日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2022年04月 -2025年03月
代表者 : 中尾 悠利子; 石野 亜耶; 國部 克彦; 須貝 フィリップ; 田中 優希; 牟禮 恵美子; 奥田 真也; Weng Yiting; 西谷 公孝; 越智 信仁; 大西 靖; 増子 和起; 北田 皓嗣; 岡田 華奈
本研究では、ESG評価機関に独占されてきたESG評価を、AIを活用して誰でも評価可能とすることを目的に、企業のESG情報開示を対象としたAIによるESG評価モデルの構築を実施した。
先行研究レビューより、既存のESG評価機関のスコアをもとにAIのモデルを構築している研究は存在するものの、企業のESG情報開示を直接対象としてAIによる推定モデルを構築している研究は見当たらないことを確認した。そこで本研究では、RobecoSAMのESG評価モデルを参考に、企業の開示するESG情報からAIを用いてESG評価の推定を試みた。
具体的には、Bloombergのデータベースから1300社のESGのスコアを収集し、ニューラルネットワークの一手法であるDeep Averaging Networks(DAN)を用いて、ESG報告のテキストと企業の業種情報からRobecoSAMのESGスコアの下位企業を推定するモデルを構築した。その結果、経済スコア、環境スコア、社会スコアの推定において、F値がそれぞれ0.70、0.67、0.75という一定の精度が得られた。本研究の特徴は、誰でも入手可能な公表媒体であるESG報告を対象に、AIによるESG評価の推定モデルを構築したことにある。この技術の発展により、ESG評価機関に独占されていた分析を投資家と企業に開放することができれば、ESG投資のより民主的で多様な発展に貢献できると考えられる。
今後は、本研究で構築したモデルと、GRI対照表を用いたESG評価の推定モデルとの比較を行い、より精度の高いESG評価の推定手法の確立を目指す。また、ESG報告以外の企業の開示情報も活用し、より多面的なESG評価の推定を試みることで、AIを活用したESG評価の可能性を展開することを検討している。