日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2006年 -2007年
代表者 : 武田 裕; 三島 晃; 大手 信之; 浅野 実樹; 土肥 靖明; 水野 寛太郎; 福富 達也
平成18年度に引き続き研究を継続し、通算で成人先天性心疾患患者20名からデータを収集した。NYHA心機能クラスは2.4±0.6で、問診法による運動耐容能は5.1±1.3METsであった。単変量回帰分析によると、血漿エンドセリン-1濃度(標準化回帰係数[β]=-0.446,p=0.049)、尿中ノルエピネフリン濃度(β=-0.536,p=0.015)、尿中バイオピリン濃度(β=-0.535,p=0.015)がそれぞれ運動耐容能と逆相関した。SpO_2が90%以上か未満かで分けた場合、低酸素を呈する群で運動耐容能が低い傾向があった(β=0.396,p=0.084)。一方、血漿ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド濃度は理論に反して運動耐容能と正相関した。前方ステップワイズ法で変数を選択して重回帰分析を行うと、低酸素の有無(β=-0.439,p=0.023)と尿中ノルエピネフリン(β=-0.569,p=0.005)が有意な因子として残った。尿中ノルエピネフリンと尿中バイオピリンとの間に強い正相関を認めた(β=0.806,p<0.001)。本研究において、脳性ヒトナトリウム利尿ペプチドが重症度の指標性を失っていることを示し、これに代わり尿中ノルエピネフリン、尿中バイオピリン、血漿エンドセリン級が重症度指標となりうることを示した。また、尿中ノルエピネフリンと尿中バイオピリンが強い相関を示すことから、酸化ストレスの制御や交感神経の過剰充進の制御が、成人先天性心疾患の治療戦略となる可能性があるとの知見を得た。