研究者データベース

粂 和彦 (クメ カズヒコ)

  • 薬学研究科神経薬理学分野 教授
Last Updated :2025/04/29

研究者情報

学位

  • 博士(医学)

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J-Global ID

プロフィール

  • 名古屋市立大学

研究キーワード

  • 統合脳・分子脳科学   包括脳ネットワーク   ロイコトリエン   Src型チロシンキナ-ゼ   有機アニオン   ニュ-ロン   三量体Gタンパク質   発現制御   発現誘導   リン酸化   Hck   遊走   LTB_4受容体   心筋細胞   pdx 1   G蛋白質   プロモ-タ-解析   ケラチノサイト   c粒物Srcキナ-ゼ   貪食   ドーバミン   CsK   Lun   増殖因子   標的遺伝子組み換え   LTD_4受容体   胆汁排泄   顆粒分泌   pdx1   遺伝子クロ-ニング   Lyn   ロイコトリエン受容体   試験管内分化誘導   Fyn   再生医学   β細胞   膵臓   ドーパミン   Fe受容体   エンドトキシンショック   メラノサイト   色素沈着   細胞内情報伝達   内胚葉誘導   胚性幹細胞   貧食   ノックアウトマウス   c-Src   ショウジョウバエ   生物時計   概日周期   寿命   MAPキナ-ゼ   脱感作   不眠   睡眠   時間生物学   トランスジェニックマウス   PAF   受容体   PAF受容体   血小板活性化因子   

研究分野

  • ライフサイエンス / 薬理学
  • ライフサイエンス / 薬系衛生、生物化学
  • ライフサイエンス / 神経科学一般
  • ライフサイエンス / 機能生物化学
  • ライフサイエンス / 医化学

経歴

  • 2013年04月 - 現在  名古屋市立大学大学院薬学研究科教授
  • 2002年03月 - 2013年03月  熊本大学 発生医学研究所Institute of Molecular Embryology and Genetics准教授(←助教授)
  • 1997年04月 - 2002年03月  東京大学大学院医学系研究科・医学部助手
  • 1992年06月 - 2002年03月  東京大学 医学部(医)生化学教室助手
  • 2000年01月 - 2002年02月  タフツ大学医学部神経科学客員研究員
  • 1999年02月 - 2000年01月  ハーバード大学客員研究員

研究活動情報

論文

MISC

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2024年04月 -2028年03月 
    代表者 : 大澤 匡弘; 太田 淳; 粂 和彦; 小山内 実; 竹内 雄一
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2024年04月 -2028年03月 
    代表者 : 岩田 宏満; 柴田 泰宏; 加藤 洋一; 鵜川 眞也; 粂 和彦; 歳藤 利行; 冨田 淳; 嶋田 逸誠; 荻野 浩幸; 平山 亮一
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2024年04月 -2027年03月 
    代表者 : 粂 和彦; 冨田 淳; 鈴木 力憲
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2021年04月 -2024年03月 
    代表者 : 粂 和彦; 冨田 淳
     
    睡眠は、身近な現象だが、現在でも謎が多い。本研究課題は、種を超えて進化的に保存されている睡眠という生命現象の制御機構と生理的意義の解明を目指して、研究代表者が20年前からパイオニアとして世界をリードしてきたショウジョウバエをモデル生物とする睡眠研究を継続的に発展させるものである。ショウジョウバエは、100年以上にわたり遺伝学のモデル生物して使われ、概日周期行動の分子機構の解明などに用いられるが、睡眠の制御遺伝子も哺乳類と共通するものが多い。今期の研究では、[1]覚醒の制御回路、[2]覚醒と概日周期との関係、[3]覚醒と睡眠の恒常性の関係に焦点をあてた研究を進めている。2021年度は、新規課題の初年度で、前期から継続して発展させた研究の成果を、以下の内容の4報の論文として発表した。1.睡眠制御機構について、各種のアミノ酸が睡眠に与える影響を網羅的に解析した結果、D-セリンという稀少なアミノ酸が睡眠制御に働く可能性を示した。2.新規受容体遺伝子の解析から、哺乳類のノルアドレナリンという覚醒物質に相当するオクトパミンの覚醒制御における役割を解明した。3.代謝と睡眠をつなぐ物質として、インスリン様ペプチドが時計神経で睡眠を制御することを明らかにした。4.ドーパミン神経のサブセットの一つが、覚醒を制御する新規の神経回路を解明した。また、今期の研究課題の中心テーマの一つである睡眠恒常性について、睡眠量を制御する遺伝子の候補として、哺乳類で睡眠欲求指標リン酸化タンパク質として発見された遺伝子群を機能スクリーニングして、睡眠制御に関与する遺伝子の候補を少なくとも5つ発見して解析を進めている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2018年04月 -2021年03月 
    代表者 : 粂 和彦; 冨田 淳
     
    本研究では、ショウジョウバエを用いた睡眠研究を行い、その結果、睡眠覚醒を制御するT1ドーパミン神経が、脳の中の中心複合体の複数の部位を介して、睡眠中枢を制御する回路を完全に同定した。また、マウスで睡眠を制御するSIK3遺伝子が、ショウジョウバエでは概日周期を制御する時計神経で睡眠を制御することを発見した。この結果は、独立して制御されると考えられてきた概日周期と睡眠恒常性維持機構が、密接な相互関係をもつ可能性を示した。さらに、マウスでは睡眠要求性とリン酸化レベルが相関する遺伝子の一部が、ショウジョウバエでも睡眠制御に関与し、リン酸化レベルも変化することを発見し、種を超える共通点を見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2016年04月 -2019年03月 
    代表者 : 大澤 匡弘; 粂 和彦; 村山 正宜; 祖父江 和哉; 小山内 実
     
    痛みは不快な情動を生み出す感覚刺激とされるが、心の状態が痛みの感受性にも影響を与える。本研究の成果から、慢性的に痛みがあると不快な情動を生み出す脳内神経回路が活性化していることを全脳イメージングの解析から明らかにできた。また、気持ちが落ち込んでいる状態(抑うつ状態)では、些細な刺激でも痛みとして認識されることが明らかになった。特に、前帯状回皮質と呼ばれる情動に関係が深い脳領域の活動が高まっていると痛みに対して過敏になることも示すことができた。これらのことから、難治化した痛みに対しては、情動面に配慮した治療法が有効であることが提唱できる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2013年06月 -2018年03月 
    代表者 : 齊藤 実; 粂 和彦; 上野 太郎; 坂井 貴臣; 佐藤 守俊
     
    ショウジョウバエの特長を生かし、1)記憶情報が生まれる過程、2)不安定な記憶が長期記憶へと変換され、維持される仕組み、3)加齢に伴う記憶機構の変化による記憶障害を担う分子・神経機構の動態と特性を解き明かすことを目的とした。本研究から、1)情報の連合過程でのドーパミン作動性神経の動作原理、2)間を空けた繰り返し学習により長期記憶情報が特定の細胞集団にコードされるメカニズム、神経-グリア相互作用によるグリア細胞での長期記憶関連遺伝子の発現、形成された長期記憶情報を維持するために必要な遺伝子発現機構、3)グリア細胞の代謝機能変性による加齢性記憶障害の発生機構などが明らかになった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2014年04月 -2017年03月 
    代表者 : 井田 隆徳; 尾崎 まみこ; 粂 和彦; 富永 初美; 岩元 絵里
     
    本研究では、節足動物において新規生理活性ペプチドの探索を行い、これらペプチドの摂食行動への関与を解明することにより害虫の防除や有用節足動物の効率的育成を目指すことを目的とした。その結果私達は、これまでにショウジョウバエの未知の受容体に対する5種類の新規生理活性ペプチドを発見した。CCHamideはfat bodyから分泌され脳内のインシュリン産生細胞に作用し、インシュリン様ペプチドの分泌を調節して成長をコントロールしていることを見出した。またdRYamideは強力な摂食抑制作用を持つ共に、クルマエビは潜砂行動を誘発することも見出し産業応用への可能性を探っている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2013年04月 -2016年03月 
    代表者 : 粂 和彦
     
    モデル生物として注目されているショウジョウバエの睡眠覚醒制御機構を解析した。まず、学習・記憶に重要なNMDA型グルタミン酸受容体が睡眠制御にも働くことを示し、睡眠と記憶の関連について新たな可能性を示した。また、空腹時には睡眠が減るが、ハエの場合、人工甘味料でも睡眠が誘導された。一方、甘味だけでは睡眠が深くならなかった。このことから、甘味だけで睡眠は誘導されるが、睡眠の安定には栄養成分が重要なことが示された。また、ヒトでも睡眠を深める作用が知られているグリシンが、ハエでも強く睡眠を誘導することがわかり、ハエは人間の睡眠の良いモデル動物になることが確認された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2010年 -2012年 
    代表者 : 粂 和彦
     
    睡眠覚醒制御機構の解明のため、 モデル生物であるショウジョウバエを解析して、カルシニューリンなど数個の新規睡眠関連遺伝子を同定し、睡眠と記憶の関連、睡眠と加齢・寿命の関係を示した。また、覚醒制御物質であるドーパミンについて、活動の時系列解析から休息時間の制御への関与を、 生理機能解析から代謝 ・ 温度嗜好性との関係を示し、さらに覚醒を制御する脳内のドーパミン神経回路を、単一神経細胞レベルで同定した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2008年 -2010年 
    代表者 : 高橋 隆雄; 田中 朋弘; 八幡 英幸; 田口 宏昭; 浅井 篤; 板井 孝壱郎; 北村 俊則; 松田 一郎; 森田 敏子; 稲葉 一人; トビアス バウアー; 磯部 哲; ダリル メイサー; 粂 和彦; 児玉 正幸; 前田 ひとみ; 北村 總子
     
    日本の生命倫理の議論を、終末期医療、生殖医療などの諸領域にわたり、実践レベル、具体的原理レベル、抽象的概念レベルの三層構造の分析によって解明することで、抽象的議論を回避するボトムアップ的な日本の生命倫理の特徴を明らかにすることができた。また、各レベルの間の関係の究明により、いわゆる生命倫理原理の普遍性は中間のレベルに妥当すること、さらに現場での実践レベルと抽象的レベルの親近性が明瞭になった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 粂 和彦
     
    近年、さまざまなモデル動物を用いた新しい睡眠研究が発展しているが、特にショウジョウバエが注目され急速に進行している。われわれは睡眠が極端に減少したショウジョウバエのfumin変異を発見して解析を続けている。まず変異の原因遺伝子をクローニングしたところ、哺乳類でもコカインなどの覚醒物資の標的となるドパミントランスポーターであったことから、ショウジョウバエの覚醒制御機構には哺乳類との類似性があり、モノアミン系が関与していると考えられた。次に脳の遺伝子発現を網羅的に解析したところ、ドパミン系に関与する遺伝子群には変異株と野生型で発現量の変化はなく、逆にグルタミン酸系に関与する一群の遺伝子群に発現量の変化が認められた。これは、従来知られていなかったドパミン系とグルタミン酸系のクロストークの可能性が示唆した。変異株の寿命を調べたところ、通常の飼育条件では野生型と差はないが、高栄養の食餌を与えると、活動量が老化とともに上昇し寿命が短縮した。さらにカフェインを与えると、野生型よりも大きく活動量が増えて睡眠時間が短縮して、寿命も短くなった。通常の条件では寿命に差がないことから、これらの二つの結果は、ショウジョウバエの睡眠には一定の必要量が存在し、それよりも睡眠が短くなると、寿命にも影響するが、最低限の量が確保されれば、寿命には影響しないことを示唆した。今後、睡眠と寿命、さらには高栄養の三つの関係についての研究を深めることで、これらの生理学的な意義についての示唆が得られると考えられる。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2005年 
    代表者 : 粂 和彦
     
    われわれは、ショウジョウバエを用いて、概日周期・覚醒睡眠制御機構の解析を行っている。特に、われわれが樹立した、睡眠の量が減少したショウジョウバエの変異株、fumin(不眠、fmn)は、遺伝学的マッピングと、cDNA・ゲノムの配列決定により、ドーパミン・トランスポーター遺伝子の機能欠失変異であることが示されている(K.Kume et al. J. Neurosci.25:7377-7384,2005)。この変異株の解析から、ドーパミンは、ショウジョウバエが不動状態にある時の反応性そのものに関係していることを薬理学的な実験などで、確認中している。また、ショウジョウバエの概日周期の中枢は、脳の中の限られた数のニューロンであることが知られており、その多くがPDF (Pigment dispersing factor)というペプチドを産生するPDFニューロンである。 そこで、ショウジョウバエの睡眠覚醒と概日周期の関係を調べるため、このPDFニューロンと、ドーパミンニューロンのそれぞれが蛍光蛋白質(GFP)でラベルされるショウジョウバエの系統を作成し、その脳を単離し、in vitroで培養する系を樹立した。 従来、単離した昆虫の神経細胞は、不安定で長期培養は困難とされていたため、培養液の改良などにより、長期培養条件の検討を行った。その結果、マウスの初期培養で用いられている、マウス胎児脳の初期培養細胞の培養上清を加えることで、1週間以上の長期にわたって安定して初代培養できる条件が確立できた。この系では、単離した神経細胞が、神経突起を伸長できることまで確認している。現在、電気生理学的・分子生物学的性質を、解析中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 粂 和彦; 粂 昭苑
     
    本研究では、概日周期生物時計の出力系として、最重要なものの一つである睡眠覚醒制御機構について、ショウジョウバエを対象に、遺伝学・分子生物学的な解析を行った。近年の研究の進展に伴い、脊椎動物と昆虫の間で、核酸レベルで保存された時計遺伝子が、概日周期を制御することが示された。また、昆虫などの無脊椎動物にも、睡眠類似行動があることが示されているが、睡眠は、基本的に高等脊椎動物の脳機能であると考えられるし、また昆虫の睡眠の分子レベルでの機構は、全く未知だった。私たちは、ショウジョウバエが遺伝学手法に優れることに着目し、その睡眠の解析を行うプログラムを開発し、測定する系を確立した。そのシステムを使って、概日周期変異と睡眠の量の関係を調べたところ、ネガティブフィードバックを行う転写因子の、ピリオドとタイムレスの変異では、睡眠に対する影響はなかった。しかし、これらの転写因子の発現を正に制御する、サイクルの変異では、睡眠の量が減っていることを見い出した。また、それに加えて、睡眠が量的にも質的にも減少したショウジョウバエの発見した。この変異株を、加刀変異と名付け、遺伝学的解析をしたところ、原因がドーパミントランスポーターの欠失であることを突き止めた。このトランスポーターは、哺乳類においても、コカインやアンフェタミンなどの覚醒物質の標的になることから、睡眠覚醒制御に働いている。この結果は、行動レベルだけでなく、遺伝子・物質レベル札、睡眠覚醒制御機構に昆虫と哺乳類の間に類似性があることを初めて示した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 粂 昭苑; 粂 和彦
     
    我々は、膵への発生分化の機序を明らかにするために、ES細胞を用いて、膵臓への分化過程を再現出来る実験系を構築している。これまでに、膵幹細胞のマーカーであるpdx-1遺伝子発現を容易に検出可能のために、pdx1遺伝子座にlacZレポーター遺伝子をノックインしたES細胞を用いてきた。その結果、(i)膵臓原基とEs細胞との共培養、(ii)TGF-β2の添加、(iii)Es細胞への内胚葉誘導因子c-mix遺伝子の強制発現、によっでES細胞から膵への分化誘導が促進されることを明らかにした。 さらに、ES細胞由来の膵幹細胞をリアルタイムで追跡し、生きた細胞を純化するために、pdx-1遺伝子の発現をGFP(緑色蛍光タンパク質)で可視化した。まず、pdx-1-GFPトランスジェニックマウス(Gu et al.,2002)より、ES細胞株を樹立した。トランスジェニックマウスにおいては、pdx-1遺伝子が膵臓幹細胞で特異的に発現されることがすでに確認されているので、樹立したES細胞から分化したGFP陽性細胞は膵に特異性があると考えられた。このES細胞株から、効率よくES細胞から膵へ分化が誘導されることが確認された。ES細胞から誘導されたpdx-1/GFP陽性細胞をセルソーターを用いて、GFP陽性細胞の蛍光強度に基づき分画した。RT-PCR法により解析した結果、GFP陽性分画にpdx-1陽性細胞が濃縮されていることが分かった。このES細胞由来のpdx-1陽性細胞について、遺伝子発現網羅的解析を行なった。我々の系で得られた膵幹細胞の遺伝子プロファイルと、既に報告されているマウス胎生7.5日目の正常内胚葉層及び膵幹細胞の遺伝子発現プロファイル(Gu et al.,2003)と比較した結果、マウス胎生7.5日目の内胚葉で発現する遺伝子プロファイルとよく似ているプロファイルであることが明らかとなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2003年 
    代表者 : 粂 昭苑; 粂 和彦
     
    申請者らが構築したES細胞から膵への分化誘導系において、アフリカツメガエルのmixファミリーのニワトリホモログであるc-mix遺伝子を強制発現させた結果、膵への分化誘導能が促進されたことを見い出している。このc-mix遺伝子強制発現ES細胞株と、対照株との遺伝子発現プロファイリング解析を行い、内胚葉誘導に関与する遺伝子群の同定出来ると考えられた。本研究ではDNAチップを用いた遺伝子解析を行なうと共に、rt-pcr法により、遺伝子導入株では内胚葉分化マーカーの発現が上昇していることを示した。今後はここで絞られた候補について、さらにアフリカツメガエル初期胚で強制発現させ、内胚葉誘導活性についてスクリーニングを続ける予定である。 さらに、pdx-1-GFPトランスジェニックマウスより、ES細胞を樹立し、生きた状態でpdx-1の遺伝子発現を追跡可能の系を確立した。また、申請者らはこれまでに、ES細胞からの膵への分化誘導を支持する細胞を複数同定してきた。これら支持細胞を用いて、ES細胞から膵へ効率良く分化誘導された。さらに、ES細胞からの分化誘導の条件を無血清条件でアッセイできる系を確立し、TGFβ2を添加することにより、顕著な膵分化誘導を認めた。このように、これまでに確立した実験系では、充分に効率よくES細胞から膵へ分化を誘導することができたので、ES由来の膵幹細胞を今後セルソーターを用いて純化し、遺伝子発現プロファイリングなどによる細胞生化学的解析を進めようと考えている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -2001年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 清水 孝雄; 大日方 英; 魚住 尚紀; 和泉 孝志
     
    本年度の研究成果は以下の通りである。 1.細胞質型PLA2(cPLA2)欠損マウスの表現型の解析に関する研究 cPLA2欠損マウスの表現型の解析を、成人呼吸窮迫症候群および大腸ポリポーシスについて行ってきたが、現在、脳虚血後再灌流傷害、ブレオマイシン気道投与による急性肺炎、コラーゲン惹起関節炎、アレルギー性脊髄炎などの疾患モデルの解析が進んでおり、いずれも本マウスにおいて症状が軽減していることを確認している。 2.新規PLA2に関する研究 カイニン酸によって痙攣発作を誘発したマウスやラットにおいて、海馬歯状回に時期特異的に発現するcPLA2遺伝子由来の新規蛋白質を発見し、そのプロモータ領域の解析を行っている。この新規蛋白質を発現する細胞が未分化の神経細胞であることを確認した。 3.生理活性脂質産生制御に関する研究 cPLA2と同時にカルシウム刺激に応じて核膜に移行してロイコトリエン産生に関与する5-リポキシゲナーゼの、細胞内局在と移行の分子機構に関する研究を行い、核移行シグナルと核外移行シグナルに依存した機構が存在することを明らかにした。 4.生理活性脂質受容体に関する研究 血小板活性化因子(PAF)受容体を介するPAFの分解を報告した。第2LTB4受容体のリガンドの性質について報告した。さらに、ペプチド性ロイコトリエン受容体のマウスにおける発現を解析し、種差や系統差による生理活性脂質の作用の差について考察を加えた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1999年 -2000年 
    代表者 : 本田 善一郎; 横溝 岳彦; 粂 和彦
     
    FcεRI受容体の情報を伝える責任Src型チロシンキナーゼ分子群を同定する目的で再構成実験を行った。マスト細胞のSrc型チロシンキナーゼ活性を抑制分子、膜結合型C末端Srcキナーゼで抑制し各Srcファミリー分子(活性型)の再構成で機能回復を検討した。さらに部位特異的変異、欠失分子を用いて活性に必要な分子内構造を解析した。これらの解析から、N-末端パルミチン酸付加(脂質修飾)により分子が細胞膜のraft(コレステロール、糖脂質、スフィインゴ脂質に富んだ難溶性の細胞膜ドメイン)に集積することが最初の反応である受容体のチロシンリン酸化に必須であることが判明した。 この構造要求性から、FcεRIの活性化を媒介するキナーゼは、Lyn,Fyn,Hck,等に限られ、c-Srcは反応に関与できない。さらに、情報を安定して下流に伝えるためにSH2ドメインが使われる。SH3ドメインはFc受容体機能には必須でない。同様の解析をFcγRIIIA受容体の媒介する貪食機能についても行い、同様のSrcファミリー分子の特異性、構造要求性を解明した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1999年 
    代表者 : 和泉 孝志; 星子 繁; 粂 和彦; 清水 孝雄
     
    炎症性生理活性脂質の機能や、アレルギー、ショックなどの病態における役割を解明し、最終的には受容体の発現やその作用を制御する方法、薬物を開発する目的で、以下の研究を行った。 1、PAF受容体の機能の解明 (1)リガンド刺激によるPAF受容体のインターナリゼーションの機能を解明した。 (2)すでに確立しているPAF受容体トランスジェニックマウス、ノックアウトマウスを用いて、正常マウスとの比較を、塩酸注入及びLPS投与の急性肺炎症モデルにおいて行いPAF受容体の果たす役割を個体レベルで検討した。 2、LTB4受容体の遺伝子発現制御と機能の解析 (1)ブタ白血球のLTB4受容体のGタンパク質との共役を解明した。 (2)ヒトLTB4受容体のゲノムの解析とプロモーター機能 ゲノム遺伝子の解析により、ヒトLTB4受容体のプロモーター領域の機能をレポーター遺伝子を用いたアッセイにより明らかにした。 (3)マウス、ラット、モルモットLTB4受容体遺伝子のクローニング ノックアウトマウス作製のためのクローニングとターゲティングベクターの作製を行った。また、ラットにおいて炎症性刺激による受容体遺伝子の誘導を報告した。モルモット遺伝子のクローニングにも成功し、ヒト遺伝子の機能比較を行った。 3、LTD4受容体の機能の解析 ヒト白血球性の培養株であるTHP-1細胞におけるLTD4受容体のシグナルを解析した。 以上のように、生理活性脂質受容体の発現制御、細胞内情報伝達、病態における役割を解明し、アレルギーや炎症反応における生理活性脂質の役割を明らかにすることができた。この成果は、将来の薬物や治療法の開発に多くの情報をもたらすものである。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1999年 
    代表者 : 清水 孝雄; 谷口 雅彦; 和泉 孝志; 粂 和彦
     
    神経細胞はシナプス活動に加えて、グリア細胞との相互作用により、その再生、あるいは障害からの防衛を行っている。これはてんかん発作や虚血再灌流の障害機構を考える上で非常に重要である。グリアとニューロンの間でどの様なシグナル伝達が行われているかは必ずしも明らかではなかった。本研究では種々の脂質メディエーターに注目し、神経細胞の再生や死へのグリア因子の関わり、あるいはグリアによる神経細胞の活性化機構を明らかにした。種々の細胞で産生されるリゾホスファチジン酸(LPA)は神経細胞の増殖や分化を促すだけでなく、アストロサイトに働き種々の神経栄養因子を放出することを明らかにした。また、成長時期の神経細胞の特有に発現すると思われる新規受容体を単離した。本受容体は嗅脳の僧帽細胞、大脳皮質や海馬の錐体細胞、さらに、小脳プルキニエ細胞に発現しており、その機能の解明を目指している。また、ロイコトリエンの受容体を単離し、これがミクログリアに多量に存在すること、ロイコトリエンに刺激されたミクログリアは化学走性を示すことを示した。従来ミクログリアの活性化因子として報告した血小板活性化因子(PAF)が神経細胞でグルタミン酸刺激で産生されることも明らかにした。さらに、PAF受容体欠損マウス、ホスホリパーゼA2欠損マウスの作成とその遺伝的純化に成功しており、詳細な表現型を調べている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1998年 -1998年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 清水 孝雄
     
    血小板活性化因子(PAF)はアレルギー反応、免疫反応などの主要なメディエーターの1つである。PAF受容体遺伝子はGタンパク質を介する7回膜貫通型の受容体であることが明らかにされたが、その構造と機能の関連や、疾患における役割については充分解明されてはいなかった。本研究では、1:PAF受容体遺伝子に変異を導入し哺乳動物細胞に発現させ、リガンド結合様式や解明や脱感作現象との関連を調べることにより、PAF受容体の構造と機能の関わりを検討すること、2:すでに確立しているPAF受容体トランスジェニックマウスとノックアウトマウスを用いて、疾患モデルにおける解析を行いこれらの病態におけるPAF受容体の果たす役割を検討することを目的とした。 PAF受容体のN末端に標識配列をつけ、リガンド刺激によるインターナリゼーションおよびリサイクリングを、標識配列に対する125I-標識2次抗体を用いた放射活性の測定、およびFITC標識2次抗体を用いた蛍光顕微鏡での観察により解析し、リガンド刺激によるPAF受容体の細胞内移行がクラスリン依存的であることを証明した。アゴニスト除去によりPAF受容体の再分布が観察されるが、このときPAF受容体は再感作されリガンドに対する応答性が回復していることが明らかにされた。 PAF受容体過剰発現マウス、PAF受容体欠損マウスおよびcPLA2欠損マウスを用いて生理活性脂質の成人呼吸窮迫症候群(ARDS)における役割を、塩酸の気道注入によるマウスモデルにおいて検討し、ARDSの発症にPAF受容体およびcPLA2が深く関与していることを示した。これは、PAFおよびアラキドン酸代謝物がこの疾患モデルにおける病態形成に重要な役割を果たしていることを示唆している。 本研究により、PAF受容体の構造と機能の解析が進み、さらに疾患モデルおける生理活性脂質の役割を明らかになったことにより、新たな治療法開発の可能性を示すことができた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 粂 和彦
     
    血小板活性化因子(以下PAF)受容体を高発現するトランスジェニックマウスを樹立したところ、予想外の表現形として、色素沈着と表皮の肥厚、つまりメラノサイトとケラチノサイトとの増加が観察された。本研究では、この表現形を詳細に検討することにより、皮膚細胞におけるPAFの役割を調べた。 in situ hybridization法による導入遺伝子の発現検討から、ケラチノサイトにはPAF受容体遺伝子が多量に発現していたが、メラノサイトには発現が認められなかった。また、メラノサイトの増加の認められない背中の皮膚などでもケラチノサイトの増加は認められた。ケラチノサイトの分化のマーカーであるサイトケラチンK1及び、フィラグリンの免疫染色結果、及び、増殖細胞の比率を表すin vivoでのBrdU取り込み細胞の測定により、基底細胞の増殖が亢進して、表皮層が厚くなっているが、角化細胞への分化は、ほぼ正常に近く保たれていることが示された。そのため、PAFはケラチノサイトに対して増殖因子として働き表皮を肥厚させ、その結果、ケラチノサイト由来の何らかの増殖因子の影響で、メラノサイトの増殖が惹起されていると考えられた。さらに、PAFの拮抗剤を含む軟膏を、トランスジェニックマウスの片側の背中・耳の皮膚に塗布したところ、プラセボを塗布した側に比し有意にBrdUの取り込みが減少し、PAFが増殖作用を持っていることが強く示唆された。 以上のことより、培養線維芽細胞と同様にケラチノサイトに対しても、PAFが増殖の亢進作用を示すことが、トランスジェニックマウスを用いたin vivoの系でも示された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 本田 善一郎; 清水 孝雄; 粂 和彦; 廣瀬 直人
     
    基本的な炎症機構である1)Fc受容体を介する細胞内カルシウム流入と顆粒分泌2)Fc受容体を介する貧食3)インテグリン受容体を介する細胞接着と遊走を対象とし、その分子機構、ことにSrc型チロシンキナーゼとの関わりを解析した。実験材料として各種Srcファミリー分子群及びその変異体、C末端Srcキナーゼ及びその変異体、を様々な組み合わせで遺伝子導入した炎症細胞を用いた。 これらの解析から以下の事実を解明した。 1) Fc受容体を介するカルシウム流入と顆粒分泌にはSrc型キナーゼが必要である。 2) Fc受容体を介する細胞内カルシウム流入に関わるSrc型チロシンキナーゼには特異性があり、Lyn,Fynは機能を媒介し得るが、c-Srcは媒介し得ない。 3) Fc受容体を介する細胞内カルシウム流入に必要なSrc型チロシンキナーゼの細胞内ドメインはN-末端の脂質(ミチスチン酸、パルミチン酸)付加部位、及びSH2ドメインであり、SH3ドメインは必要とされない。 4) Fc受容体を介する貧食にはSrc型チロシンキナーゼが必要である。 5) Fc受容体を介する貧食に関わるSrc型チロシンキナーゼには特異性があり、Lyn,Hckは機能を媒介し得るが、c-Srcは媒介し得ない。 6) インテグリン受容体を介する炎症細胞接着装置、ポドソームの形成、及びポドソームを起点とする細胞遊走にはSrc型チロシンキナーゼが必要である。 7) c-Src及びLynは共にインテグリンを介したポドソーム形成を媒介し得るが、ポドソームを起点とする細胞遊走はLynのみが媒介し得る。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 清水 孝雄
     
    プロスタグランジン(PG)、ロイコトリエン(LT)、血小板活性化因子(PAF)などの生理活性脂質は炎症、免疫、アレルギー反応の重要なメディエーターと考えられており、細胞膜に存在する特異的な受容体を介してその作用を発現する。我々は本研究において以下のような成果をあげることができた。 1. LTB_4受容体のクローニング HL-60細胞におけるOH-LTRの誘導現象を用いてDifferential Display法によるクローニングを試み、成功した。LTB_4受容体は7回膜貫通型の受容体であり、Gタンパク質に共役していた。CHO細胞に導入したところLTB_4対する非常に強いにケモタキシスが観察された。現在、ゲノムDNAの解析、ノックアウトマウスの作成を行っている。 2. LTD_4受容体のクローニング 哺乳動物培養細胞に一過性に受容体を発現させ、リガンド刺激によるルシフェラーゼの活性化や細胞内カルシウム上昇反応を指標とした発現クローニングの系を確立した。ヒト肺より作製したcDNAライブラリーを用いて、現在スクリーニングを行っているところである。 3. THP-1細胞におけるLTD_4受容体を介する細胞内情報伝達機構の解明 ヒト白血球系の細胞であるTHP-1細胞においてLTD_4は顕著なMAPK活性化をもたらすことを明らかにした。さらに、その活性化経路を解明し、PKC、Raf-1の関与を報告した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1998年 
    代表者 : 杉山 雄一; 粂 和彦; 伊藤 清美; 加藤 将夫; 鈴木 洋史
     
    肝臓は腎臓と並んで異物解毒に重要な役割を果たす。循環血から肝臓への薬物の取り込み、および肝臓から胆汁への化合物の排泄には、それぞれ独立した輸送担体が関与する。このうち、取り込みに関与する輸送担体として、Na^+-依存的タウロコール酸輸送担体(Ntcp)やNa^+-非依存的有機アニオン輸送担体(oatp)が同定されてきた。しかしながら、これらの輸送担体が実際にどの程度肝細胞取り込みに関与するのかに関する知見は得られていなかった。本研究では、Ntcp,oatp発現系を確立し、その輸送能力および発現量を遊離肝細胞におけるものと比較検討を行うことにより、各輸送担体の寄与率を決定した。その結果として取り込み輸送担体には多様性が存在することが示され、Ntcp,oatpのみによっては説明しきれないことが明らかとなった。現在、更にoatp2,oat3等の輸送担体の機能解析を進めている。また、胆管側膜上に発現される排出輸送担体に関しては、ヒトおよびラット肝臓より調製した胆管側膜ベシクルを用いることにより、有機アニオン排出輸送機能をcharacterizeした。更にこの輸送に重要な役割を果たすcanalicular multispecific organic anion transporterの機能解析をcDNA-transfected細胞を用いて進めると共に、homologueとしてラットおよびヒトMRP3(multidrug resistance associated protein 3)のクローニングを行い、その機能解析を行った。その結果、MRP3はグルクロン酸抱合体を基質とする点では他のMRPファミリーと同等であるが、グルタチオン抱合体はpoor substrateに過ぎないという特性を有することが示された。また、ラットin vivoおよびヒト培養細胞においてMRP3は誘導を受けることが示され、ヒトにおける排泄能力の個人差を説明する重要な因子となりうることが明らかとされた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1997年 -1997年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 清水 孝雄
     
    血小板活性化因子(PAF)は生理活性脂質の一つではアレルギー反応、免疫反応などの主要なメディエーターである。PAF受容体はGタンパク質を介する7回膜貫通型の受容体であり、複数のGタンパク質に共役して多彩な細胞内情報伝達機構を動かすことが明らかとなっている。PAF受容体の一次構造は決定されたが、リガンド結合部位、Gタンパク質との共役の機構、C末端に存在するリン酸化部位のはたしている役割などの構造と機能の関連についてはほとんど解明されていない。 今回我々はPAFの受容体への結合様式を探る目的で次の実験を行った。PAFは分子内にリン酸基の正電荷、コリンの負電荷をもっており、PAF受容体の膜貫通部位に存在する荷電をもつアミノ酸残基がその結合に関与している可能性が高い。そこで先ず、膜貫通部位に存在する荷電をもつ極性アミノ酸残基をアラニンに転換した変異体をCOS細胞に発現させ、アンタゴニストに対する結合能は変わらないがアゴニストに対する結合能が大きく変化する変異体(高親和性7個、低親和性7個)を得た。次に、代表的な3個ずつの高親和性(N100A,T101A,S104A)、低親和性(H188A,H248A,Q276A)の変異体をCHO細胞に安定的に発現させ、膜標品を用いた結合実験を行うと同時に、細胞内情報伝達系の解析を行った。高親和性の受容体はより低濃度のPAFにより情報を伝えることが明らかになった。その内の1つN100Aは通常は不活性なPAFの前駆体であるlyso-PAFに対しても反応するようになっていた。これらの実験の結果と3次元立体モデルの解析により、PAFの受容体への結合部位は膜貫通部位であり、グリセロール骨格のC1にエーテル結合するアルキル基は深く膜貫通ドメインに挿入され疎水性アミノ酸残基と疎水性結合を行い、リン酸基の正電荷、コリンの負電荷は膜貫通部位の荷電を持ったアミノ酸残基とイオン結合する可能性が示された。
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    研究期間 : 1996年 -1997年 
    代表者 : 清水 孝雄; 粂 和彦; 和泉 孝志
     
    血小板活性化因子(PAF)はリン脂質性の生理活性脂質であり、炎症やアレルギー反応、エンドトキシンショックなどに深く関与していると考えられている。PAFの機能を明らかにする目的で、遺伝的にPAF受容体を欠損させたマウスを作成し、種々の表現形の解析を行った。マウスは正常に生殖をし、出産すること、また、発達や臓器形成などに大きな異常は存在しないこと、さらに血圧や血球数などにも変化の無いことが明らかとなった。しかしながら、卵白アルブミン感作などによるアレルギー誘発試験で野生型とノックアウトマウスは顕著な差を示した。野生型で見られる高度の気管支収縮や、肺胞の肥厚、肺浮腫などは観察されず、また実験中に死亡するマウスもなかった。これに対して、エンドトキシン注入による血圧低下や、致死に対しては、野生型マウスと遺伝子欠損マウスは両者に著明な差が認められなかった。これらの結果は、PAFは1型アナフィラキシ-ショックのメディエーターであるが、エンドトキシンショックやその致死作用には本質的な役割を果たしていないことを示唆するものである。しかし、PAF受容体過剰発現マウスはエンドトキシンに対する感受性が亢進しており、また、ある種のPAF受容体拮抗薬はエンドトキシンショックや敗血症に効果を持つことなどより、PAFやその拮抗物質には別の標的分子のある可能性も示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 粂 和彦
     
    PAFによる皮膚細胞の増殖制御機構の解析を行い、以下の結果を得た。 PAF受容体を高発現するトランスジェニックマウスには効率に皮膚変化が起こる。それは、表皮肥厚と色素沈着という特徴を持ち、それぞれが表皮ケラチノサイト、真皮メラノサイトの増殖の結果であることが明らかになってきている。その発症経過について、詳細な観察をを行った。生後、2週齢から定時的に、皮膚標本の作製・写真撮影を続けたところ、表皮ケラチノサイトは、2週齢でも既に野生型よりも数が増えており差が認められるが、もう一つの特徴である、メラノサイトの増殖については、2週齢では、まだ差がはっきりせず、3週齢以後に差がつき、外見的には4週齢以後に、相違が顕著となることがわかった。また、トランスジーンとして用いたモルモットPAF受容体cDNAを用いたin situ hybridizationを行った結果、PAF受容体トランスジーンは、生後2週齢以後には表皮ケラチノサイトに高発現細胞していた。特に、表皮が肥厚し、真皮内のメラノサイトの増殖が観察されている部位では、ケラチノサイトにより高い発現が認められた。色素沈着の原因となっているメラノサイトには、トランスジーンの発現がほとんど認められなかった。これらの時間経過と遺伝子発現の解析により、最初に、ケラチノサイトが増殖し、それが引き金となって、メラノサイトの増殖が惹起され、その結果、色素沈着が起こることがわかった。現在、このケラチノサイトとメラノサイトの間の情報伝達について解析を続けている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 清水 孝雄
     
    血小板活性化因子(platelet-activating factor、以下PAF)は生理活性脂質の1つで、種々の病態、アレルギー反応、免疫反応に関与し、多彩な生物活性を持っている。PAF受容体遺伝子はGタンパク質を介する7回膜貫通型の受容体である。本研究では、変異PAF受容体遺伝子を導入した哺乳動物の細胞系を用いて膜貫通部位におけるリガンド結合部位の検索を行った。 膜貫通部位に存在し、ヒト、モルモット、ラット、マウス間で保存されている荷電をもつ23個の極性アミノ酸残基をアラニンに転換したモルモットPAF受容体の変異体を作成し、Cos-7細胞に一過性に発現させてリガンド([^3H]PAF)および拮抗剤([^3H]WEB2086)の結合を調べた。拮抗剤に対する結合には大きな変化はなかったが、第2および第3膜貫通部位の変異体はPAFが結合しやすく第5、第6、第7膜貫通部位の変異体はPAF結合が減少していた。次に大きくPAF結合が変化した変異体をCHO細胞に安定的に発現させ、リガンド結合およびPAFによる細胞内情報伝達を検索した。PAF結合の増加した変異体N100A,T101A,S104AではPAFに対する親和性の増加と、より低濃度での細胞内情報伝達系の活性化が認められ、中でもN100Aは構成的に活性化したPAF受容体であることが判明した。PAF結合の減少した変異体H100A,H248A,Q276AをCHO細胞に安定的に発現させたところリガンド結合および細胞内情報伝達いずれも減少していた。さらにH188,H248,H249の3つのヒスチジン残基はPAFのリン酸残基の結合に関与し、水分子とあわせて亜鉛イオンの結合部位を形成している可能性が示唆された。これらの結果を元にPAF受容体の膜貫通部位の3次元立体モデルを作製し、PAFの結合様式を提唱した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1996年 -1996年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 本田 善一郎; 清水 孝雄
     
    生理活性脂質である血小板活性化因子(PAF)はアレルギー反応、免疫反応などの主要なメディエーターであり、脳、心、肺、腎などにおいて生理学機能を修飾する因子としても作用している。心臓はPAFを産生し代謝する能力を有し、摘出心や心筋細胞をPAFで刺激すると受容体を介して血圧低下や徐脈などの作用が表れるが、PAFの果たす役割や、その情報伝達系の分子的メカニズムはほとんど解明されていない。 ラットの心筋初代培養細胞にPAFを作用させると一過性のカルシウム上昇反応を認め、この反応は受容体拮抗剤により完全に阻害された。また、この細胞系においてPAF刺激はc-fos、c-mycなどの初期応答遺伝子の誘導をもたらした。 PAF受容体を心臓に過剰発現したトランスジェニックマウスでは、PAFの静注によって、血圧低下、徐脈などのため数分以内に死亡した。さらに、このマウスはエンドトキシンに対する感受性も増加していた。野生型マウスでは10匹中1匹が死亡したのみであるが、トランスジェニックマウスでは3分の2が3日以内に死亡した。マウス血小板にはPAF受容体は存在せずトランスジェニックマウスにも存在しないため血栓以外の原因が考えられるが死因はまだ明らかになっていない。 現在、PAF受容体を欠損したマウスを作製し解析を進めているところである。このマウスはPAFの静注に対して血圧低下などの反応を示さず、またその腹腔内白血球はPAFに対するカルシウム上昇の応答性を欠除しており本受容体の欠損が確認された。 今後、さらに初代心筋培養細胞のPAFによるシグナルの解析、PAF受容体高発現トランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスの表現型の解析を押し進めていき、心筋細胞におけるPAF受容体の機能を解明する予定である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1996年 
    代表者 : 清水 孝雄; 中村 元直; 粂 和彦; 和泉 孝志
     
    主としてグラム陰性菌の感染により、エンドトキシン(内毒素)により循環不全や全身での血液凝固を主症状とする致死的病態が生ずる。この原因としては、細菌膜に存在するリポ多糖類(LPS)が何らかの機序で、サイトカインやTNFを放出するためと考えられているが、詳細は全く不明である。一方、PAF拮抗物質の投与によりエンドトキシンショックが予防できるとの動物を用いた報告もあり、種々のサイトカインや化学伝達物質の役割が注目されている。今回、この発生機序の解明に向けて、以下の成果を得た。 (1)発生工学によるPAFとエンドトキシンショックの関連の解析 PAF受容体を高発現したマウスを作製した。このマウスは少量のエンドトキシン注入で死亡するなど、モデル動物として適当と考えられた。また、この死亡はPAF拮抗薬で大幅に緩和することが出来た。 同時にPAF受容体を欠損したマウスも作製された。このマウスはLPS投与により野生型と変わらない致死性を示した。このことから、PAFはエンドトキシンショックの増悪因子であるが、PAFが存在しない場合でも他の物質が致死を引き起こすことができることがわかった。 (2)エンドトキシンによるマクロファージの応答の研究 マウスのマクロファージを用いてエンドトキシンの作用機序を解析した。この結果、エンドトキシンはTNFを産生するが、この過程にはPAFが関与していないこと、また、チロシンリン酸化を介して、MAPキナーゼへシグナルを送ることを明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1995年 
    代表者 : 粂 和彦
     
    今年度の研究計画に沿った研究の結果、以下の結果を得た。 1.血小板活性化因子(PAF)合成酵素の活性化機構の解析 マウスマクロファージ系細胞株、RAW264.7を用いて、血小板活性化因子合成酵素(アセチル-CoA:リゾ血小板活性化因子アセチル転移酵素)の活性調整機構を検討した。この細胞株では、PAFそのもの、および、LPS(エンドトキシン)で、この酵素が活性化されたが、PAFによる活性化は、投与後1-2分をピークとして、5分後には、基底状態まで戻るのに対して、LPSによる活性化は15分程度をピークとし、その後も持続するようなパターンを示した。また、カルシウムイオノフォア(A23187)もほぼPAFと同様の時間経過で、この酵素活性を活性化すること、および細胞内カルシウム濃度の増加を阻害する、BAPTAにより、PAFによる活性化が阻害されたことより、PAFは細胞内カルシウム濃度の上昇により、この酵素を活性化していると考えられた。現在この結果は投稿準備中である。 2.PAF合成酵素cDNAクローニング 今年度は、準備段階として、PAF合成酵素活性をもたないホスト細胞の検索を行った。その結果、一過性発現によく使用されるCOS細胞は、強いPAF合成酵素活性をもつことがわかり、スクリーニングには不適であることがわかった。逆にCHO細胞は、ほとんどこの酵素活性を持たず、使用可能なことが示されたので、CHO細胞を用いた一過性発現の最適化を行い、リポフェクション法により、高い発現を得られる条件を見いだした。今後、ライブラリーのスクリーニングを開始する予定である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1995年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 清水 孝雄
     
    1.好酸球細胞におけるPAF受容体の発現調節 好酸球はPAFの主要な標的細胞の1つであり、気管支喘息などのアレルギー反応において重要な役割を果たしている。健常人および気管支喘息患者の末梢血好酸球細胞におけるPAF受容体の発現をmRNA量の解析、放射標識化合物を用いた結合実験によって調べたところ、患者好酸球においてはPAF受容体の発現が増加していた。健常人の好酸球はIL-5に反応してPAF受容体の転写および発現が促進されたが、患者好酸球はその能力を欠如していた。このことは、気管支喘息などのアレルギー性疾患における好酸球の活性化にIL-5が関与していることを示すとともに、PAFがアレルギー病態の完成に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。 2.プロモーター領域の機能解析 PAF受容体の5'-非翻訳エクソンは2つありそれぞれ異なったプロモーターが転写を調節している。この領域の機能を調べる目的で、欠失変異を導入したプロモーターにレポータージーン(CAT)を結合したコンストラクトを作製し、ヒト胃癌細胞(JR-St細胞)に導入後、CAT活性を指標にプロモーター機能の解析を行った。さらに、エクソン1に存在するNF-kBのコンセンサス配列に対するTPAやPAFの効果、またエクソン2に存在するERE、TIE、RAREのコンセンサス配列に対するそれぞれの薬物(エストロゲン、TCF-β、レチイノン酸)の効果を解析した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1995年 -1995年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 本田 善一郎; 清水 孝雄
     
    生理活性脂質である血小板活性化因子(PAF)は降圧性の循環動態調節の作用をもっている。心臓はPAFを産生し代謝する能力を有し、摘出心や心筋細胞をPAFで刺激すると受容体を介した作用が表れるが、そのシグナル伝達系の分子的メカニズムはほとんど解明されていない。PAF受容体を過剰発現したトランスジェニックマウスの一系統では、心臓、骨格筋において特に発現量が多く、PAFの静注によって、血圧低下、徐脈などのため数分以内に死亡した。さらに、このマウスはエンドトキシンに対する感受性も増加していた。 ヒト心筋からの遺伝子クローニングにより、心筋には白血球とは異なったプロモーターによって発現制御されているmRNAの存在が明らかになった。心筋型PAF受容体mRNAのプロモーター領域には、AP-2、Sp-1、AP-1、ERE、TRE、TIEが存在した。レポーター遺伝子を用いた解析によって、エストロゲンやレチノイン酸、サイロイドホルモン、TGF-βはそれぞれの応答配列を通じてPAF受容体の発現を実際にコントロールしている可能性が示された。 ラットの心筋初代培養細胞にPAFを作用させると一過性のカルシウム上昇反応を認めることが、アルガス50によるカルシウムイメージングにより示された。また、この細胞系においてPAF刺激はc-mycなどの初期応答遺伝子の誘導をもたらした。 現在、トランスジェニックマウスの表現系の解析をさらにおしすすめ、心筋初代培養細胞におけるPAF受容体を介したシグナル伝達の解明を試みている。さらに、PAF受容体欠損マウスの作製にも成功し表現型の解析を開始した。
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    研究期間 : 1994年 -1994年 
    代表者 : 粂 和彦; 和泉 孝志; 清水 孝雄
     
    血小板活性化因子(PAF)は、低濃度で血小板凝集や血圧低下を引き起こす生理活性脂質として同定され、その後、多彩な生理活性が調べられている。またある種の細胞では増殖因子として働く可能性が示唆されてきた。そこで、癌化のモデル細胞系として、ラットの正常線維芽細胞であるNRF細胞を用いてPAFの増殖と癌化への関与を調べ、以下の結果を得た。 1.われわれのクローン化したPAF受容体を発現ベクターに組み込み、NRK細胞に導入して、高発現する細胞を樹立した。野生株細胞でのPAF受容体の発現量は検出限界以下だった。 2.これらの細胞を血清除去により静止期に停止させた後、PAFを添加して増殖に対する影響を^3H-チミジンの取り込みで調べたところ、低濃度では増殖を亢進する作用を認めたが、逆に高濃度では増殖を阻害した。 3.そこで、PAF分解酵素に耐性のPAFの誘導体であるC-PAFを用いたところ、低濃度でも増殖を阻害することがわかった。 4.この増殖抑制作用は強力でnMのオーダーで効果が認められ、v-mos,v-K-ras,v-srcなどの癌遺伝子による癌化も強く抑制した。 これらの結果は、当初の予想に反して、PAFがなんらかの機構で増殖や癌化の抑制に働く可能性を示唆した。生理的意義はまだ不明だが、このPAFによる抑制系は、チロシンキナーゼからの増殖シグナルの解析にも大変有用と考えられた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1994年 -1994年 
    代表者 : 和泉 孝志; 粂 和彦; 本田 善一郎; 清水 孝雄
     
    PAF受容体遺伝子は2種類の異なったプロモーターによって転写調節を受けており、2つの異なったタイプ(すなわち白血球タイプと心筋タイプ)の2種類のmRNAを産生する。このうち心筋タイプのmRNAのプロモーター領域にはERE(estrogen resposible element)、TIE(TGF-βinhibitory element)、RARE(retinoic acid responsuble element)が存在することがわかっている。このプロモタ-の機能を調べる目的で、CAT遺伝子を結合したコントラクトを作製し解析を行った。その結果、エストロゲンによる転写活性の促進、ならびにTGF-βによる抑制を認めた。 現在までPAF受容体を過剰発現したトランスジェニックマウスの作製に成功しており、そのうちの一系統では、心臓、骨格筋において特に発現量が多かった。現在このトランスジェニックマウスの表現型の解析を行っているところである。このマウスにおいては体重が対称群に比べて約20%低下しており、雌からはトランスジーンが子孫に伝わりにくいなどの特徴が認められた。通常マウスではほとんど変化の見られない量のPAFを静注すると、高発現系統マウスにおいては収縮期血圧の低下、徐脈、房室ブロック、QT時間の延長がみられ、数分以内に死亡した。さらに、PAFに対する異常な気道内圧の上昇が認められた。現在、このトランスジェニックマウスの子孫を増やしているところである。 今後、心筋初代培養細胞系を確立して、心筋細胞におけるPAF刺激による細胞内情報伝達機構(イノシトールリン脂質回転、アラキドン酸遊離、cAMP産生抑制、MAPキナーゼ活性化など)の測定を行う予定である。さらに、心筋細胞におけるPAF刺激を介する細胞内情報伝達機構およびプロトオンコジーンの動きを調べ、PAF刺激が心筋肥大や形質変化に与える影響を検討する。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1994年 -1994年 
    代表者 : 本田 善一郎; 粂 和彦; 清水 孝雄
     
    本研究の目的は、三量体G蛋白質の下流にプログラムされた神経細胞死のメカニズムを解明することにある。我々はPC12モデル神経細胞に活性型Gqを発現させる実験から、Gq経路の活性化が神経突起の成長(細胞分化)--神経細胞死を誘導することを見い出した。本年度はまず、1)Gq、Gq連関受容体の下流のシグナルの分析、2)Gq発現によってもたらされる細胞生存に不利な機能素子修飾の検索、を行った。 1)線維芽細胞においては活性型Gq、Gq連関型受容体は分化の上位因子であるMAP kinase,MAP kinase kinaseを強く活性化した(Honda,et al.(1994)J.Biol.Chem.269,2307-15,Watanabe,Waga,Honda,et al.J.Biol.Chem.in press)が、活性型Gqを誘導的に発現したPC12細胞ではフォスフォリパーゼC活性化はみられるもののMAP kinase活性は変化していない(未発表)。現在他の機能素子修飾を探索中である。 2)モデル細胞として頻用されるXenopus oocyte遺伝子発現システムを用い、Gq経路がIP3受容体のdown regulationを通して種々の受容体からのカルシウムシグナルを完全に遮断することを見い出した(Honda,et al.J.Biol.Chem.in press)。各種増殖因子受容体の発する増殖シグナルには細胞内カルシウムが重要な役割を果たすことがよく知られている。Gq--IP3受容体消失というメカニズムは上記の三量体G蛋白質の下流にプログラムされた細胞生存に不利な機能素子修飾の一部を説明する可能性が高い。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1993年 -1994年 
    代表者 : 清水 孝雄; 本田 善一郎; 粂 和彦; 和泉 孝志
     
    PAF.(血小板活性化因子)の生理作用とその分子機構について、次の様な知見を得た。 (1)PAF受容体を介するシグナル伝達の解析 PAF受容体を強制発現させたCHO細胞を用いた解析より、受容体は少なくとも2種類のGタンパクと共約し、イノシトールリン脂質の代謝回転とカルシウムイオン増加、アデニル酸シクラーゼ阻害、MAPキナーゼの活性化とホスホリパーゼA2の活性化によるアラキドン酸遊離を引き起こすことが明らかになった。天然のPAF受容体を発現しているモルモット腹腔好中球を用いた解析でも、CHO細胞と同様の反応が見られること、また、細胞内カルシウムに依存しないMAPキナーゼ活性はwortmanninで阻害されることが明らかとなり、MAPキナーゼ上流にP13キナーゼの存在が示唆された。 PAF受容体の細胞質ドメインを欠失したり、リン酸化部位であるセリン、スレオニンをアラニンに変化させた受容体変異体では、シグナルの脱感作がおこらず、ホスホリパーゼCの活性化、アデニル酸シクラーゼの阻害、MAPキナーゼの活性化のすべての面で、活性上昇が起きていることが明らかとなった。 (2)PAF受容体遺伝子の解析 ヒトPAF受容体は2つの異なるプロモーターに支配される二つの転写物を有することは既に報告したが、それぞれのプロモーターをより詳細に解析したところ、白血球に強く全身臓器に発現するI型受容体プロモーターはエンドトキシンやPAF自身、ホルボールエステルに反応し、転写活性を高めるNF-κBを有すること、また、白血球や脳には発現せず、組織特異的発現を示すII型プロモーターはTGF-β,estrogen,retinoic acid、甲状腺ホルモンなど種々のホルモンやビタミンで発現が制御されることが明らかとなった。さらに、これらのホルモン類に反応するエレメントの同定が行われた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 1993年 -1993年 
    代表者 : 粂 和彦
     
    今年度は、研究計画に沿って実験を行い、以下の結果を得た。 1.酵母のGalphaタンパク質(GPA1)欠損株(名古屋大学理学部・松本邦弘教授より供与)にラットGsalphaタンパク質と、モルモットGi2alphaタンパク質を、酵母発現ベクターに組み込み、導入したところ、Gsalphaでは機能相補が認められたが、Gi2alphaでは、相補できなかった.発現量を、増やすために、5'非翻訳領域をほぼ完全に取り除き、多コピー型で強力なプロモーターを持つベクターを使用しても、やはり、機能相補は認められなかった. 2.そこでGi2alpha蛋白質を酵母内で機能させるために、三量体G蛋白質の他のサブユニットを哺乳動物由来のものに置き換えることを目的として、酵母Gbeta(STE4)欠損株にウシGbetaを、酵母Ggamma(STE18)欠損株に、ウシGgammaを、それぞれ導入したが、機能相補は認められなかった. 3.上述の酵母GPA1をラットGsalphaに置き換えたものに、beta-アドレナリン受容体を導入したところ、この受容体のアゴニストであるイソプロテレノールの添加に反応して、酵母の接合ホルモン受容体からのシグナル伝達系が活性化された.このことは、酵母の形態変化と、接合ホルモン誘導性遺伝子(FUS1)の転写誘導により確認された. 以上の結果、現段階でこの発現系は、Gsalpha共役受容体のクローニングには使用可能だが、目的とするGialpha共役受容体のクローニングには使用できず、さらに改変が必要と考えられ、現在、さらに改変を進行中で、今年度は本研究内容の公表には至らなかった.

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