日本学術振興会:科学研究費助成事業
Date (from‐to) : 2021/04 -2024/03
Author : 藤井 慶一郎
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)には多くの亜型が存在する。血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVL)は稀なDLBCL亜型で、検体中の腫瘍細胞数が少数のため遺伝子解析が難しい。本研究の目的は(1)申請者らが独自に開発したパラフィン組織を用いて細胞レベルで形態、蛋白発現、遺伝子解析ができる手法(FICTION-WSI法)によりIVLの遺伝子異常に依存した病態を明らかにする、(2)DLBCLの中枢神経原発、縦隔原発、皮膚原発、EBV陽性の各亜型の症例を対象に、リンパ腫細胞を次世代シーケンサおよびFISH法を用いて、網羅的遺伝子プロファイリングを行う、である。
(1)の実績は、IVL10例を、FICTION-WSI法を利用して、DLBCLで報告頻度の高いBCL2, BCL6, MYC転座, PD-L1増幅の解析を終了した。申請者が独自に開発したFICTION-WSI法の優れた特徴は、少数細胞であっても正確に解析ができる点であり、この手法を利用してIVL患者の遺伝子を解析できている。遺伝子増幅や欠失に関して、FISH法によるさらなる解析を行う予定である。また、臨床的特徴と遺伝子異常の関係を突き止め、全体像の把握につなげる予定である。
(2)の実績は、次世代シーケンサ解析の準備のために、DLBCL亜型30症例のDNAを抽出・精製し、DNAの質および量を確認した。さらに症例数を増やし、次世代シーケンサおよびFISH解析を予定している。