明らかにした。また、AP2結合部位のコンセンサヌ配列も存在することから、cAMPやCキナーゼ系を介する発現制御機構の存在が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1991年 -1992年 
    代表者 : 岡田 文彦; 星野 真一; 上野 武治; 徳光 幸子
     
    (1)死後脳のG蚕白質の検討:精神分裂病,アルツハイマー病及び正常対照群の死後脳の各脳部位におけるGo及びGi-2の各αサブユニットを愛知県コロニーの浅野と加藤両博士が開発したエンザイム・イムノアッセイ法を用いて検討した、前頭眼窮面,海馬,海馬湾回,被殻,尾状核,側頭葉外側面について検討し,SAS,TypeI,II,IIIを用いて推計学的に検討したところ,Gi-2αはいずれの脳部位でも有意点を認めなかったが,α_0αは右側の海馬でのみ対照群の同部位と比較して低下していた(診断ー部位インタラクションを認めた)。この結果は百日咳毒素によるADPリボシル化反応を用いた側定の結果と反する所見であった。おそらく,Goのコンホメーションの異常が左あるいは右海馬で存在する可能性を示している。アルツハイマー病については例数が少なく,対照群との統計学的検討を行うことが出来なかった。 (2)ウェスターン・ブロット法によるG蚕白質αサブユニットの測定:エンザイム・イムノアッセイ法ではGi-1αを測定する充分な抗体を確保できず,正確な検討が出来なかったので,ウェスターン・ブロット法を用いて検討した。精製せずに用いた検体では抗体と充分な抗原抗体反応をうることが出来なかったが,充分精製した純蚕白では定性的な検討が可能となった。まだ統計的検討を行うに充分なデータを得ていない。 (3)ノーザン・ブロット法によるG蚕白質遺伝子の検討:東京大学薬学部宇井教授と星野助手との共同研究で,ノーザン・ブロット分析法を用いて,Gi-1α,Gi-2α,Goαの遺伝子発現を検討しているが,用いた検体の蚕白質が変性をきたしていたため,正確な値を得ることが出来なかった。今後の課題と考えている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1990年 -1990年 
    代表者 : 星野 真一
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1990年 -1990年 
    代表者 : 岡田 文彦; 星野 真一; 上野 武治; 徳光 幸子
     
    左側の側脳室下角の拡大を確認した精神分裂病剖検脳と年令,性を一致させた対照群の剖検脳を用いて,各々9の脳部位について,百日咳トキシンによるADPリボシル化反応を行い,G/Go量を測定した。さらにそのうちの各々6部位についてエンザイム・イムノアッセイ法により,GoαとGi2αを測定した。精神分裂病群では左側の側頭下角壁を構成する海馬でGi/Go量が低下していた。右側の海馬では対照群との間に有意差は認められなかった。左側の被殻でもGi/Go量が低下していた。右被殻では有意差は認められなかった。その他の脳部位では同様の有意差を認めなかった。この被殻でのGi/Go量の低下はド-パミンーD_1ーアデニレ-トシクラ-ゼ系活性の亢進を示す所見かもしれない。すなわち.線状体におけるD_1ーGsーAC系とD_2ーGiーAC系のバランスの崩壊が精神分裂病の病状発症と深く関連している可能性が考えられる。左海馬でのGi/Go量の低下は同部位でのGABAーB,5HTlAなどの受容体と百日咳感受性G蛋白とが共役していることから,この系の障害が精神分裂病の病態と関連することも考えられた。さらに,エンザイム・イム/アッセイ法により測定したGoαの値は前頭眼景面でのみ精神分裂病群で低下していた。その他の脳部位では有意差を認めなかった。Gi/Go量で認められた左海馬と左被殻での低下はもっぱらGi(Gilα)の低下によると考えられた。従来より精神分裂病では前頭部のhypofrontalityが存在する可能性が指摘されており,本研究の所見はそれを支持すると考えられた。Gi2αは組織による濃度差が少なく,遺伝子的にはGi2αmRNAはハウスキ-ピング遺伝子であると推定されているが,本研究でも,各脳部位とも有意差のある所見は認められなかった。

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