日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2019年04月 -2022年03月
代表者 : 青木 康博; 福田 真未子; 琵琶坂 仁; 臼井 章仁
年齢推定法の検討のため,16~95歳の男性(404例)および女性(364例)の骨盤骨相同モデル(解析試料),およびそれらの各年代ごとの平均像を用いて,主成分分析を実施し,年齢との相関が見られる主成分を利用し,平均像の主成分値により上下に分割した試料群それぞれの平均像を加え,これらすべての平均像(平均像群)について改めて主成分分析を行い年齢との相関のある主成分を検索した。年齢推定は検証用に作成した男女の骨盤相同モデルの各主成分値を平均像群の主成分分析データから求め,各平均像の主成分値との距離から実年齢との差を比較した。その結果,男性については解析試料の第1,4,7主成分値を利用して作成した平均像群の主成分分析で,ともに第1主成分が年齢と強い相関(0.79<|R|<0.97)を示した。推定年齢と実年齢の誤差の平均は,12.4~13.4歳であり,年齢推定にある程度利用可能と考えられた。
一方,深層学習を利用した性別判定では,まず男女各300例(16~96歳)の相同モデルの姿勢と大きさを合わせ,骨盤傾斜角を一定とし,z軸座標(奥行き)をグレースケールで表したモノクロの2次元提示画像を作成した。学習済みネットワークとしてAlexNet, GoogLeNet, ResNet-50を採用し,提示画像をいくつかの基準に従い男女各150例選択し,再学習に用いた。テスト用データは,別に男女各150例の画像を同様にして作成し,性別判定を行って能力を評価した。90%以上の確度をもって属する性と判定した場合を正答とすると,正答率は88~98%であり,提示画像の種類では骨盤傾斜角60°の正面像の成績が良好で,学習データの選択では各性の平均像との面間距離が小さいものを用いた場合に正答率が高い傾向にあった。深度画像を使用した深層学習は法医学的個人識別において有用であると考えられた。