日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2020年04月 -2023年03月
代表者 : 齊藤 成; 高橋 和男; 片山 鑑; 熊本 海生航; 鏡 裕行
IgA腎症の糸球体と尿細管の解析プラットフォームの中心的役割であるプロテオミクス解析の質の向上に努めた。昨年度、糸球体40個をレーザーマイクロダイセクションで切り出して、LC-MSに解析し、約400個のタンパク質を解析できていた。本年度は、プロテオミクスの解析能力を増やすために、各ステップごとで改善点の洗い出しを行なった。その結果、糸球体40個をレーザーマイクロダイセクションで切り出して、L C-MSで解析し、約1100個以上タンパク質が同定できた。同定されたタンパク質の中には、糸球体特異的なタンパク質(ネフリン、ポドシンなど)も認められた。二倍以上の蛋白同定数の飛躍的な改善があった。改善を行うために、以下の点を検証し、解析方法を決定している。レーザーマイクロダイセクションで切り出す際の特殊な専用のスライドを3種類(POL,PEN,Director)によりプロテオミクスの解析に違いがあるのかを試した。超音波処理(Bioraptor, Covaris)は2種類の機器を試した。また、蛋白溶解液を2種類(PTS buffer, SDS buffer)による違いも試した。蛋白量の測定方法(microBCA, 2DQuant kit, EZQ kit)も検討した。蛋白抽出方法(PTS法、SP3法)である。同定数を大きく向上させたのは、蛋白抽出方法SP3法であった。SP3法は蛋白抽出液の中の界面活性剤の除去が優れていた。超音波処理のCovarisは蛋白抽出の能力は優れていたが、専用スライドのフィルムを掛けるとフィルムからのコンタミが起きてしまった。フィルム方式でないDirectorを用いて、SP3で試してみた結果、同定数は約500個と同定数が悪かった。現在は、PEN or POL-PTS-Bioraptor-SP3の方法でIgA腎症の病態解析を進めている。