日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2022年04月 -2025年03月
代表者 : 堺 陽子; 松永 民秀; 長田 茂宏; 岩尾 岳洋
本研究では、デバイスを使用し、ヒトiPS細胞由来小腸上皮細胞およびヒトiPS細胞由来肝細胞を用いた薬剤性胆汁鬱滞型肝毒性評価系の開発を行い、毒性評価系への応用を可能にすることを目的とする。これまでに申請者は、静置条件下かつ肝細胞単体での評価系の開発を行い、生体内を模倣した正確な予測を行うには限界があると感じていた。そこで、microphysiological system(MPS)技術の一環として、灌流型小腸-肝臓2臓器連結デバイス(デバイス)を開発した。また、ヒトiPS細胞から毛細胆管を形成した肝細胞への分化誘導法を確立している。
まず、デバイスを用いて、ヒトiPS細胞から毛細胆管形成能のある肝細胞への分化誘導を行ったが、分化途中で細胞が剥がれる現象が認められたので、デバイス上に用いる肝細胞としてヒトiPS細胞由来肝細胞の選択は断念した。そこで、PXBマウスから分離された新鮮ヒト肝細胞であるPXB細胞をデバイス上で培養したところ、14日間の培養を可能にし、毛細胆管の形成が認められた。静置および灌流によるPXB細胞を用いた胆汁うっ滞肝毒性を評価において、灌流条件下、胆汁うっ滞肝毒性を引き起こすポジティブコントロールは時間依存的なLDHの増加が認められず、評価系の確立が今後の課題となった。また、ロットの異なった数種のヒト凍結肝細胞においても、申請者が見出した培養法(Z-VAD-FMKおよびRevita含有RM-101)により短期間での毛細胆管の形成を可能にし、デバイス上において同様の形態を確認した。