日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2018年10月 -2023年03月
代表者 : 今泉 祐治; 大矢 進; 山村 寿男; 鈴木 良明; 鬼頭 宏彰
1,IL-10/IL-17Aを産生する制御性T細胞は、炎症性腸疾患(IBD)のような自己免疫疾患の発症・増悪の抑制に関与することが知られている。我々はIBDモデルマウスやin vitroで誘導した制御性T細胞において、Ca2+活性化K+チャネル(KCa3.1)阻害薬がBlimp1、E4BP4、KLF4といったIL-10/IL-17Aの転写制御因子の発現が亢進することで、IL-10/IL-17A発現を亢進させることを明らかにした。(Ohya et al., 2021)。さらに、JNK阻害薬がKCa3.1阻害によるIL-10発現上昇を抑制することと、KCa3.1阻害薬がリン酸化JNKおよびc-Junの発現を上昇させることを見出した。これにより、JNK/c-Junシグナルが、制御性T細胞におけるKCa3.1阻害誘導性のIL-10発現亢進に関与することを明らかにした (Matsui et al, 2022)。
2,敗血症では、炎症反応による骨芽細胞障害を介したIL-7産生抑制が免疫細胞数の減少を引き起こす。我々は、マウス骨芽細胞株MC3T3-E1の骨芽細胞分化に内向き整流性K+チャネルKir2.1の機能亢進が重要な役割を果たすことを明らかにした。さらに、miR-106p-5pの発現減少がKir2.1の発現上昇に寄与することが明らかとなった。現在、慢性炎症時におけるKir2.1やmiRNAの発現活性変化と骨芽細胞機能との関連について検討中である。
3,血管に対する持続的なストレス負荷が興奮転写連関を介してケモカインなど白血球集積を引き起こす分子の遺伝子発現の転写を引き起こすことを明らかにした。これにより、マクロファージが血管壁に集積して慢性炎症が引き起こされることで、血管リモデリングが引き起こされることを見出した(Suzuki et al, 2022)。
4,門脈圧亢進症モデルマウスの門脈平滑筋細胞では、アンジオテンシンⅡのはたらきによりTMEM16Aの発現が減少して、自発運動に異常が生じることを明らかにした(Kondo et al, 2022)