日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2005年 -2006年
代表者 : 生田 幸士; 加藤 大香士; 太田 祐介; 池内 真志; 長谷川 忠大; 成瀬 恵治; 山田 章
従来のマイクロアクチュエータと根本的に異なる,光エネルギだけで駆動制御する、新たな「光駆動ナノメカトロニクス」の世界を開拓するための研究を行った.
1)基本概念の構築
従来のマイクロアクチュエータは,可動素子とエネルギ伝達用のリード線の両者のマイクロ化が不可欠であった.しかし,光駆動の場合,単に透明な材質でマイクロ,ナノスケールの可動部品があれば,可視,赤外レーザの照射により,レーザトラッピングの原理で,外部から遠隔駆動できる.さらに,透明ビーズの光トラップなど従来の光駆動では,運動の自由度は1/2に限定されていた.1/2とは,単に物体を押す作用だけで,物体を引っ張る方向の自由度はないからである.他方,本研究で提案している光駆動ナノマシンは,ロボットハンドのように,押す方向と引く方向に加え,ひねるなど,完全な6自由度を実現できる大きなメリットを持つ.細胞操作など微細作業に完全な6自由度をもたらすことができる.
2)製作手法
本研究室の独自開発のマイクロ光造形法の一つである「高速2光子ナノ光造形法」を用いて,軸付きギアなど可動メカニズムを100ナノメータの分解能で製作できた.ロボットマニピュレータと同様,多自由度を持つ10ミクロンのサイズのナノマニピュレータの試作に成功した.
3)基本特性の実証
YAGレーザをナノマニュピレータ内に焦点を合わせ,十分な早さで遠隔駆動することに成功した.10Hz以上の応答性も確認した.
4)遠隔操縦システムの構築
把持,リスト,アームの3自由度を持つ光駆動ナノマニピュレータと操縦用マスターハンドを開発した.リアルタイムでの操縦実験で,光学顕微鏡下のスライドグラス上の水滴内で数ミクロン径の細胞を操作し、画像認識により、細胞の反力を計測する系を開発した.
以上のように、「光駆動ナノメカトロニクス」の将来の応用をめざし、非バイオ系とバイオ系の双方にわたる、広範なナノ操作の可能性を実証した。