研究者データベース

肥田 重明 (ヒダ シゲアキ)

  • 薬学研究科衛生化学分野 教授
メールアドレス: hidaphar.nagoya-cu.ac.jp
Last Updated :2025/04/29

研究者情報

J-Global ID

研究キーワード

  • 衛生薬学   微生物   感染症   アレルギー   免疫学   

研究分野

  • ライフサイエンス / 分子生物学
  • ライフサイエンス / 免疫学
  • ライフサイエンス / 実験動物学
  • ライフサイエンス / 薬系衛生、生物化学 / 免疫 微生物

経歴

  • 2015年05月 - 現在  名古屋市立大学大学院薬学研究科教授
  • 2010年04月 - 2015年04月  信州大学医学研究科 分子腫瘍学准教授
  • 2002年04月 - 2010年03月  信州大学医学部 免疫制御学助教
  • 1994年04月 - 2002年04月  日本シエーリング株式会社研究開発部門
  • 1996年04月 - 2000年10月  東京大学医学部研究生

学歴

  • 1992年04月 - 1994年03月   名古屋市立大学   薬学系研究科   博士前期課程

所属学協会

  • 日本癌学会   日本免疫学会   日本薬学会   日本がん転移学会   日本生化学会   

研究活動情報

論文

講演・口頭発表等

  • T細胞依存的な皮膚の慢性炎症性疾患の解析  [招待講演]
    肥田重明
    日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会 2022 2022年11月 口頭発表(招待・特別)

MISC

受賞

  • 2009年 日本免疫学会 第4回 日本免疫学会研究奨励賞
     好塩基球を介した免疫応答制御

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2021年04月 -2024年03月 
    代表者 : 谷口 俊一郎; 肥田 重明
     
    本研究では、ビフィズス菌を固形がん治療のための特異的DDSとして利用することから、大腸ではなく静脈内や腫瘍内に投与する。そのため、生体異所への投与は、菌体成分による敗血症や繰り返し投与によるアレルギー性炎症が危惧される。これまでにTLR2遺伝子欠損マウス由来 培養マクロファージや樹状細胞を用いた場合、IL-6, TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生量が顕著に低下したことから、ビフィズス菌に含まれる菌体成分には、TLR2 リガンドが含まれており、主にTLR2 を介して、宿主自然免系細胞が応答することを明らかにした。 しかしながら、in vivo(マウス)でビフィズス菌の生菌を投与した場合、敗血症やサイトカインストームは観察されなかった。そこで、通常培養実験で用いるFBS(ウシ胎児血清)の代わりにマウスの末梢血由来の血清を用いて同様の実験を行い比較した。その結果、マウス血清1~10%で濃度依存的に、樹状細胞やマクロファージのビフィズス菌刺激に対するサイトカイン産生が低下した。この結果から、末梢の血清成分中に含まれる分子が、ビフィズス菌由来TLR2刺激分子と結合することで、免疫応答を抑制している可能性とTLR2シグナルを直接もしくは間接的に制御している可能性が考えられる。また、大腸菌などのグラム陰性菌とは異なり、UVやPFAで処理したビフィズス菌の死菌では、その免疫応答が顕著に減弱することから、生体内の常酸素分圧では、生体異所への投与でも宿主免疫細胞による急性炎症を惹起しないと考えている。この分子機構を解析することで、ビフィズス菌を固形がん特異的DDSに用いた場合の免疫学的安全性の解明につながる可能性がある。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2020年04月 -2023年03月 
    代表者 : 肥田 重明
     
    様々な環境因子によって、宿主免疫反応が影響することは知られているが、アレルギー炎症などの2型免疫反応に関連する分子機構については不明な点が多い。特に皮膚,粘膜系に存在する常在細菌や寄生虫由来分子や植物由来因子などのタンパク質は、宿主免疫応答に影響を与え、アレルギー疾患などの慢性炎症性疾患の発症や増悪に関与していると考えられる。このような生理活性分子群による免疫反応の分子メカニズムを明らかにすることは、健康維持と疾患発症や悪化を含めたQOLを考える上で重要な課題である。本研究課題では、IL-4, IL-6, IL-13等のサイトカイン産生や化学伝達分子放出を指標に常在細菌由来分子や植物由来分子について、免疫応答への影響を調べる。ブドウ球菌、乳酸菌などの常在菌の菌体は主にマクロファージなどの自然免疫細胞を活性化し、TNF-αやIL-6等の炎症系サイトカインの産生を誘導する。さらに黄色ブドウ球菌由来の分泌タンパク質には、マスト細胞や好塩基球に対して、IL-4などのTh2サイトカインを誘導する分子やIgE/抗原やイオノマイシンの刺激を増強する作用を持つ分子が存在することを明らかにしている。単独で作用する炎症誘発分子は、Src ファミリーのリン酸化酵素阻害剤やMAPK阻害剤などでサイトカイン産生を抑制することができた。しかしながら、これまでに免疫細胞に発現しているこれらの菌体分子の受容体の同定はできていない。また、植物由来プロテアーゼアレルゲンについても、レポーター細胞を作成し、スクリーニングを行い、受容体遺伝子について検討している。今後、遺伝子導入やshRNAによる発現抑制を行い、環境因子と免疫細胞の相互作用からアレルギー疾患の病態解析を考えていく。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2018年04月 -2021年03月 
    代表者 : 谷口 俊一郎; 肥田 重明
     
    ビフィズス(B)菌を用いたDDSの臨床応用において、免疫的安全性基盤を作るためマクロファージや樹状細胞を用いて、B菌種に対する免疫応答を検討した。B菌はIL-6, TNF-αなどのサイトカイン産生を誘導し主にTLR2により認識される結果を得た。一方、死菌は、サイトカイン産生、抗B菌IgG抗体産生は顕著に減少した。免疫活性化の関与候補として菌細胞壁の多糖類や蛋白質を得た。B菌でサイトカインやsvFcなどの発現系を作り、抗PD1抗体とシトシンデアミナーゼ産生B菌/5F Cとの併用で、腫瘍増殖抑制と生存延長の亢進を観察した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2017年04月 -2020年03月 
    代表者 : 肥田 重明
     
    アレルゲンや環境因子と病原体センサーを含めた2型免疫応答の関与について未だ明らかになっていない。さらに常在細菌である黄色ブドウ球菌は、アトピー性皮膚炎の発症や悪化と相関があるとされているが、その詳細な分子機構は明らかになっていない。今回、我々は黄色ブドウ球菌由来の分子であるα-ヘモリジンやSSL12が、IgE非依存的にマスト細胞を活性化し、化学伝達物質やサイトカイン産生を誘発することを報告した。これらの結果は、細菌由来分子がマスト細胞などの自然免疫細胞を活性化し、アレルギー性疾患などの発症や炎症の慢性化に関与している可能性を示唆している。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2015年04月 -2018年03月 
    代表者 : 谷口 俊一郎; 肥田 重明
     
    低酸素環境を有する固形がん選択的に着床・増殖するビフィズス菌で抗HER2scFvを発現・分泌させる系を構築した。ヒトHER2陽性がんを移植したヌードマウスに抗HER2scFv分泌ビフィズス菌を静注し、同菌の選択的腫瘍内局在と抗腫瘍性を認めた。抗腫瘍性IFN-gなどのサイトカイン発現・分泌系も樹立した。一方、ビフィズス菌の安全性に着目し免疫反応解析を行った。大腸菌などのグラム陰性菌に比べ、B菌作用による樹状細胞やマクロファージからの炎症性サイトカイン産生は1/10で、自然免疫賦活作用は弱いことがわかった。一方、菌の培養上清にサイトカインを誘導する分子を見出し、その作用機序解明を進めている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2014年04月 -2017年03月 
    代表者 : 藤井 千文; 谷口 俊一郎; 肥田 重明
     
    本研究代表者らは、これまでに種々のがんにおいて、インフラマソーム構成分子ASCの発現量が、がんの悪性度と相関して低下することを報告した。しかし、ASCとがんの悪性化を結びつける分子機構には不明な点が多い。本研究では、ASCの発現量低下が、がん細胞の形質に及ぼす影響について解析するため、マウスメラノーマ細胞株B16BL6を用いてASCノックダウン細胞を作成した。この細胞について種々の解析を行ったところ、転移能の亢進を認めた。さらに、この分子機構を詳細に解析し、がん細胞でのASCの発現量低下が、Src-カスパーゼ8経路の活性化を引き起こし、細胞運動能を亢進させるというASCの新たな側面を見出した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2012年04月 -2015年03月 
    代表者 : 肥田 重明
     
    好塩基球は様々な分子を認識し、IL-4などのサイトカインを産生する。システインプロテアーゼであるパパインはTh2免疫応答を誘導する活性があるがその分子機構は不明である。FcRγ欠損好塩基球では、パパイン依存的なIL-4産生が誘導されず、このシグナル経路には、FcRγが関与している。パパインによって誘導されるmRNA遺伝子発現パターンは、IgE-FcεRIα経路とは異なり、IFN-関連分子の発現が特異的に認められた。FcRγは、IL-4産生のアダプター分子であるが、システインプロテアーゼには他の受容体経由が関与している可能性が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2012年04月 -2015年03月 
    代表者 : 瀧 伸介; 肥田 重明; 山条 秀樹
     
    2型免疫応答に重要な好塩基球のIL-3レセプターβcサブユニットの構造と細胞内シグナルの関係を検討した。βc鎖細胞内構造については、生存/増殖シグナルとの関連でのみ明らかになっていたが、今回新たな実験系を用いて、サイトカイン産生誘導シグナルには重要であるが、細胞の生存/増殖には無関係なβc鎖細胞内領域を見いだした。すなわち、Jak2キナーゼが結合するBox1領域を欠いた場合は両方のシグナルが失われたが、一方、Box2と呼ばれる領域やチロシン573を欠くβc鎖ではIL-4産生シグナルの伝達のみが低下した。これは、これまで不明であったβc鎖構造とエフェクター機能を結びつける重要な成果である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2012年04月 -2014年03月 
    代表者 : 肥田 重明
     
    病原体センサーを介したリガンド認識機構は生体の恒常性維持に寄与している。本研究課題では、腫瘍組織に注目し、発癌から転移まで腫瘍の進展過程における微小環境を形成する癌細胞と免疫細胞の相互作用と種々の慢性炎症の役割について解析する。より具体的にはインフラマソーム形成因子の一つであるアダプター分子ASCを介した反応を中心に、腫瘍組織における種々の細胞のインフラマソームの活性化制御機構とcaspase-1に依存しないASCに関与する種々の生体反応について明らかにする。これらの分子機構を解析するために免疫細胞や腫瘍細胞において、ASCと相互作用する分子を免疫沈降や質量分析等を用いて探索した。同定された候補分子にはRNAヘリカーゼ等や病原体センサー分子、細胞死制御因子のみならず、細胞増殖関連分子や細胞骨格制御因子などの種々の分子が含まれていた。これらの候補遺伝子との相互作用と生理的役割を明らかにするために、shRNAを用いてASCやASCと相互作用する分子の発現抑制系や高発現系を樹立し、さらに種々の変異体を発現させることで機能解析を行った。癌細胞では、シグナル伝達系の制御によって運動能や転移能にASCが関与すること、細胞間相互作用によってASCの細胞内局在や接触阻害による細胞増殖抑制がASCによって制御されることも明らかになってきた。また、ASCやASC結合分子がI型IFN産生制御因子と結合することも観察できていることから、IFN産生制御を通じて癌の免疫監視機構や抗癌剤の感受性に関与する可能性がある。さらにサイトカイン産生などの免疫応答の機能を調べることで、インフラマソームの形成自体にも重要に関与し、相互作用している可能性が示唆された。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2011年 -2013年 
    代表者 : 谷口 俊一郎; 肥田 重明
     
    Inflammasome形成制御因子ASCは炎症・細胞死を促進する。炎症を伴う大腸癌易発生マウス(Ahr欠損)にASCを欠損させた所、発癌が遅延した。当マウスはIL-1βの産生が増強しており、その発現はASC欠損によって消失し、炎症抑制が発癌遅延の一原因と考えられた。一方ASC発現過剰によってがん細胞の細胞高密度状態で生存障害を与えた。また、逆に発現を減少させるとがん細胞の転移能が亢進した。 ASCと直接結合する分子として、inflammasome関連分子以外に、ファスシン、IQGAPなど細胞骨格・情報伝達関連分子が見出された。現在上記の分子相互作用の生物学的意義解析を進めている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2009年 -2012年 
    代表者 : 瀧 伸介; 肥田 重明; 山条 秀樹
     
    2型T細胞免疫応答に重要な役割を果たすインターロイキン4の産生制御機構をマウス好塩基球を用いて研究した。休止期好塩基球はIL-3 に応答するもののF_RI架橋には応答せずIL-4を産生しないこと、一方活性化好塩基球はIL-3に応答しないことを見いだし、そしてその機構に関与する分子として、転写抑制因子Bcl-6や抑制性細胞表面分子PIR-Bを同定した。前者は休止期好塩基球のF_RIシグナル、後者は活性化好塩基球におけるIL-3シグナルをそれぞれ抑制している。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2010年 -2011年 
    代表者 : 肥田 重明
     
    抗原に対して適切な免疫応答を惹起するには自然免疫系細胞に発現する病原体センサーに依存したサイトカイン産生が重要である。本研究課題において、FcRγ欠損マウス由来の好塩基球では、プロテアーゼアレルゲンの一つであるパパインによってIL-4がまったく誘導されないことを見出した。これまでにレトロウイルスベクターを用いたFcRγの再構築でIL-4産生能が回復することを確認し、本年度はFcRγの細胞膜領域や細胞質内領域変異体の再構築により、IL-3受容体シグナル経路とは直接関与しておらず、抗体受容体などと同じFcRγ-ITAM-Sykシグナル伝達経路がパパインによるサイトカイン産生に必須であることを明らかにした。さらにshRNAを用いた受容体の発現抑制実験から、センサーとして機能しているFcRγ結合受容体は、一つではなく少なくとも数種類存在することが明らかになってきた。IgEによる架橋や抗CD200R3抗体によるIL-4産生に関しては、システインプロテアーゼ阻害剤によって全く影響がなく、パパイン刺激依存的なIL-4産生のみが完全に抑制されたことから、パパインのプロテーゼ活性は必須であり、これまでの観察から受容体自身が切断される場合と受容体以外の切断されたペプチドが受容体に結合する場合の両方のシグナル伝達機序があると考えられた。またその一方で、FcRγ欠損好塩基球でも、パパイン刺激によってIL-6などの他の炎症性サイトカインやケモカインが産生され、システインプロテアーゼ阻害剤によって抑制できなかったことから、プロテアーゼ活性以外を認識する受容体・シグナル伝達経路が存在していると考えられた。今後、生体内外の種々のプロテアーゼに対するセンサー分子とその認識機構についても明らかにしていく。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2010年 -2011年 
    代表者 : 瀧 伸介; 肥田 重明
     
    アレルゲンであるパパインに対する好塩基球のセンサーのシグナル伝達について検討した。パパインに対する応答は活性化していない好塩基球では見られなかった。さらに、FcεRIを細胞表面に発現できないFcεRIβ鎖を欠損する好塩基球のパパイン応答性は、約50%の低下が見られた。従って、FcεRIはパパインセンサーとしての機能を持つが、それ以外の分子もまたセンサーとして機能しており、それらの応答性もFcεRIと同様な制御の下にあることが明らかになった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2009年 -2011年 
    代表者 : 肥田 重明
     
    近年、好塩基球は2型免疫応答において重要な役割を担っていることがわかってきたが、様々な刺激における細胞内シグナル伝達機構については未だ不明な点が多い。本研究課題では、2型サイトカイン産生に注目し、好塩基球特異的なIL-3刺激によるIL-4産生機構について、抗体受容体のサブユニットFcRγを介したシグナル伝達の制御機構を明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2007年 -2008年 
    代表者 : 肥田 重明
     
    近年、アレルギー反応やアレルゲンに反応する初期免疫応答における好塩基球の役割がマウスモデルで明らかになりつつあるが、好塩基球の活性化における分子機構に関して不明な点が多い。本研究課題では、これまでの好塩基球依存的な免疫制御についての成果から、好塩基球のサイトカイン産生機構や細胞増殖の分子機構について解析し、FcRγ分子を介した新規のシグナル伝達経路を同定した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 肥田 重明; 高本 雅哉
     
    自然免疫系は、感染初期の生体防御機構のみならず、獲得免疫系の機能調節細胞の役割も担っている。しかしながら、自然免疫系細胞の分化、機能調節の研究は未だ発展途上である。本研究は、生体内に少数しか存在しない好塩基球に注目し、2型免疫応答に重要なTh2細胞分化及び感染免疫獲得機構の解明を目的とする。具体的には、好塩基球のIgEを介したエフェクターとしてではなくTh2分化誘導を促進する作用について解析した。その結果、好塩基球は免疫応答初期にナイーブT細胞によって産生されるIL-3依存的にIL-4産生細胞として作用し、Th2分化を促進していることが明らかになった。さらに、インターフェロン制御因子(IRF2)欠損マウスでは好塩基球が増多しており、その結果Th2分化が亢進していることを明らかにし、in vivoにおける生理的役割も明らかにした。また、好塩基球におけるTh2分化誘導能はIL-4産生に依存していることから、好塩基球のサイトカインの産生制御機構についても解析した。これまでT細胞で明らかになっている転写制御に関与する遺伝子STAT6,GATA3は、好塩基球では全く関与していないことから、IL-4産生には好塩基球特異的な機構が存在することが推察できる。我々はFc受容体γ鎖(FcRγ)欠損マウスの免疫応答の解析を通じて、FcRγが好塩基球のサイトカイン産生に必須の分子であることを明らかにし、さらにIL-3刺激による好塩基球の増殖・サイトカイン産生は全く独立したシグナル伝達経路が用いられていることも明らかにした。以上の知見はIRF-2欠損マウスで見られた好塩基球の増多とIL-3によって誘導される増殖の亢進(Hida他Blood,2005)とは対照的であり、IL-3の下流シグナル伝達経路においてIRF-2とFcRγは異なる経路にそれぞれ特異的に関与していることが明らかとなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 瀧 伸介; 肥田 重明
     
    本年度は、IL-3を欠損するOT-IIトランスジェニックマウス脾細胞由来の好塩基球はIL-4を産生せず、また同マウスではTh2分化も激しく障害されていたことから、IL-3が好塩基球を介してIL-4を誘導し、Th2分化を促進しているという我々の仮説が確認された。さらに、好塩基球のIL-4産生機構に関して、Fc受容体のシグナル伝達分子であるγ鎖(FcRγ鎖)が、好塩基球にけるIL-4発現にいたるIL-3シグナルの伝達経路に必須であるという新たなシグナル伝達機構について、1)FcRγ鎖欠損マウス由来好塩基球では、IL-3で刺激してもIL-4を全く産生しなかったが、野生型FcRγ鎖をレトロウイルスベクターを用いて発現させてやるとIL-4産生が回復すること、2)また、その場合、ITAMを欠く変異型FcRγ鎖はIL-4産生を回復できないこと、などを見出し、FcRγ鎖は何らかの分子を発現させるシャペロンとしてではなく、シグナル伝達分子として好塩基球のIL-3応答に関与していることを明らかとした。そしてIL-3受容体β鎖がFcRγ鎖と、直接もしくは何らかの分子を介して結合していると考えられた。一方、FcRγ鎖を欠損する好塩基球はIL-3に対して正常に増殖し、IL-3のシグナル伝達経路のうち増殖にいたる経路にはFcRγ鎖は関与せず、IL-4産生にいたる経路に特異的に関与していることが示された。さらに、PIR-B欠損マウスでは好塩基球のFcεRIクロスリンクによるIL-4産生が亢進していること、また通常はIL-3刺激を継続することによって低下するIL-3応答が、PIR-B欠損好塩基球では低下せず、好塩基球のIL-3応答の負の制御機構にも破綻が見られることから、PIR-B分子のTh2分化制御の少なくとも一部は好塩基球のIL-4産生制御を介している可能性が示唆されている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2004年 -2004年 
    代表者 : 瀧 伸介; 肥田 重明
     
    本研究は、これまでアレルギー性炎症のエフェクター細胞としてのみ捉えられてきた好塩基球の作用、特に生体内でのTh1/Th2バランスの監視について、その機構を明らかにすることを目的とした。具体的には、転写因子インターフェロン制御因子欠損マウスに見られるTh2優位なCD4+T細胞分化が、同マウスにおける好塩基球の異常増殖に起因することを明らかにした。すなわち、同マウスにおいては、非免疫状態でも血清IgE値の上昇、CD4+細胞のIL-4高産生などTh2への自発的なシフトが見られる。さらに、我々は、同マウスにおいでは脾、末梢血、肝において好塩基球数が増加していること、c-kit遺伝子の変異を導入することによって好塩基球を減少させてやると、同時にTh2シフトもまた消失することを明らかにし、好塩基球のTh2シフトにおける機能を証明した。好塩基球の増加メカニズムについては、IRF-2欠損好塩基球がIL-3刺激に対して亢進した増殖応答を示すが、IL-3で誘導されるサイトカイン産生には影響が無いことを見出し、IRF-2がIL-3受容体の下流で選択的にシグナル抑制作用を担っているという示唆を得ている。さらに、in vitroの培養系を用い、確かに好塩基球が中立条件下でのTh2細胞の分化に必須であり、これは、好塩基球が、T細胞活性化初期に産生されるIL-3に反応し、IL-4を産生することによってTh2細胞を誘導するためであることを明らかにした。これらの結果から我々は、好塩基球がTh1/Th2バランスに関して本来は中立であるIL-3の情報を、Th2誘導性のIL-4に変換する細胞性コンバータであり、その数の調節を誤ればTh1/Th2バランスが崩れ、アレルギーなどの原因になりうるという新しい可能性を考えている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 肥田 重明
     
    申請者はこれまでに転写因子IFN regulatory factor-2(IRF-2)欠損マウスを用いてIRF-2の演繹制御機構に関して解析してきた。本研究ではIRF-2欠損マウスの皮膚炎発症における肥満細胞の関与を明らかにし、さらにIRF-2欠損マウスで認められるTh2分化亢進、特に好塩基球とT細胞の相互作用に関しても明らかにした。具体的には肥満細胞の皮膚炎発症への関与を検討するために、肥満細胞欠損マウス(KIT^)との交配により、IRF-2 x KIT^二重遺伝子変異マウスを作成した。組織学的に皮膚の肥満細胞はほとんど存在しないにも関らず、単核球浸潤や表皮の肥厚も確認され、二重遺伝子変異マウスも皮膚炎を発症したことから肥満細胞は皮膚炎発症に必須でないと考えられる。しかしながら二重変異マウスは、IRF-2欠損マウスで認められたTh2シフトが消失していることを見出した。本研究ではIRF-2欠損マウスの末梢の好塩基球が異常増加していることに注目し、Th2シフトと好塩基球の関連性について検討した。好塩基球とT細胞の相互作用及び分子機構を明らかにするためにT細胞受容体トランスジェニックマウスを用いin vitroのT細胞分化系を構築した。その結果、好塩基球の数に相関して、Th2分化傾向が認められた。この現象は活性化T細胞より産生されたIL-3が好塩基球に作用し、IL-4産生が増強される結果であることも証明した。興味深いことにIRF-2欠損マウス由来骨髄細胞はIL-3に対する反応が亢進していた。IRF-2 x STAT6及びIRF-2 x IRFAR1二重変異マウスの結果から、好塩基球の増殖はIRF-2欠損マウスのTh2シフトの結果ではなく、IFNシグナルに非依存的な機序によるもので、新たなIRF-2の遺伝子転写制御機構の存在を明らかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2003年 -2004年 
    代表者 : 瀧 伸介; 肥田 重明
     
    本研究は、転写因子インターフェロン制御因子-2(IRF-2)を欠損するマウスにおいて自然発症するT細胞依存的炎症性皮膚疾患の発症機構における免疫系の異常の関与を検討するために、このマウスで見られる種々の免疫異常のメカニズムを解析したものである。まず、本マウスにおいて、脾臓樹状細胞(DC)サブセットのうちCD4+のものが野生型マウスに比較して激減していることを観察し、その原因が骨髄細胞内にあることを骨髄キメラマウスを用いて明らかにした。さらに、インターフェロン-α/β受容体を欠損するマウスとIRF-2欠損マウスを交配して二重欠損マウスを作成し、このDCサブセット異常が、このマウスですでに我々が過去に報告した過剰なIFN-α/βシグナルに原因することを明らかにした。この二重変異マウスでは、皮膚炎症もまた消失しており、DCサブセット異常と皮膚炎の関連が疑われた。一方、IRF-2欠損マウスではNK細胞の分化異常も報告されている。今回我々は、この分化異常のメカニズムについても検討を加え、IRF-2はNK細胞の最終分化ステップにおいて必要とされること、さらに、Ly49などのNK受容体の発現パタンから骨髄内に残存する未熟NK細胞に比べ脾臓内のNK細胞は、よりいっそう未熟な表現型を示すこと、それはIRF-2欠損NK細胞が骨髄内で高い頻度でアポトーシスを起こしており、末梢のNK細胞プールに貢献できないためであることなどを明らかにした。このような未熟な表現型にもかかわらず、IRF-2欠損NK細胞は正常なキラー活性を示し、従ってキラー活性はNK細胞最終成熟の指標にはならないという重要な知見が得られた。さらに、上記二重欠損マウスにおいてもNK細胞の分化異常は観察され、DCサブセットとは異なる機構でこの異常が引き起こされていることが明らかとなった。さらに、もうひとつの免疫異常である自発的なTh2の原因を好塩基球の異常増殖であると同定した。

担当経験のある科目

  • 免疫学名古屋市立大学、信州大学
  • 公衆衛生学名古屋市立大学
  • 環境衛生学名古屋市立大学
  • 衛生化学名古屋市立大学

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